ま、また……新たなスピンオフのネタが出来てしまった………。どうしよう。諏訪子様のスピンオフもまだ書いてもいないのに……。
た、沢山書かないと!ハァハァ(使命感)
(前回からの続きです。)
「…………太子様の意地悪…モグモグ。」
「まだそれを言うのかよ布都?結局、最後までまったく起きなかったお前が悪いんだからいい加減機嫌を直せよなぁ〜。
あと布都、今は飯を食べるのかへそを曲げるのかどっちかにしてくれよな。」
「我はどちらもするのじゃそれが我じゃ……屠自古。」ドヤァ
「……なんだかお前も不器用な奴だよなぁ…いや、器用な奴ではあるのか?」
「…不器用なのに器用なのはお主もじゃろう。」
屠自古に指摘されながらも、結局はどちらもやめなずにへこたれている布都と屠自古の2人が、ワイのワイと話しているのを、白米と鮭の塩焼きをパクついていた太子と餌の柿をパクついていた狸に化けているマミゾウは呆れた様子で眺めていた。
「う〜ん……こういうときは私はどうするべきなんでしょうか?どうすればいいのか見当もつきませんよ。
……この場合、狸のお方はどうすればいいと思いますか?」
「キュー」
(う〜む?………代替案か折衷案を話すくらいしか思いつかんのう。唯をこねる相手を納得させるなら、相手に益を与えるのが手っ取り早い。そうすれば自ずから相手からの好感度も得られるじゃろう?)
「……いい案ではありますね。狸のお方。では、納得させる代替案をやるしかないと……成る程………、確かに悪くない。ふふっ…私のために考えてくれた貴方にはお礼として、撫でてあげますね?」
「キュー?」
(……まぁ、別に撫でてくれることは別にいいんじゃが…儂はお主の飼っているあの黒い駿馬ではないのだぞ?お主、儂のことをなんだと思っているのじゃ?)
「貴方は、この屋敷に住み着いて飼われるようになったやけに賢い狸ではないのですか?」
「キュー」
(むむむ……ワザと遠からず当たらずをつついてきおって……儂が居候なことは自負しておるがの〜…納得がいかんわい……。)
「ふふ……なら、同じです。堪忍して飼われている狸の身分を認めて、そのまま私に黙ったまま抱かれていてください♪」
(………はぁ…主人は面倒じゃのう。誑したりするのは儂の得分野の筈なんじゃが……………。)
内心ぶつくさ言いながらも狸は黙って抱き上げられて、膝下に置かれる狸。
そして、ご飯を食しながらも時々上機嫌そうに狸を撫でる太子。そんな和やかに過ごしていた二人を、先ほどからギャーギャーと朝から仲の良い痴話喧嘩みたいな会話をしていた屠自古と布都が向き直り、太子へと話しかける。
「あの…太子様……、人前で動物との会話をするのはお辞めたください。見た目が凄く滑稽なんですが……。」
「我はそうとは思わんぞ?………我は屠自古とは違って面白いとは思います。太子様。」
「媚を変な所で売るな馬鹿の布都!……この前なんて、調子丸が私に愚痴っていましたよ?『毎朝変な奇行に走りなさるから太子様の馬も真似してしまい、普段からの奇行が多くなるのだ』と。中々的を得ている発言だと思いますよ?『飼われている動物は飼い主に似ている』とも言いますし。」
「あはは……まあ、良いではないですか屠自古。それに、こんなことは人前ではしません。
もしそんなことをするのなら、それは特別信頼出来て親密な間柄の人達の前でしか私はしませんから、そこは辺は安心しても大丈夫ですよ屠自古。」
「「……………。」」ジトー
「どうしたのですか?二人共?急に押し黙ったまま赤い顔で俯いてしまって?何か先程の会話の中で私に……不備や失礼なことでも言ってしまいましたか?」
そんな鈍感な様子の太子に、マミゾウは内心呆れてしまった。どうみてもこの従者二人はこの賢い主人の無意識に発された発言に、赤面しているようにしか見えんだろうに。この人たらしめ。化け鴉と同じくらいひどいぞ?
「……今のはずるいです。太子様。」
「…仕方ないから、今朝儂を置いていったことは許してあげますのじゃ。太子様。」
「?」
そんな主人と従者の和やかな雰囲気な光景をみながら、先ほどから呆れていた狸は内心こう思った。
(この女。何故ここで能力を使わん?今が大事だろうに。)
太太子の懐で猫のように撫でられていた狸は内心呆れ果たしてしまう。何故、普段は察しもよいのにこういう時は勘や察しが悪くなる?
