遂に現れる軍神。威厳溢れる神々の戦。その戦乱に巻き込まれる無力な人々と矮小な鴉。この物語はどのような結末を迎えるのだろうか?
何気に真面目に前書きを書いたのは初めてですね。
「申し上げます!八阪神の軍勢が突然国境付近に現れました!!現在ゆっくりとここ洩矢神社に向かって進軍してきている模様です!!」
椿ちゃんに手伝って貰いながら修行をし初めてから、1週間が経ち、段々と神力の使い方に慣れてきたころ、境内から欠けてきた伝令の兵士が慌てた様子で伝えてきた。
何処か張り詰めていたがいつも通りの日常を過ごしていた私達に緊張が走る。
「な、何故今まで分からなかった!!」
「はっ!!どうやら敵軍は少しずつ国境付近に兵を送り、時間をかけて潜伏させていた模様です!!」
「くっ!?やはり何かしら仕掛けてきたか!八阪神!!こちらもそれは薄々感じて準備を事前にしていたのが功を奏したな。出陣する。ツバキ、大巫女にこのことを伝え、巫女達を招集させろ!!」
「はいっ!!」
「馬鹿にしおって!このまま攻め上がれば、こちらを後手に回せるのにわざわざ堂々とゆっくり進軍しているとは……そうはせずに私を打ち倒せるとでも思っているとは…舐めるな!!
飛燕。お前は鴉になって国境付近からここまでの道のりを偵察しておけ!!妖力や神力はなるべく隠していけ!!お前の器用さなら簡単だ。やれっ!」
「承りました!!」
「伝令兵。お前は兵舎に向かって兵達に今から言う言付けを知らせろ。『洩矢神が出陣する。そなたらも続け』と。」
「はっ!!」
つ、遂に始まるのか……戦争が………!?
私はいいようもない緊張感を抱えたまま鴉に変化して神社から飛び立った。
* * *
その頃、八坂神奈子乾之軍神(やさかのかなこのかんのぐんのかみ)は1人ポツンと丘の上に立っていた。少し離れた所に、従者が跪いて待機しているのみで、周りには誰もいない。
八阪神はただ遠くの平原で進軍している自分の軍勢の様子を興味なさげにただ黙って見つめていた。
その表情に感情はあまり無い。唯一ある感情で読み取れるものはその退屈そうな目があるのみだった。
(退屈だ…………。)
八阪神は生まれ持っての強者だった。気がついたら周りには自分に従う者がいてそれらを従いながら自分の力を使い、力でねじ伏せ、支配していった。
そして、遂にはいつの間にか国を作っていた。その頃になると八阪神は『軍神』として祭り上げられ、多くの国へと侵略するまでの強国へと成長させていた。
何故その時、そんなことをしているのかは余り分からなかった。ただ、自分は心躍る闘争を求めていたのだろう。だから強者を求め、強者の力を求めていたのは分かった。
だが、己よりも強い者は見つからず虚しく時が過ぎていった。
ある時、こう思った。『国を作って見れば強者を見つけられるかもしれない。』
結果として、強者には出会った。自分と同じ国を治めていた神。しかし、己よりも強くはなかった。
己の権能に絶望した。『軍神』である己を恨んだ。軍神とは戦を司る神。故に軍神よりも強い神などいなかったのだ。
彼女は強者だった。そして、退屈だった。
* * *
今、進軍していた両陣が対面しようとしていた。その前に、洩矢神率いる軍勢は洩矢神が手を上げたことで一度立ち止まった。
「皆の者!今、我々には脅威が現れた!!
その脅威とは、他国を侵略している国。そしてその『軍神』だ!!侵略されれば信仰はなくなり、敗れた国ではこの国の民は暫くの間、虐げられるだろう。
そんなことは私は絶対に認めない!
お前らはどうだ?お前らの家族がそんな目に合うのを黙って見過ごすのか?違うだろう!
これは国の存亡を賭けた戦!
