一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話   作:しいたvol.3

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次回最終回。
最近ヒアンシーがすり抜けました。




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我、流浪のものである31

暫く宴の準備をした後、他の黄金裔たちを集めていよいよ宴が始まった。

 

こうして全員と食事を囲む機会は何時ぶりであろうか。

改めて我もあの英雄譚を最後まで見届けたのだと実感した。

 

カイザーの言葉と共に盃を掲げると、皆思い思いの仲間と話している。

 

久しぶりに酒を飲んだものだ。

酒自体嫌いではないのだが、他が酔うなか我だけ酔えないために普段は飲まないのである。

 

「おっ、今回の主役様じゃ~ん。せっかくだしあたしと話そうよ」

 

誰と話そうかと立ち尽くしていると、横から声がかかった。

 

「せっかくおじさんが来たのを祝う宴なんだから、偉そうにふんぞり返っとかないと!」

 

__我がそういうタチではないのは知っておろう、セファリア。

 

「ちぇっ、相変わらずつまんないよね~。固いのは鎧だけでいいのに」

 

我に声をかけたのはセファリアだった。

彼女とも過ごす機会は多かった。まだ少女の時によく面倒を見ていたものである。

 

「ま、少ししたらここから出るんでしょ?はぁ…裁縫女も引きこもり姫も相手するの面倒なんだから」

 

__面倒をかけるな。その代金は輪廻中に我から盗んだあれこれで清算したということにしてくれ。

 

「えーっ…他にも貰えないとやる気でないなー」

 

明らかにこちらに何かを寄越せという顔ですり寄ってくるセファリア。

毎度思うのだが、彼女の恰好は少し煽情的すぎるのではないであろうか。

 

しかし、我は数多の輪廻を超える中でもはや何も感じなくなっていた。

たとえセファリアの脚で首を絞められてもご褒美でも何でもないのである。

 

決して誘惑に負けたわけではないのだが、我の持つ宝の一つを彼女に渡すことにした。

 

__致し方ない。代価としてこれを渡そう。

 

「…なにこの縄。すっごい禍々しいオーラを纏ってるんだけど」

 

__その縄は巻いた相手を強制的に無抵抗状態にする縄である。

 

「何そのコワイ縄!どっから手に入れたのさ!」

 

__友人から没収…もとい貰い受けたものだ。あのままであると我がソレに巻かれそうであったからな。

 

とんでもない呪物だったので没収した後処分に手を焼いていたものである。

 

「あー…なんとなく察した。これ他の人に見つかったら面倒そうだな~」

 

「ま、何かに使えるかもだし貰っておくよ。よく考えたら結構使い道が…フフフ」

 

__気に入ったのならよかった。我も鎧の中身がまぁまぁ圧迫されていたのでな。

 

「相変わらず不思議な鎧だね。おじさんのトレードマークみたいなもんだけど…それ、どんな効果があるの?」

 

__しばらく前にアナイクス殿に調べてもらったことがあるが…どうであったか

 

「なら、私本人が説明しますよ」

 

__おお、アナイクス殿。こうして見えるのは久方ぶりであるな。

 

「ええ、お久しぶりですね。私もその鎧についてはずっと気になっていたのです」

 

「樹庭の坊や、そんなことまで調べてたんだ?確かに気になるけどね」

 

「…コホン。この鎧にはいくつか効果がありますが…まず目を引くのはその圧倒的な硬度と再生能力です」

 

__確かにな。この鎧を着れば傷は早く治るし身体能力も向上する。さらに鎧は固く自己修復機能もあるのである。

 

「まさにその通りで、ヨロイさんにこの能力が加われば強さは相当なものです。事実、あなたの「飛翔する幣」でも逃げきれていなかったでしょう」

 

「どーりでいつも逃げ切れないわけだよね。まったくおじさんったら、すぐ私の事捕まえて説教するんだから」

 

サフェルがげんなりした表情でこちらを見つめてくる。

 

