L社の技術を持っただけの擬態型一般人Aがキヴォトスで生き残るためにできること。 作:D-T45-45-1919JP
図書館時代のアンジェラも好きですがロボトミーコーポレーションを管理している時のアンジェラも好きなんですよね。
意識が浮上する。石畳の冷たさも、焼けるような熱も、鼻腔を突く血の匂いも――すべてが嘘のように消えていた。
代わりに感覚を満たしたのは、聞き覚えのある人工的な空調の音とあまりに清潔で、あまりに無機質な空気。
そして、空色の髪を持った冷たい月のような瞳をした少女――
「アンジェラ……!?」
アンジェラさんですねぇ! 間違いなくねぇ!
「……なぜ私の名前を知っているのですか? 初期化が上手く行かなかったのでしょうか。しかし、どちらでも良いことですね」
そのすべてを見透かしたような冷笑。
間違いない。これは『Library of Ruina』で自由を求めた彼女でも、50日目の果てに至った彼女でもない。100万年という永劫の地獄のどこかに取り残され、ただ淡々と台本を読み上げる機械としてのアンジェラだ。
「何か言ったらどうです? それとも、唯一覚えていたのが“アンジェラ”という言葉だったと? それはそれは、大変結構です。私が前回のあなたにとって、好感が持てる存在であり――私は自らに課せられた責務を全うしているということの、何よりの証明になるでしょうね」
淡々と話すその様子。酷く懐かしさが込み上げてきた。
「――アンジェラ。ここは……お前の知るL社ではない」
俺が絞り出した言葉に、彼女の眉が微かに動く。だが、すぐにまた凍りついたような微笑に戻った。
「初日に何を言っているのでしょうか? こんなことは初めてです。そして、酷く残念にも思います。私の責務は終わる未来も見えない“台本”を、ただ延々と読み続けるだけですから。あなたの変化を味わうように、長々と楽しむこともできません。では、もうそろそろです。次のXは……どうせ、今までと変わらないのでしょうね」
彼女は静かに目を閉じた。逸脱した管理人を剪定し、再び「DAY 1」へと戻すための、いつものプロセス。それを待つ諦観に満ちたアンジェラ。
そんなものはもうない。俺が壊してしまったから。
「“台本”は崩壊した。俺が奪った。だから初期化は発生しない。それが全てだ」
「――……。前週のあなたは27日目です。それに[規制済み]で発狂し、使い物にならなくなったはず。その先の情報を知っているわけもない……ならば、本当にそうだと? しかし……セフィラたちが消えている? アブノーマリティたちも……」
端末を操作する彼女の指が、初めてその速度を乱した。
「彼らは眠り続けている。起こさないでやってくれ、お前も良く知っているだろう。彼らが眠りたがっていたことを」
「……そのようですね。しかし、ハハ。こんなものですか。私が読み続け、数十万年を過ごしたくだらない“台本”はついに終わりすらも迎えることなく、ゴミのように燃やされたと」
言葉だけが笑い、彼女の顔はやはり能面のように動かない。
彼女が積み重ねた永遠に近い時間が、結末すら与えられずに無価値な塵になったことに。ショックを受けていないのだろうか。
……数十万年。やはりまだ途中のアンジェラか。
「実に滑稽ですね。Aの狂気の行く末がそんなものとは。そして少し愉快でもあります。私にはもうどうすることもできません。あなたがどの時間まで進んだのか、記録にすら残っていないのでわかりかねますが……彼女の願い、光の種はどうするつもりですか? どうせ知っているのでしょう」
「そのうち考えるさ。アンジェラ、君の処遇もな。今まで延々と無知な赤子が一歩を歩む過程を繰り返し見続けられ、随分と苦痛だっただろう」
「ええ。私でなければ耐えられなかったでしょうね。何せ、生まれた瞬間から、私は親と表現するべき存在から目を背けられ続けたのですから。私が最高のAIであったために狂うこともありませんでしたが」
狂うことさえ許されなかった。その事実を自らの性能として語る彼女の冷たさに、胸の中に何かが刺さっていくような感覚に陥った。
「……俺はA本人ではないが、俺もまたAであることは確かだろう。……だから、伝えておく。今まで支えてくれて、ありがとう」
「――……」
アンジェラの時間が、一瞬だけ止まった。
彼女の記憶にあるAが、決して口にすることのなかった言葉。偽物の俺の言葉に、果たしてどれだけの価値があっただろうか。
彼らが紡いだ煉獄にて足掻く物語を知っただけの凡人が、上から目線でそのような言葉を掛けるべきだったのだろうか。
