L社の技術を持っただけの擬態型一般人Aがキヴォトスで生き残るためにできること。   作:D-T45-45-1919JP

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なんかすごい気に入られてて草。

方向性が近いからかな? やっぱ。


芸術家との顔合わせ。

 

 

 

 

 

 

 錠前サオリあらためアリウススクワッドを騙し、何とか九死に一生を得た俺は小鳥遊ホシノに語ったように、トリニティ自治区のホテルにて休息の日々を過ごしていた。

 

 まぁ休息と言っても二日経ったくらいなんだけど。

 

 いやぁ、トリニティはいいね。

 

 ホテルは高いわ、物価は高いわ、庶民ならあんまり住み心地が良くない場所だけど、金がある俺からすればルームサービスは全部美味しいし、防弾防爆防火防水耐震全部完備のホテルは死の危険性がかなり少ないし。

 

 金持ちからすれば済みやすいドバイみたいな自治区だ。

 

 マジで美味しい物食べまくって、ホテルに備え付けのタブレットで動画でも見ながら食っちゃねする日々……。

 

 至福だ。もはやここが楽園であると言ってもいい。エデンなど探さなくとも、金を払えば幾らでも作れるのだ!

 

 このまま先生が来たらフェードアウトして、錠前サオリとの契約は先生のことを俺が送り込んだフィクサーと言っておけば何とかなるだろう! 何かしてやらないと、という罪悪感はあるものの、エデン条約編はマジで紙一重なことも多い。下手に首を突っ込むより先生に任せる方がいいはずだ。

 

 

 ピピピ。

 

「……む」

 

 電話か? 誰だ? もしや会社についての問い合わせだろうか。画面も見ずに応答する。

 

「もしもし」

『クックック……トリニティ自治区の居心地はどうですか? A』

「黒服か。何のようだ。精神汚染中和ガスか、それとも神名結晶でも切れたか?」

『いえいえ。どうやら彼女の私兵から逃げ延びたようなので、一報入れようかと思いましてね。流石はAと言ったところでしょうか』

「世辞を言うためだけに電話を掛けてきたのか……?」

『しかしながら、砂漠と言えど自らの肉、骨、血液をそのまま放置していくのはどうかと思いますよ? 些か不用心かと』

「俺には勢力がない。あれば掃除でもさせている。……あと、どうせあなたが回収するだろうと踏んでいた」

『おや。そこまで見越していたとは……感服しました』

「心にもないことを。そろそろ本題に入れ」

『クク……ええ、ではそのように。……A、あなたと顔合わせをしたいと仰っていたゲマトリアの同志が居ましてね。都合よくトリニティまでお越しいただけたので、是非ともこの機会にと。云わば私はメッセンジャーであり、橋渡し役』

「……ほう。しかし俺がトリニティに滞在している期間はそう長くないぞ。あと5日ほどだ」

『乗り気、と捉えても?』

「ああ。俺もあなた方に興味がある。なんなら今からでもいいぞ」

 

 どうせゲマトリア(一部除く)はちゃんともてなす準備をしてからじゃないとゲストを招待しないタイプのちゃんとした存在なのだから。フッ軽アピールでもしておく。

 

『そう言っていただけると信じていました。我々の準備は整っています。準備ができ次第、ホテル前までお越し下さい。彼も楽しみに待っていますよ。では後ほど、また会いましょう』

 

 ええ……?

 

 ホテルのエントランスに降りれば、存在感を主張する黒塗りの高級車が扉を開けて待っている様子が見えた。運転席に座っているのは生徒であるが、どの学園であるかは判別できない。

 

 ええぇぇぇぇ……???

 

 黒服って手下みたいなポジションの生徒居るんだな……恐らくベアトリーチェのような忠誠とかそういうのじゃなく、契約によってなんだろうけど。

 

 ……口が滑ったなぁ……まぁ、普通に興味あるし……いっか。黒服の客としても来てるわけだし、大丈夫でしょ。

 

 大人しく観念して、連れていかれた先は静謐に満ちた廃墟だった。

 

 そこに佇んでいたのは人の形をしたモノクロの焔がスーツを着たような黒服と、双つの木の頭を持つ異形の姿。

 

 マエストロ。

 

 ブルーアーカイブにてヒエロニムスやグレゴリオ、戒律の守護者、シロ&クロを創り出した芸術家。

 

 その最も驚異的な『秘儀』は『複製』だ。

 

「お待ちしておりました、A。ご紹介しましょう。彼はマエストロを名乗っているゲマトリアの1人であり、ひとりの『芸術家』です」

 