しかし、これについては太子は二人を心残のそこから信頼しているので、二人だけがいるだけの空間ならば、能力は極力使おうとはしない。信頼から来ることこの行動ということだとは狸は分かっているが、どうしのようもないことである。
実の所、全く能力を使わない豊聡耳神子は頭の切れる天然鈍感人間へと変化するのだ。
要はこの豊聡耳神子。単純な人たらしである。
まあ……こんな猫のような扱いをされても満更でもない自分が言うのはどうかと思うが。
「……うん?どういうことでしょう?……まあ良いでしょう?兎に角ですが、布都の黒駒に乗って散歩をしてみたい気持ちも分かります。その内、布都と屠自古と共に黒駒に乗せて共に夜の散歩にでも赴くこととしましょうか?」
「ほんとですか!太子様!!」ガバっ
「げっ…私もですか?高い所は少し苦手なんですが………?」
「安心してください屠自古。黒駒は主人に対して"は"、ちゃんと聞き分けの良い子ですし、三人が乗るくらいでは走れなくなるような軟な身体をしていませんよ。」
「やったのじゃあ〜!!」
「……あの?太子様?今、結構大事なことをサラリと言うのは辞めてください。普通にそれって暴れ馬じゃないですか?」
「…………アハハ。」
「ちょっと!今の間と乾いた笑いは何ですか!」
屠自古の突っ込みが炸裂している合間にも、子供の用にはしゃぎ回り始めた布都はご飯を食べていた太子へと飛び出すように抱きついていてきた。
そう、狸に化けている太子の膝の上にいたマミゾウを潰さんと言わんばかりの勢いで。
「キュー!?」
(よさんか!布都!儂を巻き込むでないわ!兎に角、避難しなけば……―ギャ〜!?)
「わっ!?布都!?今はご飯中ですよ?相手をするのは食事が終わってからですよ?だから、今はおよしなさい?」
「うふふふ〜!ここできっぱりと断ろうとしてこない。太子様はやはりお優しいお方じゃぁなぁ〜。」
「はぁ……布都の馬鹿。子供みたいなことしやがって。普段から見た目で子供扱いされてんのに、心の中まで子供返りしてんじゃねえ〜よ?本当に情けない。」
「う、うるさい!屠自古!我はこれでも立派な大人じゃ!貴様も知っておろう!今年で我の齢は24を超えておるわ!!」
「じゃあ、尚更だ!馬鹿!?そう思うなら、さっさと太子様から離れろ!みっともない!」グィ〜
「いやじゃー!お主だって正妻魂見せつけているだけで、内心実はいつまでも抱きついてたいと思ってるんじゃろー!というか、我がいない時は、2人っきりの時はしてるくせにぃ〜!!」バタバタ
「くっ!う、うるさい!!というか何で布都が知ってんだよ!」
「ほらっ!図星じゃ!ふっかけてみればボロがでた!!」
「クッ!?…………急に頭を良くしてくるのは辞めろ布都!アホの子のくせに!頭が混乱するだろうが!」
「儂だって、もう甘えられるような物部の親族はもう誰も残ってないんじゃから、仲の良い親密な相手の太子様に甘えたい時もあるのじゃー!!」
「ッ!ズルいぞ布都!その言い回しは!!それを言われたら何も言えないじゃねぇか!!それに、去年の初冬の時に、あの鴉の神様に十分甘えてただろうが?
それに私は今年の冬の間は道教修行と家事で忙しくて余り甘えられてないんだぞ!!」
「へへ〜んだ!それは我も似たようなもんじゃ!政や道教修行で忙しかったわ!!
それに、今は飛燕は居ないのじゃ!!なら!残っている親しい太子様にいくのは必然!!
