L社の技術を持っただけの擬態型一般人Aがキヴォトスで生き残るためにできること。   作:D-T45-45-1919JP

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主人公からすると、彼らの技術は真面目に羨ましいものだったりする。


ゲマトリア所属、黒服との交渉

 

 

 

 連邦生徒会長の失踪からまた日を跨いだ。キヴォトスの混迷は未だに底を打つ気配を見せない。

 

 先生はいつになったら来るのやら。マジで外で歩きたくないんだが。今でさえ違法な武器の流通量が900%増加してるからな……。

 

 原作だとどれくらいだったか? 4桁パーセントだった気がするから、もう少し先の未来に先生は来るんだろうな。

 

 そんなことはともかく。

 

 俺はL社の事業として、手始めにミレニアムサイエンススクールの『疑似科学部』に接触した。部長のミライに独立電源ユニットを格安で売り付けたのだ。

 

 小口の既成事実を作るには最適の相手だった。彼女の性格はよくわかっていないが、アインフェイスで淡々と話しているとちょっとビビってるみたいで可愛かった。

 

 実は触られただけで死ぬらしいですよ、そいつ。病気のもやしみたいなやつなんで。

 

 ま、俺のことなんですけどね! ハハハ! ゴミ!

 

 この前、試験的に流した『希釈精神汚染中和ガス』。そのわずかな痕跡を辿り、日を置かずに俺の元に一通の招待状が届いた。

 

 送り主の名はない。ただ、黒い紙質にひび割れが入ったそのデザインだけで、それが何者であるかを雄弁に語っていた。

 

「……勘付かれるスピードが尋常じゃないな。流石はキヴォトスの深層に巣食う観測者というわけか」

 

 戦慄が背筋を走る。

 

 餌になればいいとは思っていたが……あの程度で本当に見つけてくるとは。

 

 ……さて、開きますか。どれどれ日時は~……はいはい、なるほどね。ぐったりと砂まみれのソファに寝転がり、思考を躍らせる。

 

 溜まった神名結晶を売り払う契約を今のところ考えている。

 

 これが成約すれば黒服から莫大な金銭を得ることができる。しかし、黒服は”悪い大人”だ。Aが行ってきた数々の人体実験や冷たい振舞いを考えれば彼が原作で行った所業は正直、生易しいものに過ぎないが……それでも警戒するに越したことはない。

 

 ……己の振舞いを悪と自覚している黒服と、無自覚に、あるいは気付かないフリで周りを地獄へと落としたA。

 

 どっちがマシかは明確に言えないものの……

 

 醜悪さで言えば、間違いなく後者だ。

 

 萎えるぜ!

 

 

 お前のことを言っているんだぞ! アイーン!!!!

 

 

 俺はため息を吐き、事前に調べておいたとある番号に電話をかけた。本当は別の目的で、それこそアブノーマリティとして呼ぶことを視野に入れてたんだがなぁ。

 

「……依頼がある。俺の護衛だ。場所は……あぁ。報酬は弾む。……ああ、頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒服に指定された場所はブラックマーケットのビルの最上階だった。

 

 

 そこに座り、こちらを鷹揚に待っていたのは漆黒の背広を纏った異形の怪人。揺らめく漆黒の焔の姿はこいつが一種のアブノーマリティなのではないかという疑念を駆り立てる。

 

「……ほう。これはこれは。初めまして、A。突如としてキヴォトスに出現し、そして正体不明のテクストを宿した存在であるあなたのことを、心からお待ちしておりました」

 

「ああ。初めまして、“黒服”」

 

 俺が無感動にその名を呼ぶと、黒服の周囲の空気がわずかに揺らぎ、感心するような音が漏れた。

 

「おや、知っておられたのですか? その呼び名を知る者は、とある少女を除いて居ないはずでしたが」

「……さて。呼んだ理由を聞かせてもらおうか。俺が企業を立ち上げたことも知っているんだろう? 色々忙しいんだ。手短にしてくれると助かる」

「ふふ、答えてはいただけないのですね。良いでしょう。あなたのご要望通り、シンプルに」

 

 黒服はゆっくりと姿勢を変えた。

 

「私はあなたと協力したいと考えています」

 

「我々と同じように、しかし確かに異なる領域から来たあなたには、我々と同じ未知を探し究める者としての誇りがあると感じました」

 

「あなたには資格がある」

 

「観察者であり、探究者であり、研究者である我々の同志として、是非迎え入れたいのです」

 

「我々の同志になれば、数々の真理と秘儀を共有しましょう。どうですか? 悪い話ではないと思いますが」

 

 実際、そこまで悪い話じゃないんだが……。

 

「ゲマトリアに入れということなら断る。協力することはむしろ歓迎したいところだが……こちらとしても妙なテクストを書き込まれても困る」

 

