久しぶりに戦闘回です。というか、この小説は戦闘シーンが少なめですよね。そもそも作者は小説の戦闘シーンは想像しにくくて苦手ですからね。
というか、大変なんですよ。作者と読者ともに戦闘シーンを想像するのは。
(前話からの続きです。)
先ほどまでのどかな青い空に怪しい空が急速に立ち込めてきて嵐を呼び出す。風は吹き荒れて波は高くなり、今にも船が沈みそうに揺れ出す。
船乗り達が持ち場に着くのを尻目に私と青雅さん。そして、芳香ちゃんは宙に浮いて、妖怪『ムラサ』の迎撃にとりかかった。
「ほう……宙を受けるとは………お前ら人間じゃないな?」
ムラサが放ってきた嵐の大波を吹き飛ばしながら私は黒妖と白幻で射撃するが、軽くいなされてしまい、石の弾丸が荒波の海へと消えていった。
「あら?こちらはどちらも半分は人間よ?芳香ちゃん。やりなさい。」
「分かったぞ!!せいが〜!!」
弾幕を放って余裕を鎌しているムラサの動きを制限させた青雅さんは、芳香ちゃんに掛け声をすると、芳香ちゃんは爪から斬撃を飛ばした。
―『ゾンビクロー』―
「そんなちっちゃな攻撃なんて生ぬるいぜ!!」
やはり、幽霊だからか物理的な攻撃があまり聞いてない。芳香ちゃんにの攻撃に込められた道力によってのダメージはあるだろうが、あまりダメージになっていない。
調子に乗ったムラサは静止して、莫大な量の妖力を練りながら両手を翳した。
すると、嵐の勢いは増していき、段々と荒波や突風がひどくなっていってしまう。
ヤバいな……このまま酷くなれば船が沈んじゃう。これは時間との勝負だ。早く解決策を練らなきゃ!!
考えろ!!彼女は舟幽霊だ。物理は聞かない。道術は少しだけ聞いたが、量がいる…………妖力もありだが私の妖力は彼女よりも少ない。あまり効果はないだろう。
なら!!私の神力ならどうだ?
私はこの270年間の鍛錬によって『飛ばす程度の能力』と神力または妖力と組み合わして属性のような付与の仕方が出来るようになった。大百足との逃走中に見せた技もその一つだ。
私は黒妖と白幻を彼女に向けて、放った。
―神弾『アストマティックポンプバースト』―
強い光を伴って音速に進むエネルギーの散弾がムラサへと突き進んでいく。
「ぐっ!?」
油断していたのだろう。私の放ったエネルギーの幾つかがムラサに当たった。
私の読み通り、ダメージが通ったようだ。その証拠に彼女の動きが鈍った。
「どうやら効いたようだね!青雅さん!!力自体を使って攻撃しよう!!相手は実態がないから帰ってそっちの方が効率的だ!!」
「分かりましたわ!!」
青雅さんがムラサの方向に手をかざして、仙術(道術)を行使した。仙力のパワーの塊を放つが私の攻撃で警戒をしていたムラサに避けられてしまった。
「そう何度も食らうか!!……お前ら!何なんだ?ただの獲物じゃないな?神と……変な能力者2人か?面白いな。2人まとめて波の藻屑となるがいい!!」
「そんな簡単にやられると思わないことだね!舟幽霊!!」
「そうですわ。芳香ちゃん。貴方との相性はあまりよろしくないわ。だから今回は私が前に出るから援護して頂戴!!」
「了解だ〜!!せいが〜!!」
嵐の中、船の上空で激しい空中戦が繰り広げられる。バラかれたお互いの妖力やら神力やら道力のエネルギーが暗い空に光り輝いていて、外野から見ればさぞかし綺麗に見えるだろう。
だけど、私にとっては大妖怪との戦闘なんて初めてだ。正直内心ビビりまくってる。青雅さんや芳香ちゃんが一緒に戦ってくれなければ完全に押し負けていた筈だ。
何なら今でも圧倒されている。私や青雅さん達の攻撃も殆どダメージにならない。それほどに妖力を解放したムラサの力は強かった。