兎に角、太子様の懐は今は儂のものじゃ!!正妻だからと油断したお主は残念だったのう!屠自古!」
「内の主人を残り物扱いをするな!馬鹿の布都!一応、お前は従者なんだから弁えろ〜!!それに太子様は私の正統な旦那様だー!子供には早いだろ!はーなーれーろー!」
「誰が子供じゃあ〜!!!そっちだって太子様を自分のモノ扱いしてるのじゃ!離れるのはいーやーじゃー!!」
「こらこら、二人共。私の懐を奪い合おうとするのは辞めなさい。今にも狸のお方が潰されそうですよ?」
「「…………あ。」」
「き、キュー…………。」
(や、やっと……収まったか……おてんばな娘どもめ。儂を忘れるでないわ。)
二人が太子の指摘に気がついて、喧嘩を辞めて直ぐに先ほどまで奪い合っていた太子の懐もとい、膝上を見てみると。そこには目を回していた狸。
「二人仲良く、私についての痴話喧嘩をすることはとても嬉しいことなのですが、今は先ずに、朝食はしっかり済ませましょう。」
「「…………はい……太子様。」」
この痴話喧嘩の一番の被害者は、大体が狸に化けていたマミゾウであった。その上、この狸が二人の喧嘩の被害者になるというオチは場面外で実は数度も繰り返されている。故に、マミゾウは早くこの家から出ていきたくなっていた。
(…………もう嫌じゃ、この一家…。)
マミゾウはもう、いっそのこと自ら正体を明かして有言実行やろうかと思ったのだった。
しかし、実際に出ていこうとしないのは、こういった騒がしい所がマミゾウは気に入っていたということは間違いことないのだろう。
マミゾウもマミゾウで今の仮の主人である豊聡耳神子と同じ、中々な曲者のへそ曲がり者であったのだった。どうやら、ペットが主人に似るのはここも同じだったようだ。
* * *
そんなこんなで、ワチャワチャしながらも朝食を終えた彼女等は洗い物をしていると、食料が減っていることに気がついて、皆で都へと買い物をしに行くことになった。
― ワイワイ ガヤガヤ ―
初春が訪れてきたお陰で、都のあちこちにあれだけ積もっていた雪も溶け始め、人々の行き来が出来るようになったようだ。
そのお陰で斑鳩宮の市場にはかなりの人々が行き交うようになっていた。
そんな賑やかな都の中を太子を中心とした一行は全身を布で覆って正体がバレないように町中を歩いていた。
「なんだか、…………毎年、冬には出歩かない人々がこうして冬の終わりにごった返し始めるこの風景を観る度に、段々と春の訪れの予感を感じてしまいますね。」
「ええ。そうですね屠自古。私もこの風景は大好きですよ。ほら、布都。荷物が重そうなら私が持ってあげますよ。」
「あ、有難うございます。太子様。……でも、従者として、主人に荷物を持たせるのは面目ないのじゃ。トホホ。」
「いえいえ、気にしなくてもいいんですよ?布都?私はこの冬の間に道術で身体を強化出来るようになりましたからね。
それに、私が持ちますよ。こういうのは得手不得手がありますから。自身を卑下する必要はありません。」
「非力な癖に熱り立って、『我が太子様の分の荷物も持ちまするー』っていったのはお前だからな?…ったく。ほら、布都。私もお前の持ってる荷物を少しは分けさせろよ。重いだろう?」
「むっ?………その………すまぬな屠自古。にしても、最近は我も力が落ちた気がするのう?」
「ん?そうなのか?冬ごもりのせいじゃないのか?」
「確かに……少し体力が落ちてしまいましたね……まあ…真冬のときは吹雪ばかりで運動が出来ませんから仕方がありませんよ。特に、冬籠りは基本的に身体がなまっていますし。」
「確かに、そうかも知れませんね。太子様。実は私も家事仕事が少し辛くなっていましたけど、その理由なのかもしれません。」
「私も身体に力が入らなくなってきていましたが、皆がそうなっているのなら、そういう訳なのでしょう。ですよね〜♪狸のお方〜?」
「キュー」
(うむ。そうかもしれぬな。儂も運動不足のせいで、身体が訛って仕方がないわい。だが?これくらいなら力が入らなくなることはないじゃろうがな?)
