魔法少女ぜんぶのせ☆ ~マジカルハーレム、進行中!~   作:夏目八尋

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いよいよ、魔法少女が登場します!


第02話 違和感(バグッた父と見知らぬ妹)

 夕暮れの町を、半分食われたパンみたいな雲が流れゆく下、つむぎと一緒に歩く。

 俺の家はベッドタウンにあって、この時間に通ると至る所から生活音が聞こえてきて心地いい。

 

「もうそろそろだよ」

「そそそうか!? はははははたたたたのしみだだだだ!」

「言い出しっぺが緊張しすぎじゃない?」

 

 日常の気配に落ち着く俺とは裏腹に、隣を歩く同期つむぎはガッチガチに緊張していた。

 

 

「ふ、ふふふ普段世話になっているキミのご家族にごごごご挨拶するのだから、ししし失礼のないようにしなければならないだろう!!」

「母さんは家にいないし父さんもアトリエに籠ってたら出てこないだろうから、気楽でいいって。取って食いやしないから」

「とってく……!? あわわ、一気に大人の階段を上ってしまうのか私は!?」

「階段は上ることになるだろうな」

 

 とっとと家に上げてコーヒーの一杯でも振る舞えば落ち着くだろうと考えて、さっさと歩き出す。

 

「ま、待ちたまえ助手くん! 待って、待っておくれよー!」

 

 ふでん研でのやり取りとは打って変わって借りてきた猫みたいにぷるぷるしているつむぎは、それはそれで可愛らしい。

 シャツの裾を掴んできたので、されるがままに連れて行く。

 

 父さんを前にしたらどうなるか気になったから、ほんの少し早足で。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「はい、ここが俺の家です」

「ここが助手くんの……」

 

 玄関門を前にして振り返った俺の視界に、目線を上げて呆けたつむぎの顔が映る。

 

「これは……なかなかに立派なお家だね」

「令和の時代に庭付き一戸建てなのは、間違いなく恵まれていると思う所存」

 

 彼女の視線の先には俺の家――庭付きで2階建てのそこそこ大きな洋風家屋が建っていた。

 

「あっちの分かりやすく増築されている部分は」

「父さんのアトリエだな。父さんは基本あそこに引きこもってずっと作業してるよ」

「なるほど」

 

 坂になってる交差点と接する角家は、思った以上に上下に広い。

 ガレージは地階に設置され、玄関門の向こうは8段くらいのやや急な階段となっている。

 

 築ン十年の家に、バリアフリーの概念は残念ながら未実装。一応手すりがあるだけマシといったところである。

 

 

「ちょっと出入りは大変だけど、いいところだよ」

「ふふ。メルヘンな感じで私は嫌いじゃないよ。実にワンダフルだ」

 

 つむぎを連れて階段を上れば、玄関へ続く小道と庭が見える。

 

「庭も立派なものだ……って、周りの木はもしかして桜と銀杏……あっちは百日紅と椿かい? あ、じゃああっちは紫陽花?」

「すごいな、わかるんだ? あれは父さんの要望で、四季それぞれの花木が植えてあるんだ。ちょくちょくモチーフにして絵を描いているよ」

「へぇ……」

 

 5月という絶妙なタイミングで花のない庭からも、確かな気づきを得る同期に脱帽する。

 この洞察力は『ふでん研』の歴史研究活動でもいかんなく発揮されていて、もはや天才の領域にあると俺は常々思っている。

 

 

「いつか、花が咲いた時にまた来たいな」

「どうぞどうぞ。つむぎならいつでも歓迎するよ」

「!? そ、そうかい? あはは……じゃあ、その時を楽しみにしているよ♪」

 

 きっとその時は、また新しい何かを発見してくれる。

 こちらに歯を見せて楽しげに笑うつむぎを前に、俺も今から次の機会を想像しワクワクするのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 そして。

 いよいよ帰宅、お宅訪問といった段となり。

 

 愛する我が家の玄関に立った、その時だった。

 

 

「……え?」

 

 俺の身に直感めいて閃いたのは……強い違和感。

 まるでこの先に、とてつもない何かが待ち受けているかのような重圧。

 

「……あれ?」

 

 扉の鍵が開いている……のはまだいい。父さんはたまにやらかすから。

 玄関に知らない人の靴がある……のもまだいい。父さんや母さんの知人が突然来てる場合もあるから。

 

 見つけた異変に一つずつ理由をつけて潰していって、それでも拭いきれないモノ。

 

 どしどしと高まっていく違和感の、その果てに――。

 

 

「おかえり陸人! そちらの美人はお客さんかなっ? 何もないところだけど、ゆっくりしていってね☆ チュッ☆」

「…………どこのどちらさまでございますかーーーーっっ!?!?」

 

 ――片足立ちでキャピキャピしながらウインクを決めた()()()()人物だけは、どうしても受け入れられなかった。

 

 

「あはっ☆ 変なことを言うんだね。キミの……パ・パ・だ・ぞ☆」

「いやいやいやいやいやいやいや!!」

 

 パパチガウ。コンナノパパジャナイ!

