一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
輪廻中のヨロイさんと黄金裔たちの様子はおまけでご覧ください。
「先生は何のために火種を集めるのですか?」
あの出会いからしばらくが経過した。
その間に黄金戦争が始まってしまい、多くの黄金裔が命を落としてしまった。
我もできる限りトリスビアス達を守り通したが、それでも守り切れぬ命も多くいた。
例のごとく寿命の関係で何度かの復帰を経て、またしてもカイザーのもとで配下として使えることとなった。
そんなわけで、一緒についてきたアグライアにトリスビアスと予言についての話をしていると、ふと彼女へと聞かれた。
「ライアちゃん。急にどうちたの?」
「いえ、予言のお話は信じているのですが、話を聞けば先生は最初からその予言を信じていたんですよね?」
__事実だ。我は千に引き裂かれる前のトリスビアスから予言の話を聞いて最初の火種を盗み出した。
「ですが…どうしてですか?先生は黄金裔でもありませんし、私たちにかまう理由など本来は…」
成程、まぁ確かに傍から見ればそう見えてしまうのかもしれない。
我はそれはもう何度も火種を集めるのを協力しているため、もはや我にとっては当たり前のことであるのだ。
「紡がれた物語」のページはもう既に後半へと差し掛かっている。
最初の数万回くらいは色んなことを試したものだが、ヘルタ殿の言うとおり、我はこの輪廻に影響を与える…
例えばファイノン、いやカスライナか?による再創生は止められないことになっている。
不思議なことに、我は必ず輪廻の最後にフレイムスティーラー、もしくは寿命、事故のどれかで死ぬことになっていた。
推測ではあるが、我が物語の根幹に干渉できぬように最低限の制限がかけられているのであろう。
その他のことは…まぁ、とくには無い。
ある輪廻では先生として、ある輪廻では戦争を終結させる英雄として生きたこともある。
__そうであるな…強いて言うのなら、我はファンなのである。もちろん、君たち黄金裔たちの。
たとえ何度も彼らと別れようと、この身が滅んだとしても。
彼らの輝かしい物語はいつまでも眺めていたいと思うのだ。
我は最高の物語を見るために道を整えているに過ぎないのである。
__我は見届ける。君たちという物語の終わりまでな。
まぁそんなわけで、我は幾度もページをめくり、その度に黄金裔たちとの出会いと別れを繰り返した。
膨大な時間をあちらで過ごしてきたおかげで、我の剣の道は何歩も先へと進むことができた。
他にも黄金裔たちと色々あったにはあったのであるが…
幾億もの歳月を巡り、ついぞ我は残りの数ページというところへと辿り着いた。
おそらくここから先は星と丹恒がオンパロスへと辿り着く輪廻の話になるのだろう。
というか、それで言うと我はどうなるのだろうか。
まさかフレイムスティーラーと正面切って戦えたりするのか?
