L社の技術を持っただけの擬態型一般人Aがキヴォトスで生き残るためにできること。 作:D-T45-45-1919JP
こんなん勝てるわけなくて草が生えるぜ!
ミレニアムの冷たい会議室。近未来的な光景が立ち並び、空中に投影されるホログラムがミレニアム自治区の構造を立体的に明らかにしていた。そんな会議室に立ちならぶ各学園の重鎮たち。
……錚々たる顔ぶれだね。
ゲヘナの風紀委員会。
ミレニアムのセミナー、C&Cメイド部。
トリニティの正義実現委員会、自警団。ナギサは立場上トリニティを外せないため、ホログラムでの参加のようだ。
キヴォトス全土で見ても屈指の戦闘能力を持ったC&Cの部長である美甘ネルと、正義実現委員会の切り札である剣先ツルギ。
お互い感じるところがあるのか、微かに警戒するように目を合わせている。
滲み出るオーラは龍虎、と言ったところだろう。
「……ハッ、強ェな。アイツ」
「キヒヒッ……」
これだけの戦力があれば大抵のことは……というより、これだけの戦力があったのならばどんな事件にも対応できるだろうね。
先生の指揮がどれほどのものなのかは知らないが、彼女たちが居れば何も問題ないはずだ。
しかし、そう安心した私の予想を更に先生は裏切ってくれた。
「“ごめん、みんな。少しだけ手間取っちゃって”」
「“私の方でも協力者を募ってみたんだ。彼女たちも作戦に組み込んでほしい”」
薄く微笑みながら会議室に入室した先生の後ろに、ぞろぞろと付いてくる生徒たち。本来ならば、公的な場に顔を出すことすら許されないはずの指名手配中の無法者たちまでもが、一つの円卓に集い始めた。
……これは。
私は先生のことを低く見積もっていたのかもしれないね。
「うへぇ~……なんだか物々しいね。おじさんもう帰りたくなってきたかも……」
「いくら何でも早すぎでしょ!」
「わあ☆ アビドスとはやっぱり見える景色が全然違いますね☆ シロコちゃんは見ましたか? ロボットの犬!」
「ん。見た。結構欲しい。幾らだろう……」
「買うことができるものなのでしょうか。あとで聞いてみましょうか☆」
「……はぁ、どうして対策委員会はこう、緊張感が……」
アビドス廃校対策委員会。
先生が救った学園の生徒にして、小鳥遊ホシノを筆頭とする高い戦闘能力を持った生徒たち。砂漠の学び舎を守る少女たちが、先生の隣で無邪気に声を弾ませていた。
……ゲヘナの風紀委員長にすら並ぶと危険視されていた小鳥遊ホシノを連れてきたのか、先生は。
これでキヴォトス屈指の実力者である美甘ネル、剣先ツルギ、小鳥遊ホシノの三者が揃ったわけだね。
些か戦力が過剰なのではないかと、少し思うのだが……いいや、これも慢心というものだろうか。石橋はいくら叩いたとて、渡るものにとってデメリットはないからね。
「ふっふっふ……ここで名声を得て、便利屋68は瞬く間にキヴォトスきっての大型事務所へ成長するの、よ……ぉぉおお!!??? げ、ゲヘナの風紀委員長!? なっ、え!?」
「……遅かったわね、先生。それで――便利屋68を連れてきたのは先生の護衛? それともゲヘナの風紀委員へのお土産かしら。それなら大変嬉しいのだけれど」
「くふふ♪ おっかない顔だねー。大丈夫だよ、アルちゃん。今回は先生の協力者って立ち位置で来たんだからさ。これで私たちを捕えたら先生の面子丸つぶれだし。それを風紀委員長もわかってるから言葉だけで済ましてる」
「――そ、そうよね? 先生が私たちを売るなんてありえないもの! ……待って、そう考えると、今回の依頼はゲヘナの風紀委員との合同作戦ってことよね? もしかしたら信用が回復して銀行も使えるようになったりするかも……!? ふ、ふふふ……安心して、先生。私たちが居る限り、依頼が失敗することはあり得ないから!」
「は、はい! アル様の敵は私が打ち砕きます……!」
便利屋68。
アビドスへ襲撃を仕掛けていた姿を夢で垣間見たことがあるが、どうやらアビドスと和解していたようだ。彼女たちの距離感にそれが現れている。
恐らくは先生が個人的な信頼のみで、この凍り付くような交渉の場に引っ張り出してきたのだろう。
戦慄した。
学園、立場、善悪。それら全てを飛び越え、ただ先生という一点において彼女たちは結びついている。
しがらみが多いキヴォトスで、もしかすると先生はどんな勢力よりも凄まじい力を持っているのかもしれない。……先生。先生ならば、不信と裏切りに満ちたエデン条約すらも統制することができるのではないかい?
