化けガラスってマジっすか……。   作:SOGEKIKUN

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 ふぅ〜。話が進まないよ〜!!助けて〜!!


ゴールデンヴィーク明けの週なので今週は2羽投稿ですね。


19羽:「その耳触ってもいいかな?それって髪なの?それともニセ耳?⑤」

 

 

 

 法師は元々ただの青年だった。そこらで生きる為に農作業を働くだけで、偶に家族の為に食料を都から農作物と交換するくらいしか村から出ることも無かった。

 

 

 だが、いつも通り週に一度都へと豪族に納めた物と家族を養うための農作物を都へと売りに出ていた時に、外来から渡ってきた師匠に出会った。

 出会ったと言っても、遠くから最近増えてきた寺の一つの少し立派な寺へと入っていくのを都への行きの道で見かけただけだったが、なんとなくその法師が印象に残っていた。

 何故なら他のお坊さんなら髪を剃っているか、短髪にしている筈なのをよく見ていたが、その法師だけは法師にしては髪が長く、そして紫と黒が混じった髪の毛だったから。その珍しさがなんとなく男は気になっていた。

 

 だが、ただ気になっただけだった。青年にはやることがある。青年はそのまま違和感を無視することにして野菜売りを終わらして、家族が待つ村へと帰った。

 

 

 だが、男が帰った村には妖の群れの襲来が起きていた。青年は恐怖のあまり立ち尽くしてしまった。

 

 妖怪の群れに顔見知りの村人達が次々と真っ赤な色に染まって行くのをただただ見ることしか出来なかった。妖怪にただの村人風情が抵抗出来る訳もなく、次々と一方的に食い殺されていく。

 

 だが、青年は動かなければいけない時が来てた。妖怪の群れの一体が、男の家へと向かっていたのを目撃したことを発端に。

 

 青年は決断を迫られていた。直ぐ様家族を守るためにこれから死にに行くのを分かって助けに行くか、それとも………そのまま今直ぐここから家族を捨てて逃げるか。

 

 

「ハァハァ!ハァハァ!!」

 

 

 男は逃げ出した。都へと夢中になって逃げ出した。はじめは助け出そうと農具を手に駆け出そうとしたが、妖怪の群れの長であった邪鬼と目が合った瞬間、恐怖が再び男を支配してしまった。

 

 

 村人の女の声や子供の声が背後から聞こえてきた気がするが、恐怖で逃げるのに必死で余裕がない青年には気が付かない。

 

 

 結果、青年は恐怖に負けて逃げ出した。まだ妖怪に抵抗しようとしている村人達や数少ない術者を置いて。

 

 

 「ハァハァハァハァ!」

 

 

 息切れが男を襲うが、それでも青年は無心で走った。

 

 

 

 だが、男にも罪悪感はあったようで、都に着いた時に印象に残っていた法師がいるだろう寺へと向かって止まらず走っていく。夕暮れ前の家までの駆け込みをしている人々の肩にぶつかって、非難の声が出ても無視して走る。

 

 やがて、あの印象に残った法師がいるだろう都の外れにある寺へと辿り着いて、『命蓮寺』と書かれた玄関の扉を開けて助けを叫んだ。

 

 

「助けてくれぇ〜!!法師様ぁ〜!!」

 

 

 男の叫び声に急いだ様子であの法師が中から出てくる。遠目から分からなかったが、随分と若い見た目だ。男と対して変わらない年齢にも見えるが、徳を積んでいるだろう高貴な雰囲気を醸し出していた。

 背後に同じ色の髪をした娘も立っていた。恐らく尼だろう。その尼が何があったか問いただしてくる。

 

 

 

「何がありましたか?」

 

「よ、妖怪にうちの村が襲われているんだ!助けてくれ!!」

 

 

 法師と尼が目を合わせる。この息の合い方から兄弟なんだろうか?そして、ずっと黙っていた法師がしゃべりだした。

 

 

「………分かりました。姉上。貴方はここで命蓮寺を守っていてください。」

 

「分かりました。」

 

「今直ぐその村へと行きますが、ご布施は村までの案内でもよろしいですか?」

 

「は、はい。お願いします。」

 

 

 

 

 

 そういえば………妻や子供はどうなったんだろうか?

