一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
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幕間 ①
これは、ピノコニ―にて開拓者たちと邂逅するよりも前の出来事である。
「言い残すことはある?」
__好きだ。我と結婚してはもらえないだろうか?
そして、星核ハンターとの奇妙な縁ができた時のことでもある。
・ ・ ・
これは、今から数琥珀紀前、ある壊滅に身を堕とした男の話だ。
"彼"にはかつて家族がいた。
幼いころから環境に恵まれ、裕福だった親の影響もあって何不自由のない生活を送ってきた。
敬虔な「調和」の信者であった親の影響を受け、彼自身もまた「調和」を信仰した。
彼には天賦の才があった。誰よりも深く祈り、讃美歌を美しく歌う彼の手には、いつの間にか「力」が握られていた。
生き物の「波長」を見出し、魂の「芯」を見る力を握った彼は、その眼に絶望した。
”ああ、人とはなんと汚らわしい事か”
純粋すぎた彼の魂の輝きには、周りの人々の持つわずかな穢れすら許せなかった。
既に神父となっていた彼は、あらゆるものを燃やした後、自身すら燃やしてこう言った。
”せめて、この哀れな穢れたちをすべて灰に。そして私はその灰から蘇ろう”
身は「壊滅」へと墜ち、家族を燃やし、街を燃やし、十字架を燃やした。
”灰の神父・ケイドス”
・ ・ ・
とうに燃え尽きた後のボロボロの教会跡の最奥に、一人の男がいた。
その背丈は只人からかけ離れ、異様なほど長い。
細身のそれは、焼き焦げた神父服に大きな中折れ帽子を深めに被っていた。その両手には斧が握られている。
紛れもなく、灰の神父そのもの。…しかし、その体はとうに致命傷を負い、腰元から折れた神像に背を預けて座り込んでいる。
そして、神父に剣を向けている男が一人。
__ここが教会だというのなら、祈りの一つでもするべきであろうか
「…ここに神は居ない。あるのは只の灰と燃えカスだけだ」
神父…ケイドスは続けて言う。
「…まさか、数刻の間に数十余りもわが身を滅ぼされるとは。さすがに間に合いそうもない」
__随分苦労した。だが、今回は我の方が上手であったな。
そう言って、鎧の男は神父の首を刎ねた。
ジジジジ…
何かが焼き切れるような音と共に、あたりの景色が燃える教会跡地から、都市の街並みへと変化していく。
ここは「憶質」が支配する記憶の星系、アスデナの数多ある星の一つ。
その中でも、かつて居た凶悪な人物や宇宙にとっての災害となった生物の記憶ばかりが集まる記憶域「ガドック」を持つ星、「負の記憶天体 ハンツⅨ」である。
・ ・ ・
__それにしても、随分厄介な敵であったな。まさか殺しても灰から蘇るとは…。
ビルが乱立する近未来的な都市の路地裏で、我は装備の状況を確認していた。
我、星神らの一瞥と童貞の卒業を求め、銀河を旅する者。
旅の途中にてこの星へと辿り着き、現在は次の星へと出発するための金稼ぎ兼、友人の手伝いをしている。
__鎧、剣共に損傷なし。…しかし、体力は随分削られてしまったな。さっさと帰って休むか…
「あら、あなたがそうなるなんて珍しい。やっぱり今回のは強敵だったのかしら?」
__ブラックスワンか。ああ、随分な。
そしてその友人と言うのが、たった今我の背後に突然現れた女性「ブラックスワン」である。
普通は何もないところから急に話しかけられると驚くものなのであろうが、彼女にとってはそれはよくある事だ。正直、一定の期間彼女と付き合っていれば勝手に慣れる。
彼女とはこの星へと来るよりも前の知り合いであり、その付き合いはそれなりに長い。偶然互いがこの星に居ることが判明したため、現在は彼女とタッグを組んでこの星で色々としているわけである。
占い師然とした見た目の余裕のあるお姉さまであり、めちゃくちゃタイプであったのだが、彼女が記憶体…ミームであると聞いた瞬間に我の気持ちは完全に潰えることとなった。
それは単純にミームが嫌と言うわけではなく、彼女に出会うよりも前にそれはもうバインバインで綺麗な黒髪をした御仁と出会ったのだが、そのミームの女に超痛い目を見せられたため、我はミームにトラウマがあるのである。