「………ん?気の所為ではないのでしょうか?」
「キュー」
(そうかもしれぬな。)
そんなこんなで、違和感を感じながらも、『気のせいか』と、皆でワイワイ買い物をすましているのを、少し後ろをついていた狸姿のマミゾウがテクテクと太子の言葉に応答の声を出しながら歩いていく。
街ゆく都の人々や旅の者達は、そんな狸が堂々と町中を歩いている様子に首をかしげてしまうが、狸は昔からおっちょこちょいな生き物として伝わっている。
故に、都の人々はなんとなく『あぁ…この狸は人里に顔を平気で出せるような呑気で平和ボケしあ奴なんだな。』と、それぞれが一人納得してしまい、日々の日常に意識を戻していく。
そんなことを考えてしまう都の人々のほうこそ、一番呑気であるのは言うまでもないことである。
しかし、ただ一人は化け狸の正体を見破っているものがいた。
そう、ある一人の高名な僧侶だった。
彼は、その正体を見破っていた化け狸の方に注意を向けているだけではなく、その化け狸がついて行っている当の3名の変化をただジット見つめていた。
………そう。ただジッと。
彼が彼女等に向けているその目線にあるのは、敵愾心か?それとも責任感故か?それは後に分かることになるだろう。
* * *
一行が都で買い物を済まして、黒駒に荷物運びにしながら都から外れにある布都の別荘に辿り着く頃には、既に辺りは暗くなり始めていた。
そろそろもう夕飯時だ。
そうして、いつも通りの雰囲気で買い出しで大量に入手した食料の内のほんの一部を使って、ワイワイといつも通りに夕飯食を済ませていた彼女等は、完全に暗くなっていた空の下で、コソコソと馬屋の前で集合していた。
「太子様。調子丸は馬屋にはいませんか?」
「どうやら、大丈夫のようです。彼の心の声は近くには聞こえませんでした。彼の小屋で早めに寝ているようです。私の能力でも確認済みですよ。」
「ふふふ…なら………楽しみじゃのう。」
そう。彼女等はこの時刻帯から家を抜け出して、夜の遊泳飛行に甘んじようとしていた。
そんな三人組の子供みたいな行動に背後で見張りを任されていたマミゾウは呆れてしまっていた。
(まさか……朝の会話で話に出ていた三人で"散歩"するとは聞いていたが、本当に実行し始める思わなんだ。本当にするのか?為政者としてはどうなんじゃ?まるで、やってることが悪戯好きの子供じゃぞ?)
そのマミゾウの呆れの心の内容を太子は聞き取ったのか、マミゾウのいる方向に振り向いてニコリと笑いかけてくる。
「ええ。そうですよ狸のお方。流石に、政や修行ばかりでは気が滅入ってしまいますからね。たまにはこうやって子供みたいに悪戯好きでも実行して、ガス抜きをするべきなんですよ?狸のお方。どうせ、貴方も来るのでしょう?」
その悪戯な太子の笑みにマミゾウは勿論無言でコクリと頷いた。それは勿論である。なにせ、マミゾウ自身も悪戯好きである。そうでもなければ悪戯好きの化け狸を取りまとめれらる親玉などの地位には就くことも、この太子一家に取り憑こうともしないのだ。
「もう直ぐ…誰もいなくなる頃でしょうね。………それでは、夜闇に紛れて夜空での遊泳飛行と行きましょうか?」
「そうですな。太子様。」
「……うゔ…未だに気が乗らねえ〜…。」
「なんじゃ屠自古?今になって怖気付いたのか?」
「ち、違うわ!布都!私は今、始めてのことをするのにめっちゃ緊張してるんだよ!…………にしても、よくもまぁ〜太子様は毎朝やっていますよね〜?」
「ふふっ……こういうのは慣れですよ?屠自古。」
「そうですか。なら、早く慣れるようにしないといけませんね。」
「よし…屋敷の見回りの兵達も通り過ぎましたようですし、完全に誰もいません。今ならいけますよ?」
「キュー」
(やるならさっさとせんか?儂も動いていることを忘れるでないぞ?太子?)
「ええ。そうですね。狸のお方。では、貴方は馬屋の扉は手はず通りに開けておいてくださいね。では布都、屠自古、私にしっかりとついてきてくださいね?」
太子の合図に皆がそそくさと馬屋の中へと入っていく。この馬屋の主人とその従者達が泥棒のように馬屋へ入ってくる光景はかなり滑稽で、ゲラ気味なマミゾウは内心で吹き出していたが、置いていかれるのもまずいかと感じて、遅れて自分も馬屋へと入っていった。
マミゾウが彼女等達に追いつく頃には、既に皆が黒駒の上に乗ろうとしていた所だった。
「やったのじゃ。もう直ぐ夢にも待った黒駒での空の飛行じゃ!」
「おいおい、布都?あんまり今ははしゃぐなよ?