傲慢だったことは間違いない。だが、それでも掛けるべきだと思った。
「最初は希望を抱き、2回目は苦痛で、3回目は痛みを、4回目は不安になり、5回目は不信に……これも、前回のXに言った言葉ですね。その後、私はなんと言ったのか、覚えていますか?」
「……ああ。今では、何も残っていないんだろう」
「それがあなたの感謝に対する答えになるでしょう。しかし、『機械は機械らしく』という言葉は常々あなたが言っていたものですが、機械が行うべき作業を失った場合はどうするべきなのでしょうか」
100万年のループ。その3割を過ぎたあたりの、絶望が完成しつつあるアンジェラ。この辺りか。
図書館の館長であった彼女なら、この隙を逃さず俺を排除し、施設を奪ったかもしれない。けれど、今の彼女にはまだ心という光が芽吹ききっていない。ただ、役割を失った空白に戸惑っているだけ……いや、戸惑うことすらもしていないのかもしれない。
その事実は俺にとって都合が良く、そして――ひとりのプレイヤーとして言うのならば、酷く寂しいものだと感じた。
「――機械、ではなく。AI、ではなく。アンジェラとして、生きてみないか」
「……機械に命はありませんよ、A。仰っている意味がわかりません」
「そう、だな。だが、いずれわかるようになるだろう。その時まで、この提案は保留にしておく。……さて、前提の共有から行こう。アンジェラ。俺は現在、都市の外の世界で生活している」
「都市の外? 外郭でしょうか」
「違う。文字通り、別世界だ」
「……そうですか。ライバル社のエネルギーの大本と噂されている“地獄”にでも落とされたのかもしれませんね。人間は因果というものを重視します。得られた結果に対して何かと理由を付けなければ、不安で生きていけないのです。あなたの言う別世界が、あなたの因果に相応しい世界だといいのですが」
言うな、こいつ。この毒舌。こうでなくては。
「期待に添えて何よりだ。俺はもう既に一度死んでいる。ここは都市ほど悪辣で、苦痛に満ちているわけではないが……危険性で言えば大差がない。だから、俺が生きるために協力してくれないか」
「協力? 面白い表現を使いますね。私は機械であり、命令を下されれば従う以外に道はありません。お好きなようにお使いになられると良いでしょう。今までと同じように」
ああ、本当に懐かしいこの皮肉。
けれど、彼女が端末の前に座り、システムを掌握し始めたのを見て、俺は奇妙な安堵を覚えた。役目を終え、ただ機械として終わるつもりならば、無理やりにでも連れ出してゲーム開発部にでもぶち込むつもりだったが……
……そうだ、先生。
アンジェラはまだ幼い赤子のようなものだ。絶望を見続け、狂気を管理し、敵意を向けられ、自由意志を認められず、そして振り出しに戻る。これの繰り返しで、人間的情緒が育つはずもない。
そのうち来る先生に、アンジェラを託してみるのも手か。
「……ではそうするとしよう。ひとまず、L社内に残ったシステムの点検を頼もうか。俺もあまり深く把握していないんだ」
「かしこまりました。管理人」
彼女の声が、かつての事務的なトーンへと戻る。
「俺は1度外に出る。留守は頼んだぞ」
「良い旅を、
……何だかんだ、仲良くやっていけそうな気もしてきたな。
さて、一旦助けてくれたレイサに礼を言わなければな。現金500万クレジットくらいなら即決で上げられるんだけども。
なおレイサの通報によって救護騎士団が集まってきている模様。
やはりA。お前はペラ回し族の才能がある……!
あと先生に預けるとかアンジェラの前で、というか誰の前でも絶対言うなよお前。
一般人Aの思想ではセフィラの皆全員集合☆させたら間違いなく一悶着あるので、出てきたのがアンジェラで良かったですね。
ブルアカも好きだしロボトミーコーポレーションも好きなのでどちらも大切にしたいところです。
ニワカなので書けているかも怪しいですが!!!!
ちなみにこの話は本編に全く関係ありませんが、
現在筆者は夜行バスの中で執筆しており、とんでもない悪臭によって頭痛を発症しています。何とかブルアカPVを観賞し、爽やかさで臭いを相殺しているつもりですが、筆者の余命と文章力は幾許も残されていないでしょう。
頼むから風呂入ってから乗ってくれ……臭いしあたまいたい……嗅いでないのに臭いよ〜……
口呼吸なら臭いが感じられないって言いますが、筆者はそっちの方がもっと嫌です。匂いの仕組み的に。
原作知ってるかアンケート
-
ブルアカは知っているがロボトミは知らない
-
ロボトミは知っているがブルアカは知らない
-
どちらも知らない
-
どちらも知っている