 黒服の紹介を受け、ゆっくりとこちらへ向き直った。その二つの頭が同時に優雅な一礼を捧げる。

 

「初めましてだな、A。貴方のことは黒服から話は聞いているとも。貴方からは……そう、知性と経験に裏打ちされた確かな品格というものを感じる。試供品である『神名結晶』は拝見させてもらったが、象徴主義に近しい抽象的なものでありながら、写実的な印象を持たせる矛盾……それを同居させるその技術……! 実に感動した。正直に言えば、私は貴方に深い尊敬の念を抱いている」

「……買い被りだ。俺は自分の会社を守ろうとしているだけの零細企業の社長に過ぎない」

 

 とんでもないくらいなんか好感度稼いでない???

 

 『神名結晶』は確かに綺麗だけども。技法と言われると別に勝手に寄って固まっただけなんだよな……?

 

 アインの無機質な声で短く答える。マエストロは満足げに、その歪な口角を上げた。

 

「謙遜を。さて、今日は貴方と語らいたい。私が現在探求しているテーマ……『複製(ミメシス)』について」

 

 実はかなり気になっている。普通にワクワク。

 

「我々ゲマトリアは、未だ『神秘』そのものに触れることは叶っていない。しかし、その対極にある『恐怖』……すなわち『崇高』の側面を『複製』する術については、一定の成果を得ている」

「『複製』……。本物の模倣、ということか」

 

 それっぽく知らないふりをしておく。

 

「左様。私はシミュラクラの概念を支持しているが、ご存知だろうか」

 

 シミュラクラの概念とやらはわからないが、シミュラクラ現象ならば知っている。

 

 解説すると、シミュラクラ現象は点が3つ、三角を成すようにあれば、人はそれを目と口が揃った人の顔と認識する現象だ。

 

 天井の模様が顔に見えたり、木の幹が顔に見えたりするアレ。アレがまさにシミュラクラ現象である。

 

 『複製』、そしてシミュラクラ現象を組み合わせてマエストロの言いたいことを解釈するならば――

 

「ああ。無意味であるそれに、意味を見出す解釈の1つだろう。本来全く異なるものであったとしても、オリジナルと同じ認識をすればそれはオリジナルと大差がない。そう言った捉え方で間違いはないか?」

 

 こういうことだろうな。

 

 『複製』は確かに『オリジナル』のコピーであり、贋作と言えるものだが……それが真に迫っており、『オリジナル』を前にした時と同じ感情を覚えるのならば、それは解釈するものにとって偽物も本物も違いがない。

 

「――素晴らしい……。ええ、まさにその通りだ。捉えるもの、観測するものにとってそれが『本物』として機能するならば、『原本』と『複製』の区別など芸術の前では無意味に等しい。故に『複製』は『原本』と同様に力を持つのだ……ときに貴方は、『根源の感情』という観念をご存知か?」

 

 マエストロの声が熱を帯びた。

 

「私は以前、その知見に触れ、深く感動したのだ。人の持つあらゆる喜怒哀楽、複雑に絡み合う情動の全てはたった一つの『根源の感情』から派生した不完全な模倣に過ぎないと」

 

 その言葉を聞いた瞬間、思考が加速する。

 根源の感情。あらゆる絶望と希望が、全ての人の思いが溶け合う場所。

 

「……『井戸』、か」

 

 『井戸』としか思えない。

 

 思わず零れた呟きに、マエストロの片方の頭が鋭く反応した。

 

「ほう。興味深い言葉だ。貴方の言うその『井戸』とは、何を意味する? 是非とも教授頂きたい」

「……あらゆる人間の精神が繋がっている、時間すら超越した無意識の海。有り得た可能性すらも超越した人類の集合無意識のことだ。詳しくは話せないが、俺の持つ技術もそれに関係する。そういう意味でならば、俺の技術とあなたの『複製』は近しい関係にあるのかもしれないな」

 

 『根源の感情』と『井戸』は視座の深度は違えど、同じ方向性なのだから。多少話しても問題はないだろう。どうせ辿り着くはずだ。

 

 マエストロは身を乗り出した。

 

「ーー素晴らしい。やはり、あなたは私の芸術の良き理解者となってくれる人だと確信した。解釈されない芸術に意味などなく、鑑賞されない作品に価値はない……」

 

 彼らが「伝承」や「人々の感情(シロ&クロなど)」を模倣して『恐怖』を『複製』するように、L社は『井戸』から感情や悲劇、概念そのものの実体を引き上げ、アブノーマリティとする。

 

