海と船。これだけで出てくるキャラは分かるな東方星蓮船をプレイしたことがある同士諸君よ?
翌日。遂に、妹子さん達の荷物も運び終えて出発する時刻となった。
「よし、後は私達が船に乗るだけだね。」
「ええ。そうですわね。」
「もうすぐ故郷だぞ〜!!」
「いきましょうか?芳香ちゃん。ふふ。今は2人だけにしてあげましょう?」
「そうだな?せいが〜?」
青雅さんと芳香ちゃんがかけ橋を歩きだした。手を繋いでゆっくりと。青雅さん。変な気の使いかたをして………ありがとね。
けど。私は立ち止まったまま、隣に佇み送る側となった美鈴さんへと向き直った。
美鈴さんと目が合う。美鈴さんの表情は正直言って読み取れない。無表情という訳でもなくて、笑顔でもない。こういう表情ってなんなんだろうか?
もし、一番近い言葉を指すならば、恐らく『物憂つげ』という言葉なんだろう。その言葉が一番しっくりきたようなそうでもないような。
「「……………。」」
お互いに口を開かない。ハグもしない。ただお互いの目を見つめているだけ。
昨日。あれだけ愛し合ったんだ。もう大丈夫だと言うことはお互いに理解出来ているんだ。
― クー キュー ―
『出発するぞー!!』
そうこうしている内に船を操る船乗りが声をあげた。
その言葉を合図に、私の今まで溜め込んでいたような感情が溢れ出してきてしまった。もう、必要ないのに。寂しさが溢れてくる。
この半年間。長かったようで短い期間。いつも私の隣に美鈴さんは佇んで微笑んだり呆れの笑顔を浮かばせたりしてくれた。それがいつの間にか当たり前になっていたことに気が付いていた。
それが凄く嬉しくて、同時に悲しかった。
思わず、美鈴さんに駆け寄って行って抱きついてしまう。胸に顔を埋めていて見えないが、きっと美鈴さんは目を白黒させているだろう。けど、いつも美鈴さんは結局は抱き返して、頭を撫でてくれる。
今だって、美鈴さんは私の頭を優しく撫でてくれていた。
この仕草が味わえなくなるのが凄く寂しかった。
ごめんね。最後まで困惑させて!!
「美鈴ざん。今まで本当にありがとう。グスッ。結局はお礼なんて殆ど返せてなかったけど。いや、返しきれないよ!!」
私の声に美鈴さんの身体が震え出す。さっきまでの物憂つげな姿など影もなく感情をぶちまけるように、震え声で応えてられる。
「仕方ないですね。飛燕さんは………最後まで……ざいごまで私を狂わせてぎで………グスッ……最後くらいは笑顔で別れさせてぐださいよぉぉ〜!!」
やっぱり美鈴さんも凄く寂しいんだ。私だって凄く悲しい。
「いつまでも、このままでいたいよぉ〜!!美鈴さぁ〜ん!!うわぁ〜〜ん!!」
「もう……そうやって私を困らせて。わだじだっで………寂しいんでず。」
私の頭上に数滴の雨水が落ちる。けど、そんなことなんて私は気にしなかった。已に私は美鈴さんの胸元を濡らしてしまっているから。
「でも………ぐす。………飛燕さん。貴方は帰らなければいけません。倭国で文さんや影狼さんを初めとした大切な人達が貴方の帰りを待っているんですよ。」
美鈴さんは少しだけしゃがみ込んで私の顔と同じ高さに顔を揃えたて、涙目から涙を取りながら、パァとした笑顔を見せてくる。
「昨日お話したでしょう?またいつか会えるんですから?暫く会えないだけです。だから、再会の日を楽しみに待っててくださいよ。」
「ゔん。………分かった。グスッ。美鈴さんこそ、ちゃんとその時まで元気でいてね。」
「はい。ピンピンになってその時は会いに行きますよ。」
「約束だから!」
「はい。約束です。」
