ヤバいですね。前回の百合パワーは凄いです。一気に執筆速度が増えましたから。恐ろしいです。何と分速60文字でしたから、凄いですよね。
食料や軽い道具などを荷物に入れて出発の準備を整えた。翌朝。私と美鈴さんは小屋の前に立ち並んでいた。
「さて、出発しよっか?」
「…………はい。」
口では答えてくれるけど、美鈴さんの目は小屋の方向を向いていた。
「あの小屋に思い入れでもあったの?」
「はい………そうですね。ずっとあそこで一人で暮らしてきましたから。中々実は気に入ってたのかもしれません。」
「…………………。」
本当に、このヒトは強い人だ。私に会うまでほとんど誰とも話さず孤独に苦しんでいたのに、めげずに生き続けて私の為に動いてくれている。私とは違う強い芯のある人だ。
今でも後悔しそうになる。私はこの人を連れてしまっていいのだろうか。本当は我慢して私に協力してくれているのかもしれないとか。
そして、
「そんな顔をしないで下さい。丁度そろそろ旅でもしてみようかと思ってた所なんです。丁度良いときに貴方が誘ってくれたのはとても嬉しかったんですから。そろそろあの家とはお別れするべきだったんです。」
そう言って、私が暗い気持ちになれば抱きしめて励ましてくれる。自分はまるで大丈夫だと言うように。
それをされるたびに本当に申し訳なく感じちゃう。
私は抱きしめてくれる美鈴さんに抱き返して、ポツリと言葉を吐いた。
「ごめんね。私の我儘で。」
「もう……貴方と文さんとの契約自体は切れてないんですから弱気になっちゃダメですよ。」
「…………うん。頑張って元気になる。」
「そうです。心の健康は『気』からですからね。」
そう言いながら美鈴さんは励ますような笑顔で私の『気』を操作して気分を向上させてくれる。
「ふぅ……ありがとう!!美鈴さん。」
「それでこそ。飛燕さんです。」
「うん!大丈夫だよね。文達は何とかするかもしれないんだから。」
「そうです。今は私達が出来る事だけに向かっていきましょう。」
「そうだね。今度こそ行こうか!!」
「ええ!」
そうして、私と美鈴さんは小屋の前を立ち去った。
今度は美鈴さんも私も後を振り返らなかった。
* * *
「ヤッホ〜〜〜〜!!!」
― ヤッホ〜〜 ―
― ャッホ〜 ―
― ホ〜 ―
「おお〜〜!!山彦だ!!凄い!!」
「もう〜!!飛燕さん。はしゃぎすぎです。」
今は私と美鈴さんで少し曇っている天山山脈の道なき荒地を歩いていた。
基本的に高山地帯は森はなく、石や岩ばかりで植物なんて苔や山草や高牧草くらいだ。だから、地面は脆く走ると崩れやすいので走るのはお勧めするできない。
かと言って、空を飛ぶと他の妖怪に目をつけられてしまうので控えるべきだらしい。中国には数え切れない程の妖怪やら神様やらがいて危険な妖怪も沢山いるらしい。
ふひぃ〜〜。本当に美鈴さんについてきて貰って良かったよ。そのことを教えてもらってなかったら、今頃は恐ろしい中国の妖怪達と命懸けのデス下山をしているところだった。
まあ、そういうことで天山山脈を抜けるまではガッツリと登山をしてるって訳なんだ。
やったね。ガチモンの登山じゃん。それも中国の奥地だよ?これは中々行ける機会はないよね。
フッフッフッ〜!!これは楽しむしかないじゃん!!
「わぁ〜〜!!いい景色だぁ〜〜!!」
「そうでしょうか?見慣れた景色ですよ?」
今私は天山山脈でも一番高い勝利峰山(ポベーダ山)に登ってるんだけど、めっちゃ高い!!
妖怪の山と比べたらどうなんだろう?
妖怪の山は山脈じゃなくて富士山のようにひとつだけある山だから比べるものがないけど、こっちは他に高い山が連なってるから大きさが比較しやすいね!
