一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話   作:しいたvol.3

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ストックが完全に切れたんで明日以降は投稿できない…かも。


我、流浪のものである22

彼女の部屋へと監禁されてからしばらく。

予定していた滞在期間より一年ほど長くルアンと過ごすことになっていた我は、そろそろ脱出しようかと策を巡らせていた。

一通り思いつくことは試してみたのだが、さすがというべきかほとんど成果は得られていない。

 

自室で悩んでいると、コンコンとロックの後にドアが開いた。

 

「ご飯の時間ですよ。それとも、私とお風呂に入りますか?」

 

__辞めておく。というか、毎回聞いてこずとも我が断ることくらい知っているだろうに。

 

「念のためですよ。そういうあなたも私にここから出せといつも言うではないですか」

 

__それは仕方ないであろう。ルアンと過ごす日々は嫌ではないが、我は強さを求めていたいのだ。

 

「そうですか。なら私を殺すことですね。」

 

__…はぁ。難儀なものだ。

 

愚痴をつぶやきながら我はルアンと食卓へと着いた。

食事の当番は定期的に交代している。ほかの家事はその時々、といった感じであるが。

 

なんだかんだ二人での生活はうまくいっている。

同じような日々の中にもちょっとしたハプニングがあり、すこし笑って明日へと向かう。

しかし、我はそんな生活を捨ててでも強さを求めたいのだ。

 

__ルアン。話がある。

 

かちゃりかちゃりと響いていた食器の音が止まった。

今、食卓には静寂が場を支配している。

 

「…なんですか?お風呂を覗くなという話でしょうか。それは無理だとこの前に…」

 

__違う。

 

「失礼しました。真剣な話ですか」

 

__少し考えてな。我は強さとルアンと天秤にかけて、その葛藤にずっと苛まれていた。

 

「知っています。カメラであなたが部屋で何かを考えているのをよく見ていましたから」

 

ちなみに、我はそのカメラの話を今初めて聞いた。

自室だけが我のプライベート空間だったというのに…結構恥ずかしいのである。

 

__結論は出た。

 

我は立ち上がり、剣を抜いた。

ルアンの白い首筋に冷たい刃がそっと添えられる。

 

しばらく、ルアンは我の方をじっと見つめていた。

我の全てを見透かしているような、それでいてわかっていないふりをするような、奇妙な眼差しだった。

 

「…そうですか。あなたは、結局私ではなく自分を選んでしまったのですね」

 

「ええ、理解していましたよ。あなたがずっと悩んでいたことも、私をどれだけ大事に思っているかも」

 

「…ふふ。あはははははッ!」

 

彼女は堰を切ったように突然笑い出した。

普段冷静で落ち着いていることが多い彼女がここまで笑っているのを見ると、なんだか違和感を覚える。

 

「…っはぁ、こんなに笑ったのは久しぶりです」

 

__何がおかしい?命が懸かっているんだぞ。

 

「いいえ、命が懸かってなどいませんよ」

 

ルアンはそっと、刃へと手を添え、自らの首へと刃先を動かした。

 

「ッ…」

 

彼女の首からつうと血液が伝っていく。

見れば、彼女の体は少し震えていた。

 

「あなたは…私を殺す気などないでしょう。むしろ、あなた自身が死のうとしている」

 

__なぜ。

 

「分かりますよ。理由にはならないかもしれないですが、私はあなたを愛していますから」

 

ぐにゃりとルアンは我へとその笑顔を向けた。

あまりにも歪で、傍から見れば狂っているとしか言いようがない笑顔。

 

「ああ…とても幸せです。頭ではわかっているのに、体がずっと危険信号を発し続けている。」

 

「それをあなたへの愛という不確かなものが押さえつけている。どうにかなってしまいそうです」

 

恍惚と彼女は喋り出した。

嘘ではない。確実に、今目の前の彼女は心からそう思っている。

長い付き合いゆえに分かってしまうのが憎かった。

 

「どうしました?剣が震えていますよ」

 

__戯言を。我の剣に迷いなどあるものか。

 

「口ではなんとでも言えますよ。ほら、早く私を殺したらどうですか?」

 

ぐっと、また彼女は剣先を自分の方へと押し込んだ。

我が少しでも力を入れれば彼女は死んでしまうだろう。

 

__はぁ、降参だ降参。死すら厭わない人間にどう脅せというのだ。

 

我は剣を下ろした。

…まさか、自分でもここまでルアンを殺すことに抵抗があるとは思わなかった。

弱いな、我は。

 

「もう少しあの気分を味わっていたかったのですが…残念です。…ああ、そうだ」

 

ルアンは思い出した様に自身の服から一つの鍵を取り出し、差し出してきた。

…うん?鍵?

 

__この鍵は?

 

「ここの鍵です。貴方はもう外に出ても良いということですよ」

 

我はその場で固まってしまった。

ちょっと待て、そんな軽く渡してくれるなら我の苦労はなんだったのだ?

 

「貴方はもう既に私を想ってくれている。それこそ自分の信条である強さよりも」

 

「それだけで十分ですよ。また、実験に付き合ってもらうかもしれませんが」

 

__しばらくは勘弁であるな。外に出してくれることには感謝するが。

 

「ふふっ、今後一切しないとは言えないのですね。やっぱりあなたは甘いですよ」

 

__そのようであるな。まだまだ修行不足である。

 

「またあなたは旅をするのですか?」

 

__もちろん。

 

「浮気は許しますが、それ以上は許しませんよ。破ったら今度は本当に一生一緒です」

 

__ないとは思うが…一応、留意しておこう。あと別に我はルアンと婚約も交際もしていないからな?

 

「私の裸を見たくせに?私はもうあなたしか見ていませんよ」

 

__不可抗力だろう。勘弁してくれ。

 

弁明すると、本当に不可抗力である。

我が風呂に入っている時に鍵をかけないでいると勝手にルアンが入ってくるのだ。

ちなみに、その一件から我は絶対に風呂の鍵は閉める様にしている。

 

我は鍵を手に持ち、帰る準備をした。

なんだかんだ長く住んでいたため自室に愛着がないこともないが、旅の興奮と比べれば微々たるものである。

 

「…また会いましょう、私の愛しいあなた。再び会った時にあなたが変わっていないことを祈っています」

 

__どうであろうな。強さのためには、変化は必要だ。

 

こうして我は、しばらくぶりに檻の外から出た。

再び旅が始まる。

強さを求めていれば、この甘さも捨てることになるのであろう。

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