化けガラスってマジっすか……。   作:SOGEKIKUN

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 少しずつですが物語が進んできていて実感が凄いですね。今、私は二次創作を本格的に書いてるんだって感じです。


33羽:「帰ってきました妖怪の山!!(震え)③」

 

 

 

(前回からの続きです。)

 

 

 

 

 

 

 急に誰もいない筈の縁側から、突然子供っぽいようで老獪なてゐのような雰囲気の声が聞こえてきた。う〜ん?私の能力でも反応は無かったんだけどなぁ?

 

 姿は暗くて見えない。けど、声的には随分と若そうだ。声だけで判断するなら、身体の発育具合は十四、五歳くらいかな?もしかしたらもう少し幼いかもしれない。

 

 そんな彼女の姿は暗闇でシルエットははっきり見えなかったが、私に向き直りながら瓢箪?のようなモノを煽っているのは分かった。そんな彼女はヘラヘラと呂律の回ってないのんびりとした口調で私の質問に答えてくれる。

 

 

「あへぇ〜。まあ、誰でも良いだろぉ?……んで?あんたはどうしてそんなことになってんだい?」

 

 

 なんだかこのヒト……いやこの娘、凄く呂律が回ってないな〜。かなり酔っぱらっているっポイ。

 

 恐らくだけど、大宴会で飲み過ぎて酔ってここまで来ちゃったって感じなのかな?

 

 でも、凄いな。私の探索には引っかからなかったの。これ意外と精密だから間違えることは少ないんだけどなぁ?まあ、移動が速い天狗だからあり得るのかもしれない。

 

 

「まあ、見ての通りだよ。ご主人様に怒られてお仕置きの最中だよ全く。寄りによって大宴会中に一人放置は辛い。あっ今は君がいたね?ごめんごめん。」

 

「ハッ!私かい?それは傑作だねぇ〜アハハハハッ。でも、あんたなら本気を出せばその拘束から抜け出すことは出来るんじゃないのか?

 律儀に主人の言いつけを守るってんだから随分と忠誠心があるんだねぇ?まぁ私はそういうの嫌いじゃないけどね。ングング……ぷはぁ。」

 

「ん?そう見える?これでも紐を解こうと結構四十八癖したんだけどね?まぁ、元々本気で逃げ出すつもりはなかったのは確かなんだけど。

 

 …………今回も私が悪かったからさ。」

 

 

 やっぱり少しだけ身持ちをしっかりしたほうが良いのかもしれない。文のことは本気で大事にしたい訳だし、青雅さんとかにもよく言われるからなぁ。私、結構そういうのに隙が多いらしいから。気をつけないと。

 

 

「そうかい。まあ、反省してんならそのままでもいいじゃないの?

 ……それにしても宝の持ち腐れだねぇ。そんなにいい力を持ってるのに、あんたの力、全然使いこなせてないじゃないか?勿体ない。」

 

「そうかな?結構色々使いこなしてるつもりだけど?そう言えばさ。名前も見た目も知らないそこの誰かさん?

 その『お宝』って奴の開け方を教えて貰ってもいいかな?あと、どうして私の能力知ってるのさ?」

 

「嫌だね。宝は自分で見つけな。私は人様の教育に首を突っ込むほど野暮ったくはないからね。

 それに縄を解くつもりも無いし、手助けするなんてもっての他だ。ん?私があんたの能力を知ってる理由?それは秘密さね。」

 

「ふ〜〜ん。ケチィ〜〜。何かしら教えてくれてもいいじゃ〜ん。私だけ一方的に知られるのは不服だよ〜。」

 

「アハハハハッ。ケチな方がいいもんだよ。それくらいの方が長生きするもんだからね。ぷはぁ〜!!今日は特に酒が上手いねぇ〜。特に目の前で面白い状況の話し相手がいると。酒が進む進む。」

 

 ぐ、ぐぬぬぬ……こやつ。明らかに私を煽りながら酒を美味そうに飲みよる。

 

 完全に挑発してきてるな?ふんっそんな簡単な挑発に乗るものか。

 

「はぁ、そうですね〜。私は目の前で酒を飲まれるのを黙って見ながら夜を越しますよ〜だ。ふんっ。」

 

「今度はへそを曲げ始めた…………。まぁ、それでも酒はやるつもりはないけどね。」

 

 

 

 

 ― ジーー ジーー ―

 

 

 しばらくの間は、私と彼女は会話も無しに、のんびりと春の鳴き虫の鳴き声を聞きながら暗い星空を覗いていった。

 

