魔法少女ぜんぶのせ☆ ~マジカルハーレム、進行中!~   作:夏目八尋

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騒動も終わって。それから。


第07話 プリンセス(やらかした動機と俺の判断)

「……本当に、本当に! ごめんなさい!!」

 

 平伏。

 土下座。

 

 額を床に擦りつける勢いで、絶世美少女にして妹を名乗る不審者こと。

 

「あー、リリーネイア・デカルマーニ・エターネーヴァさん?」

「はへっ」

「魔法の国のプリンセスの」

「あ、えと」

「なんかすごい魔法使うときに言ってたの、ちゃんと聞いてたんで」

「あっ、あっ」

「そういう身分のある方が」

「あっ、あっ、ああっ……!」

 

 

「……今回の、所業を?」

「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!! こ゛へ゛ん゛な゛さ゛ーーーーーーーーーーーい゛い゛!!!」

 

 

 本日の騒動の大元凶、リリー(実名)。

 床に這いつくばって号泣し始める姿は、それはそれは綺麗なムラサキウミウシだった。

 

 

「どうか! どうか! 許してください! このままじゃ始まったばかりで試練も失敗! そんなんじゃ国のみんなにも、パパとママにも呆れられちゃうーーーーー!!」

「………」

 

 さて。

 どうしたものか。

 

「あ、助手くん。無理は……」

「大丈夫。もう痛みも引いたから」

 

 同期に寄りかかってた体を起こし、リリーの傍で膝をつく。

 みんなの視線を浴びながら、俺はそっと、土下座したままの彼女に声をかけた。

 

 

「リリーネイアさ」

「リリーがいいです」

「……リリーネ」

「リリーでお願いします」

「………………リリー。まずは顔を上げてくれる?」

「はい……」

 

 リリーが神妙に、ゆっくりと顔を上げる。

 キラキラしていたはずの瞳の輝きは、今や見る影もなくしおしおで。

 

「とりあえず、なんだけど」

「はい」

「……ご飯にしようか」

「へ?」

「みんなもそれでいいかな?」

 

 問いかけながらリリーの両肩を掴み立ち上がらせる。

 見回せば、つむぎもみはりちゃんも、頷きを返してくれた。

 

 

「あ、の……?」

「話はそれから。まずはお腹を満たして元気を取り戻そう。俺も、キミも、な?」

 

 とりあえず。

 そういうことにした。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 みはりちゃんが作ってくれた美味しい水炊きをいただきながら。

 

「なるほど。王家の試練、ね」

「はい。魔法の国の王族は、15の成人を迎える前に王家の試練を乗り越える必要があって。私の場合はそれが、人間界に行って営みに関わりながら“本当に大切な物”を見つける事、でした」

 

 俺たちは、リリーに事情聴取した。

 

「リリーネイア・デカルマーニ・エターネーヴァ。魔法の国エターネーヴァの次期女王候補。魔法の国からやってきた、ちょっとチャームなお姫様。実にワンダフルじゃないか」

「本当にいるんだ……魔法の国のプリンセス」

「世界は広いね~」

「いまさらだが喋る猫も大概じゃないか?」

 

 なーおってワザとらしく鳴いてごまかす黒猫さん。

 できればみはりちゃんたちの事情も聞きたかったが、今聞いても頭がパンクしそうだから我慢する。

 

「それで、試練を課されたリリーくんは人間界へとやってきて、この家に侵入したワケだ」

「ん」

 

 つむぎからの確認に頷くリリー。しかしその目は今まさに雑炊に変わったお鍋に夢中だ。

 事情聴取してるってわりに全然話が進んでないのは、さっきまで彼女が食べるたびに「ナニコレ美味しい!」とか「初めての味だわ!」とか大騒ぎしてたからだ。

 事実久しぶりに食べたみはりちゃんの水炊きは、5月に食べるにはちょっと熱いかと思ったが、鶏肉の出汁が利いててとても美味しい。以前いただいた頃に比べて着々と腕を上げているのを感じる。っていうか白菜代わりのキャベツうっま!

 おかげでプリンセスはもぐもぐぱくぱく、今もレンゲが止まらない。

 

 ……聞き取り相手に号泣されたり、変に気落ちされたままじゃ困ると思って食事を優先したが、正解だったみたいだ。

 

 

「どうしてウチだったんだ?」

「そうだね。そこはとても気になる」

 

 腹も落ち着いたところで改めて切り出せば、隣のつむぎも興味深々な様子で頷く。

 実際リリーが……魔法の国のプリンセスがここを選んだ理由があるのなら、ぜひとも聞いてみたかった。

 

「それは……その」

「言いにくいってことは~、何か特別な理由があったとか~?」

「えっと……もごもご……」

「ん?」

「……ローラーが……から」

 

 言い淀んだところを黒猫さんに追い打ちをかけられ、リリーがもごもごと小声で何かを口にする。

 恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに俯いてもじもじしながら同じ言葉を繰り返す彼女に、耳をそばだててうかがえば――。

 

 

「コントローラーが、いっぱい、あったから……」

 

 

 意外な答えが、飛び出した。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 魔法の国のプリンセス。

 リリーネイア・デカルマーニ・エターネーヴァさん(13)。

 

 王家の試練を前にして、魔法の鏡でこっそりと、人間界の様子を覗いていたそうな。

 

 王宮暮らしのお姫様。

 勉強勉強また勉強の日々を過ごす中、出会ってしまった人間界の遊戯……テレビゲーム。

 

 ワイワイピコピコやってる人間たちは、それはそれはお姫様の興味を惹いたそうで。

 

 

「……ここにはゲームを遊ぶためのコントローラーがいっぱいあったから、ワタシも混ざれたらって思って……」

「なるほどなぁ」

「助手くんは、今の理由で納得したのかい?」

「まぁな」

 

 それが理由なら、ウチが選ばれたのも納得だった。

 

「こういうのは見た方が早い」

 

 席を立ち、俺は壁掛けテレビの下にある低い棚に手をかけ、引く。

 

 ガララッ!

