斑鳩宮から脱出することが出来た屠自古と布都は何度か僧侶達の追手に見つかったり交戦することになったり、はたまた遠回りをさせられたりさせられてしまった結果、普通なら数時間かかる程度の道のりに半日以上の時間をかけてしまっていた。
故に、屠自古と布都がすぐ近くにまで辿り着けるまでには既に、太陽は昇り太子の命日の日付へと今にも変わりそうになっている。
その事実が、屠自古と布都の焦燥感を煽ってきて仕方が無かった。
そして屠自古は、日も上がっていないせいで暗く殆ど明かりもない森の中を僅かな明かりを道術の炎で足元を照らして、布都を背中に背負いながら転ばぬように慎重に、しかしできるだけ早く進めるように小走りしていた。
― ガサガサ ザク ザク ―
木ノ葉やまだ残っている背の高い雑草が屠自古の動きに合わせて揺れる音と、森の中に沢山積もっている雪を踏む音が鳴り響き続けている。
「はぁ!はぁ!布都!……しっかりしろ!後少しだよ!!」
「ぐ…ゴホッ……はぁはぁ…。こんな時に背負わせてしまってすまぬ屠自古。我が殆ど力が残っておらんせいで……屠自古に負担が…………。」
「余り上手く戦えない私を庇いながら僧侶達と沢山戦えばそうなるのは仕方ねぇよ。はぁはぁっ!布都!!お前はまだ追手が来るかもしれねぇから今は黙って体力を温存しとけ!」
「………そ、そうじゃな。コホッ……。」
屠自古と布都は既に、何度も追手や待ち伏せを受けていた。
度重なる襲撃や追手を受けていた二人の衣服は、もうすでにボロボロである。故に、二人の身にまとっている布地がほつれていたり雪解けの地面に転んでしまつまて泥に塗れている所があるのも仕方がないと言えた。
そして、二人はこのニ日ニ晩の間、一睡もしていないまま休憩以外は殆ど休めていないのだ。
だからお互いの顔色も体調もその分すこぶる悪い。今では遠巻きに付いてきながら辺りを警戒してくれている狸達がいなければ、追手や待ち伏せの存在に気が付かずに、そのまま今でも追ってきているだろう僧侶達に捕縛されているだろう。
それくらい屠自古と布都には余裕が全く無かった。
屠自古は今はただ、太子様がいるだろう布都の屋敷へ向かってこの明け方の暗い森を疾走することだけしか考えられなかった。
「はぁ…はぁ……ゴホッ……はぁはぁ……!」
「屠自古……一旦休むのじゃ………お主こそ、限界が近いじゃろう?」
「馬鹿!ゆっくり出来るもんか!後少しで太陽が昇ってきちまうんだぞ?
そしたら、もう三日目になるんだ!もう、太子様の身体がいつ限界が来るか分からないんだぞ?」
「し、しかし……。」
「はぁ…はぁ……もう喋らせるな。体力が持たねぇ。」
「す、すまぬ。」
そう言われてしまえば布都はもう屠自古に何も言えなかった。
屠自古をここで無駄に消耗させて、立ち往生してしまえば、れば霊力を枯渇させて身体が上手く動かせない今の自分も必然的に詰む。
そしてに、自分ももう、意識を保とうとしているだけでやっとだ。喋れるのは何とか脳が意識を維持しようとしている火事場の馬鹿力だ。
しかし、それでも馬鹿力は持続しない。もう、布都にも喋る体力は殆ど無かった。
「はぁはぁ……。」
― ガサガサ ザク ザク ―
今はもう、屠自古の荒くなっていた白い息と、森を突き抜ける時に鳴り響く草木、そしてまだまだ森に残っている雪を屠自古が踏んでいる音しか、布都の耳には届いていなかったのだった。
そうして暫くの間、屠自古が道のない森の中を布都を片手に背負って走っていると、太陽が顔を覗かせて朝日が山々から見せるのと同時に薄暗かった森が照らされて、丁度木々の僅かな隙間から少しだけ布都の別荘の姿がチラリと映ってきていた。
― ザク ザク ―
この調子だと布都の別荘までの距離はあと残り僅かだ。目の先まで来ているのは確実だ。
「はぁ……はぁ……やっとだ!やっと布都の別荘に着くぞ!布都!」
「………そ、そうじゃな…。」
屠自古は布都にそう呼びかけるが、布都は少し虚ろな様子だ。喜ぶ体力も残っていない様子だ。
(今のところ辺り周辺には僧侶達は見当たらねえぜ?いねぇぜ屠自古姉さん!)