 

 

 直ぐ様助けに出てくれる紫色の髪の毛の法師を連れて村までの道を駆けていた青年は、ふとそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 必死で走って村へと辿り着くと、そこには…………妖怪しかいなかった。

 

 

 

 青年は絶望と罪悪感に苛まれて両膝を付いた。

 

 

 

 血で辺りが濡れていて、村人だったモノの一部が散乱していてその村の中心で村人だった肉塊を妖怪達が邪気を中心に食べ散らかしているのがわかる。

 

 

 

 

 法師が札を取り出して妖怪達へと向けると、妖怪達が苦しみ出すが、青年は放心状態になっていて周りが白く染まって見えなくなっていた。

 

 

 

 やがて、妖怪達は法師に祓われて居なくなって、静寂に包まれた。

 

 

 その変化に気がついた青年は我に帰って、一目散に家族がいただろう、青年の家へと向かった。

 

 

「はっ!俺の家族は!!京音!陸!!」

 

「待ちなさい!青年!!」

 

 

 法師の静止の声を無視して男は駆け出した。

 

 

 自分の妻と最近生まれたばかりの息子の名前を呼びながら男は扉を開けるが、家の中には誰もいない。血も散乱していない。

 

 青年はホッとした。女房は逃げ出したんだと、急いで男のように避難したんだと。

 

 

 青年は安心しながら後を追ってきた法師へと向き直った。

 

 

「村の者は……?」

 

「………今のところは生きているものは見ていません。」

 

 

 ほっとしていた青年に緊張が走る。なら、女房は何処へ?

 

 

「そうですか?………とにかく、広場へ行きましょう法師様。」

 

「こらっ!まだ妖怪が、潜んでいるかもしれません。私から離れてはいけませんよ?」

 

「………はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前には女房の死体と、女房に抱かれたまま死んでいる幼い息子の死体。どちらも胸を串刺しにされて死んでいた。

 

 

「お、おい………京音……陸………うぁ……へ、返事をしてくれぇ………。」

 

 

 生気のない目が苦痛に見開いたまま死んでいる姿を見て男はあの時逃げ出した自分が許せなかった。罪悪感と悲しみと苦しみと罪の意識が青年の背中に伸し掛かってくる。

 

 

 

「ごめんよぉ……京音、………こんな情けない旦那で………。陸、………臆病者な父親で………ごめんよぉ………。」

 

 

 法師は泣き叫んでいる青年の後ろで黙って手を合わせる。女房と息子に向かって。

 

 

 

 青年は朝日が昇るまで泣き叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 埋葬された村人達が眠っている墓の前で力無く据わっている青年と後ろで佇む法師。

 

 

 

「なぁ………法師様。俺は間違ってたんでしょうか?」

 

「…………。」

 

「俺は……逃げ出さずに、息子を抱いていた女房の手を引いて逃げるべきだったんじゃねえのか?」

 

「……………。」

 

「死ぬことも覚悟して他の村人と妖に立ち向かえば良かったんでしょうか?」

 

 

「…………………。」

 

 

「俺は臆病者だっ!家族も守れねえ屑だ。なぁ……法師様。俺はどうしたらこの重い罪を消せますか?仏門に下るべきでしょうか?」

 

 

「私に言えることは、一つしかありません。いくら徳を積もうが、修行で身体を清めようが、罪は消えません。」

 

 

「………ならどうすりゃあいいんだ―」

 

「ですが。私は罪を償う方法を知っています。」

 

「?」

 

「どんな手段でも宜しい。自分が許せるくらい多くの人々を救いなさい。」

 

「救う?」

 

「ええ。嘆いていても死者は決して帰っては来ません。ただ仏門に入って罪滅ぼしをすることなど『クソ食らえ』です。それでは本当に罪を償うことなど出来ないでしょう。だから代わりに貴方は沢山の人々を救いなさい。」