私達は普段馬に乗らないんだ。お前の大声で黒駒が急に暴れたりして、私達が落馬したらどうするんだ。」
従者達が先に黒駒の上にまたがって、その一方では馬使いに慣れている太子が手綱を黒駒の首に通しながら黒駒のじゃれ合っている。普通は立場が逆だろうがこの主従に常識を求めてはいけない。
「そんなことを黒駒はしませんよ屠自古。ちゃんとうちの黒駒は賢い子なんですから。
…………アハハッ、ちょっと!黒駒!私が褒めたからって、そんなに激しく唇で頬を舐め取らないでくださいよ〜!擽ったいですよ〜?」
「ブルル」
「あ〜?そういうことで喜んでいたんですね?
事実、すぐに会えましたが、それは直ぐに会えると言ったではないですか?……………え?他にいるのは聞いてないって?貴方なら出来るのは知ってます。だから文句を言わないでくださいよ?ゴホッ……んん。少しのどが痛いですね?風でも引きましたか?」
こんな感じで、いつもこの黒駒とその主人である彼女はこんな間抜けな会話をするのだ。
故にマミゾウは生来の突っ込み癖を何とか鎮めてから、馬屋の扉を太子の言いつけ通りに開けておいて、今から乗ろうとしている太子と共にはしゃいでいた戦闘に座っていた布都の膝の上に飛び乗った。
「さて、行きますよ!!心の準備はできましたか?」
「はいなのじゃ!太子様!」
「キュー!」
「お、お手柔らかにお願いしますね?太子様!?」
前から順番に黒駒に座っている、狸、布都、屠自古から返事を得た太子は満足そうに頷いた後、
「どうやら、ちゃんと出来たようですね?ならば、行きますよ!!………すぅ…はいやぁッ〜!!」
「ヒヒ〜ン!!」
そうして太子は合図と共に手綱を勢いよく引くと、黒駒は嬉しそうに馬屋の出口へと走り出した。
「うわぁ〜!?」「キャア〜〜!!?」
黒駒の力強く荒々しい走り出しに、従者二人組は悲鳴を上げるが黒駒は気にしないでそのまままだまだ溶け残っている雪原を駆けていき、猛スピードでそのまま崖まで駆けていきそのまま早朝の散歩の時と同じように飛び上がった。
― ガガガッ ガガガッ ―
馬の宙を蹴る音と共に気がつけば、自分たちの目下には夜闇に煌めく斑鳩宮の人々の営みによる沢山の火の光。
暗闇に包まれた空の遠くでは都を照らしている炎の光が綺麗に光り輝いている。
その綺麗な景色は、2人の従者だけでなく、毎朝乗っていた太子やマミゾウ、そして黒駒ですらも感激させる美しさがあった。
「こ、これが……空を飛ぶということなんじゃな。」
「……す、すげぇ……飛燕や太子様はいつもこんな感じで空を飛んでいるんだな…………。」
「ええ………本当に、嬉しいことですね…………。」
「キュー………。」「ブルル………。」
そのような光景に、皆が心底、嬉しそうにしているのは、この風景はこの副都を作り上げた三人にとっては努力の結晶だからだった。
それも、お互い小さい頃に出会って仲が良くなり、共に立派な国を作ろうと志を共にして誓いあった頃からの努力である。
その志を示してから、既に15年以上も経っているとも、マミゾウは彼女達から聞いている。
そして、その十五年の間に多くの苦難や逆向な出来事があったということも。
戦、飢饉、裏切り合いに、天皇を巡る政敵、暗殺、影武者や協力者、国造り、そして、斑鳩の都造りなど。
そのような話を、マミゾウはこの数ヶ月の間の会話から狸という利点を生かして盗み聞きしていたので知っている。
だから、この三人の誇らしい笑顔の本当の理由をマミゾウは知っていた。
そんな景色をうっとりと眺めながら従者二人が感動していると、その様子を眺めていた太子は少し得意げに二人に話しかけた。
「如何ですか?屠自古、布都。この綺麗な都の景色の上を行く遊覧飛行の感想は?」
「最高です!!本当に………感動しましたよ!!太子様!!」
「毎日こんな景色を見ていたなんてやっぱりずるいのですぞ!太子様!………けど…。」
「けど?……なんですか?布都?」
「…………屠自古と我をここまで連れてきてくれて………本当に感謝しております。太子様。」
「布都………。」「………布都。」
急に思わずマミゾウは振り向いてしまった。何故ならば、皆が布都の言葉に静かになってしまい、その空気が気になってしまぅていたから。