「ほらほら!どうした!!今にも船がひっくり返りそうだよ!?このままじゃ皆死ぬよ?」
船の方向に指差しながらムラサが私達に話しかけてくる。妖力の玉を放って。
「そんなのわかってるよ!!強すぎるでしょ!!あの密度の弾幕が全然突破できない!!」
「いえ、飛燕さん。これ程に強大な力。絶対に消費が激しい筈ですわ。
だから、今は耐えるべき。今先ほど芳香ちゃんに船がひっくり返らないように、動いて貰っているわ。
この舟幽霊さんが力尽きるまで私達で耐えましょう!!少なくとも私達が戦い続ければ直ぐ様船を沈められる恐れはありませんわ!!」
青雅さんの言う通りだ。あの熟練の船乗り達なんだ。彼らならば嵐に負けることはないだろう。だが、流石にムラサの攻撃を直接受ければ船は簡単に沈んでしまう。だが、私達が踏ん張る限りはムラサは私達を無視できず、結果的に船に手を出せない。
恐らく、ムラサはでまかせを言ってこちらの隙を突こうとしていた。
やはり相手は妖怪。こちらを化かして動揺させようとしていたことに気が付かなかったら危なかった。青雅さんの冷静な分析のお陰で何とか気を持ち直せそうだ。
「分かっよ青雅さん!!このまま私達が耐えればいいんだね?」
「そうですわ。幸い私と飛燕さんで舟幽霊さんを足止めするだけいいですもの。」
「クッ!!だったら妖力で押しつぶすだけだ!!」
図星を疲れたムラサは、妖力を更に解放するが残りの妖力量が少なくなっていた。
だが、それはこちらもだ。私は妖力も殆ど残ってないし、青雅さんもいつもなら余裕そうな表情が酷く疲れているようだった。けど、どちらもまだまだ行ける。生き死にがかかっているからね。火事場の馬鹿力ってやっだよ。
圧倒的な実力差でよくここまで耐えれたよ。本当に。けど、あともう少しだ。
踏ん張れ私。大百足のようには逃げられないんだ。
「行くよ!青雅さん!!」
「ええ。飛燕さん。」
私達は、息切れを起こしながらも戦いを続けた。片方は生きるためにも。もう片方は楽しむ人生を終わらせない為にも。
* * *
そんな少女達の死闘の姿を、八雲紫はスキマの中で観察していた。
「………中々やるわね。彼女。仲間がいるとはいえ、格上相手に精神力だけで踏ん張るとは。弱者の割には中々ね。それも立ち回りが上手なことで。」
彼女はその手に宿る弱い力を持ちうる全ての力をかけて渡り合っている。いや、あの強敵に圧倒されながらもわずかな隙をついて罠を仕掛けたり不意打ちを仕掛けようとしている。
ボロボロな姿であってもその目には決して負けないという闘志があった。
「それに、仲間にも恵まれているわね。『霍青雅』と言ったかしら?」
彼女も中々面白い。先ほどから一度も攻撃を貰っていない。仙人という脆い身体であるから仕方がないだろう。道力によって肉体の強化は出来てもそれは妖怪に比べれば大した差ではない。
だからこそ、村紗水蜜の攻撃には避けるしかないが攻撃が、かすりもしていない。
仙人としては余程の達人かと見た。いや……邪仙でもあるか。
だが、このまま行けば最終的にあの2人は負けるだろう。まだ村紗水蜜は与力を残している。力尽きるのは2人が先だ。
「はあ…………まだまだ実力不足ね。」
八雲紫はため息をついて、見ていたスキマによる映像に手をかざした。
普段ならば、たかが中妖怪如きに手助けはしないが今回は特別だ。それに、迷いの竹林の所有者との契約がある。折角あの頑固な老兎を説得させたのだ。
ならば、一捻りくらいは手を貸さなければいけないだろう。
あくまでも今回の目的は『黒柳飛燕の"帰還の延滞"とついでに"経過観測"』だ。殺すまでにはいかない。だが………
「本当は殺してやりたいわ。黒柳飛燕。うふふふふふ♪」
