①『祈年祭と化けガラス』
②『神奈子様と化けガラスの物づくり』
③『大巫女さんの1日』
④『文と椿ちゃんと影狼ちゃんの鴉による対面四者懇談会』
⑤『椿という花について』
副題〜エピローグからプロローグへ〜
の⑤です。
⑤『椿という花について』
副題:〜エピローグからプロローグへ〜
諏訪大戦から40年が過ぎた。私の妖怪としての生はかれこれ長くなった頃。私は1週間振りに諏訪大戦に向かって、いい天気といえるの青天の中真っ直ぐと『飛ばして』いた。
「ふぅ〜〜。そう言えば、私も前世含めたらとっくに還暦超えかぁ〜。この時代なら、随分と長生きなんだよね〜。私。」
やっぱり妖怪の生は長いって実感するよね。こんなに年を取ってるのに、見た目や中身なんて余り変わってないからね。
良かったよ。精神構造は妖怪で。人間のままだったら。発狂してたかもしれない。
そうそう。私の妖力は少し増えた。サッカーボールからよくプールで見かけるビニールボールくらいには増えたよ。丁度私の胸回りくらいだ。
けど、神力は結構増えた。なんと、身体を多い尽くすくらいには増えたんだよね。この時代、旅する人は少ないけど少なからずいるからその旅に信仰を貰ってるらしい。私が東日本の旅をしているときに、たま〜〜に出会う旅の人間に挨拶されるからね。『石道神様!!』ってね。本当にこの時代の人は信心深いよ。だから私は妖怪だっての。
「ふぅ〜〜このルートも馴れたもんですよ。」
この40年何度も往復してるから最短ルートとかは開発しきってるから、私の能力を使えば1日くらいで妖怪の山から守屋神社まで辿り着ける。実はこのルート、最短だからって理由だけじゃなくて他の理由で気に入っててね。その理由はその内分かるよ。
その時。、急に上空から黒い影が出現した。
「おっ!?今日もお出ましだ。」
― ピー ―
その影の正体はここら辺一体の空を支配してる大鷲の妖怪だ。私が初めてここのルートを通ってからその度に獲物として狙ってくる奴。もうかれこれ30年以上は付き合いのある根性のある妖怪だ。
毎回私に逃げられているのに私がここの近くを通る度に匂いを察知して懲りずに襲ってくる。
その精神性に私は好感を持ってるんだよね。だって私が毎回猛スピードで空を駆け抜けるのに自分の縄張りの間は私に追いつこうと張り付いてくるんだ。こんな熱烈なアピールされちゃあこっちも負けてられないね。
「今日も歓迎楽しみにしてるよ!!」
― ピー ―
今日も私は命懸けの空の中を駆け抜ける。そこに毎日の生を実感して。
* * *
「今日も私の勝ちだね。さて、そろそろたどり着く頃だね。おっと、見つけた見つけた。」
鷲との命懸けの鬼ごっこを終えた頃。丁度、守屋神社付近までたどり着くことが出来た。
そして、私は初めて訪れた時よりも栄えている街並みの上で、ゆっくりと滑空していく。
「おっ!?石道神様だ!!」
「お〜!飛燕様!!」
「ひえんさま〜〜!!後で遊ぼ〜〜!!!」
多くの街の人達が私がいることに気が付いて手を振ってくれる。もう私が妖怪だと知っていてもそのまま受け入れてくれている温かい街。凄く嬉しいけど、ひとつ言いたいことがある。
「私は化けガラスだよ!?」
「アハハハッ!!」「キャーーーこわーーい!!!」「神様が怒ったぁ〜〜〜!!!」
いつの時代も悪戯好きな子供達は、私が怒った姿を見て笑いながら道の奥へと走り去っていった。このクソガキめ。可愛いじゃん。このっ。
諏訪の国は今日も平和だ。子供が笑えているならばその国はいい国だ。
本当に永久とは言わない。けど、この国がこのまま平穏が続いて言って欲しいと思える程には気に入っている自分がいた。
そんなことを考えながら、私は守屋神社の鳥居の前へと折り立って、あたりを見回した。
「お〜〜〜い!!皆いる〜〜〜?」
「はい。どちら様で―飛燕さんではないですか!!」
「やっ!?1週間振り!」
「ふふっ、相変わらずお変わりにないことで。」
「そっちは随分といい歳になっちゃって。でも今でも可愛いよ。椿ちゃん。」
「もう〜〜。そんな齢ではないんだから辞めてくださいよ。今年でもう還暦ですよ?私は。」
そう言って、ニコニコと笑う椿ちゃん。おばあさんになったが背筋はピンッと伸びていて、無駄な脂肪もなく、顔のシワも肌も同世代では圧倒的に健康的だ。今でも夜に頂けるくらいには可憐で美しい女性だ。今でも40歳に見える。
「ふふふ〜!何言ってんの。まだまだ現役でしょ?アッチの方は?」
「もう体力的にキツイですよ。一戦出来れば良い方です。」