 そもそも俺はあなたを父さんと呼んでるし、あなたも普段そう言ってる!!

 

 いつもアトリエで静かに黙々と作業してる俺の父さんisドコ!?

 

「画家……芸術家だとは聞いていたが……こ、個性的なお父様、です、ね?」

「つむぎ!? いや、父さんはこんなんじゃなくて……いやでも確かに父さんで?」

「あはは☆ 様子がおかしいぞ~、陸人~☆」

「様子がおかしいのはそっちだよ父さん!」

「わ、わ、わんだふる……?」

 

 ワンダフルそこで使っちゃダメだよ!?

 いやそれより、語尾がバグって丁寧になるほどドン引きしたつむぎにどう弁明するべきか。

 どんな反応するかなーってこんな反応は期待してなかったよ!

 

 って、家の奥から人の気配が――。

 

 

「もう、お父さーん? 早く戻って一緒にガッピィのエアダッシャーやりましょ……う?」

 

 ――廊下に入ってすぐの場所。リビングの方からトテトテと、中学生くらいの小柄な少女がやってきた。

 

 

「っ!?」

 

 隣でつむぎが息を吞む。

 そうなるくらいには、現れた少女は愛らしく、そして美しかった。

 

 

(なん、だ。この美少女……?!)

 

 初めて見る女の子だった。

 というか、こんな子。一度でも見たら絶対に忘れられない。

 

 小さい割に出るとこは出てるプロポーション。

 お化粧もしっかりされているのか、クリッとしたアーモンドアイにまつ毛もバッチリ。

 一目でわかる絶世の美少女。

 

 さらに彼女の容姿には、いくつかの現実離れした要素がある。

 

 まず、髪色が紫。正確には明るい色味のクリアパープル。

 染めたにしては自然すぎる色合いと艶に目を奪われる驚きの美しさ。それをツーサイドアップに結い上げてあり、解けば膝上くらいまでありそうなほどの超ロングヘアなのに、キューティクルもきらっきらで手入れが行き届いている。

 

 次に、着ている服。これは、どう言い表せばいいんだろう?

 ドレスベースにコルセットとミニスカ丈で動きやすさをプラスしたような、パッと見で何かのお姫様キャラのコスプレみたいな出で立ち。しかし逸般アパレル勤務母さん譲りの俺の目が、その衣装に使われている素材の質が異常なほどに高いことを訴えていて。 

 

 まとめると、子供向けの絵本なんかに登場する、特別美人なプリンセスといった造形。

 そして何より、一番の異常は。

 

 

(なんて綺麗な……瞳)

 

 深い黒寄りのブルーをした瞳に、どこかのアイドルめいた綺羅星のような強烈な輝き。

 覗き込めばそれだけで吸い込まれてしまいそうなほどの色の深さに、思わず魅了される。

 

 

 そんなとびっきりの美少女と、目が合った。

 

「「………」」

 

 見つめ合う。

 見下ろす俺と、見上げる彼女。

 

 ゆっくりと少女の唇が動いて――。

 

 

「…………………………………………ャバっ」

「今ヤバいって言ったか?」

 

 ――おおよそ美少女らしくない焦りきった言葉が、頬を伝う冷や汗と共にポロッと零れ落ちた。

 

 

 

「キミ、誰?」

「っ!? ワ、ワタシ、は……」

「やれやれ。何を言ってるんだい、陸人」

 

 思わず低い声で出た問いかけに答えたのは、少女ではなく、父。

 たじろく少女の肩に親しげに手を置き、俺を諭すように優しく微笑みながら口を開いた。

 

 

()()()()()()()()()? 今日までずっと一緒だったじゃないか☆」

「生まれてこの方一人っ子だったんだが?」

「…………あっ。おかえりなさい、お……()()()☆」

「生まれてこの方一人っ子だったんだがっっ!?」

 

 と。

 二度目のツッコみを入れた、その瞬間。

 

(ああ、これか……)

 

 俺の脳裏に燦然と、“混沌(ケイオス)”という二文字が、クッキリハッキリと浮かぶのだった。




気がつけば 家に棲み着く 少女?かな それとおじさん構文。

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