「美鈴さんには見慣れた風景でも倭国では中々見れないんだよ。こういう風景は。」
「そうなんですか?」
勿論日本にも山脈は沢山ある。ただこれ程の大きな山脈はなく、奥羽山脈や日本三大アルプスでもここまで高くスケールの大きなモノはないのだ。
「うん。けど美鈴さんには違う景色を見せたいな〜。」
「違う景色ですか?」
「そう。人間の街並みとかね。」
「人間のですか……。妖気が…………。」
やっぱり少し顔を暗くしてしまう美鈴さん。何かしら人間に対してトラウマでもあるのか鳥肌になっている。
「まあ…今の美鈴さんみたいに妖力…えっとここでは妖気を垂れ流してたら、妖気に敏感な人間に見つかったら追い払われちゃうけどね。けどさ。美鈴さんなら解決出来ると思うんだよ。」
「……………能力?……、あぁ……。」
「そう!美鈴さん。これは盲点だったのかしれない。美鈴さんの『気を操る程度の能力』で妖『気』を操って隠すことが出来るんじゃない?」
「……………。」
「美鈴さんがなんで人間に苦手意識を持つのかは分かるよ。美鈴さんは他の妖怪の誰よりも人間らしい妖怪だから、人に傷つけられれば会わなくなるのは仕方ないから。」
「………気づいていたんですね。」
「うん。だって美鈴さん程の優しい人がこんな山奥にいるなんて変だったから。幾ら修行が目的だとしてもここまでは来ないからね。」
「……貴方は私を優しいと言ってくれるんですね。」
「ん?優しいヒトじゃん。知り合ってすぐの見ず知らずの私を助けてくれてた。それだけでも優しいといえる理由になるでしょ?」
「ッ!?……………そうですね。」
「そう。美鈴さんはその妖気を隠せれば絶対に人間に好かれると思う。だって美鈴さんは気遣いの達人だもん。
だけど、無理には誘わないし、美鈴さんが嫌なら人の領域には近づかない。けど………私はそれでも美鈴さんに新しい世界を知って欲しいんだ。」
暗い顔をしたままの美鈴さん。私はそんな彼女の手を握りしめてはっきりと伝える。『美鈴さんには私がいるから』と。
「………分かりました。試してみましょう。」
どうやら私の思いは伝わったようで決心がついた美鈴さんはいつもの笑顔で私の願いに答えてくれた。
「ほんと?」
「はい。もし、失敗して妖怪だとバレてしまったらその時は助けてくださいね?」
「分かったよ。その時は同じ妖怪として助けてあげるから!」
「あれ?飛燕さんって妖怪なんですか?」
「ん?」
「てっきり神様かと…………。」
「あ〜ね。ちょっと待ってね。」
私は纏っている神力を限りなく押さえて身体中に纏えるようになった妖力を美鈴さんに分かるように解放する。
「あ………本当ですね………。」
「そうなんだ。良く初対面で神様扱いされるんだよ。だからといってこの状態だと息を止めてるみたいだから長くは続かないしね。大変だよ。同族にはよく襲われるし…………。私は化けガラスなのに…………。」
「…………苦労しているようですね。」
「ありがとう。美鈴さん。けど、この体質のお陰で沢山の大切は出会いがあったからな〜〜〜。」
「……それは文さんや影狼さんのような?」
…………あえて椿ちゃんの名前を出さなかったのはまだ私が引きずってるのを察して、気遣ってくれたんだろう。出発を決意したあの日に、寝具に2人で寝転んでいたときに私は美鈴さんに椿ちゃんの事を話していた。勿論文達やてゐ、諏訪子さん達のことも話したけどね。
そのほとんどを楽しそうに聞いてくれた美鈴さんだけど、椿ちゃんとの話の時は少し悲しそうにしていた。
二度と会えない別れは辛く悲しい。それは美鈴さんも理解しているんだろう。
けど、私は椿ちゃんとの出会いが悲しいだけだとは思えない。
確かに椿ちゃんとの別れは悲しかった。けど、だからといって椿ちゃんとつくった沢山の『思い出』が無くなった訳じゃない。
椿ちゃんと過ごした日常は私に沢山の幸せをくれた。これは別れの悲しさなんて吹き『飛ばす』くらいには楽しかった私の宝物の一つだ。
だから、私はあえて口に出す。そうすれば椿ちゃんを忘れないし、いつまでも心の中に居続けていてくれると椿ちゃんと約束したから。
私はあえて口に出す。まるで楽しそう語るように。
「勿論。椿ちゃんもね。凄く楽しい思い出が沢山出来た。だから、私はこの体質を気に入ってるし、私自身が嫌いだと思わない。」
「……………。」
「そう。だから美鈴さん。貴方は自分の出自や種族だけで諦めて欲しくない。もっと心を『自由にして』欲しいんだ。可能性を自ら閉ざして欲しくない。」
「…………飛燕さんは陽気なおヒトですが、沢山のことを考えていらっしゃるんですね。」