どうやら、ブラックスワンの知り合いではあるらしいのだが…その話をしたら彼女からも同情の眼差しを貰った。その黒髪の女はそういう存在らしい。
__君が直接赴くのは珍しいな。何かあったか?
「…あなたの帰りがいつもより遅れていたから心配していたのよ。少しだけね」
__…
「…悪いの?」
__い、いや全く!君のサポートがなければ我はここまでやれていない。いつも感謝している。
「…そう」
彼女は短く返してスタスタと我の横を通り過ぎると、空中にプカプカと浮いている一枚のカードのようなものを手に取った。
「光円錐」
彼女の所属するガーデン・オブ・リコレクションの技術によって作り出された、いわば一つの記憶媒体のようなものだ。
現在、ブラックスワンはこの記憶域にある様々な記憶を集めているらしい。
しかし、この星に集まる記憶は随分と物騒なものが多い影響か、少なからず記憶の中に入り込んで色々とやらなければならない場合が多い。
そこで、我の出番と言うわけである。
我の主な仕事は危険な記憶内での脅威の排除、もとい憶質が漏れて都市内に具現化するのを防ぐこと。要は修行ついでにかつての悪者を倒す仕事だ。
彼女はそのカードをくるくると指先で回してしばらく見つめた後、どこかへとしまった。
「十分ね。報酬はいつもの所に振り込んでおくわ…それと、もう一つだけ伝えておくことがあるの」
__む?なんであろうか。
彼女にしては珍しく何かを警戒するような表情で、真剣に口を開いた。
「恐らく、数日以内にこの星に星核ハンターが来る」
・ ・ ・
星核ハンター。カンパニーから多額の懸賞金を懸けられている特級の実力者集団。
銀河の各地を襲撃しては星核を盗み出し、運命の奴隷である「エリオ」の”脚本”に従う者達…らしい。
しがない銀河の旅人である我はその程度の知識しかないが、それでも彼らが訪れた場所の惨状くらいはある程度知っているつもりではある。
疲れからか、なんとなしにふらっと立ち寄った洒落たバーでカクテルをゆすりながら一人考えてみる。
『恐らく狙いはこの星の特殊現象を引き起こしている星核でしょうね。…どこにあるかは分からないけれど、あの狩人たちは必ずそれを盗み出す』
もしブラックスワンの話が本当だというのなら、それは一大事なのだろう。身を案じるならたとえ狙われているのが星核だけだったとしても早く星から離れた方が良いのだ。
…しかし、気になる。その星核ハンターとやらの強さが。強さを求める者として、明らかな強敵との闘いというのは非常に魅力的な餌である。
__どうしたものか…うーむ…
我が腕を組んで一人バーで唸っていると、隣に座る一つの影があった。
「隣、失礼するわね?」
__ん?ああ…どうぞ。斯様な鎧の隣故、邪魔にならなければですが。
彼女は一通りマスターと注文のやり取りを終えると、再びこちらに話しかけてきた。
「ねぇ」
ひとまず我も考えるのをやめ、声の主の方へと軽く視線を向けた。
そこには、美女が居た。奥深さのある紫色の髪に、異常なまでに整った顔立ち。座っていてもわかるスタイルの良さ…
頭に雷が落ちたような衝撃だった。この世にこんな美女が存在しても良いのだろうか?
「不思議な鎧ね。少し、私と話してくれないかしら?」
微笑みと共に差し出された誘いに、我は闘いに生きる者として、極めて冷静に返答をすることにした。
__ええ、喜んで。もしよろしければ我と婚姻を結んではもらえないでしょうか?
・ヨロイさん
出会うお姉さん大体ヤバいやつ。時系列的にはルアンの実験(監禁)から解放されてしばらく経った頃。目の前のお姉さんが美しいのでもはや星核ハンターとかの悩みは消し飛んだ。
・ブラックスワン
そこそこ長い友人。この星にいる間はヨロイさんとバディを組んで行動をしている。ごく稀にヨロイさんの記憶を覗き見するときがあるらしい。