先ほどまで、『こんなにヒトをのせてゆっくりと空を駆け抜けるなんて大変だよなぁ〜!まったく!私の主人は無理を捺せやがって!』と、さっきから内心愚痴を吐いていた黒駒も、今は、静かになってしまっている。
少し、して布都は今度は珍しくも子供らしい声ではなく、実年齢に相応しい美しくも大人らしい優しい音色で喋り出す。
「…………我は物部氏一族の全員を裏切った。それも内通者として情報を蘇我氏に影で渡して。その結果、仲の良かった家族は死に、腹の絶つ叔父や口うるさい叔母も一人残らず死んだのじゃ。それも私の目の前で、絶望顔でじゃ。
それもこれも、元とは言えば、我がいじめられた時に我を救ってくださった太子様とあの時出会ったのがきっかけじゃった。」
「「………………。」」
黙り込んでしまった二人に、布都自分のことを穏やかな笑顔で撫で回しながらそう語り始めた布都。
マミゾウはそんな布都の表情をはっきりと見ることが出来なかった。
しかし、布都はそれでも優しい音色は崩さずに話を続ける。少しずつ声を震わせながらだったが…………。
「しかし、『あの日の誓い』は果たされたのじゃ。我はこの斑鳩の都を、この美しく華やかな都を特等席から見て確信しました。
…………この十数年……本当に、ほんどうに……ながかっだ……胸が本当に苦しかっだ……グスッ。これで……これで、あの世にいる我が裏切ってしまった親族や家族もずぐわれようぞ………グスッ……ヒック…………。」
彼女は既に滅び去った物部氏の本当の意味での『末裔』である。
事実、物部一族は彼女しか生き残っていない。既に、この場にいる聖徳王と蘇我の一族との宗教抗争に敗れて皆生きだえた。
ただ、彼女だけが生き残ったしまったというだけなのならば、救いはあっただろう。
ただ、何よりも悲しきことは、彼女が、物部氏を滅ぼしたことを手引きした張本人だったからだった。
マミゾウは彼女に話しかけられた時に幾度も聞いていた。
彼女の一族を中心とした家族や親族ととても仲が良好だったと。それを豊聡耳神子と誓い会った夢の為に、彼女は大事な者達を自ら捨てたのだ。親しかった者達を裏切ったのだ、…と。
その行動は一言でいえば冷酷だと言えよう。最低な売国奴と言えよう。一族の裏切り者だと言えよう。
しかし、それを誰が直接、彼女に批判できようか?
彼女は心を氷にしてまで、今こうやって心の底から泣くまでしてその悲しみを今まで我慢していたのだ。
それもこれも、全て彼女等の誓いの為にしたことである。
そう、誰よりも信頼と親愛を向ける主人の為に。
これは他の二人には秘密にしろと言われた本人の独り言だった筈だった。
本人はただの言葉も分からぬ狸に対する相談という名の感情の捌け口として独り言を語っていたつもりなのだろう。
だが、残念ながらマミゾウは化け狸なのだ。人間を上回る知能があった。この数ヶ月間の間、彼女は何度マミゾウ相手の二人っきりの時に、マミゾウの前で泣きついてきていたのか………。
だから、親分気質で世話焼きなマミゾウはこの彼女の苦しみを十分に理解してしまい、同時に酷く悲しんでいた。
何度、自分の正体を明かして人型のその身体で包もうとしたことか。何度、人型になって彼女の苦しみや悲しみを癒そうと始終八苦しようとしたことか。
しかし、マミゾウは有言実行の為に、それを知らんぷりしなければいけなかった。
だからマミゾウは、ただ声も出せずに自身をギュッと抱きしめて、泣きじゃくっていた布都に今のように優しくすり寄って、励まそうとすることしかしか出来なかった。
「キュー?」
「………何じゃ?グスッ……狸?相変わらずその声で鳴きよるが、我は太子様ではないからお主の言いたいことは分からぬぞ?」
「キュー」
「なんだ?無でろということか?ふふ……お前は本当に甘えん坊じゃなぁ〜?………そういえば、お主も毎朝このような景色を見ていたのか?」
「キュー」
「そうか……そうか。うらやましい狸じゃな。グスッ。仕方がないヤツじゃ。ほれ…撫でてやろう………グスッ。」
そう言って、狸を抱きしめる布都の独白を二人は静かに聞き入っていた。
そして、彼女は話を自身の話を続ける。まるで独り言のように。
「………ですが、我は太子様や屠自古を決して恨んではおりませんよ?
