まあ、のんびりしながら読んでくださると光栄です。
因みに、前回のスピンオフを読んでくださるとこのパートはよりいっそう楽しめますよ。
早朝。太陽が顔を出してきて皆が起き出す頃。
青年は怪我をして動けない妹を背負いながら一目散に雨がパラパラと降る森の中を走っていた。
「ハァ!ハァ!!」
「ゴホッ………お兄………逃げて。」
青年の後ろには形容しがたい程の悍ましい何か。蛇か、それとも虫か、動物か。得体も知れぬ存在が森の木々を突き破りながら少年をいたぶるように追いかけてきているのが背後の音から分かる。その音が青年の恐怖を逆なでしてくる。
「ギ、ギギャギャギャ!!」
「ハァハァ!出来るか!!妹をおいて逃げる兄がいるもんか!!」
「けど!お兄が!!ゴフッ!」
「うるさい!腹に穴を空けられた奴が声を出すな!!今は黙ってろ!!」
「う…うん……ゴホッ。」
悍ましい妖怪の発する妖気に恐怖を味わいながら青年はなんとか走り出す。普段から薪割りと薪運びを父に手伝わされていたお陰で妹よりも重いものを背負ってきた少年には妹の体重など、いつもの薪の重さよりも軽いからだ。
「ハァハァ。」
恐怖で背筋が震える。今止まれば自分と妹は死ぬのだ。それが死に物狂いで妹を背負ってきた走る少年を生きるための活力につなげていた。
「早く巫女達を見つけないと!!」
ついすこし前までは、少年と妹はただ日々の生活をささえる薬草を見つけようと村から離れてノラの外へと進んでいただけだった筈だつた。
今日、薬草を見つけられたのに、このまま平穏に村へと帰れれば、貧しくて普段は手にはいらない纏まったお金を得て、祭りで妹を楽しませるくらいのお金を得れるきる筈だった。
「ハァ、ハァ!!痛いだろうけど今は耐えろよ?」
「うん。コホッコホッ!」
貧乏で日々の生活を生きるのに必死な家族の生活が戦争に参加して、得た報酬によって家計が安定するようになり、それを祝うようにその年に妹が生まれてきてからはや五年、やっと。今日がやっと七年間に一度のお祭りの日なんだ。
唯一今日が妹が物心をつき始めて祭りの様子を聞いて、憧れていた洩矢神の主催のミシャグジ様の祭りに初めて参加できる機会だった。
この祭りは数年おきに行われ、国を治める神々を中心に、全ての巫女達やお偉い様や、ミシャグジ様が集う大きな祭り。故にあの濃い緑髪のあの人と少しでも会える可能性がある大きな祭りなんだ。
五年前に妖怪に襲われた時に自分を救ってくれたあの女性と出会えるかもしれないんだ。それで、大きくなってきた妹を彼女に見せてこう言ってやるんだ。
『妹が大きくなったよお姉ちゃん。ほら。罪を犯すほど可愛い妹だよ。ちゃんと会わせられたよ』と。
なのに………
「ギギャギャギャ!ギャギャギギ!!」
今日に限って。今日に限って、山から降りてきた妖かしに遭遇してしまい、妹が腹に傷を負ってしまった。
今日に限って!!
「クソックソックソッ!!なんで今日なんだ!!」
妹が楽しみにしていた祭りなんだ。俺が十歳の頃から頑張って貯めた金で祭りを楽しもうって妹と約束したんだ!!
それをなんで妖かしになんて、台無しにさせられるんだ!!