実際、彼女を捕まえることは我にとって造作もないことだ。

それは我の身体能力が高いのもあるが、彼女の逃げるときの癖を掴んでいるからである

 

「次に、その収納能力です。中は異空間のようになっており、確認した限りでは積み込める荷物はおよそ大地獣1体分で」

 

「うっそ!そんなに入るの!?」

 

__まぁ、確かにほとんど荷物の収納に困ったことはない。しかし、そこまで入るとは…

 

「ええ、まさに神の如き鎧ですよ。いったい何処の誰が作ったのでしょう」

 

__生憎と、我は知らぬ。これはかつて死合ったものからの贈り物であるからな

 

「元の持ち主は死んじゃったって事?」

 

__我が殺したのでな。それはもう強かったのである。硬いし攻撃は重いしで、刺し違えてようやく殺せた。

 

「いや、それで勝ってるのがおかしいんだけど…なんで鎧なしで勝ってるのさ」

 

「おそらく、適正の問題でしょう。かつて私もこの鎧を着ましたが、彼ほどの能力の向上は観測できませんでした」

 

アナイクス殿の分析によれば、この鎧は装備する者によって能力の幅が決まるようである。

まだデータが狭いためにどうも言えないが、おそらく我が引き出せている能力が最大らしい。

 

「選ばれし者ってことじゃん!おじさんってやっぱ凄いんだねぇ」

 

「しかし、それだけでは彼の能力に説明がつかないことは多い。強さの大本はその鎧ではなく積み上げられた技術によるものでしょう」

 

__そういってもらえるとは行幸であるな。確かに鎧も一部ではあるが、我が目指す強さとはまた違うのである。

 

「きっとそういう生き方をしてるからおじさんは人から好かれるんだろうね。だから裁縫女と引きこもり姫も剣に…」

 

__む?剣がどうした。

 

「あ、い、いや!何でもない何でもない!今の話やっぱりなし!」

 

「…明らかに動揺していますね。彼の剣に何か後ろめたいことでもあるのでしょうか」

 

セファリアの眼が急に泳ぎだした。

言うまでもなく、我の剣に関してなにか隠し事があるのであろう。

 

__セファリア。正直に話せ。

 

「やだ!言ったらあたしの身が危ないの!じゃあね!」

 

ダダっという効果音が聞こえそうなほど急いで逃げていくセファリア。

 

「追わなくて良いのですか?」

 

__追ったところで、あの様子では話せないであろう。ところでアナイクス殿はなにか思い当たることはあるのであろうか?

 

「いえ、特には…」

 

__そうであるか。では、他の知っていそうな黄金裔に聞いてみるとしよう。失礼する。

 

「ええ、私も荒笛と会話してきます」

 

我はこの剣のことについて知っていそうな人を探すことにした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その剣にキャストリスやアグライアがなにかしていたかだと?」

 

暫く探していると、ファイノンと仲良くザクロジュースを飲んでいるモーディスに聞いてみた。

モーディスはファイノンと共に顎に手を当てしばらく思考していたが、ふと何か心当たりがあったようで、我へとそのことを話してくれた。

 

「そういえば、その剣の模様は最初から入っていたものではなかっただろう。紫と金と言えば、彼女たちの象徴する色ではないのか?」

 

__確かに。これは我が一度死んだ後に置いてきた剣をアグライアが鍛冶師に打ち直させた際につけたものだと記憶している。

 

「うーん…確かにそんなことがあったな。もう少しで何かが思い出せそうな…あ!思い出した!」

 

しばらくうんうんと悩んでいたファイノンが突然思い出したように顔をぱっと明るくさせた。

どうやらこの模様について知っているようである。

 

「たしか君が自殺した後、しばらくしてからアグライアとキャストリスさんが一緒になって鍛冶屋に行っていた気がするよ」

 

__そこで何をしていたかまでは分かるか?ファイノン

 

「いや、そこまでは知らないな…でも、結構な回数見かけたよ。ちょっとアグライア達の顔色も悪かったような…」

 

__そうか。しかし、かなり情報は進んだと言える。感謝するぞ、ファイノン。モーディス。

 