 

 綺麗だなあ。故郷のおばあちゃん家もこんな雰囲気があったなぁ。

 

 

 なんだかこの人と一緒にいるとおばあちゃんの家を思い出すよ。雰囲気が何処となく似てるからさ。

 

 

 

 どうしてだろう?声とかは私よりも若いけど、何処となく纏ってる雰囲気とかが似ている。

 

 静かで山のように重くて氷山のように静かな力強さ?みたいな風格がおばあちゃんと似てるんだと思う。それでいて少しだけケチで優しい感じが。

 

 実はなんだかんだ言って、この人。私が寂しがってることを気にかけているから一緒にいてくれてるっぽい。

 

 だってさ、遠くでは楽しそうな宴が続いてるのにこの人は楽しみにない暗闇でじっとするしかない私の所に来て、わざわざお酒を煽りながら私の近くにいてくれるんだもん。

 

 

 …………お酒はくれないやっぱりケチなヒトだけど。

 

 

 だったら、その気遣いには答えないとね。相手を退屈させないくらいなら私だって出来るからね。

 

 初対面の人に私の旅路を話すのは少し違うだろうから、ここは大芸能で手品をしてみようかな?まぁ、この人には私の能力は何故か割れてるからタネはバレバレだけど。してみる価値はあるでしょ。私も暇なんだし。

 

 

「………ねぇねぇ。見知らぬおヒト。ずっとこのままじっとしても暇だからさ。暇つぶし余興でお酒自分で作るんだけど、炊いたお米とかないかな?あと、少し別に大きめのお酒の土師器とか?」

 

「米か?一応大宴会からくすねできたのがあるけど?ほれっ。」

 

「うわっ!」

 

 

 そう言って、影から光の当たる所にポトッと炊き立てホヤホヤの五合くらいのご飯が入った少し大きめなお椀と土師器を置いてくれる誰かさん。思わず驚き声を上げてしまった。

 

 流石にその量は持ってこれないでしょうに。手品かな?

 

 

「私が驚かせようとしてるのに驚かすようなことするとは大芸能者の顔が負けちゃうよ。一体どこから出したの?」

 

「クックックッ。私の企業秘密だ。……で?この米でどうやって直ぐに酒を作るんだい?まさか、嘘じゃないんだろうね?」

 

「嘘じゃないよ。まあまぁ見てなって。」

 

 

 私は、スリスリと動きが制限された身体を動かして炊かれたお米の大きいお椀と土師器近くまで移動して、上半身を前倒しにして、口に含んで噛み始める。

 

 

「あれ……?なんだ?食べるのかい?どうやって造るのかは知らないけど酒を造るんだろ?口に含んでどうする。」

 

「みゃあみゃあ、待っててね。」モグモグ

 

 

「………はぁ?別に待つけど?」

 

 

 そして、私は酒を納める為の土師器に噛んで溶かしたお米を口から溢れていた唾液ごと纏めて口から土師器へ出した。正座のまま紐で縛られている状態で、顔を下げながら口から白い液体を出しているのもあって、凄くアブノーマルな感じだけど、こういうのは気にしたら負けだ。

 

 

「ん?…結局口から出すのかい?少し光景がふしだらだし………あんた凄く変なことをするねぇ?少し顔が熱いよ。」

 

「まあまあ。少し待ちなって。ふしだらなのはごめんって。」

 

 

 私は先程の手順で次々とお米を噛んで唾液で解してはは土師器に入れる作業を繰り返していき、五合もあったお米を全て土師器に移り終わって、少し顔を赤らめているっぽい誰かさんに蓋を閉じてもらう。

 

 

「さて、手品の時間だよ?」

 

「はっ。私を楽しませようって?いいじゃないか。酒の肴になるからね。娯楽は歓迎するよ。」

 

「まあ、確かに酒の肴にはなるかもね。」

 

 

 私は、影で隠れて姿も見えない誰かさんのいるだろう縁側へと視線を向けた後、土師器に膝で触って能力を使用した。

 

 

 すると、土師器の中身だけの時間が『飛んで』いって、少しずつ液体状に変化していくのが土師器に触れている膝の部分から伝わってくる。

 

 そして、私はあるタイミングでそっと土師器から膝を放した。

 

 

「はい、出来たよ。完成だよ見知らぬ誰かさん。どうぞ、蓋を空けてみて。」

 

「ふ〜ん?………なんだかしらないが、まあいいよ。」

 