ただ今はひたすらに巫女が巡回しているだろうヤマの道のりを辿りながら人が巫女がいるだろうノラまで走っていくしかなかった。
「ハァ!………コホッ!ハァ。」
「ギャギャギギギャギャ!!」
どれ程時間が経っただろうか?いや数分くらいもしれない。ずっと走っていた少年の息が段々と荒くなってくる。
恐怖と死の予感が近づいてきているようで、鳥肌と冷や汗が酷い。
その瞬間、
―ズルッ―
「うわっ!?」
その疲労と恐怖に力が入らなくなってしまっていた青年は、泥に足を滑らされてしまい。身体を前かがみに傾かせてしまう。
それでも、青年へなんとか手をつくこと出来て、重傷の妹を落とさないように庇うことが出来た。
しかし、そのまま立ち上がり逃げようとしても、そもそも足に力が入らなかった。いくら子供一人と言っても、20キログラム近くはある。そんな重りを背負って、いきなり全速力で走るのは成人を超えたばがり薪運びに慣れている青年と言えども齢十六の肉体では負担が大きいだろう。
案の定、今の青年の足腰には既に限界が迫っていた。
「くっ!!」
「お兄!?」
これ以上は逃げられないと悟った青年はせめて妖怪から繰り出される刃から、妹を庇おうとして背負っていた妹を地面と青年の間に運んで覆いかぶさるようにして守る。
今の青年にはこれくらいしかやれることが無かったからだ。
「ギャギャギギギャギャギャッ!」
蹲る青年と妹は一緒に抱きしめ合って死ぬ覚悟を持って、目を瞑った。
その時、
妖怪がその青年の背へと自らの爪を突き立てようと振り上げた瞬間、氏の青年の背の上を強風が吹き荒れて通り過ぎて、勢いよくその妖怪を吹き飛ばした。
「ギギャ!?」
― ビュウ ―
森が激しく揺れている筈なのに、青年と妹の周りだけは凪が起きたかのように無風になっている。
そのことに気がついた青年は静かに顔をあげた。
そこに立っていたのは一人の女性が少年を庇うように立っていた。
紺色と白黒が多い、ここらでは見慣れない服装。
紺色の青みがかった黒髪の女性。
そして、腕には明らかに人ではないことを象徴するかのような紺色の翼。
七年前の洩矢大戦から帰ってきた父から聞いたことのある見た目と同じ特徴と服装。
敵の刃にかかろうとしていた父や他の兵達を大勢庇ったり助けたりしてくれた一人の女性。いや、一匹の鴉の神様の話を。
あの時の七年前に救ってくれた濃い緑の女性では無かった。
ほんのりと再会の期待をしていた青年はがっかりしてしまった所があった青年に、青みがかった黒髪の女性は見たこともない帽子のツバを軽口あげながら顔だけをこちらに向けてきた。
「大丈夫?君達?」
その女性は、神様は妖力とは違う不思議な力をその妖怪に使って何度も弾き『飛ばし』ながら青年と妹に半身の姿勢でチラリとと見て、自分たちの状況を確認し終え、妹の状況を理解して美しい紺色の瞳の上にある眉を僅かに歪ませた。
「俺は大丈夫だ!!けど、妹が腹に怪我をしたんだ!!」
「ッ………今、…確認出来たよ。取り敢えず他の巫女さん達がこれから来るから。それまでは安静に動かないで!」
「わ、分かった!」
ふと振り返ったみれば自分は神様に向かって失礼なことにタメに話していたことに気がついたが、この神様の身近な雰囲気と疲労によって敬語で話す余裕が無かったんだろうと呑気なことを考えて恐怖と安堵がごっちゃぜになっていた感情を誤魔化していく。
そして、その女性は見たこともない飛び道具?を腰の左右の入れ物からよく分からない黒と白の道具を取り出して、妖かしに向かけてその2本の道具から何かを発射した。
― シュンッ ―
「ギギャ!?」
見た目も定まっていないつぎはぎの妖怪は空気を切り裂くような音を発して向かってくる飛来物をまともに食らって悲鳴をあげて怯むが、女性の飛び道具を撃ち続けていく。
しかし、妖怪は怯み傷つくだけで直ぐに傷を回復してしまう。妖力が多い分だけ妖怪はしぶとくなる中妖怪は妖力もその分多いためその分だけしぶとかった。
「よりによって妖力が中妖怪クラスか。………庇いながらやるにはちときついね。なら、…………ここは一気に神力でヤりきるしかないね。」
その妖怪の姿に痺れを切らした女性はそう言って、飛び道具に神聖な光を込めて、妖怪に向かって向けて放つ。
「ギギャーーー!?」
― ドシン ―
すると、中妖怪は悲鳴を上げて強い光と共に重い体をズシンと音を鳴らして地面に音を響かせて倒れる。
その様子に神様は安堵の息を吐いた後、妖怪の死骸を不思議な力で祓いながらあたりの安全を確認してからもう一息安堵の息を吐いた。
