L社の技術を持っただけの擬態型一般人Aがキヴォトスで生き残るためにできること。   作:D-T45-45-1919JP

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この話を書くのに2時間以上掛けてんだぜ……(現在朝6:21)

ちなみに今話は5700文字もあります。は?
前回は1700文字でした。どちらもミカ曇らせ回でした。
実質7400文字だと……? 何かがおかしい……!

これも全部ブルアカアニメが悪いんだ!!! 筆者のやる気をモリモリと出させられたぜ……


眠たい中書いたので何か間違いとかあったらこっそり教えてください(n回目)

というわけで初投稿です。


金色の赦し

 

 

 

 

 約束の時間が来た。

 

 心臓が早鐘を打ち続け、冷めない熱が頭に充満している。耳の奥でドクンドクンと脈打つ音が、まるでカウントダウンみたいに響いていた。

 

 震える手で扉を開けた先にいたのは、あの日、私が裏路地で冷たく突き放したあの大人。午後の日差しが差し込む中で、まるでトリニティの主のように私を待っていた。

 

 読めない顔。見透かすような薄暗い黄金の瞳。見下ろすような雰囲気。

 

 そうだ、この感覚。

 

 何か恐ろしいものを相手にしているような、そんな気すら湧いてくる泰然な態度。怪我をしていたことも、本当に嘘なんじゃないかと思うほどの存在感。

 

「……来たな。掛けてくれ。一度、君と話がしたかったんだ」

 

 熱のない声に怒りはなかった。

 

 憎しみも、怨嗟も、私を呪うような響きさえもない。ただ、事務的な――そう、まるで最初から何もなかったかのように、その大人はそこに座っていた。

 

「え? えっと、うん。あの、」

 

 声が裏返る。

 

 言われるがままに、そのまま席に座ってしまった。目の前には歓待用の色んな茶菓子の数々があって、なんだかもうよくわからなかった。

 

 だって、おかしいよ。あんなに血を流して、あんなに酷いことをしたのに、どうしてそんなに平然としていられるの?

 

「そう言えば君には自己紹介をしていなかったな。俺はLogos Companyというエネルギー会社の社長をしているAだ」

 

 淡々と語られる自己紹介。エネルギー会社の社長? ゲヘナとは関係ないの? それならなんでセイアちゃんは――そうじゃない、よね。私はここに、この人に罰されに来たんだから。

 

 でも、なんだか思っていた雰囲気とはだいぶ違う。もっと険悪で、もっと憎悪をむき出しにしてて、もっと私を苦しめるような――そんなお茶会だと思っていたのに。

 

 覚悟していたのは――いや、期待していたのは憎悪の言葉だった。

 

 「人殺し」と叫ばれて、蔑まれて、この人が感じた苦しみを少しでも感じて。

 

 そうなって、ようやく罪が赦されると思ってたのに。

 

「この紅茶、少し香りが強いな。トリニティでは一般的なのか?」

「……え? あ、それは……アールグレイに少しだけ、ベルガモットの皮を足してるから、かな……」

 

 はやく。

 

「なるほど。この茶菓子も、バターの風味が濃厚で美味い。しかし品のある味だ。これもトリニティの店のものか?」

「えっと、17区にある老舗の……ナギちゃんが、お気に入り、で……私もよく食べてて! ぁ……」

 

 違う、違う違う違う。

 

 そうじゃない。私が望んでたのはこういうのじゃないのに。

 

 私は加害者で、彼は被害者のはずなのに。

 

 なんで責めないの? 痛かったでしょ? 苦しかったでしょ? あなたには私を憎む権利があるのに。

 

 なんで?

 

「君は百合園セイアや桐藤ナギサと、よくこうしてお茶を飲むのか?」

「え、うん。ナギちゃんはいつも、ロールケーキの話ばっかりで。セイアちゃんは難しい本の話をしてて……」

「想像に難くないな。桐藤ナギサはわからないが、確かにセイアは小難しい話をこねくり回していそうだ。賢しいふりをして、何とかこの間は話を合わせていたものの……あまりよく理解しているとは言えなくてな。君はどうだ?」

「っわかるー! 私もその場はわかった感じで相槌するんだけどね! 正直よくわかんないなーって! セイアちゃんも簡単に言えばいいのにさ? いっつも難しいことばーっかりで――ぇっと、」

 

 ……違う、のに。

 

「? どうした? もう話したくないなら、この話題は打ち切るが……」

「いや、そういうわけじゃなくて! えーっと、それでね! ナギちゃんは一見おしとやかに見えるんだけど――」

 