 

 自信満々などドヤ顔を浮かべる私にその影は土師器を影の暗闇へと謎の力を使って持っていく。

 

 少しすると、少し驚いたかのように誰かさんが嬉しそうに声をあげる。

 

 

「ほぅ〜!?へぇ〜!?これは酒かい?なんだい本当に酒の肴にするとは。流石だね。あんまり見たことないがこれは面白い酒だ。これ一体なんていう酒なんだい?」

 

「口神酒ってお酒だよ。フフフ。神様直属に作ったお酒だよ?霊験あらたかなお酒だから。妖怪には少し酒精が強いかもね。」

 

 

 まだ古墳時代だった頃かな?私が蝦夷地に行った時に現地民のヒト達に教えてもらった製酒方。なんでも日本最古のお酒だ。主に神様に縁のある家が神様に捧げるらしい。

 

 まぁ、前世の現代では、酒税法とか衛生観念があるせいで造られなくなったんだけどね。

 

 

「………確かに凄い酒精が強そうな匂いだ。でも美味そうだ。………でもこれ、そういえばあんたの唾液で作ったって訳だよね?」

 

「ま、………まぁ…ね?……そのぅ…、あんまり明言されると………恥ずかしいっていうか………。」

 

 

 もうっ!少しは気にしてるんだから辞めてよ。折角私が意識しないようにしてたのに、わざわざ言わないでよ。無駄に顔が熱くなっちゃったじゃん。

 

 

「アハハハハッ、暗闇でも分かる赤い顔!いいねぇ。そういうの私好みだ。自分から自慢するために作っておいて、それを指摘されて恥ずかしがるとは本末転倒だねぇ。アハハハハ!!」

 

「う、うるさいなぁ!大芸能者として君の手品に対抗したくなっちゃったんだよ!」

 

「そうかいそうかい。若気が盛んなのはいいことだ。変に口を挟まないほうが良かったな。すまないね。せっかく作ってもらったんだ。詫びにちゃんと作ってくれた酒。飲ませてもらうよ?」

 

「えっ?あっ!ちょ!?それは!?」

 

 

 

 ― グビ ゴクゴク ―

 

 

 暗闇から液体が喉を通る音が聞こえてくる。それが凄く恥ずかしくて恥ずかしてくて仕方がなかった。だって……私の…

 

 

「あぅ……うゔぅ………。本当に飲むなんて。」

 

 

 結構量があるせいか、飲んでいる時間が長い。そのせいで羞恥心やらなんやらを私は見知らぬ誰かに存分に味わされる羽目になった。ぐぬぬぬぬ。性格が良いのか悪いのか分からないぞ。

 

 

 ― ゴクゴク ―

 

 

 私が顔を赤らめて見るに絶えずにそっぽを向いているのを土師器を傾けて、喉を分かりやすいように鳴らす見知らぬ誰かのニヤニヤとした視線が刺さる。初心な娘の反応を見て楽しむなんて趣味が悪い。

 

 うゔぅ………まさか本当に飲むなんて………私は唯、即興でこの人を驚かせようとしただけなのに…顔が凄く熱い。

 

 

 

 

 

「ぷはぁ、これが"あんたの味"かぁ。悪くない。」

 

「むぅ……乙女の純情を弄んでそんなに楽しい?」

 

 

「アハハハ。ごめんって。少しからかいたかっただけだよ。それにしてもなんだか不思議だねぇ。まさかいつも感じてた二日酔いが『飛ぶ』とは………これは良い品だ。

 これさえあればの酒の副作用を無くせるって訳か……。これは使えるね。」

 

「え?気に入ったの?」

 

「ああ。気に入った。喉越しもいいし、甘口だが舌触りも凄くいいし香りも香ばしいからね。酒盛りの後の酔い冷ましには丁度いいかもね。それに'あんたの味"も楽しめる。『一石二鳥』だねぇ。あれ?今のはギャグじゃないよ?」

 

「うゔぅ……本当に恥ずかしい………。そこまで詳しく解説しないでよぉ〜〜。」

 

 

 さっきの一気飲みだったのにでどんだけ味わってたんだよ。お酒好きすぎでしょ。

 

 

「アッハッハッハッ!良い顔だ。やっぱりこの酒気に入ったよ。毎回あんたのその顔が見れるなら。このおいしい酒を飲むはさぞかし楽しいだろうねぇ。

 私の『仕事』が終わったら、定期的に買おうかな?どうだい?私と専属契約しないかい?これでも財産はあるから言い値で買うよ?」

 

 私の赤面を楽しみながら飲もうとするとは、性格が悪いなこのヒト。それよりももしかしてこのヒト、酒ならなんでも飲もうとするんじゃないの?やっぱり愛酒家だったりする?

