L社の技術を持っただけの擬態型一般人Aがキヴォトスで生き残るためにできること。   作:D-T45-45-1919JP

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欲に負けて追加で10連回したら101連目でココロも来てくれてやる気がムンムン湧いてきたので初投稿です。


絶望の歴史 中4

 

 

 

「流石に引くしかねェか! 全員逃げるぞ――!」

 

 

 そう叫ぶと、アスナ、アカネ、ミドリを除いて返事が返ってきた。ミドリはともかくアスナとアカネにはC&Cとして、確実に返事するように訓練は積んできた。あり得ねぇ。

 

 背後を確認すると、案の定アカネとミドリの後ろ姿が見えた。蒼い胞子のような……雲? ヘイローを塗りつぶすように、胞子の雲みてェなのが浮いてやがる。

 

「ちょ、ちょっとあっつ!? ミドリ!? ねぇ、ねぇミドリ!? お願い返事してよーっ!? ど、どうしたらいいの!? 頭も痛いし、意味わかんないんだけどーっ!?」

「ッ洗脳か催眠か、よくわかんねぇけど一旦ぶん殴れ! アタシらもアカネを軽く攻撃して、逃げるぞ! 近付きはすんなよ!?」

「うっ、うん! まんま毒だし! 絶対吸わないようにする! アリスもわかった!?」

「はい! ミドリ、正気に戻ってくださーい!」

 

 クソが、色んなことが同時並行で起こりすぎて何が起きてるのかまるで把握できねぇ。

 

 だが、最悪のパターンを踏んでることは間違いねェ。クソ熱い火で出来た鳥に、見るからに化け物な赤ずきん、そして感染経路も読めねぇ問答無用で正気を奪われる謎の胞子。

 

 ここは、この化け物共を管理する施設だった、ってわけか? 先生のハッキングは少なくとも10分以上前に行われていた。先生のハッキングによって起きてしまったわけではねェ。この施設で働いてた生徒たち……アイツらをぶちのめすことがなんかのシーケンスを起動する条件を満たしたのか?

 

 生徒を助けるにはいったん倒さなきゃなんねェが、倒したら倒したで今度はまた別に化け物共が出て来ると? 情報流出を防ぐ仕組みか何かか、それともあの化け物共の性質か。どちらにせよ、クソみたいな仕組みだな。

 

 思考を回しながらも、火の鳥から逃げ、背を向けて歩くアカネとミドリを攻撃する。すると、案外すぐに正気を取り戻した。

 

「……あれ、ちょ痛い、痛いですって! 何するんですか!?」

「これは、一体……っ、どうして撃たれてるんです!?」

「うし、正気に戻ったな!? そのまま進め、次の部屋に移るぞ!」

 

 一先ず二人の正気は取り戻せた。物理的に衝撃を与えれば解ける仕組みらしい。蒼い胞子の雲も飛び散り、火の鳥の熱で燃やされたのか溶けるように消えた。

 

「っ先輩。だがアスナが居ない!」

「わかってる! アスナの移動経路はどうせこの先だ!」

 

 正気を失ったアカネとミドリが進もうとしていた扉の先に全員で駆け込み、全身が軽い火傷を負ったみたいにヒリヒリする中で、安全を確認――。

 

「ワンワンッ!!!!!」

「ガルル……ッ!!!」

 

 できねェ!? なんだこの犬ども!? 白くてデカい犬に、クソデカい蒼く輝く双眸を持ったクソかっけぇ狼?

 

 共通する点があるとすれば、この犬どもはどちらも歯茎丸出しで、こちらを喰い殺そうとしていることくらいか。

 

「ッ撃つぞ! オラオラァ! 今更犬如きに邪魔されてたまるかよ!」

 

 しかし、蒼い瞳をした狼はアタシらを置いて、アタシらが逃げた部屋に突入していきやがった。全部が全部、アタシらを殺しに来るわけじゃねぇのか? ひとまず全員で白い犬をボコボコにぶっ飛ばすと、やはり巨大な白い犬も、赤ずきんのように卵のような姿に変わった。

 

「ッ、はぁ、はぁ……一体、何なんだ……それにアスナは……」

「ひ、ひとまず休憩にしようよ。何が何だか、もうよくわかんないしさ……」

「アリスは……これが時間制限が設けられたクエストではないかと思います。どんどん変なモンスターが出てきて、通信が繋がらないのもみんな、今戦っているからでは!」

「……ああ。休んでる暇なんて余裕はねェな。アタシらは狩る側から狩られる側に変わってんだよ。アタシらが取るべき次の行動はアスナを探しつつ、すぐに脱出できる位置を確保することだ」

 

 さっきの警笛みたいな音も、化け物の一種ってことだな。蒼い胞子にデカい狼、火で出来た鳥、口が裂けた赤ずきん。この出鱈目なラインナップに無機物が入らないとも思えねぇ。

 

 まだ化け物が居んのか……さっさとアスナを回収して引くしかねェな。さっきから蒼い波動で頭も痛ぇし、妙な衝動染みた感覚が消えない。

 

「時間制限は思っているよりも早えぞ。お前ら」

 

 ったく、どこ行きやがった、アスナ……!