 

 

 

 仏門に下っておる者にしてはあまりにも破天荒な教え。だが、男にはその教えが心地よかった。

 

 

「私は徳を対して積んではいませんが、幸い人を救える術を知っています。これからその術をお教えしましょう。ここでぼさっとしている暇はありませんよ?」

 

 

 そうして、手を差し伸べてくれる法師様。俺はその手を握った。

 

 

「これからお願いします。師匠。」

 

 

 

 男は決意した。民を救い、女房や息子への償いをするためにも。そして、悪しき妖を守るためにも。

 

 

 

 

 

 

 そして、数十年が過ぎて。気がつけば青年は独り立ちして多くの弟子を作るほどの高位の法師となっていた。

 

 

 街を歩きながら法師はつぶやく。

 

 

「なにやら………邪なる存在が都に入り込んだようだな?………これは早急に対処しなければ。」

 

 

 男は亡き師匠の教えを胸に刻みながら、弟子達が待つ寺へと歩みを速めた。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

「ふふふ…………どうやら護衛の人と逸れたのかな?」

 

 

 

 帯刀をしているその人物はフード?を被っていて詳しい要望ほわからないが、他の身体を見れば一発で偉い人なのは分かることからあまり街へと降りたことがないんだろう。

 だから迷っている様子だったし、キョロキョロと挙動不審とも言える動きをしているんだろう。

 

 

「育ちがバレバレだよ。坊っちゃん。」

 

 

 

 仮定男としたならば、妖術を使って町娘として話しかけて、油断して所を鴉に変身して驚かそう。この人が女性ならば………グヘヘヘへへ。

 

 私は、この人の進む道を少し先回りするように早く移動して、変化する。この妖術は龍さんから教わった変化の術だ。基本なんにでもなれる。妖力は変身時くらいしか使わないため人間にもバレにくいし、見た目もその人の性別で勝手に変更するようにもできるからこういう時は便利だよね。

 

 

 しめしめ………取り敢えずは偶然を装って接近してみよう。

 

 

 

私は神力と妖力をどちらも抑えて、路地の角でスタンバイした。

 

 

さて、来なよ。とびっきりの驚き顔を見せてもらうよ?

 

 

 そうして、街角で待ち構えていた私の肩と腕を急に誰かに強く掴まれた。

 

 

「いたっ!」

 

 

「おい……そこの小娘。」

 

「へへ………中々の上玉じゃないか?」

 

 

 そこには、完全に堅気ではない見た目の二人組の男を中心に、複数人の男が私を囲むように佇んでいた。

 

 

「売れば中々値が張りそうじゃねえか?」

 

「ああ……こりゃあいいな。何処かのお偉いさんに生口として売り払おうぜ。」

 

 

 生口とは、一言で言えば奴隷のことだ。人が富を持つようになった弥生時代から今日まで、身分格差が生まれたり戦が始まってから、生口は支配者公認の奴隷として扱われるようになった背景がある。どの国でもそれは共通だ。歴史は綺麗事だけじゃなくて、こういう人間の悪い所を教える為にもある。

 

 でも、昔からこういう輩はいるもんなんだね。戦争で勝った方の国が負けた方の国の民を捕虜を奴隷として扱うのは今まで見てきたから知っているけど、何もしていない娘を金の為に攫うってどうなの?

 

 

 って!?よりによってなんで今?

 

 てか私妖怪だよ?っていうか今は辞めてよ!!それにあんたらなんか相手してたらあの人を驚かすチャンスを逃しちゃうじゃん!!もうそこまで来てんだから辞めてよ!!

 

 

「へへ……その前に味見しようぜ?金を貰うだけじゃ満足出来ねえしな。」

 

 

 私の服を脱がそうと男達は複数人で襲いかかってくる。取り敢えず私の裾や腕を掴んでくる二人組を引き離そうと抵抗することにした。手加減はすることにしよう。

 流石に本気出しちゃうとトマトケチャップになっちゃうから。

 

 

「ねぇ!離してよ!!」

 

 

「ちっ!うるせぇ!!女のくせに抵抗してんじゃねえよ!!」

 

「いい加減大人しくしねえとその肌を傷物にするからな?」

 

 

 ちっ!!ゲスめ!!女の敵!!本当に殺してやってもいいんだよ??私はクズには容赦しないからね?