「またまた〜!まあ、ゆっくりお茶でもしながらここ1週間近くの今回の冒険を話そうよ。」
「ふふっ。楽しみにしてます。今回はどこに行ったんですか?」
「へへぇ〜ん。今回は遠出したんだよ。蝦夷の地まで行ったんだ〜〜。」
「へぇ……そこまで……。かなり遠かったんじゃないですか?」
「まあね。所で諏訪子さんと神奈子さんは?呼んでも居ないけど?」
「大巫女さんの家に訪問してるみたいです。もう引退したのにあのお二人はいつまでも気にかけていますよ。私達は本当にお世話になりましたからね。彼女には。」
「うん。よく私達の相談にも乗ってくれてたよね?」
「ええ。本当にお世話になりました。」
「因みに昼時までは戻らない?」
「えぇ…そうですが?…………まさか……?」
「そうだよ?そのまさか。久しぶりだからね。味あわせて貰うよ?」
「ちょっと。もうまって―――ん………。」
― クチュ クチュ ―
久しぶりの口づけ。何歳になってもすることは変わらないいつでも深い方の口づけ。
だって少しでも元気で健康でいてほしいから。私は必ず会うたびにする行為。
「プハッ………もう。体力は落ちたんですよ?いつまでも現役な貴方とは違うんです。」
「じゃあ、その分たくさんエスコートしてあげる。今までたくさんヒーヒーさせられた分。」
「もう、本当に我儘なんですから。……仕方ありませんね。」
「今日も綺麗だよ。椿ちゃ―――ん……。」
― クチュ ―
いつでも私より情熱的な椿ちゃんはいつも通りの熱烈な口付けをくれた。
* * *
「ぷっはぁ〜〜〜!!!それで私達が来るまで2人は裸で抱き合ってたわけなんだね?」
「いつまでもお盛んだよなぁ〜〜2人は。」
「もうっ!!母上!!神奈子様!!辞めてください恥ずかしい。」
「イヤイヤ。良いんだよ〜?いつまでも健康的なのは。ただ私達は嬉しくてね。なぁ〜神奈子?」
「あぁ、そうだね。私達も負けてられないよ。なぁ諏訪子?」
「ッ〜〜〜〜〜〜!!!」
「アハハハハハッ!!」
「元気なことだ。ワハハハハ!!」
相変わらずお二人は娘イジリが好きなようで、顔を赤らめている大事な娘を肴にして可愛がり、笑いながら酒を飲んでいる。
わかる。恥ずかしがる椿ちゃんって可愛いよね。めっちゃ。
私がそんな呑気なことを考えていると、羞恥心が限界になった椿ちゃんは爆発したようで、思わぬ爆弾を投下してきた。
「いい歳になってきたのに五戦もしてしまって恥ずかしいんですよこっちは!!」
「げ、元気だね………。ツバキ?」
「そうだな……………齢60で?五戦?嘘でしょ?ねえ、飛燕?嘘だと言ってくれ。」
「いや、……マジか?」
「大マジです!!というか飛燕さん!!なんで覚えてないんですか?」
「いや……ね?私は最初はエスコートしてたけど、途中で椿ちゃんが盛り上がっちゃってそっから私は失神寸前だったから……というか五戦以上だったような………。」
「「えっ!?五戦以上!?」」
余りにも非常識な記録を聞いた神々は思わず大声で驚いてしまった。いや、本当になんなんだあの元気さは。どこから出てくるんだ?
「そ、それは………確かにそうだったような。私はまだまだ現役だったようですね。トホホ。」
「まあ………元気なことはいいことだからね。」
「五戦…………五戦以上?私達の平均を行ってないか?」
唖然とする神々であった。
* * *
夜も更け。宴会も終わって解散となった後、私と椿ちゃんは『あの時』と同じように『あの時』と同じ月明かりの中の夜道を歩いていた。
昔よりも栄えて来た諏訪の国の街なのに、不思議とここの草原だけは変わらず人気がなく静かだ。夜になれば月明かり以外は光源なんて見つからないくらい人気がない。
ちらりと隣を見ると、椿ちゃんと目が合う。相変わらず綺麗な目だ。凛としているのにそこに可愛らしさのあるキラキラとした緑目。
椿ちゃんはキョトンとした後、ニコリと笑って月のほうを見て言った。
「ふふっ……どうやら考えていることは同じのようですね。40年前の思い出の場所のこと。」
「そうだね。そう言えば私達が初めて出会ったのも月明かりの時だったね。」
「辞めてくださいよ。そんな昔話みたいに。まるでお婆ちゃんみたいな会話じゃないですか。」
「まあね。昼時までのことを考えたらまだまだ若いようだしね。」
「も〜!散々イジられたんですから辞めてくださいよ〜!」
そう言ってボコボコと私の背中を叩く椿ちゃん。私はそれに背を向けながら両手を挙げて降参のポーズをあげた。
「イタいよ。ごめんって。照れてる椿ちゃんが見たくて!!」
