一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
我は流浪の身である。
故郷へ帰ろうとしたところ、何者かに止められてしまった。
「私悲しいな~。二回も黙って私の元から離れようとするなんて、ね」
__む、爻光殿ですか。
「うん、そう。あなたの友人爻光さんよ?」
後ろを振り向くと爻光殿が後ろに立っていた。
その立ち姿はいつもと変わらず優雅であるが、その瞳は心なしか澱んでいた。
「それで?貴方がここを離れようとしていたのは視えていたけれど、どうして黙っていたのかしら?」
爻光殿から発せられる空気がより冷たいものへと変わった。
斯様な圧を感じたのはピノコニーで死のミームと対峙した時以来である。
__申し訳ない。爻光殿は職務で忙しいかと思い…。
「甲冑さんのそういう所、好きなんだけど今はいいの!全く…こっちがどれだけ焦ったか」
どうやら何か怒らせてしまったらしい。
ま、マズイのである。
我が内心焦っていると建物内にアナウンスが鳴り響いた。
『まもなく船が発車いたします。まだお乗りでないお客様は至急…』
__む、爻光殿。そろそろ我は行かねばなりません。
またお会いした時はよしなに。
この船を逃してしまえばチケットの金は戻ってこない。
しかも見切り発車でチケットを取ったせいで今の我は最低限の金しかないのである。
我が船のドアに体を向けようとした瞬間。
ガシャンという音と共に我は地に伏していた。
孔雀の羽を模した何かが我の足を掬い取っていたのだ。
無論、こんなことができるのは彼女しかいないのである。
__爻光殿?我、これでは船に乗れぬのですが…
地に伏している我にしゃがんで見下ろしている爻光殿は、いつもの余裕のある表情ではなくなっていた。
「‥絶対に行かせてあげないわ。
また私を置いていくなんてさせるものですか」
目は先ほどより澱み、声音からは少々の恐怖が滲んでいる。
ジリリリリ…
『船が発進いたします。安全バーの内側にお下がりください』
無機質な音と共に、船が動き出す。
我の希望は無常にも去っていったのである。
「ほら、これであなたはここから出られないわね?」
恐らくであるが、爻光殿は超怒っているのである。
これ、最悪死ぬのでは?
我をニコニコと見つめる彼女の姿が、
どうにも我には悪魔にしか見えなかったのである。
「あら、命数の動きが…甲冑さん、
生活に困ったらここにおいで?いつで…」
パッ、っと爻光殿は消えてしまった。
彼女が突然消えるのは特段珍しいことではない。
が、彼女は一枚の札を置いていったようである。
それにしても、困ったものである。
カンパニーに問い合わせたら返金くらいはして貰えるであろうか…