美鈴さんは私のおでこにキスをして、涙に濡れる頬を布地で拭いてくれる。優しく、けど………少しだけ震える手で。
「では。行ってください。飛燕さん。」
「うん。」
美鈴さんの言葉に従って、溢れそうになる涙を拭いながら私はかけ橋を渡っていく。
その間は決して後ろに振り返らなかった。
やっと。やっと。決心したんだ。今振り返れば帰れなくなる。だから、完全に船に乗るまでは振り返っちゃいけない。
― コツ コツ ―
― ザー ザー ―
かけ橋の音が波に打ち消されながらも僅かに響いていた。
遂に、私がかけ橋を渡り終えた。
『出航するぞ〜!!』
『『オォ〜!!!』』
それと同時に、船乗りの男たちの掛け声が始まる。
そして、少しずつ船は動き出して沖へと進んで行った。
* * *
ほんの少しだけ少しだけ、船が小さくなった頃。港の板版へと残されていた私は、ずっと出発した倭国の船をジッと見届けていた。
「行っちゃいましたか………飛燕さん。」
先ほどまで、飛燕さんと別れの挨拶を済ましていた私の胸の内は悲しさなんて吹き飛んでいて、晴れやかな気持ちとなっていた。
「あ〜あ〜〜。飛燕さんと一緒に行けば良かったのかな〜。」
口ではこんな後悔のような独白が出るが、でも心の底では後悔なんてしていなかった。だって、この半年間で私の心は充分に癒されていたから。
「寧ろ。生きる為の活力があり余っているなぁ〜。」
本当に、飛燕さんは凄い人だった。私の孤独感を癒して、私の人に対するトラウマをなくして、何もなかった私に目標や中身を見いだしてくれた。
「旅ですか………。中々私も飛燕さんに感化されているようですね。………もしかしたら飛燕さんと出会った者達もこうやって笑顔にさせられたんですかね。」
「さて………行きますか………………ん?」
気持ちを切替えて、私は港町へと戻るだめに背を向けようと空へと向けていた顔をさげると、倭国の船から何か、動くものが見えた。
「あれは……………」
目が良い私だから気がついた。
飛燕さんが腕を振っていた。この距離では聞こえないのに、大声で私に届くように、大口で滝のような涙を頬に垂らしながら。
「ゔっ……ゔゔ……ひえんざ〜〜ん!!!」
その姿を見た瞬間私は折角止まった涙を流してしまう。
「ざようならぁ゙ぁ゙ぁ゙〜!!!」
木板のギリギリまで進んで行って縁で止まって、大声で手を振る。飛燕さんにも見えるように。
「『またいつか!!会いましょ〜〜ゔ!!!!』」
もう、涙で目線が歪んで見えない。けど、確かに伝わったようだ。飛燕さんが能力で空気で音を響かせることで応えてくれたから。
「うぇぇ゙〜〜〜〜ん!!!」
それが凄く嬉しくて、胸が救われた。
私は一人じゃない。それだけでも分かった気がした。
私も頑張ろう。飛燕さんのように一生懸命楽しく生きよう。
私の泣き声は、夕方になるまで港に響き渡った。
* * *
澄み渡った空に、真上に差した太陽が私を照らしている。海上には影など存在せず、船の看板の下や、部屋の外以外には高い日差しから逃れる術はなかった。
小波以外は意外にも揺れない船に揺られながら、私は太陽から逃れるために帆の影で目を瞑って涼んでいた。
「はぁ……暑いな〜〜。」
まだ1週間も経っていないのに、美鈴さんが寂しく感じちゃうな〜。
「ダメだね。やることが少ない航海だと。どうしても考え事が増えちゃう。」
違うことを考えよう。いつまでも沈んだままだと椿ちゃんにどやされちゃうからね。
そういえば、どうしようかな?倭国に辿り着いた後は。
今まで、夢中になって中国大陸を横断してたから、あんまり考えて無かったけど、私って元々近畿地方を目指してたんだよね?
