一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
「これは?」
「ゴミ」
「じゃあ…これ!」
「まぁまぁであるな。このくらいでどうだ」
「やった!」
ガチャガチャと音を立てながら、嘗ては栄華を誇ったであろう豪奢な屋敷の瓦礫を漁るものが二人。
一人は大きな鎧。もう一人は盗賊然とした格好のドロス人だった。
「セファリア」
「何?あとおじさんさ、あたしの事サフェルって呼んでって言ったよね?」
「面倒だ。ずっと昔からそうだったからな」
「ずっとって。あたしとおじさんってまだ数年くらいの関係じゃん」
「手を動かせ。大体、なんで我はお宝探しの手伝いと鑑定をさせられねばならぬのだ」
「おじさんが一番見る目があるし、なんだかんだ優しいからにきまってるじゃーん」
男はまだ幼そうなドロス人の子供から価値がありそうなものを受け取っては、それを鑑別してテミスを渡していた。
あたりは真っ暗。二人以外に誰も寄り付かないであろう場所故か、その音はよく響いていた。
「私が逃げてもすぐ捕まえてくるし、説教はするけど…結局は私に手伝ってくれるし」
「当たり前だ。この世のどこにまだ幼い子供の世話を放棄しようとする者がいる」
男の方はぶっきらぼうに幼い少女へと告げると、そこらの瓦礫へと腰かけた。
「そーいうトコ。なんかきらーい。だから裁縫女もおじさんに…いや、なんでもないや」
「ねぇ、おじさん」
「なんであるか」
「もし、あたしがウソ、ついててさ。そのウソがバレちゃったら世界が終わる~。なんてことになったら、おじさんはどうする?」
男は、しばし沈黙した。
夜の冷たい空気が、彼らの頬を撫でていた。
他愛のない会話だったはずなのに、少女の方の顔は少し強張っていた。
「別に、何もしない」
「え」
「いや、何もしないというより、我はいつものことをするだけである」
「いつものこと、って?」
「ただ、強く在り続けることだ。」
「…なにそれ」
「分からんだろうな。たかだか盗賊のガキには」
「うっわ!さいてー!おじさんのバカ!アホ!…ど、童貞!」
「童貞は関係ないであろう」
「ただ、まぁ…」
鎧の男は暗い空を見上げながら、遠くを見つめるようにして言った。
「少なくとも、セファリア。貴殿が何をしても我は味方で在り続ける」
少女はいままで動かしていた手をすっと止めて、男の方へと顔を向けた。
少し驚いたような顔をして、そのあとすぐに取り繕うようにして瓦礫を漁りだした。
「ほんっと…意味わかんない」
我、流浪の身である。
現在、傷心中のアグライアを慰めるためにどうしたものかと考えを巡らせている。
(アグライアはきっと、自分を許せていないんだ。そこで君が彼女を優しく抱きしめて、そして言うんだ。
『君が自分を責める必要はない。君の悲しい顔を見ていると、我も悲しくなってしまう』。
心が揺れるアグライアにとどめのキスをすれば…完璧さ!)
エリュシオンには三流恋愛小説しか存在していなかったのだろうか。
恋愛観が完全にキュレネと同じ『純愛♡ピュアピュア♡な男女のイチャイチャこそ正義』タイプである。
否定はしない。それをただ生徒を慰めるためだけにそうしようとするのが問題なのである。
(さぁ!やるんだヨロイさん!さぁ!)
「…先生がそのようなことを言うなど絶対にないと分かっていたのに…私のような捻くれた女は、ただ政や業務にだけ身を捧げているのがお似合いです…」
うむ。アグライアもアグライアで相当意気消沈している。
致し方ない。童貞とはいえど我も男である。ここでやらねば、いよいよ男の名折れというもの。
意を決した我は、アグライアの体を包み込むようにしてこちらへと引き寄せた。
ちなみに、兜はファイノンに剥ぎ取られた。勝手に剥ぎ取るな。
「…あっ、いけません…先生。私のような者に抱擁しては…」
__アグライア、そこまで自分を責める必要はない。どうか、君は君のことを許してあげなさい。
「で、ですが…」
どうやら、アグライアはまだ自分のことを許せていないらしい。
ふむ、さっきファイノンが言っていたことを実践してみるべきか…
__アグライア。じっと我の眼を見ろ。
「は、はいっ!」
とりあえず、顔を赤くして目をそらしていたアグライアをこちらへと向かせる。
き、キスか?キスをすれば良いのだな?
そう思ったのだが、我とアグライアの身長の関係で口には届かなさそうである。
できたとしても相当無理な体制であろうし…結局、アグライアの額にキスを落とすことにした。
__これでも、許せそうにないか?アグライア。
「い、いえ…もう、十分です…十分ですから…」
アグライアは顔を真っ赤にして我へと抱き着いている。
勝ったな。我も童貞の意地を見せてやったのである。
顔を上げると、アグライアの肩越しにファイノンがいるのが見えた。
彼はとんでもないガッツポーズを決めていた。必死に声を出そうとするのをなんとか理性で抑えている顔である。
…しかし、そのファイノンの顔が一気に引き攣った。
彼の視線は我の背後、その一点へと向かっている。気まずそうに目線をそらしたファイノンは、我へと親指を立ててどこかへと走り去っていった。
あのグッドサインは、まるで今から戦地へと赴く戦友へと向けたもののようであった。
(頑張ってヨロイさん!僕は応援しているよ!)
彼が去った少しあと、アグライアとまだ抱き合っていると、背後から2つ、声が聞こえた。
その声は非常に冷たく、抑揚もない。まるで全く感情が籠っていない声だった。
「へぇ、ライアちゃんにもそういうことしちゃうんだ。へぇ…そう…」
「ヨロイ様…なにを、しているのですか?」
・ヨロイさん
いまから戦地へと赴く人。まだ童貞。「まだ」童貞。
・ファイノン
いいぞもっとやれ。
・アグライア
アンケートでルアンを突き放して一位の人。そのまま最高速度でぶち抜いてください。
・謎の声2つ
アンティリン花の匂いが西風に乗ってきてますね。
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