一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話   作:しいたvol.3

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番外:一方そのころ

時は鎧の男が仙舟に滞在していた時に遡る。

 

具体的に言えば、大規模な豊穣の忌み物の進行が終わり、爻光と鎧の男の親交が深まったころ。

 

 

我、流浪の身である。

 

しばらく前に戦争が終わったおかげか、この仙舟は平和を保っていた。

この仙舟には美食や伝統的な舞など、まるで飽きを感じさせないほど文化にあふれている。

 

しかし、我は強さと美女を求めて放浪する者。

美女は見つかるやもしれぬ。しかしながら平和に身を置けばだんだんと体は鈍ってしまうのだ。

 

ピピピピ…

 

そろそろ仙舟を出ようと思っていた矢先、我の携帯が音を鳴らした。

普段あまり音を鳴らすことはないのだが、通知が鳴る時は大抵退屈を解消してくれる。

 

故に、我は非通知のその番号の電話を取ることにした。

 

__もしもし、営業なら他所に行ってほしいのであるが。

 

『今、仙舟に居ますね』

 

__ルアンか?番号は教えていなかった気がするのであるが。

 

『ヘルタから聞きました。研究のデータを渡したら一瞬でしたよ』

 

電話の相手はルアンだった。

色々と面倒なことになりそうだったので、我は彼女と手紙のみでやり取りしていたであるが…

どうやら、ヘルタ殿にとって我の個人情報は研究データ以下だったらしい。

 

まぁ天才であるルアンの研究結果なんていくら金を積んだところで手に入らぬし、事実そっちの方が価値がありそうであるが。

 

『それより、今仙舟にいますね?』

 

__まぁ、そうであるが…

 

『私も用があって今滞在しているのです。劇を見ながらお茶でもどうでしょうか』

 

__構わない。ルアンが好きそうな店を探しておいたのだ。

 

我は彼女へ店の場所を伝えると『数刻後に出向きます』とだけ言って電話を切った。

 

…それにしても、彼女はどうして我の場所が分かったのであろうか。

また鎧の掃除が必要そうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究目的で訪れた仙舟にて、偶然彼がここに滞在していることをGPSで知った。

 

かたや旅人。かたや、学者。

その関係上、彼と私は会う機会が少ない。

 

故にこのような機会はきちょうであるのだ。

逃すまいとヘルタから手に入れた電話番号にかけてみると、彼は私の誘いを快く承諾した。

 

まだ研究が残っているためすぐには向かえないものの、彼と会えるというだけで足取りは軽くなった。

早く終わらせようと目的の施設へ向かっていると、正面からある人物が歩いてくるのが見えた。

 

白髪に整った顔立ち。孔雀を基調とした服装。

あの人は…確か、仙舟「玉殿」の将軍だっただろうか。

 

そんなことを思いながら彼女の横を通り過ぎようとしたとき、ふと彼女と目が合った。

 

「ねぇ、あなた」

 

「…なんでしょうか」

 

「もしかして、天才クラブのルアンさんかしら?昔どこかで顔を見たことがあるの」

 

「ええ、そうですが。そういう貴方は戎韜将軍様でしょうか?」

 

「あら、知っていてくれたのね。嬉しいわ♪」

 

彼女はにこやかに話しかける。

しかし、彼女の瞳が見据えるのは目の前の私ではなく、何か別の物を見ている気がした。

 

「ねぇ、ルアンさん」

 

「なんでしょうか。申し訳ありませんが、急いでいるので手短にお願いします」

 

「おかしなことを聞くのだけれど…あなた、大きな鎧を着た人とお友達じゃないかしら?」

 

…?

