魔法少女ぜんぶのせ☆ ~マジカルハーレム、進行中!~   作:夏目八尋

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第13話 協調(繋がる縁と真の怪物)

「「………」」

 

 深青色(サファイア)明茶色(シトリン)

 二つの鋭い視線が、俺へと突き刺さる。

 

 それらは同時に視線を外すと、互いに見合い向き合って。

 

「兄さんは、ワタシに協力してくれるんです!」

「助手くんは、私と先に協力関係を結んでいるんだ!」

 

 ずずいっ!

 

 鼻先が触れ合いそうなほどの至近距離。

 互いに胸を押しつけあっての、今にも取っ組み合いになりそうな、アブない距離だ。

 

「ぐぬぬ!」

「むむむ!」

 

 バチバチッと火花を飛ばし合い、真っ向から対立する。

 息を吞むような緊張感が、場を支配する。

 

 

「なぁ」

「アナタの研究なんて何年も一人でやれたのだから、これからも一人でやればいいじゃない! ワタシは15(オトナ)になるまでに結果を出さなきゃいけないの、今、兄さんの助けがいるの!」

「キミの試練は本来キミ自身が乗り越えるべきものだろう?! 助手くんの優秀さにかこつけて楽をしようだなんて、それこそ王家の沽券に関わる行ないじゃあないのかい?!」

「二人とも」

「なによ! 子供が大人のフリして背伸びしてるだけのくせに!」

「いいや! この姿こそが私が私らしくあれるワンダフルな真の姿だ!」

「ちょっと」

「っていうかその格好は何!? 研究者を気取ってるくせにそんなネイルバッチバチのイケイケで女の子全開じゃない! カッコいいと可愛いの両取りとかナマイキよ!」

「それを言うならキミこそなんだその格好は! 澄んだ色のワンピースで可憐さと清純さを高めて、強気な態度とのギャップがとんでもないことになっているぞ!」

「………」

「ふっふっふー。これ、兄さんのコーデでーす!」

「なん……だと?! う、うらやま……いや、くっ、このっ!」

 

 腕を振り上げたつむぎが少し離れた……今!

 

 

「はいはい、そこまで!」

「ふやぁっ!?」

「ぬあっ!?」

 

 つむぎがたじろいだ瞬間を見逃さず、席を立って二人の間に割り込む。

 両者の肩を抱き寄せる格好で左右に引っぺがし、俺の両隣にくるよう離してやれば。

 

「二人ともまずは落ち着」

「に、兄さんっ! ギュッて、ギュッて……!」

「ふぁっ、助手くん……こんな、いきなりは……その……」

「???」

 

 なぜか、思ったよりもすんなりと大人しくなってくれた。

 ただ心なしか、それぞれから密着されている気がする。

 

(まぁ、落ち着いてくれたならなんだっていいか)

 

 ひとまず向こうから引っついてくる分には気にしないでおく。

 俺が原因で争うとか、そんなに見たいものじゃないからな。

 

 

「確認したい。二人はそれぞれ、俺にやって欲しいことがある。リリーは王家の試練の手伝いを、つむぎは研究の手伝いを、それで間違いないか?」

「そうです! 兄さんは当然、ワタシの味方してくれるでしょ!?」

「助手くん! キミは私との探求の日々も楽しんでくれていただろう? だったら!」

「はいはい、落ち着いて落ち着いて」

 

 再びヒートアップしだした二人の頭をポンポンと撫でて押し鎮める。

 ノリ的に完全に子ども扱いしてしまってるが……。

 

「はひはひ、兄さん……!」

「んんっ、助手くんは、本当に……」

 

 なんか二人ともこれで落ち着いてくれるしよしとする。

 今のうちにとっとと本題に入るべし。

 

 

「王家の試練の手伝い、それと、研究の手伝い。俺は……」

「……じっ」

「……ごくっ」

 

 というか。

 この問いの答えなんてのは、最初から決まってる。

 

 

「……もちろん、どっちも全力で手伝うつもりだ。この、御伽守陸人の名に懸けて!」

「「えっ」」

 

 さっきのリリーの言葉じゃないが。

 

「なんたって俺は。リリーの兄で、つむぎの同期だからなっ!」

 

 ここは当然……両取りだっ!

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「いや、いやいや助手くん」

「兄さん、それはさすがに……」

 

 左右の耳にサラウンドで困惑の声が届く。

 

「私の研究対象は不思議ノ市全域だ。フィールドワークも当然あるし、資料とするアニメの連続視聴だとかもあれば、疲労もバカにはできないぞ?」

「そうですよ兄さん。王家の試練にある“本当に大切なもの”が何なのか、未だに見えてこない状況なんです。考えながら動くというのは、かなりの負荷がありますよ?」

 

 それぞれに心配そうな言葉をいただくが。

 

「大丈夫。これでも俺は、体力には自信があるからな!」

 

 無問題(モーマンタイ)だ!