まだ体力が少し残っていたらしい屠自古が喜ぶ様子を見せながら小走りを続けていると、斑鳩宮から脱出する前に、屠自古が締め上げて無理やり従わせていた尻尾が太めの化け狸の念力の声が森の周辺から聞こえてくる。
それに、応答するように屠自古は息絶え絶えになりながらもその化け狸に応える。
「はぁ…はぁ………屋敷の方はどうなんだ?化け狸?」
(今ん所、マミゾウの親分が陣取って攻めてくる沢山の僧侶達を牽制してる感じだ。
……それにしても、屋敷の内側から妖力とは違う凄まじい力が感じるんだけど……?いったいあんたらの主人は何やってるんだよ?)
「仙人修行だ!!…………やっぱり、まだ太子様は途中で死んだりしてないみたいだ!!
けど、逆に言えば太子様は尸解仙になれるってことだ。なら、私達も太子様が眠る前に行かねぇと!!」
「………意外と元気じゃな…。お主。」
そうして、屠自古は声をあげながら森から抜けて、雪が少しずつ溶けてきて地面が見え始めた布都の別荘の周りにある雪原の中を駆け出した。
(あっ!おい!見つかっちまうだろ!!言っちゃだめだ!!)
尾が太めの化け狸が静止の声を屠自古にかけるが、もう余裕がなくて走ることしか出来なくなっていた屠自古にはそんなことを聞き入れる程の余裕があるはずも無く、そのまま屠自古は雪原を疾走し続ける。
屠自古と担がられている布都の目には、自分達に気がついた沢山の僧侶達が次々と法力を札や錫杖を構えている姿。
そして、その奥には布都の屋敷の手前で未だに激戦を繰り広げ
ているマミゾウと思われる化け狸の大妖怪と高尚な僧侶だった。
『おい!あれは!聖徳王の従者二人組だ!!』
『ひっ捕らえて、どうにか聖徳王の企みを吐かせるのだ!』
そして、周りを警戒していた僧侶達は森を抜けて走ってきている屠自古と布都の存在に気が付き始めた。だから、屠自古は布都に横目で合図を送る。
「はぁ、はぁ!布都!頼めるか!?」
「おう!何とかするのじゃ!!」
屠自古と布都の乱入で場は混乱を極めた。
布都は隠し持っていた数十枚の霊力を込めた札を何とかばら撒くように投げて僧侶達を薙ぎ祓い、その作られた道を屠自古は重い足腰を動かして駆け抜ける。
「うぉぉぉ!!!」
布都の牽制の札の波状攻撃を上手く交わすことが出来て背後から二人を捕らえようとした位の高そうな僧侶を、仕方なくついてきていた尻尾の太い化け狸が大犬に化けて襲って噛み付いて邪魔をする。
それに合わせて他の化け狸が屠自古の少し後ろを四本脚で走り抜けて露払いのように、僧侶達の邪魔をしてくれている。
本当にありがとな!!化け狸達!!
その間を屠自古は凍える寒さの中を汗だくに成る程一心不乱に走っていき、僧侶達の包囲網を抜けることが出来たのだった。
ハァ…ハァ…!布都の別荘まであと、百尺くらいだ!!
布都の別荘までもうすぐそこまで来ている。残りはマミゾウ?と思われる化け狸の大妖怪と私達の登場に目を細めて私達を横目で見ている老人の僧侶だけだ!
しかし、僧侶とマミゾウは私達を呆れた様子で見つめるだけで、そのまま走り抜ける私達を見逃すようにお互い動き出さなかった。
?………分からねえけど、私達の目的は太子様との再開!それ以外はどうでもいいもんな?