 

 

「この女、力があるぞ!!」

 

「ちっ、非力共。全員でひっ捕らえみまえ!!」

 

 

 あ〜どうしようかな?人間って結構非力だね?椿ちゃんなら私を押し倒してたよ?

 

 

 男たちに囲まれて捕まってしまうが、手加減をしている私の抵抗に手こずっている様子だった

 

 

これじゃあなんだか私が怪獣扱いみたいじゃん。アホらし。あの偉い人のことも諦めるか…はぁ〜。

 

 

 私が手加減を緩めて本気を出そうとした瞬間、凛々しくと響きのよい声が路地裏へと響いた。

 

 

「何をしているんですかこの下郎め!!その娘から手を話しなさい!!今その娘を逃すなら見逃してあげますよ?」

 

 

 私達が表路地の方向を振り向くと、そこにはあのお偉いさんが刀の束を抜く直前で構えていた。

 

 

「はっ!!この人数相手に立ち向かおうなんて夢見がちな奴だ!」

 

「あの寝坊助に現実を見せてやるよ!!」

 

「やっちまえ!!」

 

 

 男達が、待つ粗雑な剣やこん棒を片手にお偉いさんに向かって走っていく。

 

 

「武器を持つとは、覚悟はあるんですね?、なら遠慮は無用!!」

 

 

「ぐあっ!?」

 

「ギャア!?」

 

「こ、こいつ強ぇぞ!!」

 

 

 次々と華麗な剣術で襲いかかってきた男達を切り捨てていく謎のお偉いさん。その姿はフードに隠れれていてわからないが男前という言葉が似合っていた。

 

 

 す、凄ぉ〜い!これがリアル殺陣かな!いや凄いな。本当に。

 

 

 だって、この人一度も男達の武器と打ち合いもせずに全ての攻撃を最低限の動きで避けながらその隙を見て斬ってるんだもん。本当に凄いや。

 

 

「ぐはぁ〜!!」

 

 

 ― バタン ―

 

 

 

「痛いでしょうが、許しなさい。どれも致命傷は避けています。」

 

 

 そして、私を掴んでいた二人組以外の男達は皆倒れてうめき声をあげていた。

 

 

「さて………再度言いますが、その娘を話しなさい。そうすれば今地面に転がっている男達のようにならないですみますよ?」

 

 

 

「ちっ!!」

 

「おいっ!どうする?」

 

 

 二人組は焦って冷や汗をかいているが及び腰だ。

 

 

「早く決めなさい。」

 

 

「行くぞ!」

 

「おう。お、覚えていやがれぇ!!」

 

「わっ!!」

 

 

 ― タッタッタッ ―

 

 

 二人組は私をお偉いさんの方向に放り投げて逃げ去っていった。

 

 

 おい!!乙女は丁寧に扱え!!身体から発してる微弱電波と顔は覚えたからな!!この!!臆病者っ!!

 

 

「おっと。」

 

 

 心の中で見事な負けゼリフを吐いた悪党達に答えるように悪態を付いている私をその謎のお偉いさんは、優しく抱きとめてくれた。

 

 その顔は影になっていて見えない。けど、少し近くてドキドキするな。この距離。

 

 

 

「………良いの?逃がしちゃって。」

 

「あの者たちは人に刀も向けられない臆病者ですから大したことも出来ませんから逃がしても大丈夫ですよ。それよりも大丈夫でしたか?目目麗しいお嬢さん。」

 

 

 そう言いながら、フードをとる謎のお偉いさん。その姿はあまりにもイケメンな獣耳の髪型の女性だった。

 

 

 

 …………その耳触ってもいいかな?それって髪なの?それともニセ耳?

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 イケメン女子は大事ですよねー。需要は大事だと思います。
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