随分と遠回りしたな〜。本当に。
でも、流石に遠出しすぎたんだよね。
「やっぱり、一回天狗の里に戻った方がいいのかな〜?文の事も心配だし。他の知り合いの所にも行って私の生存確認した方がいいよね。影狼ちゃんや神奈子さん、諏訪子さんも心配してるだろうし。」
皆、私にとってかけがえのない家族のようなモノだ。やっぱり皆を安心させないとダメだよね。
「そうだよね。一旦帰ろう。その後また近畿地方に行けばいいし。」
「……………それでどうだったかしら?中国での旅行は?」
「ん?………なんだ。紫さんか………。まあ、楽しかったけどね……なんだか色々と複雑だったよ。」
「例えばどんな所が?」
「自分の弱さとかね…………文との契約が切れかかるだけで精神的に弱くなってた。誰かれ構わず、誰かのぬくもりを求めちゃう程。美鈴さんとの関係だって元を辿ればそれな原因だったな〜。」
「『自分の弱さ』ね…………それは精神的なものかしら?」
「そう。精神的なもの。美鈴さんと別れてみて、改めて私は常に誰かに依存してたんだなって思っちゃったよ。」
「そうね………私も気をつけなきゃいけないわね。」
「そうだね。依存しすぎることは本人の毒になるから。」
「「……………………。」」
「って!?八雲紫!?いつも急だね!?なんで背後から出てくるの!?辞めてよ!?私って実はビビリだからね!?心臓が飛び出るかと思ったわ!?」
「うふふふふ♪半年ぶりね?飛燕さん?」
「物理的にだよ?本当に心臓が飛び出るかと思ったじゃん!ここはお化け屋敷じゃないだからさ。」
「あら?美人さんに驚かされて、からかわれるのはお嫌い?」
「お好きでござる〜!!ってちが〜う!!」
「やっぱり貴方は面白いわね。いつも自然体で楽しそうにしてて。貴方をからかうのは飽きないわね〜♪」
この美人さん……私のツボを完全に覚えてやがる。どんだけ私のことを観察してたのか…………。いやこの人、『私のあんなコトやこんなコト』を観察してるんだったわ。
「はあ〜。というか今さら出てきて何のようなの?今まで偶に呼びかけてたのに出てこないしさ。紫さんの能力なら簡単に気が付いて出てこれたんじゃないの?」
「大妖怪に向かってその聞き方とはね?随分と肝が据わっているようなのね?たかが神力があるだけの中小妖怪の呼びかけに私が気安く応答するとでも?」
「え?違うの?」
「それは貴方の周りが異常なだけよ!?………たく、恵まれすぎね。飛燕さんは。」
「いや〜それ程でも〜!」
「褒めてないわよ!!はあ……あきれる。私、結構凄い妖怪なのよ?もう少しは警戒するなり畏まりなさいよ。なんだか納得いかないわ。
初めてあったときから態度も変わっていないようだし………まあいいわ。質問に答えてあげましょう。まあ、貴方に私の要求を伝えに来たのよ。」
「………何?その要求って?」
「もう少しの間、妖怪の山への帰還を伸ばして欲しいのよ。」
「どうしてさ?もういいじゃん。どうせ、紫さんの天狗の里を揺らすっていう目的はこなせたんじゃないの?私は必要なの?
まあ、紫さんの本当の目的は何かは知らないけどさ。今さら私の介入があっても変わらないんじゃないの?『幻想郷』って場所のためなのかは知らないけど。」
「……ふふ。いつもはおちゃらけているようで、やっぱり頭は切れるほうなのね。やっぱり気に入ったわ。」
「じゃなきゃ生き残れなかったからね。で?その理由は?」
「貴方は人質なの。天狗の里に対する意外なカードよ?みすみす取り逃がすとでも?」
気がつけば、私の隣から境界線を出して息を吹きかけてくる紫さん。そこ弱いんだからやめてよ。
「じゃあ何?私の自由を奪おうってこと?なら?私は抗うよ?化けガラスを舐めるんじゃないよ?意地汚くても言いあがいてやるから?覚悟しな。」
「おお〜。怖い怖い。別に貴方と争うために来た訳じゃないわ。取引よ?取引。」
「取引?」
変な話だ。力ある妖怪なら、力尽くで物事を進めようとする。弱者の言葉なんて物ともしないで我を通そうとする筈だ。
「貴方は私の手駒になる。貴方は自由に空を飛んで自由に色々な場所にいける。時々私が話しかけるからその時に報告をして欲しいの。報酬は、天狗の里の未来。」
目的が全然分からない。そして、天狗の里の未来って?