私の記憶の中でその単語に引っかかるのはあの人しかいない。

しかし、彼女はどうしてそれを知っているのだろうか。

 

「…ええ、居ます」

 

「やっぱり!私の眼がそう言ってたの。甲冑さんのお友達だってね!」

 

どうやら、目の前の彼女はあの人のことを知っているらしい。

まさか仙舟に滞在しているときに将軍とまで関りを持ったのだろうか。

 

彼女は私が彼の知人であると知るやいなや、彼についての話をしてきた。

彼との出会い。彼が贈ってくれたプレゼントなど…

 

どう考えても、彼の事を好いているようだった。

 

「あ、ごめんなさい。私だけ喋り過ぎちゃって」

 

「…大丈夫ですよ。まさか、彼があなたのような美しい人と知り合っているとは思いませんでした」

 

「…『同じ屋根の下で寝食を共にした仲』としても、意外です。彼はあまり私以外に興味を示しませんから」

 

「…へぇ」

 

先ほどまでにこやかだった笑顔に、少しだけひびが入った。

 

「あら、そうなのね。私も『彼と命を預けあった関係』だけど…。まるであなたのことを教えてくれなかったのよね」

 

「私の話が虚偽であると?」

 

「いやね、そんなわけないじゃない。私はただ「話を聞かなかった」って言っただけよ?」

 

「…」

 

「…」

 

 

「あら、ルアンさん。あなた凶兆が出ているわよ?しばらく親しい人との接触は避けた方がいいわ」

 

「結構です。私は不幸が訪れようと彼と添い遂げると、そう決めていますから」

 

「随分と重いのね。自由に旅する彼には随分な重荷になりそう」

 

「ふふ。彼は優しいですから。旅する先で勘違いさせることが多いようですね。特に関わって日の浅い女性たちからは理解を得られずに勘違いされて苦しいとぼやいていました」

 

「いくら年月を過ごしてきたって、大事なのは中身の濃さだとは思わない?過去の思い出をいつまでも引きずって言い寄られると、彼も困っちゃうわよね」

 

 

「ふふふ」

 

 

「あはは」

 

どうやら、私と彼女はもう少し議論しなければならないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、どちらが優先なのですか」

 

しばらく経ち、我は約束の茶屋でルアンを待っていた。

 

しかし、やってきたのはルアンだけでなく爻光殿も一緒だった。

心なしか、二人の眼は昏かった。

 

我が不思議に思っていると、彼女たちは我に状況を説明してくれた。

どうやら道中でたまたま知り合ったらしく、共通の知人である我の話になった、と。

 

そういうわけで、この状況である。

なぜかルアンと爻光殿どちらを優先するかという話になっていた。

 

正直両方と言いたいのだが、そんなことを言えば彼女たちから鎧をベコベコにされてしまうに違いない。

我は知っているのだ。この状態の女性に下手なことをすれば死ぬと。

 

しばらく前に訪れた若い夫婦のことで、男の方が浮気をして相手の女性が包丁で男をめった刺しにしたとか。

ああいう時、女性たちが使用する包丁は「やんでれそーど」というらしく、どんな男も死ぬしかないのである。

 

「もちろん長年人生を共にしている私であることは間違いないのですが、あなたからの言葉がなければ誰かさんは納得しないでしょうから」

 

「甲冑さん?この子よりも一緒に背中を預けて戦った私の方が大切よね?」

 

__ルアン。一つ聞かせてくれ。もし、もしだ。我が…

 

「もし、なんでしょうか?」

 

ルアンは既に謎の注射器を手に持っていた。

中の液体は不気味なピンク色で、明らかまともでないのは目で見て明らかである。

 

「ちなみに、私を選ばなければ今ここでこの薬をあなたに打ち込みます」

 

__効果は?

 

「恒久的に私があなたの精神を操ることができるようになります」

 

__しまえ。なんというものを持ち歩いているのだお前は。

 

「怖いわね~。甲冑さん、こっちにおいで?」

 

爻光殿は変わらず優しい笑みでこちらへ手招きしている。

正直今の状況だと、彼女が女神に見えて仕方がないのである。

 

「そうやって彼を唆すのは辞めてください」

 

「あなたが物騒な手段をとるのがいけないんじゃないかしら?」

 

「…あなた」

 

「甲冑さん」

 

「「どっちが、あなたにとって一番なの?(なのですか?)」」

 

 

 

 

 




この後めちゃくちゃ逃走した。
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