 

 

「いや、体力に自信があるといってもだね?」

「そうですよ兄さん。無理して体を壊したりなんかしたら……」

「大丈夫大丈夫」

 

 まだまだ心配そうな二人に対して、俺は端末を取り出し、愛用しているスケジュール管理アプリを起動する。

 

「「???」」

「えーっと、ここかな?」

 

 不思議そうに画面をのぞき込んでくる二人に、俺は数年前の日付けまでページを戻してそれを見せた。

 

 

「多分これが、一番忙しかった時のスケジュールだな」

「「……え」」

 

 二人の声が重なる。

 

「「えええええーーーーー!?!?」」

 

 その後の驚きの声まで重なれば、俺は二人が仲良くなれる未来を確信した。

 

 

「え、ちょ、にいさ、これ……!?」

「いやちょっと、待ってくれたまえ助手くん。このスケジュール、本当にこなしたのかい?」

「万事解決。滞りなく。元気も元気に乗り切ったよ」

「「えぇ……」」

 

 右に左に、困惑や驚愕、どこか畏れすら抱いてそうな顔を浮かべるリリーたち。

 さすがにここまで驚かれるとは、ちょっと思ってなかったが。

 

 なにしろ。

 

「この時、ちょうど高校の文化祭の時期と父さん母さんそれぞれのお客さんたちの滞在とが重なってさ。その頃やってた生徒会の仕事やアルバイト、町内会の活動や、朝のルーティーンだったトレーニングに加えて実行委員やお客さんの世話とかが入ってきたから、そりゃあもう毎日慌ただしかったよ。ざっと2週間くらい?」

「「2週間!?」」

「……今思い返しても、充実したいい日々だった。不思議とタスクが増えれば増えるほど、俺の体力も倍々に増えていく気がして、全身から力が溢れ出していってさ」

 

 これは俺にとっては、誇らしくも楽しかった、思い出の日々だった。

 

「「………」」

 

 まさしく忙殺と言っていい、息つく暇もないくらいの忙しさ。

 その過程で生まれる、たくさんの人との触れ合いや、交流、協力や競争。

 

(あの時ほど、人との(えん)ってのを感じた日々はなかった……!)

 

 母さんの言葉を強く実感して、これはすごいって感心したもんだ。

 

 

「あの日々に比べたら、リリーの試練の手伝いをしながらつむぎの研究に協力するなんてのは、まだまだ序の口ってやつだよ。本当にさ」

 

 だからこその、両取り。

 

 リリーとの不思議な出会いから始まった縁も。

 つむぎとの研究を重ねてきたこれまでの縁も。

 

 俺はどっちとの縁も、面白くてもっともっと深めていきたいと思っているから。

 

「二人とも気にしないで、俺を頼ってくれていいんだぞ!」

 

 だから俺は今。

 万感の思いを込めてそれぞれの顔を見た。

 

 

「「………」」

 

 ドン引きされていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 ここぞとばかりに語ってスベった体力自慢の、その後。

 俺は二人に揃って優しく席を勧められ、大人しく腰かけた。

 

「まぁ、助手くんが化け物だった件については行幸として流しておこう」

「化け物……」

「そうね、兄さんがとんでもない体力モンスターだった件については置いておきましょう」

「モンスター……」

 

 散々な言われようにしょんぼりだ。

 こう、時間や自分の体力を上手にやり繰りしたりとか知恵を絞ったりしたのが楽しかったって話なのに……。

 

「人がいいとは思っていたが、よもや、あそこまでタスクを抱えても楽しめるとは」

「ほんと、兄さんったら……」

 

 どことなーく呆れられた視線を向けられているのがやるせない。

 

 

「まぁ、あれだよ。あそこまでのタフネス実績を見せられては、両方こなすというのもできるとしか言えないねぇ」

「えぇ、兄さんならできそうって納得させられちゃった以上、これはもうしょうがないわ」

「で、あれば。争う理由はもはや、ないのも同然だな」

「同感。どうせワタシたちがゴネねても、兄さんは両方の手伝いしちゃいそうだしね」

 

 ガシィッ!

 

 目の前で、固い握手が結ばれた。

 話は丸く収まったのだと、目に見えて理解する。

 

(……まぁ、結果としては悪くないな!)

 

 結果オーライ。散々に言われた甲斐もある。

 なんたって、新しい縁が生まれるその瞬間に、俺は立ち会えたのだから。

 

 

「さて、ならば、だ。私もリリーくんの王家の試練、手伝わせてもらうとしよう」

「そうね。それならワタシも、アナタの研究、協力させてもらうわ」

 

 そうして気づけば、二人の魔法少女のあいだに協力関係まで結ばれて。

 

「俺も忘れないでくれな? 俺にできる最大限、協力するから」

 

 二人の繋いだ手に、俺も手を重ねる。

 この縁が、より良いものになるようにと願いを込めて。

 

「兄さん……」

「助手くん……」

 

 二人の視線が柔らかく俺を見つめて。

 

 

「じゃ、じゃあまずは当然、ワタシの手伝いをお願いしますね?」

「まずは私の研究を進めよう。それこそがすべてにおいて優先される。そうだろう?」

 

 あ。

 

「へぇ?」

「ほぉ?」

 

 ポンコツプリンセスと年齢詐称ギャル白衣。

 再び交差する視線と、バチバチッと飛ぶ火花。

 

 

「……ここは譲ってもらうぞプリンセス!」

「イヤに決まってるでしょう! マジカル・マジック・マギア・マ」

「はーいはい、両方! 両方手伝うしちゃんとスケジューリングするから!」

「「ぷぎゅるっ」」

 

 繋いだ手を即行で払って対立する二人をすぐさま捕まえて止める。

 

「に、兄さん。またそんな、なでなでなんて……」

「ふふふ、助手くぅん。こんなにされると、あうっ、癖になってしまいそうだぁ~」

(これは、あれだな。……超有名なあの関係だ)

 

 “ケンカするほど仲がいい”

 

 これも一つの縁の形だと、気づいた俺は妙にストンと納得するのだった。




主人公はタフガイ。

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