「ふぅ…………周りには妖怪はもういないようだね?」
そして、周囲の安全確認が出来たのか、女性は青年と妹に駆け寄って、青年の肩に手をかけて綺麗な顔を笑顔にかえてこう言った。
「青年。妹を守りながらよく頑張った。けどもう、安心して。私達が君と妹を可能な限り守るから。」
そう言って、自分たちを安心させるように笑いかけてくる女性は腹の傷の痛みに震えていた妹にそっと触れて、不思議な力を行使しながら妹の頭をそのすらりとした手で優しく撫でていく。
「………あれ?痛くない?」
「痛みを『飛ばし』ただけだからね?…けど、傷自体は残ってる。だから傷の手当をしてあげるから安静にしていてね?」
「…………うん。ありがとう。」
「どういたしまして。」
そうして神様は、ニコリとぼ〜としていた妹の頭を軽くさすりながら、笑いかけた後、取り出した白い布地を傷口を中心に巻いて妹の腹の傷の手当をしてくれる。
そんな彼女に、腹に傷を負っていたのに痛みに耐えながらも最後まで泣くことは無かった強い妹が、強い憧れの眼差しを向けていることに青年はふと気がついた。
それが、五年前と既視感のある眼差しだということに。
…血は争えないのか。と青年は思わず苦笑いしてしまう。
その妹の熱い眼差しに気がついた女性は手当ての手を留めずにチラリと見て、不思議そうに首を傾げる
「どうしたの?何か痛かったの?」
「んん………ただ。お姉さんってかっこいいなって………。」
「私が?アハハッ。そう言ってもらえてうれしいよ。でも、私としては、私よりも最後まで君を守ろうとした君の兄が一番かっこいいと思うんだけどなぁ〜?」
そう言って、チラリとコチラを見やってくる女性につられて、妹がこちらを振り返ってきて、いつもの可愛らしい笑顔で感謝の言葉を伝えてきた。
「お兄ちゃん。私を庇ってくれてありがと。」
「お、………おう………………。どういたしまして?」
思わず顔が熱くなってしまった。それと同時に青年は女性の意図を察して少しだけ気恥ずかしくなってしまった。この神様はこんな自分をもたせてくれたんだ。なら、自分は言うべきことがあるだろう。
「本当に自分と妹を助けてくれてありがとうございます。神様。」
「いやいや。別にいいよ。たまたま近くを通っただけだったんだから。それに、私には神様扱いなんてしなくていいよ。ね?」
そう言って、妹の傷の処置を終えた女性は立ち上がりながら未だに疲労が残っていて立てない青年の頭をポンポンと妹と同じように撫でてくる彼女。
その優しくも美しい煌びやかな女性の笑顔に青年は再び顔が熱くなったのを感じた。
「さて、同行してた巫女さん達が追いついてきた頃だね。祭りの準備がこの後控えてるからね。そろそろ私は行くよ。」
そう言って、女性は先ほどの妖怪を祓った時に吹き飛んで地面に落ちていた帽子をかぶり直して、その場から立ち去ろうとするそんな彼女を、呼び止める者がいた。
「お姉さん………名前を聞いてもいい?」
それは妹だった。妹は五年前のまだ少年でしか無かった時の青年と同じようにキラキラと女性を見ながらそう言った。
「いいよ。私の名前は飛燕ノ鴉ノ石道神。しがない鴉の神様だよ。」
そう女性は綺麗な紺色の瞳を宿している目の片方をパチリと閉じて、その場で紺色の鴉となって飛び去っていった。
その瞬間、雨雲で埋まっていた空から太陽の光が差してきて綺麗な紺色の翼を反射させる。
その光景を見ながら兄弟は、お互いに肩を寄せ合って感嘆の溜息を吐いついていた。
「はぁ…………お姉さんカッコよかったなぁ。まるで昔お兄を助けたって聞いたそのお姉さんみたい……。」
「ふっ…そうだな……………祭りでまた会えたらいいな。」
「うん!」
兄弟は手を取り合って今日の幸運とこれからの楽しみを思い描きながら現場に駆けつけた巫女達に保護されていったのだった。
* * *
午前中に綱置場と棚置場から出発したそれぞれの四つの御柱がそれぞれのそろそろ大曲がりへと差し掛かっているだろう頃。
当の私は、怒れる椿ちゃんにしんみりしながら正座させられていた。
「飛燕さん!いい加減、そうやってその場の思いつきで動こうとするのは辞めてください!!」
「…………ハイ。すみまちぇん。」
やあ、画面の向こうの皆。今日は幸せかい?因みに私は少しだけ"だうなぁ"な気分だよ。なにせ、こんな目立つところで堂々と正座させられたまま怒られてるんだから。そう。諏訪の街の大通りど真ん中で皆の前で。
「いつもいつもそうやって巫女達の運営の予定を乱されるとこちらとしては大変なんですからね?
