一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
感想・ここすき等していただけると作者が頑張ります。
「…それで、あなたはここで気絶していたというわけね」
何者かに体を揺すられる感覚と共に、我は目を覚ました。
どうやら気絶していた我をブラックスワンが見つけ出したらしく、ひとまずブラックスワンに状況を説明しているところである。
__我はどのくらい気絶していたのだ?ここは室内だから時間が分かりにくくてな。
「少なくとも、最初の警報が鳴ってからは3システム時間は経過しているわ」
__中々長く寝ていたようであるな。蟲はどうなった。
「すでに全滅を確認しているわ。少なくとも、この都市で実体化したスウォームは全て記憶に戻っている」
__なら、ひとまずは安心であるな。肝心な時に救援に向かえず申し訳ない。
「危険性自体も私一人で十分対処できる段階だったし、問題はないわ。…それにしても、紫色の髪に蜘蛛の装飾のコート、それにあなたを気絶させる能力…ね」
彼女は顎に手をやりつつ、壊れたバーのカウンターにあった椅子に腰かけた。
恐らく彼女は我の隣の席に座っていたあの麗人のことを考えているのだろう。実際、とても一般人とは思えない点がいくつかあったからな。
__ああ。我らは一度あの蟲どもに襲われたが、彼女も相当の実力者だった。刀と銃器を使っていたぞ。
「そう…それじゃあ、その人はこんな顔をしているかしら?」
何処からともなく彼女が取り出した一枚の紙に写っていたのは、まぎれもなくあの時の女性の顔だった。
__そうそう、まさに彼女である!この美しい瞳と整いすぎた顔立ち、そして…む?
彼女の写真の下には「カフカ」と彼女の名前らしき文字と、仰々しく書かれた「星核ハンター」「星間指名手配」「WANTED」の文字があった。
__待て。
「まだ何も言っていないけれど?」
__君が言おうとすることは目を見れば分かるのだ。
「なら言う必要はないのね。貴方は少し愚かだってこと」
__もう言っているのである…はぁ。
我ながら馬鹿馬鹿しい。つまり、つまりだ。
我の隣に座っていた女性は星核ハンターで、しかも我はその女性に初対面で結婚を申し込んだと。
いや、別に相手が問題だとか、申し込んだことに全くの後悔はない。…ただ、少々場所とタイミングが悪すぎただけである。
暫くルアンの研究所に閉じ込められていたせいで世俗のことを思っていたより忘れているようである。
あの場所では修行かルアンとの話くらいしかしないため、本当に外の話をしなかったのだ。
__それで、君が危惧していた通り星核ハンターがこの星に来たわけであるが…今のところ、星核関連での事件は起こっていないか?
「少なくとも、私が集められる記憶の情報の限りはそうなるわ。ただ彼らの行動の傾向からして、動くのも時間の問題でしょうね」
まぁ、星核ハンターが何の用もなくアスデナの辺境にあるこんな星に来るわけがないのだが。
娯楽や休息目的で万一出かけるとしても、この星系にある宴の星にでも行けばよいのである。
__一つ聞いてもよいか?具体的に、この星の星核がなくなればどうなる?
「…恐らく、この星の記憶域に存在するいくつかの「最悪の記憶」が同時に復活するでしょうね」
ブラックスワンは手のひらほどの大きさの薄紫色の結晶を取り出すと、それを握ってパリンと割った。
瞬間、彼女の指先から我らの今いる都市の外観がうっすら浮き上がった。
「この都市、ひいてはこの星にある記憶域『ガドック』に存在する最悪の記憶…その正体は定かではない」
「けれど」と付け足し、彼女は浮かんだ都市の幻影をぐにゃりと歪め、この星の周りの星系ごと映した模型へと成形した。
「実体化という厄介な特性を持つこの記憶域において、その記憶の解放による被害は…最低でも星単位でしょうね」
__なれば、やることは一つであろうな。
__星核をあちらの手に渡らないようにする、
「同感ね」
彼女はふたたび幻影を都市へと戻すと、浮き上がった都市の外観の内、最も大きく高い時計塔を指さした。
「私の干渉が届かない場所はこの場所の周辺に集中しているわ。星核と記憶の保管はここで行われているでしょうね」
記憶域の中では相当な力を持つメモキーパーが干渉できない場所と言うのは、それだけ分かりやすく目立つもののようである。
「私たちは政府の人間ではないし…対応は後手に回るでしょうね。それに、今回の実体化の騒動も少し気になるところがあるわ」
__そうであるな…なれば、暫く別行動としよう。我は少し頼れる伝手を使ってみる。
「ええ、また会いましょう」
そう言うとブラックスワンはまたどこかへとふらっと消えて行ってしまった。
__さて、誰か一人くらいは来てもらえると助かるのであるが…
手を貸してくれそうな友人の心当たりを探しつつ、我はバッテリーの切れかけたスマホを操作するのであった。
・ ・ ・
おまけ
「…あら、随分面白い記憶を持っているのね」
__そうであるか?まぁ確かに、我が旅の途中で出会う友たちはどれも個性が強いが。
__まぁ…我の記憶程度であれば、好きに覗いてくれて構わないのである。いつも助かっているからな。
「天才クラブ、星穹列車のナビゲーター、仙舟の将軍二人、巡海レンジャー…調和の歌姫も」
__銀河を渡り歩いていると、まぁ様々なことに巻き込まれるものだ。命を落としかけたことも数えきれないが…それによって繋がれた縁は、何よりも大きい。
「それにしても…随分と、その、執着されているのね…」
__ルアンの事か?確かに彼女の実験に捕まるとしばらく外には出れんが…慣れたら大したことはないのであるぞ。
「私が言っているのはその人の事だけではないのだけれど…まぁ、いいわ」
__?
「今後背中から刺されないことを祈ってるわね。おとぼけさん?」
__安心してほしいのである。我の鎧は滅多に刃物は通さんからな!!
・ブラックスワン
え、何コイツ執着され過ぎ…こわ…。しかも無自覚。
・ヨロイさん
ルアン以外の人物からのデカすぎる矢印にあんまり気づいていない。背中から刺される(確定)