「……な、なんだか強そうな人達でいっぱいだね。待って、メイド部も居る……! ど、どうしよう!? やっぱり帰る!? この前アリスがやっちゃったあの人も……あ、ユウカも居る」
「序盤特有の強お助けNPCでしょうか? アリスは仲間フラグを立てるためにあの強そうな白い髪の人に話しかけ――」
「ちょっとストップ! 一旦は大人しく話を聞こう? アリス」
「それもそうですね! 特別なイベントはムービーが終わってからでないとアクションを起こせないことが多いですから! 流石はミドリです!」
さらに、ゲーム開発部の少女たちまでもが大型のレールガンを抱え、冒険の前の高揚感を隠せない勇者のようにそこにいた。
「……おい、ゲーム開発部ってのはアイツらか?」
「うん、そうだよ! あのおっきい銃持ってる子の攻撃ね、すっごい痛かったなー。もう1発直撃しただけで身体がびくんびくんして……もう凄かったんだから」
「……アスナ。なんというか、その表現は辞めた方が……」
「え? どうして?」
「それは、その……先輩。先輩も何か言ってくれないだろうか?」
「んなこたどうでもいいだろ!? はぁ……そのうちアイツらの確認を済ませようと思ってたが……仕方ねぇ。今回の作戦で見極めてさせてもらうとするか」
C&Cのリーダー、美甘ネルは舌打ちをしながらも、先生の隣に立つ彼女たちを敵意ではなく、戦友として見極めようとしている。
「……時間が来たわね。今回集まってもらったのは他でもない、学園間を横断した生徒行方不明事件についてよ」
来客を確認し、早瀬ユウカが会議を改めて開始した。
ミレニアムのビッグシスター、調月リオ。そして超天才ハッカー集団ヴェリタス。その他の学園から齎されたデータと、連邦生徒会の協力によって導き出された行方不明事件の詳細な位置情報。それらを全て総合し、辿っていくと、事件の最終地点はミレニアムであることがわかっているらしい。
ミレニアムサイエンススクールは資本力と科学力で他の学園から一線を画している。故に交通網も他の学園とは比にならず、また電子化が進んでいるため、そういう知識があるものならば身を隠しやすいとの説明だった。
キヴォトス最高峰の頭脳が結集し、ミレニアム自治区の怪しい地点を解析し続けていたが、事件の最終地点がバラバラで、確定するに至っていない。
「ハッキリ言うわ。テレポートやワープでもない限り、こんなことはあり得ない。現場の地形と構造を確認し、位置情報と端末の情報から辿っていたけれど、複数のある地点を境に反応が消失した。しかしこれはあり得ないことなのよ。破壊、ジャミング、故障、電池切れ、ハッキング、いずれにしてもミレニアムの端末は最後に固有の反応を残すように設計されている。この事実から推測されることは即ち、この行方不明事件を引き起こした犯人は空間に作用する何らかの超技術を持っているということよ」
『……少しお伺いしても?』
「構わないわ」
『犯人はミレニアムの端末に一切手を加えることなく、端末が存在している環境そのものを変化させた。ということでしょうか』
「そういうことになるわ。アナログ的手法でも行方不明の生徒の痕跡を探ったけれど、同じくその地点を境に一切の痕跡が消える。特殊なドローンを使って空から輸送した可能性もないわ。ミレニアムの監視カメラにはところどころ死角があるけれど、あくまで点としての話。ドローンによる移送という線の動きを捉えられないわけがない」
「……マジでテレポートでも使ってんのか? まぁ、『全知』の二人が出した結論がそれなら疑う余地はねェか」
……ふむ。空間を跳躍するような超技術。
この事件、まさかゲマトリアが関わっているのか? 私の理解を越えた存在である彼らならば、そういった超技術の類を持っていても不思議ではない。
「事件の犯行現場がミレニアムであることには間違いない。しかし、問題があるの。ここ二日間で、監視カメラに異常が発生し始めてる。カメラにはハード的にもソフト的にも問題が発生していないのに、何故か砂嵐が発生して視野が阻害されるカメラがいくつか発生している」
『……カメラの阻害、ですか。希望的観測を抜きにするなら、犯人がその技術を実験している、という説が濃厚ですね。となると、そう時間は残されていない』