 ナギちゃんがロールケーキを喉に詰まらせた話。セイアちゃんが意外と負けず嫌いなところ。

 自分でも驚くくらい、スラスラと言葉が出てきて――それでも、胸の奥はどんどん重くなっていく。

 

 冷めた金色の瞳はトリニティに差し込む日差しに反射して、なんだか酷く綺麗な色をしていた。表情は変わっていないのに、Aも会話を楽しんでいるように思えてしまう。

 

 そんなわけないのに。

 

「嫌でなければで構わないんだが、名前で呼んでもいいか?」

「ぜ、全然いいって! そんなの気にされてたらこっちも話しづらいし!」

「……ミカは、ティーパーティのみんなが好きなんだな」

「別にそういうわけじゃないよ!? そんな話してたかな!? セイアちゃんの文句とかナギちゃんの秘密とか喋ってなんでそういうふうになるの!?」

「わかるさ。彼女たちのことを語っているミカは終始楽しそうだったからな」

 

 ――――ほんのり、目が細めたA。穏やかな時間の流れの中で、僅かに、だけど確かに微笑んだその表情。

 

 優しい眼。

 

 そう、思ってしまった。

 

 角があって、冷たい雰囲気をしていて、表情も変わらない怖い大人だったはずなのに。ゲヘナの敵で、エデン条約を進めようとする悪者で、そして私が償うべき相手だったのに。

 

 わかってしまう。理解させられる。

 

 この人は、きっと本当に私との話を楽しんでくれている。あなたを殺しかけた私の話を。

 

 見た目から誤解されるだけで、本当はすごく優しい人なんだ。私の話をひとつずつ聞いてくれて、楽しもうとしてくれて、私を尊重している。

 

 そんな人を、私は殺しかけた。

 

「――っ」

 

 そう考えただけで、吐き気が込み上げるのを止められない。

 

 胃の奥が収縮して、咄嗟に湧き上がりそうになった胃液をなんとか抑える。

 

 紅茶を飲んで、味わうフリで、戻して、戻して、戻して。

 

 飛び出そうな醜悪で汚い私の心を、抑え込む。

 

「しかし、彼女たちのことも知りたいが……今はミカ。君のことを知りたいんだ。何が嫌いで、何が好きか。どんな趣味があって、休日は何をしているのか。些細なことでもいいぞ。俺はトリニティに滞在してから紅茶の味がわかるようになってきてな。おっと、君たちと比べてくれるなよ? 素人がバレる」

「あははっ、私たちは結構お嬢様だからね! えっと、そうだなー。私は――」

 

 もういいよ。もう十分。

 

 楽しい、と感じそうになる心を必死に踏み潰す。丁寧に、念入りに。思い出を話せば話すほど、懐にあるあの拳銃の熱が、私の深いところに入っていくような感覚がした。

 

「そうか。ミカはアクセサリーが好きなんだな。確かにミカのドレス姿は綺麗だ。……あぁ、これは装飾がマッチしているという意味であってだな。勘違いしてほしくないんだが――」

 

 ……ねぇ。

 

 どうして、怒ってくれないの? どうして責めてくれないの?

 

 どうして、そんなに優しく、私の話を聞こうとするの?

 

 視界が歪む。

 目の前に座っているのは、本当にAなのかな。

 それとも、私の罪悪感が見せている、都合の良い幻覚?

 

 ガチャン、と。

 

 スプーンをソーサーに落とす音が、静かな部屋に不自然に響いた。

 

 私の我慢は、そこが限界だった。

 

「……ねぇ、もういいよ。もうやめて」

 

 震える声で、私は彼を遮った。

 

 顔はきっと歪んでいて、指先は暖かい紅茶を飲んでいたのに、氷みたいに冷たいんだろうな。

 

「……どうして私を呼んだの? 謝ってほしいの? それとも、私のことが憎くて、じわじわ嫌がらせするために、こんな真似をしてるの? あは☆ そうだとしたら、本当に性格悪いね。あなたが私を憎んでることなんてわかってる。だって勘違いで自分を殺しかけた殺人鬼だもんね。私だったら、憎くて憎くてたまらない」

「……ミカ」

 

 こんなことになるなら話すんじゃなかった。わかるよ。一見無表情だけど、悲しんでるんだよね。

 

「ごめん、やっぱさっきのなしにしてもらっていいかな☆ ゲヘナの大人に名前で呼ばれるとか凄い嫌だし。それで? はやく本題に入ってよ。一応Aは被害者なんだし、話くらい聞いてあげる☆ 面白くない話ばーっかりで嫌になっちゃったしさ☆」

 

 吐きそう。

 

 吐きそう。吐きそう。吐きそう。吐きそう。吐きそう。吐きそう。吐きそう。吐きそう吐きそう吐きそう吐きそう吐きそう吐きそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそうはきそう。

 

 でも、これくらいしないと。私が、悪者にならないと。

 

 この人は。この大人は優しい人だから。そうだと、わかってしまったから。

 

 私に憎悪をぶつけることなんて、できないんだ。

 

 ごめん、ごめんなさい。ごめんなさい……。ごめんなさい……!