後半の方はほとんど我は剣を振れぬ状態でしか彼と相まみえることができなかった。
ちなみに一番酷かったコンディションは右足を骨折しながら負傷したヒアンシーを抱えた状態でステゴロバトルである。
勝たせる気がない。踏ん張れないしヒアンシーは負傷しているから激しく動かせないしでほとんど一方的だった。
ヒアンシーには酷い光景を見せてしまったかもしれない。
閑話休題。我は改めて本へと向き直り、新たなページを開いた。
白に染まっていた視界がだんだんと戻ってくる。
もはや慣れたものだが、さて今回のスタート地点はどこか…
あたりを見渡せば、一面の麦畑。どうやらどこかの農村であろうことがうかがえる。
なんてことのない平和な田舎。
…しかしながら、我がここへと飛んでくるのは決まってある人物が我を呼んでいるときだけだった。
「お久しぶりですね。直にお会いするのは何百の輪廻ぶりでしょうか?」
__まぁ、そうだな。正直我はあまり貴殿と会いたくはないのだが。
声が聞こえた方へと振り返ると、やはりというべきか、見知った人物がそこに立っていた。
胸に空いた大きな穴、機械でできた体。
長く続いた輪廻の中で、こいつと殺し合ったことも少なくはない。
__ライコス殿。今回は何の御用であろうか?
「あなたがこの観測に飽きていないか確かめに来ただけですよ。なにせ随分前から居座っていますから」
__気にするな。どうせ我は観測しかできんし、そろそろお前の望みは打ち砕かれるだろうからな。
「それは楽しみですね。ですが、十中八九あの壊滅の器が折れるのが先になるでしょう」
さあと風が吹いてあたりの麦を揺らしていく。
「あなたという変数が実験に混ざっているときは少々焦りましたが、今は何ともありません」
「あなたは変数になりえなかった。その時点で私の勝利は確定しています」
__ハハハハッ!どうだかなぁ!
我は隣に立つ機械頭を切り落とした。
こんなことをしてもほとんど意味はないと分かっているのだが、イラついたものは仕方がないのである。
「さて、そろそろあらたな輪廻が始まります。どうぞ、観衆としてお楽しみください」
切り落とした頭ではなく空間全体から声が響き渡ると、我の視界が揺れ、また意識が落ちて行った。
おまけ 死にかけヨロイとヒアンシーの巻
「よ、ヨロイたんッ!早く私を離してくださいっ!じゃないと、じゃないとあなたが…!」
この時、ヒアンシーは半神へと成っていない。
しかし、襲い来るフレイムスティーラーによる被害者の治療にあたっていたところ、その分身によって腹をぱっくりと斬られてしまった。
なんとか止血をし、震える体を押して治療をした。
治すべきこの世界のために、医者である自分がこんなところで立ち止まっては居られないのだ。
しかし、フレイムスティーラーがすでに目の前へと迫り、もうダメかと思ったとその時。
鈍く輝く鎧が黒の剣士の剣を止めていた。なんと篭手だけで剣を止めている。
彼はヒアンシーを一瞥すると、ヒアンシーをその脇へと抱え、そのままフレイムスティーラーと戦っていた。
__申し訳ないが、貴殿を見捨てるわけにはいかぬ。…できる限り、時間は稼ぐ。
「でもっ!ヨロイたん…足が」
そう、彼の右足は既に折れていた。
これは崩落した建物から患者を守るために喰らったものだ。
そのせいで彼は思うように動けていない。しかも、得手である剣もない。
彼の鎧からどんどんと傷が増えていく。
赤い血が、彼の体から流れていく。
それでも彼は苦しそうに声を上げながら、フレイムスティーラーへと蹴りを飛ばし距離を取った。
彼女はただ、黙って抱えられていることしかできなかった。
目の前に、一番治すべき人がいるのに。
彼女には、自分の頬にぽたぽたと垂れる赤い血液をどうすることもできないのが、たまらなく悔しかった。
暫く粘っていたもの、限界が来てしまった。
最期の力を振り絞ってフレイムスティーラーを撤退させた。
しかし、震える手でヒアンシーを優しく地面へと座らせると、彼はドサっと地に倒れ伏してしまった。
「ヨロイたんッ!ヨロイたんッ!」
ヒアンシーは自分の服をビリビリと引き裂いて必死に彼の止血を行った。
医師である彼女にはわかっている。もう彼は助からないことくらい。
それでも医師として何かしなければ、ヒアンシーの中の何かが壊れてしまう気がした。
「絶対!絶対死んじゃだめです!ヨロイたんっ!ねぇ!」
必死に止まらない血を止めようとするヒアンシーを見て、死にかけの鎧の男は彼女の頭を撫でた。
__ありがとう。でも、君にはもっと救うべき命が他にある…。
そういって、彼は目を閉じた、ぼとりと力が抜けた彼の手が、ヒアンシーの止血していた腕を叩き落とした。
まったくの偶然だ。ただ、重力に従って腕が落ちて行っただけ。
それでも、その時のヒアンシーの心には、取り返しのつかない傷がついてしまった。
「あ…ああ…あ゛あ゛ア゛あッッ゛゛!!!!!」
もう二度と、その鎧は言葉を発さなかった。
そして狂った様に治療しようとするヒアンシー。
それを嘲笑うようにキラキラと綺麗な光の粒子となってヒアンシーを包んでいった。
治療の余地すら、完全に奪っていった。
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