一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
毎度ありがとうございます。
感想等いただけると作者が頑張って癖を絞り出します。
昔のことを思い出した。
あの星、あの帝国、あの場所で…
夥しい数の蟲を、ただひたすらに斃していた時の事を。
駆け、飛び、殴って蹴って斬って…殺して、殺して。
ただそれだけの日々。終わりなんて見えなかった。
「…んで、ようやく帰ってきたってわけね」
『申し訳ありません。銀狼』
「ん、別にいーよ。カフカも特に気にしてなかったし」
この星についてすぐ、私たちはスウォームの群れに襲われた。
本当はすぐにカフカと銀狼たちと合流するはずだったんだけど…さすがに数が多すぎて、そういうわけにもいかなかった。
「それに、カフカもなんか楽しそうだったしね~」
『…カフカが?』
「結構珍しく、本当に楽しそうな顔してたよ。割と久しぶりじゃない?」
『…ええ、彼女と別れてからは、彼女の心配ばかりでしたから』
そう…あの、灰色の髪の女の子。
今は記憶を失って、あたしたちとは別行動をしているけれど…星核を取り込んで、今は星穹列車のナナシビトとして活躍しているらしい。
カフカはああ見えて結構心配性だ。この前も仙舟であの子と話してたって言ってたし。
そのカフカが、何をそんなに楽しそうにしているんだろう?
『銀狼、カフカが楽しそうにしている原因はわかりますか?』
「私にもそれ気になったんだけど、なんにも教えてくれなかったよ。ただ『楽しくなりそうだ』ってだけ」
「カフカがあんな顔になる時って、大抵強い敵がいる時とか、よほどスリルを感じる状況に居る時なはずなんだけど…」
『危険?エリオの脚本と、銀狼からの情報にはそのようなものは…』
「そうそう。だからこそ不思議なんだけどね」
あたしたちが行動するときは大抵、エリオの脚本に沿って行動する。それがたとえどんなに不思議な内容でも、結果的にはそれ相応の対価、結果が訪れる。
「ま、あくまで危険じゃないってのは私が今手に入れた情報の中だけだし…油断せずにね」
『分かっています。』
決行が二日後。場所はこの都市で一番大きな時計塔、その地下。
星核が隠されているのはそこだ。
「んじゃ、決行日は自由にしときなよ。それまでには情報ももっとたくさん手に入ってるだろうし」
そう言って、銀狼のホログラムは消え去った。
その場に一人取り残されたあたしは、ふと空を見上げた。
この星には衛星が三つある。そして、それらはこの星の夜を鈍く照らしていた。
”鮮烈な出会いと共に、一本の救いの糸が君の前に垂れる”
”そしてそれを君は掴み、糸は君をもっと広い所へ連れて行くだろう”
”糸は君に太陽の如き輝きを見せ…その後、君は再び戻ることになる”
脚本と共に、エリオはその「予見」をあたしに告げた。
気になることは色々とあるけれど…とにかく、あたしは動くしかない。
・ ・ ・
__まぁ、待て。少なくとも今我に敵意はない。いかんせん剣も置いてくるほどの些細な用事…故、我には今この鎧しかもっていない。
__だから…その、なんだ。その体から出ている炎をちらつかせるのをやめてはくれまいか?
『…』
ブラックスワンと別れてから数システム時間後。我は一度自身の拠点へと戻り、ある程度伝手に連絡を終えた、そのすぐ後である。
朝から何も食っていなかった我は適当に街をぶらつき、飯を食おうと軽く外に出た。
…すると、なんとビックリ路地裏に謎の白い甲冑がチラッと姿を見せたのだ!
本当にチラッとしか見えていなかったが、超カッコイイ鎧だったため後を追跡。そして栄えている都市部からは少し離れた路地裏で、その尾行がバレたわけである。
お相手さんは随分お怒りの様で、それはそれはまたカッコイイ炎をチラつかせてこちらを威圧してきている。
クソっ!炎が出る機能付きの甲冑とか羨ましいのである!我も欲しい!
