化けガラスってマジっすか……。   作:SOGEKIKUN

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 短編集です!!

 ①「化け鴉と椛の名将棋」
 ②「お転婆天狗娘達と化け鴉のプチ冒険」
 ③「グ〜タラ娘とグ〜タラ鴉」
 ④「めぐむ様のお悩みと化け鴉」
 ⑤「稽古の日常」
 ⑥「生意気娘の夢の話と化け鴉」

 今回は上記の①になります。それぞれ題名を大きくしているので見たい話を見つけるのはわかりやすいと思います。良かったら見ていってくださいね。


因みにおまけはパートで言えば、
『天狗の里での日常回』『迷いの竹林の日常回』『守谷(洩矢)神社の日常回』の3つのパートに分かれています。
 気に入ったパートを見るのもありです。作者のおすすめは『守谷(洩矢)神社の日常回』です。

例の諏訪子様のスピンオフと椿ちゃんのスピンオフはその内描きます。



閑話:「おまけ其のニ」〜天狗の里での日常回①〜

 

 

①「化け鴉と椛の名将棋」

 

 

 

 

 春も下旬になり、天候が悪化する事が多くなるこの頃。案の定、雨が振り始めた。

 

 

 

 ― ポツ ポツ ―

 

 

 

 ― ザーーー ―

 

 

 空を自在に飛べる鴉天狗でさえも流石に呻くような本降りが降り始めてしまい、広い天魔の屋敷から出るには良い天気とは言えなくなったので、これではおのお転婆天狗娘達もジッとしているだろうと考えた椛は久しぶりに趣味の将棋に触れる事にした。

 

 今は昼食も済まし、洗った衣服も干しており文様やはたて様の無理難題を押し付けられない限り、暇な時間となる。

 そして、その2人は今は居間でお昼寝である。

 

 

 

 自分がお世話係だからと言って、二人にずっと付きっきりではないのだ。お二人が小さい頃は付きっきりではないといけなかったが、もうそろそろ自分で物事を進めるようになってきている年頃。寧ろ自分に付きまとわれる方が彼女達の成長を妨げるだろう。今の時期になると大天狗様からは、あくまで外出時や家事などを仰せつかっているだけなので、頼られたり、お願い事をされない限り今は不干渉であるべきなのだ。

 

 要は親離れである。寂しくも忙しい子育ての日々がひど段落したようで少しだけ嬉しく思う。これからは将来立派な上司となるように沢山学ばせようと思った椛だった。

 

 

 椛はいつも通りの相変わらず無表情で、いつもとは違う雨が庭に当たる水音を楽しみながら天魔の屋敷の廊下をパタパタと歩いていき、自分の寝所の部屋へと向かった。

 

 

 今日は静かだ。天狗の里の住民も、この雨では外にも歩こうとはしないだろう。

 

 

 それにしても、本当に久しぶりだ。将棋をいじるのは今年に入って最初かもしれない。

 狼天狗の中では名門である椛の実家の犬走家では皆将棋を触るので、椛が物心つく頃には自然と将棋が好きになっていた。

 もうかれこれ100年以上は付き合いのある趣味だ。

 

 

 椛は自分の小さな寝床部屋の端っこに立てかけていた埃が僅かについていた5代目の将棋盤の汚れを軽く払い、将棋の駒が入っている箱と一緒に将棋盤を持ち出す。

 いつもは自分の部屋でする事も多いが、あの娘達もイタズラをするような年頃ではないので、何処かの邪魔にならない場所で将棋をイジろうかと思案する。

 

 応接間は基本的に皆が集まったり、お客人がいる場所。長居するには少し不便だろう。

 大天狗様は基本的にお忙しい。特に今は大変な時期なので大天狗様の執務室やお部屋にお邪魔するのは忍びない。

 ならば、自由部屋ならどうだろうか?

 今の時間帯ならば、誰もいない。会議場などは今は今後のことを話し合っている大天狗様達が占拠しているだろう。

 

 それ以外なら天魔様の屋敷で働きで住み込んでいる休みの日の暇を持て余した鴉天狗様達や同僚もいるだろうが自由部屋は複数あるし、何より一つ一つが広い。やはり無難な所だろう。

 

 椛はのんびりと自由部屋の一室へと歩き出した。

 

 自由部屋へとたどり着いて近い部屋へと巡るが、いくつかの自由部屋には誰かしらいたが、一室だけ誰もいなかったので椛はそこの部屋で将棋を弄ることにした。

 部屋に将棋盤を広げて駒を一つ目を置く。

 