お前らの背中にはこの私がついている!どうかこの私にその命を賭けてくれ!!
そして、存分に暴れろ!!洩矢の男達よ!!」
オオオオオオオオオオ!!!!
私は神が何故神たる所存なのか今この光景を見てやっと分かった。神を信仰している人々にとって神は居所だ。故郷だ。だからこそ、兵士達は信仰のため、そして家族や愛する者の為に命を懸けられるんだと思う。
―そして、お互いの軍勢は対面した。
* * *
左右を森林によって塞ぐことで自然の容積地にし、即興の陣地を構いていた洩矢神の軍勢の周りには深い霧が立ち込めていた。
戦の前の霧は古来から戦の吉兆を表すと言われていた。そして、史実の歴史の中で『天を大きく動かす戦』の殆どには霧が発生しており、それらは兵士達の士気の向上や、逆に低下を起こしてきた。
今回の場合は後者といってしまっても良いだろう。
何故ならば今回の相手には『乾』を司る権能を持つ神が味方である。戦に置いて天気は勝敗を左右するほど重要な要素であった。古代の戦からだけでなく近現代の戦争でもそれは変わらない。故に、兵士達達から見ればこの場所は敵の領域。決して油断など出来る訳がなかった。
故に、槍矛を握りしめている諏訪の兵士達たちは緊張の沈黙に包まれていた。先ほどまで兵士達の士気を上げる為に声を張り上げていた指揮官達も誰も喋らない。上空で滑空している鴉意外は動こうとするものも居ない。
その時、霧の奥からいきなり太鼓のような打楽器の様な音が聞こえてきた。
― ドン ドン ドン ドン ドン ―
それに呼応するかの様に大きな影の生き物が霧の奥から近づいてくる。
― ドン ドン ドン ドン ドン ―
『『『『オー オー オー オー!!』』』』
それと呼応するように大きな影の生き物達から一斉に声が響き渡ってくる。
― ドン ドン ドン ドン ドン ―
そして、敵陣の周りだけの霧は突然晴れてきてその大きな姿生き物は姿を現した。
― ドンドンドンドンドンッ ―
『『『『オォーーーーーーーーー!!!』』』』
― 八阪神の手勢 ― その数、推定1万以上 ―
― 洩矢の手勢 ― その数、二千から二千五百程度 ―
両軍はこの時を持って激突した。
洩矢の兵士達の頬に汗がポタリと垂れ落ちていた。
* * *
『突撃。』
『『オォーーーーーーーーー!!!』』
八阪神のひと言で軍勢が突撃を開始した。対して洩矢神の軍勢は守りの陣形を保ったまま微動だにしない。八阪神の軍勢からみればそれは怯えて動けない獲物に見えるほどだった。
その様子が元々数が多く有利な戦に調子が乗っていた兵士達は、更に突き進む足のりの勢いを増していく。
戦慣れをした屈強な戦士達が大勢迫ってきても、洩矢神は未だに指揮の声をあげようとしない。それは洩矢神の軍勢も同じだった。まるで『ニンギョウ』の様に。
そして、やがて八阪神の軍勢の先方が接近しようとした時、先方二千程の指揮を任されていた者は何か違和感を感じていた。
(おかしい……何も動きがないのは余りにも不自然だ。)
男はこの十数年戦をしてきたが、こんな状況は生まれて初めてだった。
殆どの戦では、指揮官達は怯える兵士達が脱走しないように監視し、戦わせるだけでも精一杯なのである。故に、少なくとも1人でも脱走者は出る。それが常識だ。
