魔法少女ぜんぶのせ☆ ~マジカルハーレム、進行中!~   作:夏目八尋

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魔法少女とは、という設定語り回。
特にBパートがそうですが、AパートとCパートにまとめてあります。


第12話 魔法少女(解説・オタク語り・対立?!)

 春の昼過ぎ、調部博物館。

 陽が差し込まぬようアニメ柄の遮光カーテンで窓を覆った、つむぎの城。

 

「うわああん、兄さん! ワタシ穢された! ギャルの振りしたマッド研究者にけ~が~さ~れ~た~~~っ!」

「よーしよしよし。頑張った頑張った」

 

 俺の右腕にべったりと引っ付いて離れないプリンセスと。

 

「いやぁ、素晴らしい体験だった。先日はちゃんと触れ合う機会がなかったからねぇ」

 

 つやつやテカテカした顔で、優雅にコーヒーを嗜む同期。

 

「できれば唾液や汗などもサンプルとして回収しておきたいのだが、協力する気は」

「な・い・わ・よっ!」

 

 明暗分かれる二人を眺め、状況が一区切りついたことを確信し、俺は口を開いた。

 

 

「つむぎ、ちょっといいか?」

「なんだね助手くん?」

「えっと、つむぎが不思議ノ市に数多く存在する“女性活躍伝承”と、日ノ本で愛され続けてる“魔法少女モノ”について調べてて、その過程でどういうワケか魔法のアイテムを贈られて魔法が使えるようになったって流れはわかったんだが……」

「ふむふむ、それで?」

 

 コーヒーをテーブルに置き、不思議そうに小首を傾げる同期に向かって。

 

「そもそも……“魔法少女”ってなんなんだ?」

 

 昨日の騒動から今まで、自分の中でずっと燻ぶっていた疑問を投げかける。

 

 

(いわゆる女の子の憧れって呼ばれるものだったり、ゲームやアニメの登場キャラとして、戦ったりやられたりする何か)

 

 魔法少女ってのは正直、俺にとってはその程度の理解しかないのが現実で。

 

「つむぎは結局……その、魔法少女ってやつで、いいのか? あと、リリーも」

 

 昨日から何度も耳にして、意識に入り込んでいる言葉。

 けれども俺個人としては、どうにもまだピンときてない言葉。

 

 だったらもう最初の一から聞いてしまおうと、そう思っての問いかけだった。

 

 

「なるほど、助手くんはそこからなんだね」

 

 俺からの問いにつむぎはふむと顎に手を添え考えるような仕草をしたあと、ひとまずといった風に直近の問いに答えてくれた。

 

「いかにも。リリーくんはまさしく、そして私も()()()()魔法少女に含まれるだろう」

「分類上?」

「うむ。魔法少女というのはそれはもう多種多様な姿を持ち、ひとえにこれこそが魔法少女であると定義するのが難しいくらいには、広い範囲をカバーする言葉なのだよ。球技と言って、サッカーと野球、ゴルフじゃ全然違うようにね」

「多種多様なのが魔法少女……」

 

 魔法少女はいろいろ。

 わかるような、わからないような……。

 

 小難しさに頭を抱えそうになった、その時。

 

 

「ふっふっふ、いいともいいとも! キミがこの手のことに疎いのは既知だからね。面白おかしく脱線しつつ、かつ長々たっぷりと解説しようじゃあないかっ!」

「そこは短くすっきりとまとめて欲しいんだが」

「善処しよう!」

 

 勢いよく席を立ったつむぎが両手を広げ、サイドテールと白衣を揺らしてこちらへと歩み寄ってくる。

 抜群のスタイルを惜しげもなく見せつけながら傍までくれば、突然のことに対応できず椅子に座ったままの俺の肩に手を置いて、グッとその綺麗な顔を近づけ――。

 

「ちょ、待ちなさ」

 

 くるんっ、ガバーッ!!