 

 ―パチ―

 

 

 椛はこの1つ目の駒が将棋盤に置かれるときの独特な音が無性に好きだった。加工された木同士が優しくぶつかり合うこの音は静かに誰もいない空間に控え目に響き渡る。

 

 

 ― パチ パチ ―

 

 

 これだけで休みなどほとんどない日々の労働の疲れがとれて癒されていくのがわかる。

 

 

 ― パチ パチ ―

 

 

 

「ん?」

 

 

 その音に夢中になっていると、いつの間にか全ての将棋の駒が将棋盤へと並べられていたの気が付いた。

 

夢中になりすぎたことに少しだけ照れを感じてしまうが、これもいつものこと。特に1年近く空いていたので仕方がないと思い、将棋の歩を進めた。

 

 

 ― パチ ―

 

 

 

 勿論、相手はいない。しかし、この100年間はそれが当たり前だったので一人将棋は慣れている。

 

 大天狗の龍様とは時々するが、本当に暇な時だけ。例のお転婆娘達は将棋に興味を示さない。

 かと言って、異例の地位である私は周りから浮いているので知り合いは存在しても将棋を一緒に指す程の友はいなかった。

 将棋を指すのが習慣の家族とは里の大事な重役の娘を預かるという立場から、中々会える機会には恵まれず、年に一度あるか無いかだ。

 

 寂しさや多少は不満はあるが、給料は高い。実家の兄弟達の育てる為の仕送りを出来る程には余裕がある。そもそも給料は貰っても椛は使わないのだ。いや、使う機会が無い。

 

 何せ、趣味は曲剣と盾を使った鍛錬と今行っている将棋だけ。

 

 掃除や洗濯など、家事全般は屋敷全体で行っているし、自分の寝床部屋は狭い。何かしら生活に必要な物を用意する必要もないので、せいぜい今まで頂いた曲剣や盾が飾ってあるだけだ。

 

 

 そんな自分に充実した生活を送れと言う方がおかしいのだ。

 

 

 ―パチ―

 

 

 少し時間が経って、将棋の場面は終盤へと進む。毎回どちらが勝つかは分からない。何せ自分が相手だから。

 だが、今回はいつも自分が据わっている方の玉の方が劣勢だった。

 

 

「負けましたか…………。」

 

 

 

 おかしなことを言っているが、今日は自分がいるはずも無い相手に負けたようだ。玉が成り金と角や飛車に囲まれてしまい、詰みとなってしまった。

 

 

(今日は辞めにしましょう。)

 

 

 十分に楽しめた筈だが、何故か気持ちが落ち込んでしまったので、今日は違うことをしようと将棋の駒を箱にしまおうとした瞬間、襖が、ガタッと少し乱暴に開く音が聞こえた。

 

 

 (あれ?椛さんって、将棋やってたんだ?)

 

 

 私が自由部屋の入り口を見ると、飛燕様が彼女の能力『飛ばす程度の能力』で器用に襖を横に『飛ばして』閉めている姿があった。その鴉の姿に前腕なんてないのに触ることで扉を自動に開けしめ出来るのは便利だろう。

 

 最近、見つけたという飛燕様の能力。少し羨ましいと思う程、使い勝手のいい能力だ。

 かく言う私も『千里を見通す程度の能力』を持っているが、これは周りを見ることしか出来ない。

 だから、自由な使い方が出来ることに少し嫉妬してしまっているのかもしれない。

 それにしても、私の言葉を理解して、更に自分の考えを相手に『飛ばして』伝えるとは本当に器用なおヒトだ。

 鴉であるのにそこまで知能があるとは………本人が化け鴉と言うならば納得する理由だ。

 

 

 

「はい。そうです。実家ではこれが当たり前でしたので。」

 

 

 (そうなんだ?椛さん一人でやってたの?)

 

 

 その言葉を聞いて、私の心が少しだけチクリと痛んだ。一人将棋は平気だと思っていたが、やっぱり将棋相手がいなかったのが、心の奥底では寂しく思っていたんだろう。

 

 

「はい。お恥ずかしながら今日の相手が見つからず………。」

 

 

 同時に思わず後頭部を弄ってしまうくらいには気恥ずかしさが生まれた。

 

 

 (じゃあ、今の私と一緒だね。)

 

 

「はい?」

 

 

 そう言って、照れくさそうに『カア…』と鳴く飛燕様。いつも楽しそうにしているのにどういう意味なのか分からなかった。

 

 