「事件の時間と傾向は既に掴んでるわ。……セミナーとしては悔しい限りだけど、これ以上電子的なやり取りでは追えそうにない。でも現場さえ押さえることができればその技術を解析することができる。そこで、ここに集まった勢力の皆さんに捜査の協力をお願いしたいの」
早瀬ユウカの冷徹な分析を聞くに、人海戦術以外にやり方はない気はする。空間を跳躍する技術を持った敵が相手で、しかも阻止できない監視カメラの妨害まで習得されたらいよいよ本格的に見つけることができなくなる。
……思っていたよりもすんなりとことは運ばなそうだね。それもそうか、ゲマトリアは大人の集団。こういう手の応酬はお手のモノだろう。大人しく尻尾を見せてくれたらいいのだが、どうだろうね。
そこに、ひらりと手を挙げた一人の少女がいた。
彼女は……C&Cの一ノ瀬アスナ、と言っていたかな。
彼女はまるで今日の夕飯を決めるかのような気軽さで、ホログラムに浮かぶ地図の一点を指差した。
「……えっと、多分ここだと思う! わかんないけどさ!」
「……それは、何か理由があってのことなのかしら?」
「一応準備しておいて良かったです……皆さん、こちらの資料をご覧ください。これは外部に公表しているC&Cが処理した危険団体のリストです。これらの作戦にて、彼女、一ノ瀬アスナの直観によって発見された隠し拠点や隠し取引、逃走経路の類は計63件に上ります。詳細な作戦報告書も資料に乗っています。ヴァルキューレに問い合わせをすれば、この作戦で捕らえられた犯罪者たちが全て本物ということもわかるでしょう」
直観にそれほどまでの正確性が……?
『信じましょう。そういう特殊な能力を持った生徒もキヴォトスでは確認されていますし』
ナギサ……それは私のことかい? ああ、言わずともわかるさ。君のその顔を見れば、まさに一目瞭然というものだろう。
「あ? わかってたらさっさと言えよ」
「うーん……さっきまではこう……ティンと来なかったっていうか。先生があの人たちを連れてきてくれなかったら、多分わかんなかったと思う」
一ノ瀬アスナが指差したのはとある廃ビル。予測範囲内の場所だった。
「……アタシらだけじゃ不足ってわけか。アスナ、テメーの勘は信用してるさ。今回のヤマは相当ヤベーみてぇだな」
虎が獰猛に笑った。
先生がそこに居る。ただそれだけで、本来届かないはずの秘密が暴かれ、運命が収束していく。
まるで奇跡だ。これだけの生徒が揃ったのも、場所を特定できてしまったのも、あまりに都合が良すぎて若干の胡散臭さすら感じてしまうほど。
「あながち戯言とも捨てきれないわね。一度、調査してみましょうか。先遣隊として行きたい組織はあるかしら?」
同時に手を上げる複数の生徒。
だが、どうしてだろうか。全ては順調に運んでいるのに。
……なぜだか私のヘイローが、寒気のような微かなノイズを立てているような気がした。
筆者はあまり頭がよろしくないので矛盾してるところもあるかもしれません。その時はこっそり教えてください。
時系列的には機械仕掛けパヴァーヌ第1章が終わる直前ですね。ミレニアムプライスはこの作戦で少しばかり延期されます。温情狙いとアリスの義憤もありゲーム開発部も参戦。
カメラが見えなくなるノイズの異常だって? 一体どんなTETHのEGOを使いこなせばそんなことができるんだ……!?
せこせこヴェリタスやビッグシスター相手にすら通用する隠蔽工作してるのに直感という理不尽に叩き潰されるAさんの図。
W社のワープ技術と見せかけてアインのE.G.Oニョキニョキ戦法で誤魔化しているという。ちなみにやろうと思えばW社の技術を使えなくもないらしい。
これもしかして中編2まで伸びる……???
この状況でAの中に一般人Aが戻ってきたらブロリーやフリーザを前にしたベジータのようになるんじゃねーかな。
勝てるわけがない! 相手は伝説のスーパーちんちくりん&ユメモドキ&顔が怖い人なんだぞォ! もうだめだぁ、おしまいだぁ……(ガチ)
地獄がウォーミングアップを始めました。
原作知ってるかアンケート
-
ブルアカは知っているがロボトミは知らない
-
ロボトミは知っているがブルアカは知らない
-
どちらも知らない
-
どちらも知っている