 

「はぇっ?」

 

 ――そこへ迂闊にも割り込んできたリリーを捕獲し、再びかいぐりし始める!

 

 

「あっ、み゛ゃあ゛ーーーっ!?」

「リリーくんつーかまーえたぁ~~♪」

「ひっ! ちょ、なんで服の中に手をっ?!」

「昨日今日でずーいぶんと助手くんと仲良しになったようだねぇ? そこのところも詳しく聞かせてくれないかい? いいよね? いいだろう!?」

「い゛や゛あ゛あ゛~~~~に゛い゛さ゛~~~~ん゛っ!!」

 

 多分、こっちが本命だったな?

 それはもう楽しそうにリリーの全身を撫でまわすその姿、(一部に目をつむれば)可愛いものを前にはしゃぐギャルそのもので。

 

「さて助手くん。キミのご要望にお応えし、真なる『ふでん研』の研究テーマ“魔法少女”について、調部つむぎが一からご説明しよう!」

「あ、ちゃんと説明はしてくれるんだな」

「に゛い゛さ゛ん゛っ!」

 

 そんなこんな。

 同期による魔法少女解説(オタク語り)が始まった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 魔法少女(まほうしょうじょ)

 それは、ちょっとだけ特別な、とある女の子たちの呼び名。

 

 空を飛んだり、光を放ったり、大人顔負けのパワーを発揮したり。

 姿を変えたり、不思議な道具を扱ったり、誰かの心や体を操ってみたり。

 動物とお話ししたり、常ならざる何かを視たり、あるいは何かに立ち向かう力を手にしたり。

 

 数えだしたらキリがない、常識外の力を扱う、不思議な不思議な女の子たち。

 

「それが、魔法少女だ。ちなみに女の子である以上基本的にはティーンを指し示すものとする。例外はもちろんあるんだけれどね」

 

 散々リリーを愛でたあと、どこからともなく持ってきたホワイトボードに、魔法の万年筆を走らせて。

 

「ここまではいいかね? 助手くん? リリーくん?」

 

 解説モードに入ったつむぎが、度の入ってないメガネをクイッと持ち上げた。

 

 

「あぅー……」

「ああ、大丈夫だと思う」

 

 弄られまくって隣で溶けてるリリーはひとまず置いといて、思考する。

 

(今教えてもらっただけでも、魔法少女にできることのイメージって、色々あるんだな)

 

 魔法少女の多種多様さ、それを具体例と一緒に教えてもらったおかげで少なからず理解が深まった……深まった、が。

 

「それが魔法少女ってやつの概要なら……当てはまる範囲、すごく広くないか?」

 

 頭にフワッと浮かんだ疑問を、そのまま口にする。

 

「! その通りだよ、助手くん!」

 

 我が意を得たり。

 そんな様子でつむぎの瞳の輝きが、もう一段階ギアを上げた。

 

 

「魔法少女というものは、古今東西の不思議な力を持った女の子、その大半を受け止める非常に深い懐を持った存在なんだ!」

 

 楽しそうに言いながら、つむぎが白衣を翻しホワイトボードに新たな文字を書き込んでいく。

 

「……ハッ!? ここはどこ? ワタシは誰?」

「おはよう、リリー。起き抜けに悪いがあれ、読める?」

「あっ、お兄さ……兄さん! さっきはよくも見捨てて……え? ああ、読めますよ? エターネーヴァでは日本語必修科目でしたので」

 

“当然です”と胸をぽよんと張るリリー。

 彼女は得意げに書かれた内容を指差して、それを淀みなく読み上げ始めた。

 

 

「魔法使い、姫、魔道具使用者、サイボーグ、忍者、占い師、エスパー、霊能者、宇宙人、アイドル、聖女、小悪魔、巫女、戦士、錬金術師……兄さん、最後のあれなんて読むんですか?」