八雲紫は必死に隠している『黒い黒い感情』を押し殺しながら、いつも通りの胡散臭い作り笑顔で能力を行使した。
* * *
「ハァ……ハァ………もうヤバい。青雅さんはまだ行ける?」
「ゼェゼェ………とっくの昔のハリケーンですわ。」
「『嵐だけ』にかな?余裕だね?青雅さん。」
「ここでくたばるなんて一番『つまらない』。これくらいへっちゃらですわ。ゼェゼェ。」
もう、意識が飛びそうだ。それくらいには力を使い果たしている。軽口を飛ばし合っているのは単なる強がりと意識が飛ばないようにしているだけだ。
「チ………しぶとい奴らだ…………ハァハァ。」
「もう辞めにしない?……お互い満身創痍だよ?」
「…………私もそうしたいところだよ……ハァ…だけど。私にはしなきゃいけないことがあるんだ。ハァ…だから……お前たちを殺さなきゃいけないんだ!!」
もう……ボロボロなのに、彼女はそれでも身体に力を込める。そして、先ほどまであった嵐を発生させる為の妖力を吸い取って、自分の身体に戻す。
疲れていて薄目になっているムラサのその目には尋常じゃない精神力が宿っていた。
「ハァ…………スウ〜。だから、これで最後だよ。」
ムラサは最後の力を振り絞って、妹子さんの船に手をかざした。
「や、辞めて!!芳香ちゃんが!?」
「ま!」
もう、私と青雅さんは力が残っていない。ダメだ!!防げない!!動け!!私の身体!!動いてよ!!!
「嫌だ!!お前らなんて!!藻屑となれ―」
―ブオン―
「な!?」
妖力の塊が放たれた瞬間、空間を別けるような境界が現れてムラサの腕がきり落とされる。
あ、あれは!?………八雲紫の!?
謎の横槍のお陰で僅かに狙いがそれて、妹子さん達の船の近くに妖力の塊は着弾し、爆発した。
その爆風で私と青雅さんは吹き飛ばされて海へと落ちていく。
ダメだ………意識が…………。
残った体力で何とか青雅さんを妹子さんの船のほうに飛ばした私の視界には、海に落ちていくムラサの姿が移っていた。
* * *
小さな子供が砂場で遊んでいる。周りに子供がいるのに、その子は一人で砂いじりをしていた。
まるで周りが見えないかのように。夢中になって遊んでいる。
………………。
本当に久しぶりだ。前世の頃の記憶を夢の中で見たのは。
ワタシは幼稚園生の頃の『私』をじっと見つめていた。目の前にいるのに『私』はワタシのことに気が付かない。ただただ、なんの形も整えられていない砂山を建てては崩してを繰り返していった。
本当に、昔から私は他の子とは違う所があった。所謂、不思議ちゃんだ。公園でお喋りをしている他の子供のママ友達も揃えて首を傾げていただろう。
まあ……私も正直何でそんなことをやってたのかは分からなかったけどね。
そんな私だから、友達もろくに出来なくてさ。まあ……前世で友達って呼べる人なんて両手で数えるくらいしかいなかったけど。
そんな不思議ちゃんなんて誰も近づかなかったし、何ならこの時の私は周りのことなんか見えてなかった。
けど………そんな私に興味を持って近づいてくるもの好きがいたんだ。
『オイ!!何してんの?一人で?○○○。』
親友である。実は親友とは幼馴染で、腐れ縁でもある。同じ幼稚園で育って、なんと小中高大と驚異の同じ学校である。生まれた病院まで同じという徹底ぶり。神様も変な運命の描き方をしたものである。
けど……この時が本格的な親友との馴れ初めだった。
この時まではなんか知ってる女の子って感じだったからね。この時の親友は『なんだこの子?』って思ったんだと思う。だって私はこう答えたから。
『鴉さんのお墓を作ってるの。けど、壊すんだ。鴉さんには死んでほしくないからね。』
『は?』