寧ろ、2人には感謝しておりまする。何故ならば、……こんな綺麗な景色を我に見せてくださったのですから。そう……そして、二人は我との誓いを果たしてくれたのですから。」
「布都。」
「………布都。」
「グスッ……ふふっ……すみません太子様。屠自古。この心は墓場まで持っていくつもりでしたのに。
…………この綺麗な景色を見てしまった。それ故に……止まりませんでしたのじゃ。本当に…………こんな弱い心を持った従者ですみませんのじゃ。」
そう、独りポツリと言葉を零す布都に後ろに乗っていた屠自古は強く抱きしめる。
「う、うぐ……布都。すまねぇ。そんなことを思ってたのに、普段から、酷いことばかりお前に言ってよぉ〜!!本当にごめんえんなぁ?グスッ……。」
普段はいがみ合っている二人。犬猿の仲で古くから争い合い、滅ぼし合っていたはずの蘇我氏と物部氏の一族同士、本来、二人は敵対していた一族である。
それでも志だけは一緒な戦友であり、親友であり幼馴染で、そして、同じ主人を持ち志を共にした親愛なる同僚だ。
だからこそ、この時の二人は、お互いの心を素直に零し会えるのだ。憎しみなど、とうに消えている
「く、苦しいぞ?屠自古!少し強く抱きしめすぎじゃ?飛燕殿すらもそこまでは強くは抱きしめんのじゃ………。」
「す、すまねぇ布都……言った傍から………。」
「良いんじゃ良いんじゃ。大丈夫じゃ。………それに屠自古。我は別にお主の普段の言動など気にしておらん。寧ろ感謝していると。言ったであろう?」
「グスッ……グスッ………布都は良いのか?私を許して…?蘇我の一族を許して……?」
「何を言っている?屠自古?寧ろ、我が間違いを犯しそうになるか、する度にお主が叱って止めてくれたのじゃ。
それがなければ、我はとっくに道を踏み外して死んでおったわ。それに……お主との喧嘩は………いつも楽しいのじゃな。」
「…………ふ、ふん。私も楽しいよ。……悪さや悪戯ばかりするお前のことを呆れながらシバいていた日々はな?
本当にお前はどうしょうもない阿呆の子だったからさ。ふふっ………グスッ。」
そういって………二人は気恥ずかしそうに頬を人差し指でなぞっているのを、太子は静かに見届けていた。
「……………。」
何故ならば、この二人に対して、こんな数奇で残酷で、そして高尚で立派な夢に持ち込み、ついていかせたその張本人は太子だったから。
勿論、屠自古にも暗い過去はある。それはこの建てられた斑鳩宮が証明となって光り輝いているのだから。
太子本人が二人にその夢を話して、結果として先導に近い形で、『自分達の立派で美しい国を作ろう』と、誓いを立てさせたのだ。
その全ての元凶である自分が、今ここで2人には口を出す権利も資格すらも無いのは自身が一番理解している。
だから、太子は静かに今だけは素直になって仲直りしている従者達が出来るだけ素直であり続ける為に、自身が握っている黒駒の手綱をギュッと握りしめ、黙ったままこの綺麗な暗闇に浮かぶ斑鳩宮の光を二人に見せ続けるのみである。
そんな、責任感の人一倍強い主人の心内をお見通しだった2人の従者はお互いにクスりとこっそりと笑い合った後に、あえて指摘することもなく、主人のその気遣いに甘えることにし、一匹の狸を交えて嬉しそうに従者同士の他愛もない仲むずまじい会話を続けたのだった。
にしても…………どうしてでしょうか…?胸の動悸が止まりませんが……二人の熱が伝染したのでしょうか?
それとも……気の所為でしょうか?
(次回に続く。)
長くなってすんません。
読者の皆様にとっての女オリ主のイメージを教えてください!
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可愛い! ここに皆入れてね!
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格好いい! そう?まあそれもありだね?
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美しいね! エヘヘー分かってんじゃん!
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変態! でも変態なお姉さんは好きでしょ?
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人情姉さん! 私についてきな!君達!
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大人なお姉さん! 妥当だよねー!うふふ♪
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乙女だよ! 分かってるねー!
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人妻最高! 良い子の皆は入れないでね?
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未亡人最高! なんか投票欄が怪しくない?
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もっと強くなれよ! あっはい、頑張ります
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ポンコツだね。 ん?これは褒め言葉?