そう言っている美鈴さんは何処かスッキリしていた様子だった。
私はそれを見て少しだけ肩の荷が下りたような気がした。
少しでもいい。美鈴さんの悩みがとれてくれれば。これはこの旅に付き合ってくれる美鈴さんへの私なりの贈り物。
絶対に楽しい思い出にするから。だから美鈴さん。我慢なんてしなくていいんだよ。
「まあね?私は『旅の神様』でもあるんだから。」
「ふふっ、…………そうですね。」
「あっ!?美鈴さん今絶対に『神様らしくない』って思ったでしょ〜!?」
「………イエ…。ソンナコトアリマセンヨ。」
「そう言うなら何で早歩きで私から遠ざかるの?」
「…………。」タッタッタッ
「やっぱり思ってたなぁぁ〜〜〜!!!待てぇ〜〜!!!」
「嫌です!!鴉に攫われたらどうされるか分かったもんじゃないですから!!!」
「遂に本性を現したな妖かしめぇ〜〜〜!!懲らしめてやる。」
「さっきまで『自分は妖怪だ』って言っていたその舌は乾いていないんですが!?」
「良いんだよ!!今日は神様の気分なんだから!!」
「何ですかそれ!!」
― アハハハッ ――
2人はお互い穏やかな笑みで、穏やかな天気の中を走り合う。
さっきまで空にあったどんよりとした雲なんていつの間にか無くなっていて晴れ渡っていた。まるで私達の心の中を映し出したかのように。
* * *
「ガルルルルルル。」
「キー!キー!」
「ヒュールルルルルルル。」
「シュ〜〜〜〜。」
― ドドドドドドドド ―
「ねえ?どうして私達は狙われてるのかな?ハァハァ。」
「さあ?2人とも人型だからじゃないですかね?畜生妖怪の多くは知能がないので見た目とかで判断することも多いので。ハァハァ!!」
「じゃあ、私だけ鴉に戻れば襲われない?」
「それだけは辞めてください!!私に意識が集中しちゃうじゃないですか!?」
「流石に冗談だよ。アハハハ。元気でね。美鈴さん。」
「いや!それ絶対に裏切るための発言ですよね?完全に私を見捨てる気ですよその言い方!?」
中々良い切れ味のツッコミをくれる美鈴さん。実はまだ余裕があるんじゃないかな?
「ていうかヤバすぎだよ!!なんなのあの数!!!」
「分かりませんよ!!私でもこんなことは起きたのは初めてですから!!」
「ていうかなんか全体的にデカくない?なんなのあのデカさ!?どう見てもおかしいでしょ!!倭国にいたら普通に主サイズを名乗れるくらいあるんですけど??」
「中華産はあれがデフォルトなんです!!」
「あれがデフォとか中国怖すぎ!!正直舐めてたわ!!中国旅行!!」
「ねえ?さっきまで感動的な感じなのになんでこんなに急にギャグ展開よろしくのドタバタ劇が始まってるの!!」
「作者さんに言ってくださいよ!!最近湿っぽい話が多すぎだから少しクリーニング屋でお話をカラカラにしたいんじゃないんですか?」
「いや、私達は洗濯物か!!というか急にメタすぎだよ!!温度差を考えようよ!!場面転換にしては余りにも急展開過ぎるから!!」
「とにかくこのままでは追い詰められてしまいます!!これ以上は酷くならないでしょうから空を飛びましょう!!」
「いや、私も出来たらそうしたいけど。美鈴さん。上見て?」
「ん?」
― ピー ―
「ガーーー!!」
「シャ〜〜〜〜ス!!」
「なんで空まで妖怪がうじゃうじゃいるんですか!?」
「私達の騒動に吸い寄せられたんだよ!!きっと!!これだから人気者は辛いよ。」
「『男は辛いよ』みたいな言い方しないで下さい!!というか、どうなっているんですかここら一体は!!」
「ねぇ!?前見て!!」
「今度はなんですか!?」
「こっちに飛んできてるあの翼が映えた蛇は何?」
「あれは確か……化蛇(かだ)ですね。そう洪水の前兆を表す妖怪でしたね!!」
「え?マジ!?それってフラグなんじゃ…」
―パラパラ―
― ザー ―
「「あ………。」」
急に天気が悪くなり、急に雨が振り始めた。滝のようなのような土砂降りが。
「ねえ?美鈴さん。これってヤバいんじゃ…………」
「はい。ヤバいですね。」
その時、私達が走っている地面の地盤が揺らぎだした。
「シャララ?」
「クゥ〜ン?」
私達を追いかけていた大小様々な妖怪達が異変に段々と地面が山の下部へと傾いきだして、ついに崩れだした。
「「あ、あぁ〜〜!!!!?!」」
空に飛ぼうとする暇もなく突然土石流が私達を飲み込んだ。
「飛燕さん!!」
「美鈴さん!!」
私と美鈴さんは咄嗟にお互いを離さないように強く抱き締め合いたがら流木や土砂に流されて行ったのだった。
化蛇(かだ):翼のある蛇で、これが見られた土地には洪水がもたらされる。