「あれはetcと書いてエトセトラ、他にもいっぱいありますが省略しますって意味だな」

「なるほど、英語ってやつね」

「元はラテン語だね。でも英語圏でも日ノ本語圏でも使えるんだ」

「つまり、何語?」

「記号」

 

 横道に逸れつつも、書き上げられた文字を見て考える。

 実在・非実在が入り混じった単語の数々、これが指し示すのは……。

 

「……これは、職業?」

「正確には役割(ロール)と呼ばれる、その人物の立場を示すものの例示だよ、助手くん」

 

 万年筆を器用に回して、つむぎが振り返ってウィンクした。

 

 

「これらは魔法少女の多種多様さを示すうえで欠かせないファクターだ。なぜならば、今ここに書いたもの、そのすべてが魔法少女の中に内包されるのだから!」

「暴論では?」

「暴論ではないとも。なぜなら魔法少女とは“女の子の望む未来”そのすべてでもあるのだからね」

 

 言い切った。

 こちらを見つめるライトブラウンの瞳に曇りなし。

 

「そも、魔法少女という呼び名に含まれる“魔法”とは、何もファンタジー作品に登場するような魔法だけを指すワケじゃない。なんなら現代において馴染み深いモノであっても、その時代においては超常とカテゴライズされた力もまた、この魔法には含まれる」

 

 言葉を止めず、ホワイトボードを一度綺麗にリセットして。

 新たに彼女が書き込んだのは、日ノ本が誇る著名な偉人の名前。

 

 

「……卑弥呼(ひみこ)?」

「誰ですか、その人」

「大昔、邪馬台国という国を導いた女王の名前……って、まさか」

「そう! そのまさかさ!」

 

 驚く間もなくつむぎが矢印を書き足し、続けて書き記す文字は――()()()()

 

 

「私の論じる範囲において、邪馬台国の女王卑弥呼もまた……魔法少女に分類できる!」

「な、なんだってーーーー!?!?」

「?」

 

 へー、卑弥呼って魔法少女だったんだ……って、なるかそんなの!!!

 暴論を超えた暴論過ぎて、開いた口が塞がらない。

 

「いや、だって、そんな……!?」

「当時の成人……十代後半だった卑弥呼は天候を占い、未来を占い、人々を導いたと記録に残されている。これは当時にしてみれば、なんなら現代の世においてさえ、立派な超常の力とも言えるだろう? 年齢的にもティーンだ。少女という呼び方に違和感もあるまい?」

「ぐっ。微妙に筋が通ってそうな言い方を……!」

 

 だからって、卑弥呼を魔法少女と呼ぶのは無茶苦茶が過ぎるんじゃないか!?

 あれは歴史的に見れば占術という確かな技術であって、後の天体観測などから様々な知見を得る陰陽術などに繋がるれっきとした――。

 

 

「――そこに、()()()()()()()()()()()()()()()()を、キミは否定できるかい?」

「!?」

 

 ハッとして、目を見張る。

 俺の知ってる歴史観通りなら、その言葉を否定できる……できたハズだ。

 

 だが。

 

()()()()()()()()()()。もはや、()()()()()()()()()()()()()()()?」

「それは……」

 

 不敵に笑うつむぎに対し、俺に反論の余地は……ない。

 なぜなら俺は、もう。

 

「ふっふっふ。どうだい、助手くぅん?」

「兄さん?」

 

 自分の知ってる歴史から、大きく外れた存在たちを、魔法(チカラ)を、目にしてしまっていたのだから。

 

 

「卑弥呼が、マジで魔法少女だった……かもしれない、のか」

「そう。女の子が望む不思議な力、可能性の力……それを現実の力として持つ者を魔法少女と定義できるのだから、歴史上の偉人が魔法少女だった可能性は、当然にあるってワケさ!」

「マジか……」

 

 改めて、俺の中にある常識が、無惨にガラガラ崩れ落ちていくのを感じた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「卑弥呼を分類するなら、魔女族発明型になるかな? ふふっ、結構レアなタイプだ♪」

「………」

 

 またつむぎだけにわかる言い回しをされるが、俺はそれどころではない。

 

(卑弥呼が魔法少女だなんて……魔法少女って、そんな身近な……歴史に紛れ込んでいいものなのか!)