 

 

「ええ……そんな――」

 

「―――なぁ?この『口噛み酒』幾つかすぐに見作れるか?部下や知り合い達にも試しに飲ませてみたい。金は次買う時から払うからさ。ね?サービスだと思ってさ。」

 

 

 渋る私を無視して話を進めていく見知らぬ誰か。交渉事ならちゃんと相手の話を聞こうよ。でも、このヒトあれだ。一度決めたら絶対にヒトの話はまともにしようとしない人だ。

 

 

「でも…もうお米がないじゃん。作ろうとしても作りようがないよ?」

 

 ―ゴト―

 

「はい。持ってきたよ。さっさと作りな。」

 

 

 いつの間にか目の前に置かれた大量の炊かれたお米と保存用の壺やら土師器やら須恵器やら。どこから持ってきたの?

 

 

「えっ!?速っ!?…えっとぉ…待って………ほら、まだ私、心の準備が………。」

 

 

 ど、どうしよう…この人酒が絡んだせいで私の心情なんかそっちのけで動き始めたよ。まだ個人契約ならまだ分かるけどなぁ。けど……流石に不特定多数に飲ませるのはなぁ…私の心が持たないよ。

 

 

「なぁ?私の前で酒を造るのを渋るとか舐めてんの?今すぐ力ずくで分からせてももいいんだよ?

 例えばあんたの唇に口移しで米を入れてやってもいいし、今あんたをいろんな意味で襲ってもいいんだからね?これだけ無防備なんだ。今のあんたの姿は私達にとっては『攫ってくれ』って言ってるようなものだからね?」

 

 まだ迷っている私の様子に痺れを切らした暗闇の中の声が脅迫と言わんばかりの睨みをきかせてくる。どんだけ酒にこだわってんだこの人!?

 

 

「そ、それだけは勘弁を!文にドヤされるから!」

 

「なら?わかるよな?」

 

 

「…………はい。」

 

 

 うぅ゙〜。なんでこんなことに? 

 

 

 

 

 少しの時間をかけて、私はいつの間にか増えている土師器の全ての中身に先程の数倍の量の口噛み酒を作らされた。なんだか新しい扉を開かされたよ。全く。

 

 

 

「………はい。出来たよ。うゔぅ〜。もうお嫁にいけない。」

 

「あんたにはもういるんだから大丈夫だろ?それじゃあ、私はそろそろ行くよ。また来る。お酒ありがとね。」

 

 

 そうして、口噛み酒の土師器と共に誰かさんはすっと、霧のようにあれだけあった壺の山と共に消えていった。

 

 

 

「…………なんだか疲れたや。なんだったんだろうあの人。」

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

 また少し時間が経って、夜も更けて宴も最も盛り上がり皆の歓声が強くなってきた頃。

 

 

 

 ― スタ スタ ―

 

 

 うつらうつらと身体を上下に揺らしながら眠気と闘っていた私は、僅かな浮かぶ妖術の火の明かりと誰かが近づいてくる音が廊下から聞こえてくるのに気がついた。

 

 ……………それと同時に私の心かの中で自分の感情とは違う、妙な罪悪感の感情を察知した。

 

 

「…………。」

 

 

 その影は客間の襖の前で立ち止まって、無言なまま襖を開けた。

 

 

 

 

 ― スー ―

 

 

 

 私は眠気を無理やり『飛ばし』て、開かれた音がする木の襖の方へと顔を向き直る。

 すると、そこには何とも言えない表情をしている文が佇んでいるのが私の目に映った。

 

 文はお酒の入った瓶と一食分の夕食と少しのおつまみを両手に持ってジッと私の顔を見つめてくる。

 

 

 そんな様子の文から感じる感情は、少しの罪悪感と少しの怒りと………胸を大きくしめる少しの後悔とヤキモキと自己嫌悪。

 

 思春期の文らしい複雑な感情が文の心の中では渦巻いていた。けど、私はそれに気が付かない振りをしていつも通りに接することにした。私が初めて会った時に文に教えた通りに、文ならちゃんと私に言いたいことなら絶対に言ってくれるから。

 

 

「………文?どうしたの?そんなに私を見つめて。」

 