 どんな役回りを付与されるかわかったものではない。キヴォトスのテクスチャが持つ強制力を考えれば、ここで彼らの仲間入りをするのは、物語の敗北者としての役割を固定されるリスクがある。

 

 最も、記号を観測できる彼らがそのようなテクストを見逃すとは思えないが……念には念を、あと個人的に気に入らないのも居るし。

 

「……やはり、あなたは我々を知っているようですね。その方法がどのようなものであるかについて、とても興味が惹かれるのですが……それはまたの機会にしましょう」

「精神汚染中和ガスについてだろう? あなたが興味を惹かれているのは」

「実に実利的な名前ですね。私がそれを把握した頃には市場に出回った大半が消費され、実験に使用できる量ではありませんでした。アレは提供していただけるのでしょうか?」

「構わない。だが、アレの生産には『生徒』が必要だ。手に入ったなら回してくれると助かる。もちろん、まともな方法で頼むが」

「……クク、面白い。神秘にそのような側面が。やはり、あなたは我々に存在していない未知の技術をお持ちのようですね」

 

 交渉の主導権を渡すつもりはない。一つ、また仕掛けよう。

 

「議論を交わしたいのなら構わない。俺もあなたたちの持つ解釈には興味がある。だが……個人的に『傲慢な薔薇』は好かなくてな。アレはあまりに浅慮で、慎重さに欠けている」

「彼女ですか。……やはり、ゲマトリアの内情についても随分とお詳しいようだ」

 

 実際マジで尊敬している。トリニティの地下で今頃制作中であろう太古の教義という概念の実体化、人工の天使にして、神性の怪物。

 

 ヒエロニムスを作れるような技術を持っている時点で、俺は彼らに教えを乞いたいくらいだ。

 

 望んだアブノーマリティを取り出すくらいの凄いことしてるからね、こいつら。おそらくキヴォトスの持つテクスチャを利用することで成し遂げているんだろうけど、平和的すぎて泣けてくる。見た目も凄い良いし。

 

 うちの抽出とか基本的に人間に、ちょっとチクッとしますよ~! してアブノーマリティに変化させる感じだからな。

 

「本音を言えば、ゲマトリアに入るのも吝かではない。だが、時機が悪い。今後の展開次第だ。……そして、あなたから俺に話があったように、俺からも商談がある」

「というと?」

 

 俺は用意してきた袋の中から、鈍く輝く結晶を取り出し、テーブルに置いた。

 

「あなたはこれが喉から手が出るほど欲しいんじゃないかと思っているのだが……どうだ?」

 

「――それはっ、まさか! 少し触ってみても?」

「ああ。試供品だ。好きにしていい」

 

 黒服がその指先で結晶に触れた瞬間、彼の頭部を形成する漆黒の焔が揺らめく。歓喜、驚愕、そして狂気。

 

 案外感情豊かなヤツだ。

 

「……『神秘』。忘れられた神々の持つテクスト、その根幹を為す記号そのもの……!? どうしても我々では観測することが叶わなかったそれを……! 素晴らしい! ……失敬、取り乱しました」

「これは俺の研究の副産物に過ぎない。故に使い道もないんだが……これが後、百個はある。どうだ、黒服。俺とあなたは良いパートナーになれると思わないか?」

「……ええ、もちろん。実に、実に良い関係を築いていけることでしょう」

 

 俺と黒服は、テーブル越しに握手を交わした。

 

 

 

 

 細々とした交渉を終え、劇場を出る。

 

「……護衛は終わりだ。助かった。便利屋。やはり安心感がある」

 

「ふっ。お世辞は要らないわ。クライアントは対価を払い、私たちはただ良い仕事をするだけ。そうでしょ?」

 

「ああ。報酬は額面通り振り込んでおく」

 

「ふふっ、話のわかるクライアントで助かるわ」

「……アルちゃん。口座凍結されたのもう忘れちゃったの?」

「あっ! そそそそうよね!? えっと、A! 支払いの方なんだけれど、ちょっと待っててほしいというか――」

「……なるほどな。流石はブラックマーケットを生き抜く便利屋68。足が付く可能性を危惧しているわけか。いいだろう、俺が銀行から金を下ろすまでの間、少しだけ護衛を延長してもらう。報酬は現ナマで。そういう意図だろう」

「え!? え、ええ! そう! そうなのよ! 本当に話のわかるクライアントね! ふふふ……」

 

 ……危惧していたような事態が起こらなくてよかったな。ここで便利屋と顔を繋げるメリットも大きい。

 

 それに個人的に便利屋68好きだから、ちょっとテンション上がる。

 

 

 

 

 










書いてて面白いンゴなんですけどねぇ、この主人公ちゃーんと物語的に動いてくれるのかと言うと……うーんって感じなのよね。

先生に任せとけば酷いことにはならないって感じだからサ……。

動け、動けってんだよ! このポンコツが!

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