 

 叩き込まれた言葉のインパクトに、ただただ驚愕するしかなかった。

 

 

「助手くん助手くん。史実しかり、不思議ノ市の女性活躍伝承しかり、そして……魔法少女モノしかり。時代時代に花を咲かせた多くの人々の中に、私たちのような実在の魔法少女そのもの、あるいは魔法少女との繋がりを持った誰かの存在があったかもしれない。私が研究しているテーマは、そうした不思議を探求し、解き明かすことを目的としている」

 

 情熱の火をサイドテールに灯し、火の粉のように燃え滾らせて。

 

「まぁ元々は、伝承やアニメに語られるストーリーを紐解いていく上で、現実にそのような超常存在が実在するのかという疑問をこそ探求していたのだが……そこはほら、ご覧の通りだからね?」

 

 彼女の超常の証である、万年筆をくるりと回し。

 

「リリーくんに星宮くん、私も含めて3人もの魔法少女が観測された以上、私は私の立てた仮説“魔法少女が実在し、現実に伝承やアニメのような活躍をしている可能性”はあると確信している」

 

 メガネ越しのライトブラウンが、輝きを増す。

 

 

「現実に紡がれる、魔法少女たちによる物語の実在観測……これこそが、今の私の研究テーマだ!」

 

 そう言って彼女は、俺たちの前にそれを差し出す。

 

 それはいくつものページを積み重ねた、つむぎの研究成果を記した紙の束。

 

 そのタイトルは――『魔法少女ものがたり論』。

 

 

「魔法少女は実在した。ならば今この瞬間にも、魔法少女たちは現実(ここ)で、伝承やアニメみたいな物語を紡いでいる!」

 

 

 つむぎの視線がリリーを射抜く。

 次いで目を閉じ、自分の拳を胸に掻き抱き、燃える情熱をそこに押し込むように握りしめ、告げた。

 

 

「改めて、助手くんにお願いしたい」

 

 気づけば正面にひざまずくつむぎの、ライトブラウンの瞳が上目遣いに俺を見る。

 

「私とともに空想を現実へとリンクさせ、その向こう側にある深淵なる真実に、二人で一緒に手を伸ばさないか?」

 

 縋るように、切々と。

 

「キミが今日までふでん研で調べてくれた不思議ノ市の伝承たちもまた、このテーマを深める上で重要なファクターだった。キミの助けがあったからこそ、私はさらなる未来へ踏み出せる」

 

 一人の研究家で、助けを求める女の子が、そこにいた。

 

 

「私にはこれからもキミが必要なんだ。だからどうか、これまで以上に親密に、私と一緒により深く、深く、手を繋いでいこう?」

「つむぎ……」

 

 そうして同期に差し出された手を、誘われるままに取ろうとして。

 

「ダメ」

「えっ?」

 

 ガシッ、と。

 不意に横から伸びた手に、阻まれる。

 

 

「ダメよ、兄さん」

「リリー?」

 

 見れば、強烈な圧を感じさせる冷たい目をして、リリーがつむぎを見つめていた。

 

 

「兄さんは、王家の試練を手伝ってくれるって言ったのよ」

「選ぶのは彼だ。その選択肢を提示することすら封じようとするのは感心しないな?」

 

 

 つむぎもまた、立ち上がり、リリーに負けない真剣なまなざしで見つめ返して。

 

 

「兄さん?」

「助手くん?」

 

 互いに一触即発の気配を漂わせながら。

 二人の視線はゆっくりと、挟まれている俺へと向けられるのだった。




好きなことを語りまくる子、好き。

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