「嫌です!!辞めません!!もう一度ヒーヒー言わせますよ!!飛燕さん!!」
「元気一杯じゃん!!」
「めざせ生涯現役です!!」
2人の乙女は暗い夜道を小走りで追いかけ合う。2人には年齢や種族など関係ない。年月が過ぎても、心や中身は昔のままだった。
しかし、夜道で走ることは転倒の可能性が高まるリスクがある。そして案の上、2人は縺れ合って転んでしまった。
「わっ!?」
「きゃ!?」
私と椿ちゃんの顔と顔が重なり合い、意図せず口づけの体を成していた。私の両手と椿ちゃんの両手が握り合い、目と目があう。
「飛燕さん。愛してます。」
「知ってるよ。椿ちゃん。けど、私のほうが椿ちゃんを愛してるから。」
「ふふ……知ってます。」
私と椿ちゃんは片方の手だけは離さずに握り合いながら草原の上に寝そべって隣に並んで星空を見る。前世よりもくっきり見えて、幻想的な光景だった。
暫くの間、私と椿ちゃんはお互いの手の温もりを感じながら、黙って星空を見る。そして、何分後か分からない少し後、椿ちゃんはポツリと呟いた。
「椿という花言葉の意味を知っていますか?」
「……………なんだっけな?」
「椿の花言葉は『誇り』『控えめな優しさ』『控えめな素晴らしさ』『完全な愛』。
赤は「気取らない優美さ」、白は「完全なる美しさ」、紅色は「控えめな愛」」
「………まるで―」
「『椿ちゃんみたい。』ですか?ふふっ。」
不思議だ。名前は体を成すとはいうが、ここまで一致するなんて。前世でもそんな人は居ない。けど、椿ちゃんの名前は何故かしっくり来ると思った。
「じゃあ……次は椿の花の落ち方を知っていますか?」
「確か………花の根元から落ちるんだっけ?」
「今度は答えられましたね。椿は花ごと落ちるんです。そして、その落ちた椿の花は暫くの間残ります。」
「…………。」
私は押し黙ってしまった。何故なら今から椿ちゃんが言おうとしていることが分かってしまったから。
「………私は、少なくとも数十年後の月日が経てば、貴方の前には居なくなってしまうでしょう。そして、暫くの間は貴方を苦しめてしまうかもしれません。
けど、それは時間が解決してくれます。いつかは私の記憶や姿形のどちらかは薄れていき、風化してしまうでしょう。」
「…………………うゔん。ぞんなごとないよぉ゙。わだじは椿ちゃんのごどぉ。わずれないから。」
「もう……そんなに泣かないでください。まだ続きがあるんですから。」
「ゔん。」
「それでも。もしかしたら、いつの日か会えるかもしれない。私が死んでから、魂は転生を繰り返して、巡り合っていつかまた飛燕さんと会える。
それまで、飛燕さんは沢山長生きして、沢山の経験をして、それを再会した時にまた私に話してください。文さんに教えるように。」
「わがっだよ。グスッ。その時はちゃんど『飛燕さん。久しぶりです』って言っでよね!!」
「ええ。その時はそう言います。約束ですね?」
「ゔん……約束だよぉ゙。けど……もうそんなことは言わないで!!」
「っ!……………。けど、これだけは言わせてほしいんです。
もしかしたら、私は生まれ変わらずに違う形でいるかも知れませんよ?そこまで心配しないで大丈夫ですよ?
『森羅万象』。
私達がこうして出会えたように、いつかまた出会えるかも知れない。だから、気長に待っててくださいね。」
「ゔん!!気長に首を長くしてまってるよ。」
「もう……本当に私のことを好きですね。飛燕さんは。知っていましたけど。
ほら……泣き止んでくださいよ。これから沢山慰めて上げますから。沢山、沢山。愛してあげます。」
そう言って、椿ちゃんは自分の唇を私のおでこに当てて、ニコッと私に微笑んだ。その時の彼女は言いたいことを言えたのかとてもスッキリした顔をしていた。
「…………うん……。」
「これからも、沢山沢山愛します。生涯忘れることがないように。沢山思い出を作っていきましょう。」
「沢山作ろう。椿ちゃん。愛してる。」
「私もです。」
私に覆い被さり、私と唇を合わせながら、自分と私の衣服を交互にゆっくりと脱がしていく椿ちゃん。
その姿は星空なんか比べられないほどに美しく綺麗に感じた。
薄暗闇の星空の下で、今夜も2人の女性が愛し合う声が響き渡っていった。
次回からは第二章になります。お楽しみに!!
椿(ツバキ)の花言葉は「誇り」「控えめな優しさ」「控えめな素晴らしさ」「完全な愛」です。冬から春にかけて凛と咲く姿から、気高さや上品さを表す言葉が中心です。色別では、赤は「気取らない優美さ」、白は「完全なる美しさ」、ピンクは「控えめな愛」が代表的です