そうして、そのまま屠自古と布都は屋敷方へと走り抜けていったのだった。
* * *
「………もう担がなくてもよいぞ屠自古。もうそろそろ自分の力で歩ける。」
「ハァ…そうか……よしっしょっと…ハァ……ハァ……い、一生分、全力で走った気がするな……。」
「……その……足腰は大丈夫か?屠自古?」
「………悪い…少し肩を貸してくれ。」
「分かったのじゃ。」
この場面ならば、息切れを起こしている屠自古のことをこれ幸いにいつもはからかうだろう布都も、今は素直に優しく低い慎重の身体で屠自古のことを支えてくれた。
屠自古はその布都の時々見せる優しさに嬉しさを覚えながら、静かにゆっくりと布都の好意に甘えることにして、体重を預けながら、そこから二人は肩を支えながら地下の霊廟へと続く隠し扉の方向へと歩を合わせながら歩き出した。
― シト シト ―
木造の床と二人の足袋(たび)が擦れる音が静かな廊下に響き渡ったている。
― シト シト ワーワー ―
外では狸達と僧侶達の合戦を繰り広げている音が僅かに聞こえてくる中、二人は積み重なっていた精神と肉体の疲労に抗いながら歩いて行った。
やがて、地下の霊廟へと続く扉を開けた二人は、石の階段を下って霊廟へと再び歩を進めていくと、地下から漏れ出る雪解け水の水滴の音が僅かに聞こえてきた。
― シト シト ―
地上から僅かに争いの音が聞こえる以外は自身達の足音と水音以外は聞こえない沈黙の空間な筈なのに、地下から膨大な力が溢れているのを感じて、寒寒と共に身体を震えてしまう。
だからこそ、二人は肩を支え合いながら歩いていった。
そして、降りていった先には薄暗闇の中に水色と青色の可視化された仙力が光り輝きながら炎のように溢れている霊廟が二人の目に移った。
やっと遠回りし過ぎた目的地へと辿り着くことが出来たことに半ば安堵しながらも、二人は霊廟へと向かって霊廟の門を潜っていき、霊廟の建物の入り口でこちらを見て驚愕のまま立ち止まってこちらを見つめていた豊聡耳神子をジッと見つめ返した。
対して、太子様は何も分かっていないのか、シドロモドロになりながら私達に話しかけてくる。
「と、屠自古…布都………?」
まるで、幻想を見ているかのようなムカつく目で。
「……ど、どうして………貴方達は戻ってきたのですか?」
そう本当に何故か分からなそうで、青白く死にかけな表情をしている太子様。そんな太子様に私は力の入らなかった身体と拳にぐっと力を入れながら、失礼を承知で質問をし返す。
「太子様。………どうして貴方は……貴方は、私達を逃がそうとしたのですか?断りもなく?」
私のジッと見つめる真剣な瞳に、太子様は何もわかっていないのか、真剣にいつも通りのあの紳士で誠実な目線を返してくる。
「そ、………それは…………貴方達は私についてくるべきではありません。私は主人として失格だから!」
その目線がムカついて仕方がなかった。本当に、何も分かってないのか?
「だから、貴方はこれ以上主人の勝手についてくる必要はないんです!!………だから―」
「太子様の馬鹿野郎ぉぉ〜〜!!!」
その瞬間、屠自古は疲労困憊で欠片も動かぬ身体を前に突き動かして、太子の頬を殴った。
― ゴン ―
隣で屠自古の止められたはずの布都も、複雑そうな泣き目の顔を下に向けるだけで止めようとしない。
そして、太子様は私に頬を殴られたことでバタンと腰をついてしまい、そのままポカンとしたまま私のことを見つめてくる。
「イタ…………と、屠自古?」
当たり前だ!私は太子様を殴ったのはこれで初めてなんだからな!けど、そんなこと今はどうだっていいんだ!!
それよりも言いたいことは五万とあるんだよ!!!
「それを本気で言っるんなら太子様!あんたは本当の馬鹿野郎だよ!!」
屠自古は、今まで一度も太子に暴力をしたことも暴言を吐いたこともなかった。
それ程、彼女は太子のことを愛していたから。
それ程、彼女は太子を敬愛して尊敬していたから。
そんな、彼女が拳から血が流れる程に本気で殴った。先ほどまでの疲れを忘れるほどに、疲れなんて知らないかのように。
それだけで、太子様は自分の馬鹿さ加減を理解させられたらしい。
今もわなわなと自分の愚かさに気づいて身体を震わせている。そんな太子様に私はもう疲労で考えられない脳内で、心からの愚痴と言いたかったことを伝える。
「今の私達を見てそう思うのか!!太子様!!今の布都を見てみろよ!!私を見てみろよ!!太子様自身を見てみろよ!!
何処が『自分は主人失格』だ!!なんでそんなことを言えるんだよ!!