「別に、なんでもないわ。………所で飛燕。あの青いヒラヒラは?」

 

「自力で抜け出して、今頃宴会場で天狗達に混じって楽しく遊んでるんじゃない?」

 

「そう…………でもあんたはどうして残ったの?抜け出しても私なら怒っても対して咎めないのは知ってるでしょうに。」

 

「うん。ちゃんと反省してるって所を見せたくて。」

 

 

 これは本当だ。青雅さんに紐は解いて欲しかったけど、誠意として少なくとも文が返ってくるまで逃げ出すつもりはなかったから。心でつながっていてもそれに甘えちゃいけない。だからこそこういうのは形で表す必要があると思う。

 

 

「………………。」

 

 

 

 ― スタ スタ ―

 

 

 

 私のそんな様子に反省がちゃんと伝わったのか文は再び黙ったまま、私の前まで歩いてくる。

 

 そして、文は正座のままずっといて足に力も入らなくなって動くことも出来ない私の前に、ゴトリとお酒の壺と夕食を置いて、私の横にちょこんと座る。

 

 お酒が強く強くて好きな筈なのに、文にしては珍しくお酒の匂いが漂ってこない。

 

 

「文。折角の宴でしょ?楽しまないと損だよ?」

 

「ふん、宴に参加すら出来てないあんたに言われたくないわね。」

 

「ははは。皮肉だったね。………ごめん。文。」

 

「…………まあ、反省出来たから。許してあげるわ。ちゃんと約束通り解いてあげる。感謝しなさい。飛燕。」

 

 

 そう言いながら、文は私を拘束していた紐をブツリと1つずつ丁寧に外していく。少しずつ拘束が解かれていって、遂に私を縛るものがなくなる。

 

 がら私は動かなった。いや、動けなかったという方が正しかった。まあ、長時間正座したら誰でもそうなるよね。

 

 

 紐を客室の居間の端っこに風で運んび終わらした文は、私の方向に振り向いて未だに正座の姿勢のまま動かない私を見て不思議そうにしていた。

 

 

「……………飛燕?どうして動かないの?」

 

「足の感覚がなくなっててね。今動いたら絶対にダメになっちゃう気がするんだよ。」

 

 

「フッ………そう。」

 

 

 そう言って、文は悪そうな顔をしたまま私に近づいてくる。

 

 

「あ、あや?」

 

 

 

 私の困惑の声を無視して文は、優しく、そして無慈悲にやんわりと私の足裏をなぞるように、撫でるようにさらりと触っていく。

 

 

 その瞬間、私の身体にいくつものビリリとした電流のような刺激が走った。

 

 

「ピャア!?」

 

 

 その反動で動くことも感覚も無かった下半身を私は大きく動かしてしまった私は何と言えばいいのか分からないあの妙な痺れに襲われて身体を横に倒して丸ませる。

 

 

「うっ………うぐぐぐぐぐ!!あ、文?急に……どうしたの?」

 

「プッ!アハハハハッ〜〜!あんた、ヒ〜ヒッヒッ!?その顔!凄く面白いわよ!アハハハハ〜!!」

 

 

 文が普段はしない高笑いをしている。けど、感情ではそこまで楽しそうにしていなかった。寧ろ、どこからモヤモヤと私に対してぐちゃぐちゃな感情を向けているのが分かってその見た目と心の差に訳が分からなくなる。

 

 

「あ、文がSに目覚めた!?急にどうしたの?もしかして………まだ怒ってるの?文。」

 

 

「ふ、ふふふ………今のはちょっとした冗談よ飛燕。少しだけイタズラしたくなっただけ。」

 

 

 文は冗談めかしながら、それでもどこか緊張した様子で待ってきた夕食へと向き直って、転がる私を横目にしながら夕食分の食べ物をお箸を使って含ませる。

 

 

 その様子に不思議そうにしている私を見て、ニコリと優しく微笑みながら軽く噛んだ後、未だに痺れていて動けなかった私に覆い被さってきて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の口にその夕飯を口伝えで移してきた。

 

 

 

 

 いきなりの文の行動に驚き慄く私の口の中に、文の舌が噛み砕かれた食べ物と共に無理やり入ってくる。

 

 

「ン〜!?」

 

 

 

 驚き声にもならない声をあげる私。

 

 そんな私の頭の中は足の痺れと文の初めて味わった舌触りの刺激が交わってしまったせいで脳内まで痺れていき、真っ白に文の味の感触と文の色へと染められていく。

 