…まぁ、おふざけはここまでにするとして、この目の前の…鎧?を追跡したのはもう一つ理由がある。
__星核ハンター・サム…まさか斯様な場所で見つけようとは。先も言ったが、今は見逃してはくれまいか?口は堅い方であるぞ
先ほどまで集めていた星核ハンターの情報の中に酷似した人物だったからだ。
あそこまで目立つ見た目はあまり見ないからな。
『承認できかねます。見知らぬ鎧の方』
刹那、彼がグッと踏み込んだかと思えば、もう既に眼前にその鉄の拳が迫ってきていた。
ほとんど反射に近かったが、我はその拳を掴むことに成功。ってアッツ!!拳熱い!
__まぁ、落ち着け。本当に敵意はない。話す気もない。少し話でもしようではないか。
『…ッ』
互いに中の顔は見えないが、恐らく彼は動揺している。
…少しはこちらを警戒して、今は戦うのを辞めてくれると助かるのであるが。あちッ。
少しの間無言が続いた後、彼は拳を下げた。
・ ・ ・
「我のことはヨロイと呼んでくれ。皆からそう呼ばれている」
『…ヨロイ』
ヨロイと名乗った彼は、路地裏のゴミ箱の上に腰かけた。
「少し話そう。なに、別に君から何かを聞き出そうってわけではない」
『…』
まだ、分からない。警戒は解かない。
今はただ、彼と交戦するともっと面倒なことになりそうだったから、こうしているに過ぎない。
「それにしても…凄まじい速度と威力の拳であったな。しかもアレはまだ全力ではないのであろう」
「我は修行がてら星々を巡っていてな。君のような強者と戦えるのは嬉しい」
『…そうですか』
しばらく、あたしは彼の話を聞いていた。
ある星で出会った自滅者、調和のコンサートの護衛、豊穣の忌み物との戦い…
別に聞く義理なんてなかったけれど…なんだか、気になった。
そして、少しだけ苛立った。
『あなたは、何のために戦うのですか?』
気付けば、勝手に口が開いていた。
ただ戦いを楽しんで、それでも何かを犠牲にはしようとしない。
別に、闘わなくても生きていられるのに。
別に、闘わなかったところで、寿命があとわずかなわけでもないのに。
「そうであるな…我が戦うのは自分の為であり、闘う者のためでもある」
「強きものだとしても、何かに縛られていることがある。星神は運命に縛られ、天才は知識に縛られ、凡人は才能に縛られる。…そして、君もな」
「はるか強さの果てにいるというのに、それのなんと勿体なきことか。なれば我は…その鎖を少しでも緩めてやりたい」
『そのために…あなたは命を懸けるのですか?』
「無論」
「…無謀だと思ってくれても構わぬ。実際そうであるからな」
『…』
よく、分からなかった。
分からなかったけど、多分この人は…バカなんだと思う。
ピロン
「…おっと、時間の様であるな。話に付き合ってくれて感謝するのである。…さらば!」
『…ッ!!待ちなさい!』
ボーっとしている隙に、彼は姿を消していた。
残ったのはあたしと、まだ少しだけ焦げた匂いがする路地のゴミだけだった。
・ ・ ・
おまけ
__もしもし?
「もしもし、聞こえているかしら」
__聞こえている。何か月ぶりかの連絡であるが…もしや、また大きなセレモニーでもするのだろうか?
「ええ、今度ピノコニ―でかなり大規模な物をすることになったの。本当は、あなたにも観客として来て欲しいのだけれど…」
__また護衛として、か?
「…怪我の方は、もう大丈夫かしら」
__まったく問題ない。もともと我は鎧のおかげで随分と硬いからな。それに、再生も早い。
「…ごめんなさい」
__護衛として対象を守るのは当然のことだ。契約云々がなくとも、もともと我は君を守れて本望だ。
「スケジュールは、後でマネージャーに送らせておくわ」
__了解した。ただ、今いる星で少々面倒ごとが起きていてな…。
連絡がなかったら、そういうことだと思ってほしい。それでは。
「…待って、それって」
…ピー…ピー…
「…切れてしまったわ…」
「…せめて、あなたの安全くらいは祈らせて。調和の加護があなたを守りますように…」
・ヨロイさん
護衛対象の前でいっぱい銃撃を受けたことがある。まぁまぁ硬いうえに再生能力があるため見た目よりかはダメージなし。お金いっぱい貰えたから、ヨシ!
・???
罪悪感が凄い。もうあんなこと起こってほしくはないものの、実績凄い護衛がいるし、周りの動きが彼がいる前提なので雇わざるを得ない。頼むから断ってほしい。