寧ろ私達の主人であること誇れよ!!そうじゃなきゃ、今私達は太子様の目の前にいねぇんだよ!!」
「………しかしと、屠自古!!このままでは貴方達も封印されてしまいうんですよ!!そんなの分かりきったことではないじゃないですか!!」
それでも、わからず屋の太子様は癖である口で自分を誤魔化そうとするが、その時まで黙っていた布都がポツリと一言、口から漏らした。
「―…………封印ですと?」
その声に能力を使ったことで反応した太子様は今度は布都に向かって必死に捲し立て始める。情けなく。同仕様もなく。
「そうです!僧侶達の結界は封印の為のモノなのです!
後…後、少し時間が過ぎてしまえば、封印の結界は完成してしまうんですよ!!
封印されてしまえば貴方達は自由ではなくなる!人でないまま、長い眠りにつくことになるんです!!
だから、貴方達は私を置いて、このまま人間として自由に生きてください!
まだ間に合います!!だから、だから…………そこまで私の独尊に付き合わなくてもいいんです布都!!屠自古!!」
そう、一生懸命自分達のことを思ってなのか、必死に私達を説き伏せようとする太子様。
対して、いきなり布都は珍しく怒るような顔を見せて、太子様の胸倉を掴んで縋るように泣きじゃくりながらで言い返してきた。
「………そんなことでなのかっ!?そんなことでなのかっ!?」
「………ふ、布都?」
その、布都の普段からは全く見えない顔に太子様は呆然としてしまう。そんな太子様に布都は太子様の裾に泣きじゃくり続ける。
「………我はあの夜空を黒駒の背に乗って共に言ったじゃろう!!太子様!!グスッ…ろ『我は何処までもついていきます』と!!……たかが封印如きが故で我と屠自古が離れるとでも?物分かりが悪い主人じゃ!!屠自古にグー殴られるのも当たり前じゃ!!」
「………。」
「いつもの私を正そうとしてくれる説教はどうしたのじゃ!あの頼もしい様子は何処へ行ったのじゃ!グスッ
へグッ……どんな逆行にも頼りになる笑顔で切り開いてきたあのお姿は何処に行ったのじゃ!!我はそわな太子様のことは知らぬ!!でも、太子様!!目を覚ますのじゃ!!太子様も我等と同じ"人間"なんじゃと!!そうじゃろう?」
子供みたいに泣きじゃくる布都を胸元に、弱々しく抱きかかえながらも力なく座り込んでいた太子様。
そんな太子様の表情はストンと何か憑き物が抜けたように、昔の子供時代に数度だけ見せた泣き顔を浮かべてしまう。
やっと………やっと………分かりましたか?私達の気持ちを?
私は泣いてしまった布都を優しく立ち上がらせていた後、そんなポロリと頬に涙を一雫垂らしている太子に手を差し伸べる。
「太子様。誰にも間違いはあるんです。それが、例え完璧であろうとする貴方だとしても。
だからこそ、だからこそ、私達『従者』がその間違いを正すためにここにいるんです。
それで、どうですか?これで『主人失格』なんて口にも言えなくなりましたよね?」
「ッ!?」
『どうです?屠自古?これで、貴方は『自信がない』なんて口にでも言えなくなりましたでしょう?』
小さい頃、父に嫁入りの為の道具扱いをされてきてそのせいで自分に自信が全く無かった頃の私が、昔の小さい頃の太子様に言われたこと。そして、私が始めて救われたあの時のこと。
そう悪戯げに、あの時の太子様と同じ構図であの時のように私は太子様に手を差し出した。
太子様。今度は私の番ですよ?
