わー
帰ってきてから天狗の里で数週間が経っていた頃、何故か龍さんに急に呼び出された文と私は、なんか凄い(語彙力低下)部屋に座らされていた。
いつもは後ろに座っている椛ちゃんは謁見室の入り口辺りで見張り役で近くにいない。
おお〜〜?凄いな〜?なにこれ〜?めっちゃ凄い!!(語彙力その2)
なんというか御殿様が出てくるような立派な部屋だった。それでいて所々が質素な建築様式になっていて変な荘厳さを出さずそれが帰って本当の気品を際出させていて、この景色が私の探究心をワクワクさせてくれる。
こういうのだよ!こういうの!!やっぱりロマンは大事だよねー。
そんなこんなで鳴き龍の墨絵が描いてある天井や綺麗に配置されている中国から来ただろう骨董品、そして少し遠くにある立派な枯山水や菜園などを私が忙しなく見ていると、そんな私の様子を見かねた文が私に向き直って控えめな声で注意してきた。
「ほらっ飛燕。一旦落ち着きなさい。そんなにキョロキョロしないでよ。龍様がこっちを睨んでるわよ?」コソコソ
文の言葉に格子のすぐ横を見ると、龍さんが私達を睨んでいるというよりも呆れのジト目で文と私を見ていた。
ご、ごめんって龍さん。だって初めてこういう所に来たんだもん。ワクワクしちゃうのはしょうがないじゃん。
けど、多分私の事だけを龍さんは呆れているわけじゃないと思うんだ。横目で忙しなく身体を動かしている文を見れば、文も同罪なのは一目瞭然なんだと思うんだけど。
「文こそ凄くソワソワしてるじゃん。人に言うほど全然落ち着いてなさそうだよ?一応仮にもお嬢様なんでしょ?普段からこういうのやってこなかったの?」コソコソ
「稽古とかでは沢山練習したわよ。けど、いきなり試されるとは思わないじゃない。それに早く独り立ちしたい私にこういうのを求めるのが悪いわ。」
「アハハ………文には天狗の里は飛ぶには狭すぎたのかな。」
「ふんっ。もう少ししたら、独り立ち出来るからその時には絶対に一度は家出してやる。そしたらあんたやはたてを脅して一緒に日本中を駆けずり回ってやるわ。」
「…………それ、私達も巻き込まれる感じ?」
「そうよ?何か変なことを言ったかしら?」
「いや…………別にいいんだけど…………。」
というかそれはたてや椛ちゃんも巻き込まえれてるよね?はたてはともかく椛ちゃんにも立場があるんだから辞めてあげなよ。
文、将来は性格がキツくなりそうで心配である。無駄に頭が回るから大人になったら凄く狡猾になりそう。お願いだからてゐや紫さんみたいな感じにならないでね?これは本当だからね?
「何を言ってんのよ。飛燕は私のモノよ。椛は私の部下だし、はたてはどうせ能天気だから二つ返事で許してくれるわよ。」
「…………椛ちゃんは龍さんの部下では?」
「龍様なら許してくださるわよ。おねだりすれば一発だから。反対するなら無視して皆で脱出よ。その時は飛燕。あんたが椛を連れ去りなさい。」
「えぇ〜……」
「返事は?」
「ハイ。」
どうやら最近の文様の心の調子は反抗期の絶好期のようです。遂に文がグレた!?