 

 引っ張り出された引き出しの中には、新旧様々なゲーム機と、それぞれに合わせた多人数プレイ用のゲームコントローラーが大量に詰め込まれていた。

 

「ほう!」

「わっ!」

「どひゃ~! これはまた……」

 

 みんなが驚きの声を上げる中。

 

「……!」

 

 リリーの瞳が輝きを増したのを、俺は見逃さなかった。

 

 

「ウチの母さんが今、海外で仕事してるってのは話したことあるよな? で、父さんも負けず劣らず海外の知人がいてさ、その人たちや関係者が遊びに来るってのがちょくちょくあるんだ。そういう時、これがあると共通言語としてすっごく役に立つんだよ」

 

 所詮ゲームと侮るなかれ。

 言語を介さず直感的な操作で誰もがスピーディーに楽しめるテレビゲームは、コミュニケーションツールとして非常に優れているのだ。

 昔のお侍様が剣を交えたらわかるってのと理屈は同じで、真剣に勝負あるいは共闘することで、相手の人となりを理解することができるって寸法。

 

「余興としても使えて盛り上がるし、言葉がわからないなりに触れ合うことができてさ。なんだかんだで毎度毎度最新機種を用意するから、それに合わせてコントローラーも買い揃えてあるってワケ。俺も混ぜてもらってっていうか遊んでもらったりして、その人たちと仲良くなったりもしてるんだよ」

「へ~」

「すごいですっ!」

「うんうん、実にワンダフル!」

 

 話を聞いてにわかに盛り上がり始めたみんなの、その横で。

 

 

「………」

 

 むずむず、そわそわ。

 

「……っ」

 

 ぷるぷる、ふるふる。

 

 ウミウ……プリンセス様が必死に感情を押し殺そうとして、失敗していらっしゃる。

 

 “遊びたい、でも今は反省しないとダメだ、ああでもでも!”

 

 そんな思考が手に取るように、くっきりはっきり見えてしまえば。

 

 

「……食器片づけてから、みんなで遊ぼうか? もちろん、リリーも片づけ手伝ってくれたら、一緒にな?」

「!」

 

 やらかしの罰なんてこのくらいでいいだろう、と。

 我ながら甘い答えを出してしまうのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「ちょ! そのアイテムはワタシが手に入れるはずだったのよ!?」

「すまないねぇプリンセス! 私のダッシャーマシンが速すぎたのさ!」

「あ、レア赤箱だ。えいえいっ」

「お~、みはりやったね~。で、なにこれ?」

「「ぎゃあ! 伝承マシン!!」」

 

 それから。

 食器を片づけた俺たちは、みんなで仲良くゲームプレイとあいなった。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ーー!! また邪魔してぇーーー!!」

「はーっはっはっは! これが戦略というものだよ!」

「これなんだろ……わっ! すっごいビーム!」

「はっはっはうわあああ!! 私のマシーンがぁぁーーー!?」

 

 みはりちゃんのご両親には連絡済。あっさりと許可が下りた。

 同期もさっき外に出て、パパッと実家に連絡したらしくこれまた安心。

 

 今は、髪を揺らして楽しそうにはしゃぐみんなの姿を見つめつつ。

 

 

「はい、俺の勝ち」

「「「うわー!」」」

 

 容赦なく勝ちを取りに行く。

 手加減してたらリリーに本気をオーダーされたので、頑張りました。

 

「助手くん助手くん! もう一回だ!」

「あ、わたしお茶取ってきます」

 

 俺が、と立ち上がろうとしたところを、みはりちゃんに無言で止められる。

 目と目でやり取りすると、彼女は嬉しそうにお団子を跳ねさせキッチンの方へと向かっていった。

 

 

「じゃあ代わりにあなたがやってね、黒猫さん」

「は~い……って、それは無茶だよ姫様~」

「ただお茶を取りに行って戻ってくる時間さえ待てないのかいキミは……」

「うぐっ! ま、待てるわよ! 待てばいいんでしょ待てば!」

 

 ガチの無茶を言い出したリリーが言い返されて、ソファに座りなおしてソワソワしている。

 俺は、そんな彼女に向かって。

 

「リリーはこのあと、行く所とかあるのか?」

「え、あ……ううん。ない、と思います」

「また魔法で誰かを操って住み着くみたいなことは?」

「うぐっ。それはもう……しないっていうか、したくないっていうか……」

「そうか、だったら……」

 

 遊びながらで考えていたことを、口にした。

 

 

「このままウチに住むか?」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

 

 なぜか。

 

「「「えええーーーーーーーーーーー!?!?!?」」」

 

 3人分の声が、重なって聞こえた。




自宅に人を泊めることに特に抵抗がない系主人公。

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