しかし、アグライアとキャストリスか…身近過ぎて気づかなかった。

またの機会に直接本人たちに聞いてみるとしよう。

 

我はしばらく、仲間たちと共に宴を楽しむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おい、救世主」

 

鎧の男が二人のもとを去ったあと、しばらくしてモーディスがファイノンへと話しかけた。

その表情はどこか呆れを含んでいて、それでいで彼への同情へも感じられる。

 

「なんだい?まさか僕があの剣について話すべきだった。なんて言わないだろうね」

 

「君もあの剣については知っていただろ?話さないでおくのが僕たちのためだ。そうだろ?」

 

「…フン」

 

「とんだ面倒だ。あの者がここを出た時、おそらくもっと面倒になる」

 

「確かに、彼は外でも随分女性に好かれていそうだしね。もちろん、相棒も」

 

二人の英雄はともに空を仰いだ。

その顔にはこれから苦労するであろうあの男への同情がくっきりと浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__そろそろ、ここを発つとしよう。世話になった。

 

宴の後。

ともに過ごした黄金裔たちとこの地に別れを告げる時が来た。

 

彼らにそのことを告げると、我を送るために皆集まってくれた。

 

「もう行くのかい?今度来るときは相棒と一緒にね」

 

ファイノン。彼が背負ってきた苛烈な運命を、我は忘れない。

訪れた黎明の先で、彼とその故郷が永遠に幸せであることを願う。

 

「ヨロイ様、お体に気を付けてお過ごしください。いつでもお待ちしています」

 

キャストリス。冷たかったその手は、もう既に暖かさを知った。

沢山の生に囲まれた場所で、彼女は穏やかに過ごすのであろう。

 

「先生との別れは名残惜しいですが…またお会いできる日を楽しみにしています」

 

アグライア。最も始まりと終わりで関係性が変わった人物。

教えられたことは少ないが、少しでも彼女に影響したのなら実に光栄なことだ。

 

「ヨロイさんも、『また明日』ね?また、約束守ってくれなきゃ怒っちゃうんだから!」

 

「「「また明日!」」」

 

トリスビアス。確かな明日を求めて初めて火種を追った彼女は、西風の果てへと辿り着いた。

「また明日」。この世で最も偉大な予言は、きっと銀河を前へと向かせる。

 

「再び見えた時、共に盃を交わすとしよう。クレムノス式の方法で迎えようではないか」

 

モーディス。死せども幾度となく立ち上がるその不屈の精神は、戦士たちを奮い立たせる。

ただ野蛮なだけではない「戦い」の在り方を我は心へと刻み付けた。

 

「あんまり無理しちゃダメですからねっ!ヨロイたんはいっつもやり過ぎなんですから」

 

ヒアンシー。医師としての優しさだけではなく、確かな心の強さを持つ者。

彼女がもたらす陽光のような優しさは、病める人々を包み込むように治療していくであろう。

 

「知恵が必要でしたら、いつでも協力しますよ。少し他の相手は面倒ですがね」

 

アナイクス。彼の飽くなき知恵への探求は、ついに鉄墓にすら届いた。

果てしない知恵の中で、先人を超え、後進へと託す輪廻へとその名前を残した。

 

「キミが帰ってきたときは宴を開こう。またキミのために歌わせてくれ」

 

セイレンス。最も多く背中を預けて戦った戦友だが、もはやその剣は必要ない。

敵を殺すのではなく、仲間のために旋律を紡ぎ、歌を届ける。

 

「お前は僕の臣下であることを忘れるな。必ず帰ってこのカイザーに再び忠誠を誓うんだな」

 

ケリュドラ。オンパロスきっての皇帝であり、暴君。

しかし、その残酷さは必要なものだ。銀河へとオンパロスが進出した時、必ずその名前を轟かせるであろう。

 

 

__ああ、また会おう。英雄たちよ。貴殿らの雄姿はしかと見届けた。

 

彼らに見送られながら、我の視界は白へと染まった。

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