「断るよ。私はあくまでも客人。個人的な親交はあっても何処かに属する訳じゃない。
それは私の意義に反するし、私が認めない限りはそんなことはしないよ?それに、私は友達とか親しいヒトのお願いなら聞くけど、それ以外は聞かないよ。天狗の里は私の管轄外だ。」
「……………強情ね。けど、難しいほど手にしたときが格別なのよ。こういう手合いは。私は好きよ?そういうの。」
今度はペロリと私の耳を舐めてくる紫さん。まるで美鈴さんを真似するかのように、全く同じ箇所で同じタイミングでしてくる。その明らかにわざとらしい行為に、私は背筋がなぞられるかのような感覚を覚えた。
「じゃあ、今回の取引は無しに―」
「あら?まだ会話の途中よ?言ったでしょ?貴方には少々遅らせてもらうって。」
「…………何をする気?」
「貴方が私の提案を断ることは目に見えていた。だから、少しの間漂流させてもらうわ。舟幽霊。」
― ザバー ―
水しぶきと共に現れたのは、時代錯誤も甚だしい白い水兵服の少女の幽霊が現れた。
妖力は凄まじく、そんな大妖怪レベルはあるだろう彼女は私の船を眺めて、舌舐めずりをして楽しそうに口を開いた。
「はいよ!!おお〜!!こんな所に立派な船があるじゃないか!?」
「好きにしていいわよ。但し、沈めるのだけは無しよ?」
「ふっ!いいぜ〜!!だが、間違って沈めたら勘弁だね。久しぶりのご馳走に腕が疼くんでな。」
「ふふ……いいわよ。それでも。私の目的はあの看板にいる彼女だけだから。」
「お前に指図される謂れはねぇぜ!!私は私のやりたいことをする。たまたまお前が獲物を私に教えただけだろう?私はあんたが沈めたい船を行動不能にさせる。ならば、もう取引は終わってるはずだ。後はそれを実行するだけだ。」
「はあ………好きにすればいいのよ。
いやね〜。力の強い部類の妖怪は。我が強くて仕方ないわ。それじゃあね〜!!御機嫌よう。飛燕さん?」
「ちょ!?まっ!?」
― ブオン ―
紫さんは、私の静止の言葉も聞き取らず勝手に消えていってしまった。明らかに危ない妖怪を置いていって。
「飛燕さん!何がありました―!?この妖力は………舟幽霊ですわね。」
「飛燕〜!!大丈夫かぁ〜!!」
ここは一帯を覆う程の妖力に反応して、青雅さんと芳香ちゃんが床から通り抜けてきて駆けつけてくれたらしい。それにしてもなんだ?その舟幽霊って。
「『舟幽霊?』」
「元々、船が沈んでしまった時に水没死してしまった少女が霊となって、妖怪化したものですわ。呪縛霊だと思ってくれてもよろしくて。特にこの個体は力が強いわね。中々強力な妖怪のようですわ。」
「これは一筋縄には行かなそうだね。」
―バタンッ―
「何か悪い気配が………!?、妖だ〜!!!」
同じく遅れて看板へと出てきた妹子さんの声で船中が大騒ぎになる。
「妹子さん!!皆の指揮を!!船を守ることに専念して!!私達がこの幽霊をひきつけるから!!」
「了解した!!」
「フハハハハ!!私の礎となるがいい!!この呪縛を解くための糧となれ!!哀れな犠牲者共!!!」
ご丁寧に、こちらが立て直す隙を与えるとは随分と親切な妖怪だ!!さぞ、生前は優しい少女だったんだろう。それとも、絶対的な自信でもあるのか。どちらにせよ、私達が乗っているの船を沈める気満々なのは確かだ。
「させるか!!こういう時こそ!!私の神格が役に立つんだよ!!」
「させてみろ!!たかが数百年生きただけの道祖神が!!私は『村紗水蜜(むらさ みなみつ)』。お前らの名を名乗れ!!」
「黒柳飛燕!!覚えなくていいよ。どうせ返り討ちにしていやな思い出にさせてあげるから!!」
「霍青娥ですわ!!」
「宮古芳香だぞ〜!!」
「そうか!是非そうさせてみろ!!出来るならばな!!」
(次回に続きます。)
永遠の十八歳の少女「ふふふ♪最近は私の出番も増えて嬉しいわね。」
作者「やっぱり紫様は黒幕ムーブが似合いますね。」
永遠の十八歳の少女「あら?そんなに褒めても何も出ないわよ?オホホホホホホッ!!!!」
作者「いや、褒めてませんから。」