「………………。」
太子様は私の意図に気がついたのだろう。ポカンとした表情を改めてた後に、気恥ずかしそうにそして嬉しそうに朗らかな笑みを浮かべながらも、やれやれとでも言いたげな呆れの笑顔を浮かべた。
そして、太子様は私の差し伸べた手を握って力強く立ち上がってくれた。
「………アハハ。本当に、本当に聞き分けの悪く、頼りになりすぎる従者達ですね。どうやら、私は貴方達に甘えきってしまっていたようです。」
そう言って、涙目な布都の涙を布地で拭いてあげている太子様は元の威厳溢れる笑顔を取り戻していた。
やっぱり、太子様にはその姿が似合う。
「…グスッ………太子様?元に戻ったのか?」
「ええ。そうですよ布都。布都と屠自古にあんな説教を食らってしまえば、誰だって嫌でも目が覚めますよ?私の間違いを正してくださり本当にありがとう御座います。二人とも。」
「ほ、本当か!?」
「ええ。どういたしまして……ほ、本当に戻ってきたんですね?太子様?」
「ええ。心配せずとも本当ですよ。さて、霊廟の中へと向かいましょう。もう、私と二人の分の用意は出来ていましたから。後は貴方に尸解仙になる術を教えるだけですね?」
「!……つ、ついて行ってもいいのか!太子様!!」
「ふふふっ。幾ら追い払ってもそれでもついてくるんです。ならば、幾らでも受け入れるしかないではないですか?布都?」
「そ、そうじゃな?そうなんじゃな!!我はその太子様の言葉を聞けるだけで十分なのじゃ〜!」
一瞬で疲れを忘れたかのように霊廟へと向かおうとする布都に身体を支えられながらも、太子様は繋いでいた私の手を離すつもりがなさそうにギュウと優しそうに握りしめて微笑んできた。
「屠自古?勿論、貴方もついてくるのでしょう?」
私の出す答えがわかりきったことをさっきの意趣返しのつもりの悪戯な笑顔でそう確認してくる太子様。私は、その太子様の朗らかな目を見て、確信した。
もう。太子様は道を踏み外さないだろう。
でも、もし、また踏み外しそうになったら、その時はこの馬鹿布都と一緒に、また止めてやればいいんだ。
そう従者として、……そして、家族として。
「はい!勿論です!太子様!!」
そう思いながら、私は布都とは逆側の太子様の右腕に肩を組んで、三人一緒に肩を並べるようにしてゆっくりと霊廟へと歩みだしていく。
「もう〜!太子様〜!本当に今回は大変でしたよ?何せ、この2日間以上の間、ずっと斑鳩宮中を駆け巡ったんですから?」
「そうじゃそうじゃ〜!太子様〜!!我と屠自古をこんなに振り回すなんて従者使いの荒いお人じゃなぁ〜?」
「アハハ……そのことは許してくださいよ二人共。もう、反省しましたから。」
「駄目じゃ!」「駄目ですね!」
「えぇ〜!!もう、あんなことはしませんから。ちゃんとずっと一緒にいますからぁ〜!!」
「言いましたな太子様?『ずっと』ですな?」「言質は取りましたからね?太子様?」
「ふふふ……何度も言う必要はありませんよ二人共。そう。『ずっと』共にいますから。」
「……そうですか。なら、許してあげますよ?太子様。」
「ウムウム。なら、許してあげますのじゃ。太子様。」
「あっ、馬鹿布都!仮にも従者としてその物言いは駄目だろうが!」
「おい!屠自古!その『仮』ってなんじゃ!?『仮』って?我はガッツリ太子様の家臣じゃが!?
そっちこそどうなんじゃ!今もガッツリ太子様に胸を押し当てて色目を使いおって!それでは家臣の風上にも置けぬわ!というか、ずるいのじゃ!我にはないのに!!本当にずるいのじゃ!!」
「私は太子様の正妻の嫁だからいいんだよ!布都のバーカ!」
「屠自古のバーカバーカ!」
「はいはい、仲が良いのは分かりましたから、こんな時ぐらい喧嘩はよしてくださいよ?二人共。」
そう、いつも通りの関係に戻った三人の霊廟へと入っていく。
そんな彼女等は本当の『家族』のような姿であった。
* * *
一方、布都の別荘周辺では、間もなく僧侶達が作った封印の結界が完了しようとしていた。
化け狸の大将と高尚な僧侶の二人は決闘を再開しており、今現在は周りの僧侶達や化け狸達が圧倒されて、お互いの陣営が足を止めて立ちすくんでしまうほどの高度な戦いを繰り広げていった。
そんな二人は、余裕を表すかのように同時に口撃の応酬を繰り返していく。
「化け狸の大将よ?何故、お主等はまだ退かぬ?封印の結界はもう時期完成するのだ。そなた等には、もう戦う意味がないだろうに。」
「それを言うのなら、何故あの時従者二人を通そうとしたのじゃ?それを聞いてから応えてやろう。」
「ふんっ……封印するのならば、纏めて封印したのほうが効率もよかろう。
あの二人の従者も異教の術を倣っていたのだ。ならば、あの屋敷の奥へと向かって貰った方が効果的。それだけのことの。」
「理には適っておるな。じゃがな、それ以外にあるように見えたがのう?」
「敵にすらも温情を与えるのが、我等の宗教の進めだ!」
「ふっ……素直じゃないのう。じゃが、儂がそう質問した理由は別にある。態々入らせたことはあ奴らの思う壺じゃなということだ。」
「…………どういうことだ?化け狸?」
「あ奴らはおぬしらの『封印』など、そもそも鼻にもかけておらん。気にしてもおらん。そもそも、この合戦。お主らの負けじゃ。お勤めご苦労さん。」
「………どういうことだ?意味がわからないが?」
「はっ、まだ分からんのか?人間(カモ)?あ奴らは、それぞれが隣にいることが出来ればどうなっても良いのじゃよ。
例え人間以外の種族になろうが、封印されて長い眠りにつこうがの?