 

 私が悪いの。

 

 優しさであなたの苦痛に、憎しみに蓋をしなくたっていい。そんなの気にする必要なんてない。だって全部私が悪いんだもん。

 

 ぶつけてよ。怒りに任せて、糾弾して、怒鳴って、私を罰してよ。

 

 嫌い。こんな私が嫌い。こんな形でしか、相手を傷付ける形でしか罪を償うこともできない私が、本当に大嫌いで仕方がない。

 

 どれだけ苦しめばいいの? 違う、苦しんでいるのは相手の方だ。

 どれだけ苦しんだら満足するの? 満足するのは自分でしょ。

 

 頭の中で声が反響する。嫌いで嫌いで仕方がない、自分の声が。

 

ぉぇ……っ

 

 自分勝手でごめんなさい……。誤解で殺しかけて、許されるために傷付けて、自己満足で相手のせいにしようとして。

 

 ほんとは全部、私のせいなのに。

 

 本当はわかってる。でも私はバカだから、頭でそう考えても、わけわかんなくなる。

 

 私は机の上にあの拳銃を叩きつけた。

 

 誰かの夢が詰まった、私が汚してしまった、重たい、重たい呪いの塊。

 

「ねぇ、なんか言ったらどうかな☆ どうして……どうして私を責めないの? 私、あなたを殺しかけたんだよ。謝ったって済まないこと、したんだよ。気にする必要なんてないじゃん。相手は加害者なんだよ? 痛かったでしょ、苦しかったよね。あんなに血を流してさ。なのに、なんで……」

 

 喉奥に何かが詰まりながら、私はAの瞳を睨みつけた。

 

 しかしこれだけやっても、Aの瞳は悲し気な色を映すばかり。怒る気配なんて微塵もなかった。

 

 どうか、怒って。

 どうか、拒絶して。

 どうか、私を罰してよ。

 

「なんでっ……なんでッ! なんでそんなに、私に優しくするの……? いみ、わかんないよ……」

 

 そう、叫んで。

 

 肩で息をして、へたり込んだ私の前まで、Aが歩いてきた。

 

 良かった。ようやく、私を罰する気になったんだ。そうだよ、それが正しい。口には出さないけど、安心してね、A。ちゃんと苦しむから。ちゃんと罪に向き合って、償うから。

 

「あは☆ そう、それでいいよ。私だって多少は気にしてるんだし☆ あなたの罰くらい受けてあげなくもないからさ。だから、ちゃんと私を――」

 

 

 苦しめてね。

 

 

「――――すまない。そんなに、苦しんでいたんだな」

「――え?」

 

 

 Aはしゃがみ込んで、私の頬に手を当てて――。

 

 

 違う、よ。そうじゃないの。

 

 

「泣いてるのか。……気が付かなくてすまなかった、これも全て俺の責任だ」

「な、なに言ってるの? そんなわけないじゃん……」

 

 そうだよ。意味わかんないよ。だって悪いのがどっちなんて、明白なんだから。

 

「ミカ。確かに君は悪いことをした。早合点で人を撃って、脅しで従わせようとした。それは悪いことだ」

「……そう、そうだよ。その通り☆ だから、早く私を――」

「でも、取り返しのつかないことにはならなかった。だから、ミカがするべきだったのは罰を受けることでもないし、苦しみ続けることでもない」

 

 罰を受けることでもなければ、苦しむことでもないって?

 

「じゃあ、じゃあ何だって言うの!? 私には、もうこれくらいしかできないのに!」

 

 涙で歪んだ視界でも、頬に添えられた掌の暖かさは消えない。

 

「きちんと、ごめんなさいをすることだ。相手の目を見て、間違いを犯したことを謝って、それでいい。ミカはまだ子供で、俺は大人だからな。だから子供の過ちくらい、大目に見るさ」

 

 ――あ、あああ、ああああああああああああ!!!!!!