 (ほらっ、今私も一人でしょ?文やはたては二人だけの朝方の大冒険で遊び疲れて寝ちゃってるし、外は雨だからこの屋敷の中一人で廊下をウロウロしてたんだ〜。私も椛も暇な所が一緒じゃん。)

 

 

「…………成る程。確かに一緒ですね。」

 

 

 なんだ……そういうことか。自分からしたら孤独を感じていることが共通点だと考えてしまっても仕方がないかもしれないが、飛燕様からしたら、暇な事が共通点だと考えてしまっても仕方がない。

 

 

(そう。だからさ、丁度良いし、私と一緒に将棋をやろうか。)

 

 

 

 そう言いながらパタパタとその小さな足で将棋盤の前にきて座り、纏めてあった駒をそのくちばしで器用に次々と一つ一つ並べていく。

 未経験者とは決して言えないほどには駒の位地を知っているようだ。そうでなければ、こんなに迷いなくバラバラだった駒を正式な場所に置けない。

 

 

「………飛燕様、将棋の経験がお有りだったんですね…?」

 

 

(アハハ……まあ、私のこんな形じゃあ、びっくりするのは当たり前だよねー。久しぶりにやるなー。けど、舐めちゃいけないよ?私、結構強いから?)

 

 

 

 ……………鴉のくせに、その楽しそうな挑発の笑顔を見せられたらこちらも乗るしかないではないか。この将棋に。

 

 

 

「奇遇ですね?………私も久しぶりです。だから、手加減出来ないかもしれませんよ?」

 

 

(ふふふ………言うじゃん。私も負けないからね?)

 

 

 この時の自分は多分羽目を外していたかもしれない。何故なら、久しぶりの将棋仲間との出会いだったから。

 

 

 

お互いの歩の駒がバチリと動き出した。

 

 

 

 

 

 それからは、とにかく夢中に駒を置いた。最初は久しぶりに触ったのもあり、大事な駒を間違った場所に置いてしまい、その駒を取られ、劣勢に立たされてしまう。それでも楽しかった。だから例え逆行の場面でも楽しむことが出来る気がした。

 

 飛燕様もそれは同じだったようだ。私がうまく駒を進めていき、狙っていた金の駒を取ると、ニヤリと笑って私を見やる。

 

 

(へぇ………?やるじゃん。けど勝負はまだまだこれからだよ?)

 

 

 ―パチ―

 

 

「そうです。まだ私の本気はまだまだですから。」

 

 

 ―パチ―

 

 

(良いね。私も将棋好きとして血が滾るってもんだよ。)

 

 

 ―バチ―

 

 

 

 それからはお互いが駒を一つの会話のように指していく、それは普段口数が少ない私にとっては一つの心の触れ合いだった。

 

 彼女はこちらが思いもよらない駒の指し方で私の硬い陣形を崩し、当時にまだ凝り固まっていて硬かっただろう私の心を溶かしていく。

 対して、私はその真っ直ぐで今まで培ってきた技で真っ直ぐと誠実に相手の心にぶつかっていく。彼女はそれを駒を使って快く受け止めてくれた。まるで抱きしめるように。

 

 

 ―パチ―

 

 

 

私は雨の湿気で流れてくる汗なんて拭うことも忘れて将棋を指していた。

 

 

 

 ―  パチ  ―

 

 

 

 

「…………王手。これで詰みです。」

 

 

 

(…はぁ〜〜!!負けたぁ〜〜〜!!!)

 

 

 

 気が付けば、雨も止んでいて日が紅色に傾いていたことに気が付いた。

 

 

 

(まさか、ここでそんな賭けをしてくるとは………やるねぇ椛さん。でも悔しいぃ〜〜〜ここで私が角を利かせててたらなぁ〜〜〜!!!!)

 

 

「………そんなに悔しかったんですか?」

 

 

(そりゃあ、悔しいよーー!!私と椛さんとの真剣勝負だったんだよーーー!?)

 

 

 ただの趣味の遊びなのに、負けてこんなにも本気で悔しがってくれる飛燕様。その姿は夕方の紅色の光も相まって『アホー』と言っているただの鴉のようにしか見えないような幼稚なお姿だった。

 

 

 普段の椛ならばその情けない姿を見て呆れ顔になっていたが、その時の彼女の顔は、普段は見せない子供っぽい笑顔に包まれていた。

 

 

 

私はもう子供の年齢ではない。一人前の狼天狗だ。

 

 けど………子供みたいに夢中になれることはなんだか悪くない気分だった。

 

 

 

 

 

 ふと、椛は何処か燻っていた心の中のモヤモヤが無くなったことに気が付いた。

 

 

 

 

 勝てたことの喜び?いや、これは違う。

 

 

 別に勝敗なんてどうでも良かった。

 

 

 じゃあ………この爽快感はの正体は?