あ奴らは共に、歩める合えるのなら、肩を並べて居られれば、あ奴らはこの先に何があっても簡単に笑い飛ばしてしまうじゃろうな。予見せずとも分かるわい。」
「……………。」
「きっと、あ奴らはおぬしのことなど恨んでもいないじゃろうな。だから、お主とは違って、あ奴らの器の格はまったく違うのじゃよ若造?
儂はあ奴らのその姿と、あ奴らに振り回されるお主らをずっと笑っておった。実に滑稽じゃ。だから、儂はここまでここに残っておったのじゃ。さあ、答え合わせにはなったかのう?満足したか?」
「………。」
「クックック………悔しかろう?お主も?弟子達も?散々振り回された挙句、その相手にはおくびにも相手にされず未来へと逃げられる。
そうじゃろう?お主がこの地下の霊廟にかけた封印はもう止まらん。そして、一度硬く封じられてしまった大結界は、もうすでにお主らにも解けん。
そして、あ奴らはお主等など生きてもいない遠く離れた封印の結界に綻びが出ただろう未来にて、いつの日何処かで大手を振って復活するじゃろうからな。それも、皆が笑顔になるじゃろうとても良い笑顔でじゃ。
ならば、あ奴等の勝ち逃げじゃ。それはもう笑うしかなかろう。なあ?
その瞬間、結界の封印の効果が発動するのと共に、とてつもない青く水色の綺麗な光りが屋敷事態から溢れ出した。
「おっ?……どうやらあ奴ら本当に成功させたようじゃな?」
* * *
手を結んだまま金丹を飲み込んだ三人の仮死状態の身体から、地下の霊廟ひいては地上の屋敷を大きく覆うような強く青白い仙力の光が、光灯に魂(こん)と魄(はく)と共に勢いよく溢れ出しては輝きを増して収縮を繰り返していく。
神々しく光輝く霊廟の中で、霊魂姿の3名が屋敷の屋根の上に飛び出て、お互いの手を結び合った。
その表情はとても穏やかなモノであった。
とても幸せそうで楽しそうに、未来を楽しみにしているかのように。
例え、これから直ぐに封印されてしまうとしても、彼女等は目を優しく瞑って、今の間は決して途切れることはないだろう幸せな優しい笑顔で自身の不幸をあの自由な化けガラスのように笑い飛ばしていく。
共にいるのなら。いつまでも隣に要られるのなら。
なら、笑っていこう。未来に向かって笑おう。幸せに。楽しそうに。
そう心の底でお互いに笑い合いながらも、彼女等は違う存在として生まれ変わっていく。死を超越し、人間から人間とは違う存在として。
そして、神々しい青白い光が段々と強くなっていき、それと同時にそれを封じ込めようとする強力な結界が屋敷を完璧に覆っていく。
いつか、復活するときが来るだろう。
いつか、また日常を取り戻すときが来るだろう。
その時は共に笑って、喧嘩して、飯を食べて、怒られ怒って、そして最後にまた笑い合おう。
そんな日常がいつの日かまた絶対に現れる。
だから、私達はその時まで眠ろう。
そう、その時まで。
そして、少し離れている筈の斑鳩宮が包まれる程の朝日よりも眩しくも神々しいその青白い光が解き放たれるのと同時に、封印の結界は完成したのだった。
さて、次回から女オリ主視点に戻ります。
なお、次回から金土日曜日の計週3投稿に戻ります。
読者の皆様にとっての女オリ主のイメージを教えてください!
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可愛い! ここに皆入れてね!
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格好いい! そう?まあそれもありだね?
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美しいね! エヘヘー分かってんじゃん!
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変態! でも変態なお姉さんは好きでしょ?
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人情姉さん! 私についてきな!君達!
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大人なお姉さん! 妥当だよねー!うふふ♪
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乙女だよ! 分かってるねー!
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人妻最高! 良い子の皆は入れないでね?
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未亡人最高! なんか投票欄が怪しくない?
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もっと強くなれよ! あっはい、頑張ります
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ポンコツだね。 ん?これは褒め言葉?