 

 

 

 

☆

 

 

 

 

「死んでください死んでください死んでください死んでください!」

「これもしかして結構ヤバい状況だったりするんじゃない? ほいっ!」

 

 二人の爆弾が通路ごとボコボコに吹き飛ばしていくけれど、巻きあがった爆炎を突っ切ってくる白い勾玉のようなナニカ。少しは効いてる様子を見せてほしいわね……いくら何でも硬すぎるんじゃない!? どっ、どうしたらいいのよ!? 一旦逃げる!? でも逃げたら先生を探すのも――。

 

「社長。どうする?」

 

 ……。

 

「……逃げるしかないわね。皆、先生の救出はしたいけれど、ここにはゲヘナの風紀委員が来てる。悔しいけど、便利屋にできないこともあの風紀委員長ならできるはずよ。あとは彼女たちに任せて、脱出するわよ!」

 

 何とか正気のままだけど、私も含めてうちの社員たちもそこそこ精神的に疲れてきてる。蒼い波動に白い勾玉、何か危なそうだったから撃っておいた提灯、床を泳ぐ気味の悪いサメ、目の生えた浮かぶ雲。

 

 何匹かは倒せたけど、こちらを無視してどこかに消えたものも多い。便利屋の火力じゃ倒しきれない存在も、風紀委員長なら倒せるはず。

 

 やっぱり、脱出するしかない……でも、それで本当にいいのかしら? 勝てないから逃げるのはアウトローに相応しい振舞い? それでも社員たちの安全に替えることはできないし……。

 

「流石はアル様です! 先陣は私が切らせていただきます!」

 

 ごめんなさい、先生。せめて先生の安全を確認できれば良かったのだけど、この状況じゃそれも難しいわ……。

 

 そうして雪崩れ込むように部屋を突っ切り、そのまま元のあの大広間に向かっていくと、そこには。

 

「…………」

 

 片腕がなくなり、大量の血液を流して倒れている風紀委員長の姿があった。周りには誰も居ない。誰かが居た気配もなく、ただマシンガンを手に、倒れている。

 

 ――え?

 

「――ヒナ、!?」

「カヨコ! っ、委員長を抱えて頂戴。扉から逃げるわ! 事態は私たちが思ってるより深刻よ!」

 

 ああもう、どうしてこうなるのよ!? 風紀委員長がまさか、片腕まで何かに食べられたみたいになって、倒れてるなんて……!? この様子を見るに、風紀委員も壊滅に近い。

 

 作戦は失敗した。

 

 それも、これ以上ないくらいに、最悪に。

 

 

 

☆

 

 

 

 何かに導かれて歩いている。

 

 鼻孔へと届く微かな香りは、柔らかい春の香りだ。

 

 光を反射して、妖しく揺れる紅が恋しい。

 

 春だ。春を迎えよう。

 

 C&Cの皆を誘って、他にもたくさん呼んで、花見をしたい。リーダーは結構シャイだから、他の人が多いと遠慮しちゃうかもしれないけど。それでも、あの桜を見ればリーダーもみんなと仲良くなれると思うし。

 

 楽しみだ。まだまだ、絶頂ではないけれど。それでも、私が行けば、もっと綺麗に咲き誇るはず。

 

 

 一ノ瀬アスナは気付かない。背後から追いかける機械に気付かず、黒い勾玉が通り過ぎたのにも気付かず、臓物を載せたそりを引くトナカイに気付かず、自身が一体何をしていたのかさえもぼんやりと思い出せず。

 

 ただ、その心には、血を得れば得るほど、妖艶さを濃くする桜の美しさしか――。

 

 故に。

 

 エンジンのように唸る音にも気付かなかった。鼻には桜の香しい香りだけが届いて、人間のあらゆる臓器が放つ異臭も気にはならなかったのだ。

 

 大きな不揃いの蒼い瞳が、同じ蒼い瞳の少女を見つめる。

 

「お花見、楽しみだなぁ。先生とも、一緒にお花見行けるかな? まだお話したこともないし、仲良くなれるかも!」

 

 歩く。ただ、その美しい光景を夢見て。

 

「あぁ――たのしみ!」

 

 その異形から大きく飛び出た、人間の舌に呑み込まれるときでさえ。

 

 心が躍る少女のように。

 

 

「good-bye」

 

 ごっくん。

 

 

 

 

 

 しばらくして、ヘイローを持った少女は動き出した。

 

 何度も転んで、身体の至るところを打ち付けて、テンションが上がった犬のように。

 

「お花見、楽しみだなぁ。先生とも、一緒にお花見行けるかな? まだお話したこともないし、仲良くなれるかも!」

 

 一ノ瀬アスナは微笑んだ。

 

 

 





このアスナ、ヘイローあるんだ。じゃあほんものだね。


ちなみにしれっと上層で制圧済みエリアを保守していたトリニティ自警団が死亡してたりします。
綺麗な死に方ができたチームとできなかったチームが居るらしい。(魔法陣の音とひらひらする音と爆発する音)なお今回の作戦にはスズミとモブ自警団しか参加していないので、レイサはいません!!!! 良かったね!!!!

これでもまだ遭遇してないアブノーマリティが居る事実。こいつらデジモンみたいなやられ方するな。

ALEPHじゃなければ何でもOKだと思っていないか? A……。なお完全に失敗したことを理解し、再挑戦もできず、チェックポイントにも戻れず、ただ絶望してる最中らしいよ。

これ中編どこまで続くんや?

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