こちらは有利な戦であるから脱走者はいなかったが、洩矢神の軍勢は明らかに不利である。故に一人や二人でも、それどころか数十人規模で脱走兵が出てもおかしくないのだ。
故に、全く動かない洩矢神の軍勢が一層不気味に見えた。
だが、すでに兵士達をとめるには進みすぎた。もう少し早く気が付けば良かったがこの違和感による判断の遅れが不手際を生じさせた。それがこの男の命取りだった。
「飛燕。ヤれ。」
「了解。」
― 『足元を這い回る黒き影』 ―
すると、先方の八阪神の兵士達の足元で一斉に黒い縄の様な者が地面から『飛び』上がり、八阪神の兵士達の足元に絡み付いた。
「なっ、何が起きたのか!?」
指揮官の男が急いで敵陣を見やるとそこにはただの案山子の集まりがあるのみ、先頭だけが鎧を着ていてそれ以外は何も着ていないただの置物だった。
「案山子だと!?」
驚く兵士達。その間に更に攻撃は続いた。
「続けろ。」
「了解。」
― 『意思なる石つぶて』 ―
上空を滑空していた鴉が先方の八阪神の兵士達に向かって、急下降をし始めて、零戦のよろしくのように一切に少しずつ神力で『創造しておいた』石の弾丸を罠にかかった兵士達に向かって『飛ばし』た。
先方の八阪神の兵士達の悲鳴が上がり、鮮血が飛び散る。それが合図となって、森に隠れていた姿を現した洩矢の兵士達が姿を現した。
「行けっ!!洩矢の戦士達よ!!奴らに地獄の業火を味あわせてやれ!!」
『『『オオオオオオオオオオ!!!』』』
左右の森から灯された沢山の矢や何かの液体が入った入れ物と共に、一本の火矢が飛んでいった。
そして、その火矢は入れ物が衝撃で砕け散って溢れ出た液体に着火して、勢いよく燃え広がった。
飛燕の攻撃を生き残った、八阪神の兵士達の悲鳴が過度の火傷の痛みで響き渡った。
洩矢神は元々不利である戦況を覆す為に様々な策を講じていた。
そして、その策は成った。
その策とは、深い森の中を兵士達を待機させておき、残りは米を刈ったあと稲の残りを使って兵士のカカシを配置したものだった。そして、それを洩矢神の神力で本物の兵士に見えるよう上手く誤魔化すように、突撃してきた先方の八阪神の兵士達に突撃中にこっそりとかけて置いたものだった。
そして、接近してきた兵士達を森の入り口に誘い込み、道祖神特製の神力と能力、そして妖術を使った罠を張らせて相手の身動きを一斉に封じ込めた。
そこに兵士が投げた菜種油を風祝と道祖神と共に神力で上手い具合に生き渡らせるために調節し、火矢を撃ち込ませたのだ。
洩矢神だけでは考えきれなかっただろう。しかし、洩矢神には人に頼ることは容易だった。時に娘や協力者の道祖神そして、巫女や指揮官の者たちに協力してもらいながら考え練った戦い方だった。もし、これが『愛』を知らなかったならば人に頼るという発想すら思い浮かぶことは出来なかっただろう。
何故ならば、神は万能だから。しかし、全能ではないから。
洩矢神は作戦の第一段階が成功したことで、安堵のため息を吐きそうになったがギリギリで心を引き締めて次の策へと指揮官達を移らせた。
よしっ。出鼻を挫いた!!
