一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話   作:しいたvol.3

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我、流浪のものである5

今から数年前、大規模な豊穣の忌み物と仙舟同盟の戦いがあった。

 

玉殿も戦争に参加し、将軍である私も戦地に直接赴いていた。

当然だが、戦場は過酷だ。

 

蛆のように沸く豊穣の忌み物に、多くいた兵も疲弊しきっていた。

これは、その戦いのなんてことのない一作戦。

 

あの甲冑の男が残した、一つの偉業の話。

 

 

 

 

 

 

「ほ、報告!昨日より起こった未曾有の大侵攻によって戦線は大幅に後退を余儀なくされています!」

 

初期は順調に言ったかと思われた討滅戦だった。

何人かの卜者と共に占った結果としても、なんてことのない戦況。

 

万全の用意を期し、かつ消耗も最小限に抑えられる作戦を決行したはずだった。

しかし、現実は残酷であった。

忌み物の数は日に日に増え、こちらの予想をはるかに上回る被害を出してしまった。

 

じわりじわりと戦線を押し戻され、ついにこちらの主要な拠点の目の前へと敵は迫っていた。

支援の要請は数日前に送った。

 

あと少し。

あと一日耐えられれば大規模な支援が来る。

 

しかし今の物資と兵力でその一日を耐えられるだろうか?

万事を見通すといわれたこの眼が、あまりに頼りなく思える。

 

「将軍!忌み物が迫っています!指示を」

 

兵の伝達役がそう告げてくる。

…やるしかない。

たとえ私の身が滅ぼうとも、この戦線は守り抜かなければ。

 

「全軍に伝えなさい。支援が来るまでこの地で抵抗を続けると」

 

こうして、永い戦いが始まった。

 

半日が経過した。

兵に疲弊が見える。

少し、戦線が下がった。

 

報告によれば、現在の兵はおよそ八千ほど。

対して忌み物の数は五万を超えるという。

 

あまりに絶望的。

諦めの色が漂っている戦場に、その甲冑の男は現れた。

 

「もし、そこの御前。ここは仙舟と忌み物との戦場であるか?」

 

唐突に表れた甲冑の男。

仙舟に属する軍の鎧ではない。

 

「…そうよ、それであなたはどこの所属かしら?」

 

「ただの雇われである。支援の軍とともに出発のしたのだが、いささか遅すぎてな。

我だけ抜けて先に参じた次第」

 

「…とりあえず信じるわ。本隊はあとどのくらいで到着すると思う?」

 

「おそらく半日はかかる。斯様な大所帯であれば十分早いが」

 

「して、我はあそこの前線で戦えばよいのであるか?」

 

甲冑の男が指さした先。

まさに夥しい数の忌み物と対峙する最前線があった。

 

「ええ、戦えるのなら隊に加わって。

正直、戦況はかなり厳しいのだけれどね」

 

自分を笑うように言った。

師を失ったあの戦いのことが過ってしまった。

占うことによって確定してしまったあの事実が。

 

「…貴殿の逸話は聞き及んでいる。して、その慧眼には我がどう映る?」

 

はっとして私は顔を上げた。

 

__視えない。

 

いや、彼にだけだ。

彼の吉凶だけが視えない。

 

果てのない深淵のような景色が、私の眼には映った。

それと同時に、今まで停まっていた占いの結果が大きく動いた。

 

__曰く、勝利であると。

 

 

 

 

 

 

 

うむ、幾度となく傭兵として戦地へと駆り出されたことがあるが、

斯様な数の敵を見ることは稀であるな。

 

厄介そうな忌み物がウジャウジャである。

 

我、流浪のものなり。

金に困って傭兵として勤務していたところ、あと少しで契約満了というところで大きな仕事が入ってしまった。

 

眼前にはおおよそ万超えの敵の軍勢。

腰に佩いていた愛剣を抜く。

 

試しにそこらの忌み物を一体倒してみる。

ふむ、なかなかの硬さ…

これは一撃で多くを葬るしかなさそうであるな。

 

この旅に出てから、多くの剣士を見てきた。

その中でも一際記憶に焼き付いていたあの一刀。

 

紫髪の剣士。

虚無と絶望に囲まれた「出雲」と呼ばれた地で、我は確かに見届けた。

 

世界が、大地が、空間が。

彼女のために停まり、彼女のために回っていた。

 

完全な再現。というのは難しい。

しかし、真似事くらいならできるであろう。

 

__生憎、童貞を捨てるまでは死ねんのである。

 

渾身の一撃を、軍勢へと解き放った。

 

 

 

 

 

 

 

『大規模侵攻に対する報告』

 

作戦開始から13システム時間後に

支援の傭兵を名乗る全身鎧の男が戦場に到着。

:以下雇用書の情報からこの人物を「ヨロイ」と呼称する。

 

ヨロイは数刻の後、最前線に参加。

巨大な斬撃を一度放ち、その後すぐに戦線を離脱。

 

注釈:当作戦の指揮権を持つ戎韜将軍からの証言により、

攻撃後のヨロイの腕に多大な損傷を確認。

 

前述の攻撃によって

戦場に残存していた忌み物の軍勢約五万、全滅。

 

 

 

 

 

 

 

 

パチン

 

「よかったんですか?私がヨロイですって仙舟に名乗り出ないで。」

 

「我のようなものに大層な栄誉はいらんのである。

…あ、青雀殿。それ上がりである」

 

パチン

 

「あーまた負けた!ヨロイさん強すぎ!」

 

「あら、負けちゃった」

 

「爻光様ー!この鎧男をなんとかしてくださいよ!」

 

「諦めなさい青雀。私でも甲冑さんのことは読めないわ」

 

本当に…本当に不思議だ。

だからこそ気になる。

目の前の鎧の男がいったいどんな存在なのか。

 

「ふふっ」

 

自然と笑みが漏れた。

 

なんてことのない、平和な一日だった。

 

 

 

 




ヨロイさん
・追加報酬でたくさんお金をもらった。
鎧と剣の修理でほとんどは飛んだらしい。かなしいね。

爻光
・こんな面白そうなことしといて勝手に逃げるとか許さないからな?

青雀
・牌を教えたはいいけど、このおじさん強すぎて面白くない。


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