大巫女だって色々と巫女達の指揮を任せているんですから、飛燕さんの勝手な行動のシワ寄せが大巫女に迫ってしまうんですよ?……そこの所ちゃんと分かってますか?飛燕さん?」
「…………ハイ……すみまちぇん。」
「反省してくだしさい!」
……どうして私は椿ちゃんに正座させられてるんだろう?ちゃんと仕事はしたのに。てっきり帰ったら笑顔に褒めて沢山抱きしめてくれると思ってたのに。私の想像の中で、椿ちゃんは私のことを犬に対するみたいにこねくり回してくれると思ってたのに。
でも、実際の椿ちゃんは出会い頭に道のど真ん中で説教である。酷いと思わない?皆ぁ〜?グスン
「………何処に向かってよそ見しているのかは分かりませんが、ちゃんと人の話を聞いていますか?飛燕さん?」
「はい………その…ごめんなさい。少しだけぼ〜としてました。椿ちゃん。」
いい加減やめない?恥ずかしいんだよ?私?
祭りの準備に忙しそうにしてる通行人の視線が私と椿ちゃんを見てるよ?うゔ………皆の視線が痛いんだけど?
「ほら、見たことですか。もう一度言いますからね?着任したばかりの新人の巫女が多い班の初任務の諏訪の地の見回りに、新人の巫女達が心配だからといって大巫女の許可なく無断で同行したあげく、妖怪に襲われていた救出者を救出した時にその場の雰囲気でカッコつけて置き去りにするとは何事ですか?
いくら貴方の能力で、貴方と共に巡回していた巫女達が近づいてきていて安全なのが分かっていたからといっても、その救出者達にもしものことあったらどうするのですか?責任はとれるのですが?」
「………ハイ。取れなかったと……思います。椿様。」
「まず、そもそも妖怪を察知したときに巫女達に何も告げずに独断行動に走るのがおかしいのです。飛燕さん?
今にでも襲われそうで緊急な事態だったことは分かりますし十分加味しますが、せめて一言くらい巫女達に述べてから向かうべきです。
そうです。そうでした。独断行動と言えば飛燕さん?そもそも貴方は祭りの日の前日に『巫女さん達の負担を減らすために早朝の巡回を手伝ってあげたい』と言っていたらしいではありませんか。
それなのに中途半端に手助けして後、その後は外聞を気にして立ち去るのみで、その後の処理や新人の巫女の世話を全くしないのは違うでしょう?飛燕さんの行動は返って巫女達の負担を増やしているだけなのです。」
うゔう………椿ちゃんの説教が止まらないよ。それに全部私が悪いから何も言えないよぅ。
でもさ?………まだ、道端ならいいよ?けどさ、なんでよりによってこんな街中の人が通るこの大通りのど真ん中で始めるのさ。もう、数時間経ってるよ?いい加減朝食食べたいよ。いい加減お腹すいたんだけど?
「というか、有言実行しないでください!
そんなことをするなら責めて私に一言くらい、言っておいてください!!せめてちゃんと『明日の朝巫女さん達の手伝いに行く』と明言してくだささい。なんですか?『椿ちゃん達の手伝いをしようかなぁ〜』って?酒の席でそれだけは分かりませんよ!!
その飛燕さんの言葉をただの冗談だと思ってしまって聞き流した私も悪いですが、昨日の宴会の翌朝の今朝。私が起きた時に、隣で抱き合いながら寝ていた筈の飛燕さんの姿を見あたらずに神社の誰に聞いてみても、誰も飛燕さんの行く末が分からなかった時の私の気持ちを考えてみてくださいよ!!」
「えっと………椿ちゃん。それはごめんなさい。………気をつけます。………けどさ、椿ちゃん。今は守屋神社に帰ろうよ?」
「嫌です!私が貴方をどれだけ探したと思っているですか?早朝から朝の間ずっとですよ?私の心配を返してください!!」
あの……椿ちゃん。見物客が現れて私達を生暖かい視線で見守ってきてるんだけど……………。
私はその意を込めて周りにチラチラとお視線を向けるが、椿ちゃんは敢えて無視するだけでなく、椿ちゃんは説教はガミガミとしたまま続いていく。
余談だが、黒柳飛燕と東風谷椿の2人の夫婦喧嘩(?)というよりも説教のような景色は黒柳飛燕がポンコツなので偶発的に街中でよく見られる風景だ。
故に、ここ七年で諏訪の地の洩矢神社付近の街の民達にとっては2人の痴話喧嘩(?)は周知の中であり、最近は特に馴染みのモノとなっていた。
なんなら2人の痴話喧嘩を確認できたら幸運だと噂されるまでになっている。まあ、その多くの話が呑気な諏訪の民達が勝手に噂していた眉唾物の噂話話だったが、
その沢山噂されている噂話の中で、一つだけ共通することは、この2人のもたらす光景は街の人々にとっては遠くから眺めるべきほっこりとするような光景であったということだった。
「私が貴方に見捨てられたのかと思って、本当に顔を青ざめましたからね!真っ青に!!