 

 胸の中から色んなものが溢れてくる。怖かった、苦しかった、辛かった。

 

 話せば話すほど優しい人なんだってわかって、そんな人を傷つけたって、憎まれてるんだって、怖くて怖くて仕方なくて。

 

 でも私が悪いから、苦しいのも辛いのも、全部受け入れなきゃって、ずっと。

 

「う、うぁ、ぁぁぁぁあああああああ……ごめん、なさい……ごめんなさいぃ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……! 傷付けてごめんなさい、話を聞かなくて、ごめんなさい……っ! 銃を奪っちゃって、ごめんなさい……!」

 

 一度、決壊した堆積した思いは止められなかった。止めようとも思わなかった。

 

 胸の中にへばりついていた淀みの全てを吐き出して、子供みたいに涙が止まらない。こんな無様な姿を晒して、恥ずかしい。でも、きっとこの人になら大丈夫だと思った。

 

 ほら。

 

「ああ。謝罪は受け取った、だから赦す。もうこれでこの話はお終いだ。ミカは優しい子だから、きっと随分苦しんだだろう。もういい、もう赦した。だからもう苦しまなくていい」

 

 ――――――――。

 

「今までよく頑張ったな。今日、会ってくれてありがとう、ミカ」

「うぅぅぅぅぅぅ……!!!!! ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、ひぐっ……ゔん˝っ˝……!!! わだじ、ほんどはずっどごわがっだぁ゛!!! ひどにっ、ほんぎでぎらわれたんだって、よるもねむれなぐでっ! わだじはひどごろしなんだって! ぅぅぅぅぁぁぁぁあ……!!!」

「怖くても来てくれたのか。ミカは偉いな」

 

 泣いて、泣いて、泣いて、よくわかんなくなるまで泣き尽くして。

 

 心の中に吹きだまったものを全部吐き出して、ようやく涙が止まった頃。

 

 

「……泣き止んだか?」

「…………うん」

 

 

 気付けばAの胸の中に抱きついていた。多分、あんまり覚えてないけど、私から。

 

 

「ありがとう、A……私を許してくれて。私に謝る機会をくれて。私ね、ずっと寝れてなかったんだ。人殺しになったんじゃないかって、人殺しはもっと苦しむべきなんじゃないかって悩んでて……」

「ああ」

「……もう少し、このままでいい……? その、恥ずかしいし、顔酷いことになってると思うし」

「……ああ。乙女の泣き顔を見ようとするほど不埒じゃないつもりだ」

 

 呼吸を落ち着かせると、泣き疲れた頭にAの良い匂いが入ってくる。優しく肩に添えられた手は少しも痛くないように、まるでお姫様を抱くような力加減で。

 

 胸元に耳を当てると、心臓の音が聞こえた。

 

 とくん、とくん。

 

「あは、心臓の音が聞こえる。ちゃんと、生きてるんだ……良かったぁ……」

 

 それは私の心臓と共鳴するみたいで、酷く安心した。

 

「眠たくなったか? なら少し休むといい。まだ二時間は取ってある」

「……じゃ、ぁ……お願い、しよっかな……。おやすみ、なさい」

 

 急激な眠気に逆らわず、Aの言葉に甘える。

 

 

「ああ。ゆっくり寝ていい。おやすみ、ミカ」

 

 

 薄れた意識が夢に堕ちる間際。少しだけ首を傾けて、顔を見る。泣いて崩れた私の顔を見ないように、外の景色を眺めているその横顔を。

 

 

 ――――あぁ……王子様、みたい。

 

 

 

 

 

 





この男、どうせ"先生"がいるんだし、自分なんか脇役にしかならんし、と全力で推しとのお茶会を楽しんでいます。気遣いもありますが普通にミカとのお話も楽しくてウキウキです。

名前で呼んでいい? も相当勇気出してたりします。勇気IIIがなければ一生二人称だった……

途中で思ってたよりミカの状態が酷くて真面目モードに入りましたが、ほんまにウキウキすぎて草


ちなみにこの後の一般人Aは律儀に推しの寝顔を見ないようにしつつ、起こさないように体を動かさずに過ごしていたり。
ミカは夜に別室で目を覚ましており、後から角の生えた大人にお姫様抱っこで運ばれていたと証言されて赤面してたり。



このミカセイア襲いそうにねぇな……やはり前回の予想通りの恐怖に直面してしまった……。

だが、もうこの時点でアズサも入学しているんだぜ。そして手筈も進んでいる最中。

あぁ……ミカ……俺、涙が出そうだよ……もう、事態は君の手から離れつつあるんだね……あと連絡先持ってるセイアにネチネチ粘着するのはやめなさい。

Aって顔良いしスタイルいいしな……性格というか態度が終わってるだけで。

ちなみにもし今後Aがミカの目の前で負傷するようなことがあったらバチギレるようです。こわ。


でも"先生"が居たらなんとかなるか! そうですよね! "先生"!!! 



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