 

 

私は未だに悔しそうに悶えて『カー』と泣いている飛燕様を見ながら考える。

 

 

 

 

 ああ、そうか……私はただこうやって対等に誰かと何かを楽しむことに飢えていたんだ。この将棋の真剣勝負のように。

 

 

(…………どう?楽しかった?私との将棋?)

 

 

急にそんな当たり前のことをおっしゃる飛燕様。そんな分かりきったことを言わないで頂きたい。

 

 

「とても有意義な時間でしたよ。」

 

 

(そう?………それは良かった。)

 

 

 

 お互いに笑顔で笑い合う。私達に流れる汗を乾かしてくれたそよ風が無性に気持ちよかった。

 

 

 そうして私達が笑いあっていると、少し遠くの廊下から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 

「ねぇ〜〜〜?もみじぃ〜〜〜〜〜!!!」

 

「椛〜〜!!小腹が空いたわ!!何か作ってくれない?どこに居るの〜?」

 

「どこに行ったの〜?も〜みぃ〜じぃ〜〜〜!!」

 

「ねえ?はたて?椛とついでに飛燕もあんたの『能力』で探して欲しいんだけど?」

 

 

「あっ!?その手があった!!えっと………もみじ……の居場所は?………あっ!!一番端の自由部屋にひえんと一緒にいるよ!!さっきまで一緒に将棋してたみたい。」

 

 

「なにぃ〜〜!?『私の』飛燕で遊んでるだって?ついにあの生意気従者!!私の所有物に手を出したのね!?はたて!!一緒に椛から飛燕を奪還するわよ!!」

 

「えっ!?おやつは〜〜!?」

 

「飛燕を取り戻してからおやつは貰えば良いのよ!!行こきましょ!!はたて!!」

 

「ちょっ!?ちょっと待ってよぉ〜!!あ〜やぁ〜〜!?」

 

 

 ―ドタドタバタバタ―

 

 

 少しずつ2人の足音が聞こえてくる。どうやらさっきまで寝ていたお転婆娘達が活力を取り戻して動き出したらしい。

 

 

笑い合っていた私と飛燕様は別の種類の笑顔で見合う。今度こそ呆れ顔だ。

 

 

 

(アハハハ。相変わらず元気な娘達だよ。ねえ?椛さん?)

 

 

 

「そうですね。いつもいつも手を焼かされて。元気で可愛らしい困ったちゃん達です。」

 

 

(…………だけど?)

 

 

「ふふっ………ええそうです。私に毎日の新鮮さを届けてくれる頼もしい愉快な友達です。正直退屈なんて感じてる暇なんてないくらい私を頼ってくださる友達です。」

 

 

(なぁんだ〜?将棋をする前の私とは違かったんだ〜?)

 

 

「いえいえ…貴方も私達に喜びと楽しさを下さって頂いてますよ?それは飛燕も感じているのでは?」

 

 

(あっちゃー!これはまた1本取られたね?これ以上は負けられないよ?次は2連勝してやるから。)

 

 

「楽しみにしてます。それでは将棋は程々にして、文様とはたて様をお世話しなければいけませんね?」

 

 

(私も手伝うよ?)

 

 

「ありがとう御座います。では、まずは文様のヤキモチをお鎮めください。」

 

 

(ありゃりゃ?また1本取られたね?)

 

 

「ふふふっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 今日は素晴らしい一日だった。『明日ハレの日ケの昨日』これを考えついた人はこんな気分だったんだろう。

 

 

 

 

 

 案外、自分は孤独ではなかったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






オリ主が人型になる前の話なので少しだけ読みにくい可能性があると思ったんですが、なんだかんだ言って大丈夫そうでしたね。

おまけの『天狗の里での日常回』パートの中で一番気に入った回を教えてください!!このパートを全部読んだ後にお答えしてくださると光栄です。

  • ①「化け鴉と椛の名将棋」     
  • ②「お転婆天狗娘達と化け鴉のプチ冒険」
  • ③「グ〜タラ娘とグ〜タラ鴉」
  • ④「めぐむ様のお悩みと化け鴉」  
  • ⑤「稽古の日常」
  • ⑥「生意気娘の夢の話と化け鴉」
  • 全部好きだよバカヤロー!!
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