 技術の方向性が極めて近しいのだ。

 

「この出会いを与えてくれた黒服に今一度感謝を。貴方の視点は私のキャンバスに新たな色彩を与えてくれる。……『複製』は概念を模倣するだけではない。人々の畏怖、信仰、そして……」

 

 不意に、マエストロの視線が俺の頭部で静止した。

 

 ……そいえばアルの角付いてるんだった。

 

「……おや。その『角』は……。……失礼、少しだけ鑑賞させてもらっても?」

「……構わないが……ファッションだと思ってくれて構わないぞ」

 

 マエストロは細長い指を顎に当て、興味深そうに見つめる。多分。目とかついてないし。

 

「ファッションも己という存在を外形で表現する術であり、ある種の『隠喩(メタファー)』なのだ、卑下することはない。……しかし、これは……? 単なる装飾ではない……角、悪魔の象徴……ゲヘナの悪魔たちの『神秘』が、貴方の肉体に侵食し、新たな『形』として定着している……? ……これはもしや、『神秘』そのものの『複製』……!?」

 

 俺は内心で冷や汗を流した。アルとの本能作業の結果として生えたこの角を、彼は『神秘』の『複製』という極めて高度な現象として解釈しているらしい。

 

 しかし『神秘』なのか? てっきり大本である『崇高』のそのまんまが……ああ、そうか。キヴォトスというテクスチャでは基本的に『崇高』は『神秘』か『恐怖』の側面で表出するんだったな。

 

 それに確かに『神秘』のねじれ生物である生徒のギフトだし。

 

「しかしそんなことが……貴方は自らの存在を媒介にして、『神秘』を再現、自らの肉体に文字通り体現しているのか……!? なんと前衛的で、それでいて肉体芸術に基づいたインスピレーションーー! 本当に素晴らしい! 黒服、貴方の目は確かだった! 直ぐにでもゲマトリアに迎え入れるべきだ!」

「クックック。私も改めて、彼を推した選択を誇りに思っています」

「……過大評価だと言っているだろうに」

 

 熱弁を振るうマエストロの講義を、俺は大人しく聞き続けた。

 

 具体的な技術の詳細は秘匿しつつも、同じ概念の物質化を志す者としての知見。キヴォトスの『神秘』と都市の『幻想体』を繋ぎかねない『複製』という技術は深く知っておいて損はない。

 

 マエストロは次第に落ち着いた、品格のある口調で対話を締めくくった。

 

「有意義な時間だった、A。貴方のような、深い淵を覗き込んできた者との対話は何物にも代えがたい。……いずれ、私の『複製』が完成した時、真っ先に貴方に講評をお願いしたいものだ」

「機会があればな。俺も『芸術家』を名乗るあなたの創作に興味がある。今日は実に収穫があった、ご鞭撻に感謝しよう」

 

「黒服、彼に迎えを頼む」

 

「ククク……ええ、心配なさらずとも私が彼をお送りしますよ。では、こちらへ」

 

 マエストロに見送られ、俺たちは廃墟を後にした。

 

「どうぞ」

 

 廃墟の前には黒服と同じような雰囲気の車があった。流れるように後部座席の扉が開き、そして運転席に黒服が乗り込む。

 

「……あなたが運転するのか、黒服」

 

 マジで?

 

「ええ。たまにはこういうのも有りかと思いましてね」

「…………免許は?」

「クックック……元より持っていましたが、ここキヴォトスで活動するに当たって多少勉強致しまして。戦車から飛行機、ヘリから潜水艦まで、全て運転可能ですよ」

「だが流れ弾でも来れば、俺はともかくあなたは危険だろう」

「この車は『名もなき神』のという存在たちの技術を研究するために造られた試作品でしてね。例え戦車砲を直撃したとしても傷1つ付かないでしょう。どうかご安心を。クックック……」

 

 

 なんか凄い楽しそうだなこいつ。そんなに俺がビビってるのが面白いのか!!!

 

 

 

 

 







正直ゲマトリアとの交流書いてるときがいっちゃん面白いかもしれない。

キヴォトス滅亡カウンター:1減少

ちなみにこの話を書くにあたってようやくブルアカ最終章をちょっと見ました。普通に泣ける。あとシロコ……銀行強盗がホシノのマフラーと一緒とか嘘だろ……? 笑ってしまったよ普通に。あとクロコもシュールな覆面帽もってシリアスしないでくれ、面白いから。

後ろに流れてるBGMも絶対狙ってましたね、アレは。

というかゴルコンダ死んじゃうの? 悲しい……悲しくない?



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