………………本当にぃ…本当にぃ……ヒグッ……怖かったんですからぁ〜……グス。私は飛燕さんがいないと生きていけないんですからぁ〜………グスッ。」
あ、あぁ〜!や、やめて〜〜!!そんなに泣かないで〜〜!椿ちゃぁぁ〜ん!!本当に反省してるから!!今、罪悪感が半端ないからぁ〜〜!!
本当にごめんなさい〜〜〜〜!!
「うゔぅ…………うん………そのぉ……本当にごめんなさい。」
そんな私が脳内で椿ちゃんに土下座をしまくっていると、椿ちゃんの後ろから、見慣れた姿の女性が周りで見守っていた群衆をかき分けるように近づいてきているのに気がついた。
そして、その女性は両腕を組んで少しだけ怒っている表情をしていることにも。
………あ、そろそろ潮時かもしれない。
「椿ちゃん。本当に話を聞いてほしいんだけどさ。」
「今度は何ですか?……グスッ…飛燕さん?」
「椿ちゃん、椿ちゃん。ほら、後ろを見て欲しいんだけど?」
「もう、なんなんですか?私の興味を違う方向に向けようとしても私は簡単には引っかかりませんからね?
そうやって飛燕さんは、困ったことがあったら話をズラして、逃げようとするんですか―「やぁ、椿。さっきから道草を食っていたようだけど、いったいここで飛燕と一緒に何をしてるんだい?」―はい?……どなたか知らないですがうるさいです。見て分からないんですか?私は今は飛燕さんに説教中なんです。だから今は喋りかけないでほし………………ん?」
私に説教をしていた椿ちゃんは背後から聞こえた声に一度応えてから説教を続けようとするが、聞き慣れた声だったことに気がついた椿ちゃん。
そんな椿ちゃんは一度思考するようにフリーズした後、声をかけてきた女性に見覚えどころか普段から聞いている声だと、ふと考えついて背後の女性に振り返って向いて向き直った。
すると、そこには幾つもの食材が詰まった買い物籠を持っている神奈子さんが呆れた表情のまま佇んでいた。
「はぁ……ここにいたのかい?朝からずっといなくて心配でさ。忙しい諏訪子のかわりに買い物ついでに探してみれば、買い物の行きに見つからないもんで、仕方なく買い物を先に済ませてみれば、まさか買い物の帰り道であっさりと見つかるとは思いもしなかったよ。」
そう言って溜息を吐く神奈子さん。
そんな神奈子さんの容姿は今日は祭りの日だからか青い着物で豊満で綺麗な線である体を包んでいて煌びやかだった。
両耳には珍しく飾り物をつけていて凛とした顔にこれまた綺麗な化粧に似合っていて、より際立っている美しさを指数関数的に増加させていることに成功していた。
そんな神奈子さんは道行く男の視線を釘付けにして、その交際相手の女性に耳を引っ張られて連れ去られる光景が連鎖的に行われている。まあ、男の人と女の人のどちらの気持ちも分かるよね。
そんな神奈子さんに、椿ちゃんは状況にまだピンと来ていないらしく、コテンと首をかしげてしまう。
「……………神奈子様?どうしてこちらに?」
「祭りの準備で忙しい大巫女に、神輿の準備で忙しい諏訪子や、いつまでも帰ってこないあんたら2人に代わって比較的暇にしてた私が食材の調達を任されたんだよ。ったく。私は主神なのにどうして使いっ走りにされてるのかねぇ。」
「それは………その………ごめんなさい。義母上。」
「いやいや、別に良いんだよ謝らなくてな。別にね。愚痴を吐いた手前、こういうことは敬われて献上されるのが普通である神の私からしたら、これが案外新鮮で楽しくてね。
たった今までは、かなり楽しんでた所だったからそこまで嫌だとは思ってたからさ。案外気にしてはいないよ。
ただね。椿。一旦冷静になって周りを見渡して見てくれないかい?」
「………あっ。」
やっとこさ周りの生暖かい視線に気がついたのか、椿ちゃんは途端に顔を赤らめてしまった。
「そうさ。道のど真ん中で説教を始めるんじゃないよ全く。いくら飛燕のことが心配だったからと言ってもな?飛燕が独断行動に走ったと聞いても流石に公共の面前で説教ってのは可哀想だろう?