『お母さんがいつも言うだよ。『そんなイタズラしてたら、いつかあんたは鴉に叱られるからね?覚悟しな』って。だから私は鴉さんにお墓を作るの。
だって、鴉さんが死んだら嫌でしょ?そしたら近づいてこないから。けど、死んでほしくないから。結局は壊すんだ。』
う〜ん…………私の幼少期。こりゃあ酷いな。バリバリのなまりもあって、完全にマイワールドに入ってるよ。
酷いもんである。よくこの時の親友は気味悪がらなかったな。
『………ん〜?』
『…………………分かんないの?』
『わかんない。』
『………そう。大丈夫だよ。皆わかってくれなかったから。いいのいいの。
』
本当に私は不思議ちゃんだ。今でもこの時何を考えているのか分からない。けど、親友はそれでも何故かめげなかった。あきらめて他の子と遊んでもいいのに。それから私と会うたびに話しかけてきた。
よく飽きなかったよね。子供は相性な子が多いのに。
『ねぇ?知ってるか?鴉さんって頭がいいんだぞ〜!!』
『そうなの?』
『そうだよ!この前絵本で読んだけど、私達と同じくらいのあいきゅ〜ってやつが同じらしいんだって!』
『ふ〜ん…………そうなんだ〜?あの鴉さんも頭いいのかな?』
『そういえばいつも空の何処を見てるの?○○○。』
『何でもないよ。』
『今日も砂遊び?』
『そうだよ。鴉さんが来るからね。』
『そう。じゃあ私も手伝う。』
『良いけど。別に楽しくないよ?』
『………………楽しくないのに毎日やってるの?』
『うん。けど鴉さんが今日も来るから。』
『………………。』
『フッフッフッ〜!○○○。今日は楽しく砂場で遊べるモノを持ってきたよ〜!!○○○!』
『ん?なにそれ?』
『『すこっぷ』ってヤツだよ。良いでしょ?』
『うん。すごそうだ。いいね。掘るのが楽そうだね。』
『へへ〜ん。母さんに買って貰ったんだ〜!!これで凄いの作ろうよ!!』
『…………いいよ。『楽しそう』だから。』
『!?……そうだよ。『楽しそう』だよ!』
こんな感じでさ。なんだかんだ言って。仲良くなって。よく一緒に遊ぶようになったんだよね。懐かしいな………。もうあれから270年以上か……………
…………やっぱり、今でも後悔が残ってる。
けど、今の生活が嫌いなわけじゃない。
だって、退屈がしないくらい毎日が楽しいんだから。過去は過去だから。振り返ることは出来ても変えることは出来ないから。
だって、私は身体を前に『飛ばす』ことしか知らないから。
またいつか、ここに来よう。忘れることはあってもいつまでも思い出自体は消えることはないから。
『また』ね。ワタシ。
* * *
「おい。」
「…………ん〜?」
「おい。お主起きんか。」
「………誰?」
「儂は、物部布都(もののべの ふと)じゃ。お主は何故こんな辺鄙な砂浜で寝ている?」
「…………可愛い。」
「……可愛い?我が?なんじゃ?普段の太子様みたいな文言じゃな?軟派者かお主?」
やっぱり退屈なんてしてられないね。誰だよ。退屈だって騒いでたヒト。
(次話に続く)
「前世の幼少期の女オリ主が不思議っ子過ぎる。
それよりも布都ちゃんの初登場でしたね。
いや〜遠回りしたな〜!!まさか、ここまで尺が伸びるとは思ってませんでしたね。仕方ないじゃないですか!!美鈴さんとの接点を作るならこのタイミングしかないじゃないですか!!
『え?もう少し先でも良いじゃん』って?
良いんだよ!!半分はノリで書いてるから!!
伏線は回収するけど、色々決めて書くよりもライブ感覚でかいた方が執筆のノリが良いんだよ!!(作者言い訳中)」
ウサ耳少女「反省しろうさ。特に神霊廟組は人気が高いんだから、さっさと出せば良いうさ。」
作者「はい。すみませんでした。」