 

 噛みほぐされていたお陰で食べ物を何とか飲み干すことが出来た私は、休む暇も無く文の舌にねじ伏せられる。

 

 

 私の舌と文の舌と絡み合って私と文の唾液が混ざり合い、訳が分からないほど気持ちの良い快感が脳へと広がっていった。

 

 

 ― チュ クチュ チュ―

 

 

「ン……あ、や……ァ………。」

 

 

 

 

 私が文の甘酸っぱい匂いを味わされていると、十分に文は舌を引っ込ませて身体を引っ込ませて顔を離していく。それが凄く物足りなく感じて凄くもどかしかった。

 

 

 もっとしたいのに。今まで私だって我慢してたのに………文はずるい。私だってこうして文としたかったのに。まだ文が複雑な時期だから我慢してたのに。

 

 

 文の舌と私の舌とに唾液の糸が伸びていて、星空の光に反射していた。それが妙に官能的に感じて、下半身が強い痺れに襲われていてどうしようもなく寂しい。けど、私の理性が何とか抑えて冷静にしようとしてくる。

 

 

「ハァ……あ…や?ハァ……急に……どうしたの?」

 

 

「あんたが悪いの。私のモノなのに。直ぐに何処かに目を移らせるあんたが悪いのよ。」

 

 

 文はそう無表情でそう言って、不慣れな様子で乱暴に私の舌に口に舌をねじ込んでくる。

 

― クチュ チュ クチュ ―

 

 

 片手は少しだけ強めに私の胸を掴んで、もう片方は私の後頭部を支えて逃げるはずもない私を逃さないように私の顔を文の顔へ方向に抱き寄せた。

 

 そうすれば自ずと文の両手が埋まってしまい、私よりも少しだけ体格が小さい文の体重が私にのしかかってきて、それだけで私の心が文のすべてに屈服されていってしまう。

 

 

 文の気持ちよさそうな感情と私の感情が共鳴して、どうしようもない快感に浸ってしまい。もう私の理性は文の気持ちの中へと溶けて消えてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 文との深く濃厚で私の脳の全てを文に染めるような乱暴な口付けは私と文が息切れるまでずっと続く。

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはぁ~!ハァハァ、ハァ………知ってるのよ。あんたが私を沢山愛してくれてるなんて。知ってるの。けど。それでも私の感情は納得してくれなかったの。」

 

 

「ハァハァ。文…………。」

 

 

 酸欠で足りない酸素の代わりに文で満たされていて動くことない頭では文から感じる感情が、嫉妬のような、それでいて何処か真っ直ぐな好意のような欲情を感じ取ることしか出来なかった。

 

 

「今まで抑えてたのに。でも、もう。我慢できない。ハァハァ。あんたが悪い………ン」

 

 

 ― チュク クチュ チュク ―

 

 

 何度も私を味わうように舌を絡ませて隅々まで私を舐め取る文は、同時に私の身体を今まで溜めてきたモノを発散させるように、私の身体を乱暴に私を羽交い締めにしながらゆっくりと脱ぎ捨てていく。

 

 

 そして、もう何も着飾るものが無くなって、まだ残る足裏の刺激と共に脳を焼くようにジワジワと文色に染め上げられる刺激に喘ぐ私に、口に含ませたお酒を私の口に流し込んだ。

 

 

 ― ング ング   ゴク ゴク ―

 

 

「ぷはぁ………ずっと、ずっとこうしたかったの。飛燕。」

 

 

「ん、ング。ハァハァ……私も……だよ…でも……ン…。」

 

 

 文は、もう何度かなんてわからなくなった口付けを繰り返しながら私口を塞いでくる。

 

 

 

「うるさい。反論なんて許さない。飛燕。あんたは私のモノだから。グスッ……誰にもあげない。絶対に飛燕は私のモノだから。グスッ」

 

 

 文は露わになった少しだけ垢抜けていない自らの身体を私に密接させて、私を求めてくる。

 

 

 

 それを私は拒もうとも、否定しようともしなかった。今は文のその感情のどうしょうもない私に対する愛情の捌け口になれるようになったことが凄く嬉しかったから。

 

 

 私は文のモノだ。文に頼られるのが凄く嬉しくて、ただそれだけが私の今世での一番の私の願いだったから。

 

 

 

 夢だってある。けど、文に頼られることだって私の中では一番嬉しいことだから。

 

 

 

 だから、私は文のその感情を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

 
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