せめてもの救いはあんたらは街の信者や国中の者達に慕われてて、大して権威に関わることがないことだね。だから、まだ良いだろうが、本来ならば二人とも神としての威厳が落ちてもおかしくなかったんだからね。」
「えっと……その……………うゔぅ〜……はい。そのとおりです。義母上……。」
「分かったならさっさと守屋神社に帰るよ?もうすぐお天道様が傾き出すんだ。ボサボサしてると祭りが始まっちまうよ?」
「「あっ!」」
そうじゃん!まだ私達、着物を着てないじゃん!!
「神奈子さん!あとどのくらいで始まる感じですかね!?」
「義母上。私もそれだけは今すぐ聞きたいです!!」
「え、えっと……確か………私が守屋神社を出た時には諏訪子と巫女達、大工達と一緒に神輿の最後の仕上げと変な所がないか確認してた感じだから、祭りの準備ならもうすぐ終わると思うけど…………?」
神奈子さんのその言葉を聞いて、私と椿ちゃんは顔を合わせた後、一息ついて一斉に叫んで走り出した。
「「ヤバい」(です)!」
「あっ!?ちょっ!?」
私達を呼び止めようとする神奈子さんの言葉を背に、私達は今頃私達の帰りを待っているだろう大巫女さんの恐ろしい鬼の姿を思い浮かべながら、守屋神社へと向かって全力疾走しだしていった。
そうして、一人買い物かご片手に取り残された神奈子は一人、ポツリと呟いたのだった。
「確かに………時間は押しているが焦りすぎたろう二人とも。私は『遅れているが、まだ時間があるから一緒に帰ろうか』と提案しようとしたんだが……相変わらず2人はせっかちだなぁ……はぁ。」
そう独りごちて溜息を吐いていた神奈子だったが、猛スピードで走り去っていく2人の楽しそうにこづき合っている背中を眺めて、やれやれと言いたげに肩をすくめながら、もう一度独り言を呟く。
「だが…………相変わらず仲がいいな二人とも。この五年で随分とお似合いの関係になったんじゃないのか?」
元からよい関係性だったが、この五年間で更に仲が良くなったといえるだろう。
既に街の民達には見慣れた見世物が終わったことで、足を留めていた民たちが、本来の用事であるもう直ぐ始まる『川越』と『木落し』を見物しに行こうと解散していく姿を横目に、神奈子は止めいた守屋神社までの歩みを再開することにした。
「さて、私達も負けられないねぇ。諏訪子が私の帰りを待ち侘びている筈だ。守屋神社に帰ったら熱い抱擁と口づけでもしてやろう。」
そうして、神奈子は自分が帰った後に、自分を迎えてくれるだろう自分の伴侶に対してする予定の、熱い抱擁と口付に対して、照れる自分の伴侶の姿を思い浮かべながら、ニコリと美しい笑みを大通りに咲かせ、道行く男性達の目線を確固にしていったのだった。
仲の良さを述べるのなら、諏訪子と神奈子の仲むずましい関係については、椿と飛燕とどっこいどっこいであるということは言うまでもないことだろう。
(次回に続く。)
始まりましたね!『守屋神社の奇祭である御柱祭!!』ずっと思いついてから温めていたアイデアだったので、今すごくワクワクしてます。
次回からを楽しみにしていてくださいね!!
因みに閑話休題は3つのパートの『守矢神社のお祭りと肝試し回』とまだパートの題名は未定の夏企画パートに分かれています。
どれも力作になると思うのでお楽しみに〜〜!
読者の皆様にとっての女オリ主のイメージを教えてください!
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可愛い! ここに皆入れてね!
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格好いい! そう?まあそれもありだね?
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美しいね! エヘヘー分かってんじゃん!
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変態! でも変態なお姉さんは好きでしょ?
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人情姉さん! 私についてきな!君達!
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大人なお姉さん! 妥当だよねー!うふふ♪
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乙女だよ! 分かってるねー!
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人妻最高! 良い子の皆は入れないでね?
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未亡人最高! なんか投票欄が怪しくない?
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もっと強くなれよ! あっはい、頑張ります
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ポンコツだね。 ん?これは褒め言葉?