出だしは肝心だ。これなら行ける。
……けど…初めて私は人を殺した。そして、その事自体を自覚しても何も感じない自分に気が付いていてゾッとした。
そして、心は人間出会っても精神構造は人外だと言うことがはっきり分かった。分かってしまった。
私はこの事を忘れてはいけない。何故ならこんなに簡単に人をころせるということは、人の死に鈍感だということだから。怒りに身を任せれば、取り返しがつかないことになる。
私が地面に降り立って人型に戻った時、炎に包まれた1人の青年と目が合っていた。その目は絶望と恐怖と苦しみが混ざり合っていた。そして、その青年は重度の火傷で命を落としていった。
そして、先方にいた八阪神の兵士達は壊滅した。
「…………戦なんて、やっぱりするもんじゃないね。酷くて見てられないや。」
「ああ…私だって戦争なんかしたくもない。だが、これが国がやらなきゃいけない政の一つだよ。」
「…………諏訪子様。」
声のした方向を見ると、諏訪子様と後ろで付いていた椿ちゃんが歩いてきた。
「戦は辛いことです。同じ人間が簡単に死に、普段の掟では大罪となる『殺し』も正当化されてしまいます。
そして、それがいつの間にか当たり前になる。それほど戦というものは罪深いことなのです。私の能力でもこの『余りにも重い罪』は測ることも数えることもできませんでした。」
「椿ちゃん………。」
「ですが、全てが綺麗事で済まされることなんてこの世界にはありません。誰かが手を汚さなければいけない。それが政です。そこに『神』も『人間』も違いはありません。」
きっと、椿ちゃんはただ単に私のことを励まそうとしてくれていたんだと思う。
けど、その励ましは私にとってそれ以上の意味を持っていた。
「……………ありがと。椿ちゃん。」
「ふう……色々と準備しておいて良かった。蔵に菜種油を保管しておいて良かったよ。まさか、この戦で使うとは思わなかったこれで使われなかった花達が報われたよ。」
話を変えるように、ふぅ〜と額に流れる汗を拭いながら言ってくれる諏訪子様。その汗は炎の温度によるものなのか、それとも戦の緊張から来るものなのかは分からなかった。
「これでも、相手は4倍以上。中々キツイね。いい運動になりそうだ。」
皆の気遣いに気が付いていた私が笑顔で軽口を言うと、椿ちゃんも笑顔で返してくれた。緊張で少し引きつってるけどね。
「………そうですね。骨が折れます。今は全員が無傷で乗り越えられていることを喜びましょう。」
「……そうだね。ツバキ。」
そう……これからが本番だ。私達の動きを見て、相手はこちらの動きを警戒するだろう。
さっき先方兵士達だって相手からすれば小手調べだ。今の先方の兵士達は明らかに兵装が貧弱だ。恐らく、今全滅した兵士達は滅ぼされた国の兵士だったんだろう…………。
これから、私達は敵の本軍を相手にしなきゃいけない。そして、あの『軍神』も………。
私は向こうにいるだろう本陣の『軍神』をキッと睨みつけた。
* * *
一方、八阪神は先方の部隊がやられたのに対して、激昂するわけでもなく、策を兵士達に出す訳でもなく、この光景をただ目を見開いて向こうの陣の者達を見ていた。
(ああ……やっと出会えた。私の仇敵手が!!)
八阪神は心の底から喜びに打ちひしがれていた。あの主神の一目見て分かるあの神力の量。恐らく己と同じ『同格』の存在。
そして、他の二人も実力は己よりも低いがなかなか面白い。片方は『現人神』、もう片方は『中途半端』。どちらも珍しくも楽しめそうだ。
思わず八阪神は舌なめずりをしてしまうほど、頬を紅色に染めてしまうほど、純粋な闘志を絶やしていた。
「ヒッ!?」
近くに控えていた召使いが思わず怯んでしまうほど、興奮していた八阪神は興奮し、抑え込んでいた神力を無意識に解放していた。
マジか…八坂神奈子様の全盛期ってこんな絶望的に強かったんですね………。自分で書いててドン引きしました。(次話を書いている途中の作者の感想)
さて、神奈子様の強さにどうやって主人公勝たせばいいんだろうか……無理ゲーですね。これ。
暫く後の話になりますが、もしこの小説で登場する天魔様の性格はどうな風がいいですか?参考程度に教えてください。
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めっちゃ頑固親父風の父ただし親バカ
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めっちゃ頑固親父風の母ただし親バカ
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すごいポンコツ仕事は出来る父ただし親バカ
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すごいポンコツ仕事は出来る母ただし親バカ
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怠惰で不器用影で色々してる父ただし親バカ
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怠惰で不器用影で色々してる母ただし親バカ