兎に角、こういう時期の文のような若者には心のバリアに余り触れないようにしてあげましょう。
前世の親友のあのグレ具合を見るからに、もし詳しく干渉しようものなら、文の天狗特用の怪力パンチが飛んでくるだろう。クワバラクワバラ。
「飛燕?」
「はい。文様はとても可愛らしいです。」(白目)
「うむ。それでよろしい。」
そう言って自慢げに鼻を長くする文(比喩表現)。ふんぞり返っているその姿が背伸びしてるみたいで可愛らしかった。そのままでも良いのに、思春期は大変である。
くっ、こういう時、契約が仇になる。お互いの感情が丸見えだから軽い冗談でも読み取れられることがあるから大変なのだ。まぁ文が可愛いのは本当だけどねぇ。グヘヘヘへ。
「……………全部契約で丸見えなのよ。馬鹿。」ボソッ
「………ん?何か言った?文?」
「なんでもないわよ。」
どうして恥ずかしがってんの?文?まあ、思春期だし複雑な事情があるんでしょ。こういうときは知らないふり知らないふり。気にしない気にしない。
「化けガラス殿?文?」
「「はい。静かにいたします。」」
「うむ。そうあってくれよ?特に文。これからお前は一人前に近づく。まだそのような態度は多めに見られることが多いが、近い将来これから公式に地位を得ることになる。その時ときからは私の手に負えないことも増えていく。そのままいれば、恥じを受けることになるのはお前自身なのだ。」
「………はい。気をつけます。龍様。」
流石に喋りすぎたのかいつもとは違う厳粛な雰囲気の様子の龍さんにしっかりと窘められてしまい、急にしおれてしまった文。
いつもは高慢な態度を取りがちな文だけど、育ての親の龍さんにはちゃんと敬意を持って話しているし、こうして注意されたら素直に言うことを聞くのだ。
文をはじめとしてはたてや椛ちゃんは思いもよらない問題を起こすお転婆娘達だから、龍さんには尻ぬぐいばかりさせている。因みに私もその尻ぬぐいをさせられている被害者なことが多い。龍さん、いつもお世話になってます。
それを小さい頃から自覚してきている文は少しだけ反省している。でも文は直すつもりもないし他の2人は無自覚なままだけど。
一言で言えば、文は龍さんに頭が上がらないのだ。
こうして萎れている文を見ると、龍さんって実はバリバリに偉くて求心力のある人なんだって改めて実感するよね。
だって、文って結構天狗らしく上の者には下手に出て、下の者には高慢な態度を取るからさ。そんな文がこんなに素直になるのは龍さんだけだ。
それほど龍さんの人望が凄いということだ。もし前世の職場でこんな美人な上司がいるとしたら、私なら一瞬でメロメロになっちゃうね。
まあ、私は文に夢中なんだけど。ドヤッ
―ドス―
「ヒャン!?」
今度は顔をそっぽに向けた文に急に肘で脇腹を小突かれて、私は変な声をあげてしまった。
私は文を心の底から褒めてるのに、私の弱点である脇腹をそれも不意打ちで小突いてくるとは…………解せぬ。
「二人とも?」
「「すみません。」」
「はあ……仲が良いのは分かったからここで夫婦喧嘩をするのは辞めてくれ。唯でさえ嫉妬する天魔様を押し留めるだけでも大変なん………いや、今の失言だった。聞かなかったことにしてくれ。」
「「うゔぅ〜〜。」」
疲れ顔でそんなことをいってくる龍さん。辞めてよね。そんなこと言うの。凄く顔が熱くなるじゃん。横で下を向いている文も顔から耳まで赤くなってるし。
というか天魔様について聞き捨てならない言葉が聞こえてきた気がするけど気のせいでしょ。うん。
3人のいる謁見室で、少しだけ気恥ずかしいような暖かい空間が流れていると、従者である狼天狗の声が格子の奥から聞こえてきた。
『天魔様のおな〜りぃ〜〜〜!!』
えっ!?天魔様!?天魔様が出るの!?不意打ちすぎない!?龍さんから聞いてないよ?えっ?マジで!?まさかこのタイミングで?あんなに作者がキャラ出しするのに渋ってたじゃん!!
― ドス ドス ―
急いで頭を下げる私と文が混乱している合間に格子の先から足音が聞こえてきて、ふわりと空いていた席に座る影。
ひ、ヒェ〜〜〜!!歩く音がもう、怖い!!滅茶苦茶怖いオヤジみたいな人だったらどうしよう!?
もう先に謝っときます!!ごめんなさい顔まだ分からない文の親御さん!!私は文のモノらしいんです!!
私が脳内で頭を何度も床に打ち付けて謝っていると、その影はゆっくりと声を謁見室に響かせた。
「今は公的な場ではない。始めて話す娘の前くらい顔を見せてもよかろう。」
天魔様その声は透き通るような声だった。
格子がお世話係の狼天狗さんに上げられていくと同時に私達は自然と頭をあげた。
その格子の先にいたのは………そこには息を飲むような絶世の白髮の美女がジッとこちらを見つめてくる風景だった。けど、私の方というよりかは文の方だけを見ている感じだ。
なんて言うんだろう。自然の美しさを見るようなこの感じ、まるで花鳥風月の全てを表してるみたいな…………。
「…………綺麗ね。」
「…うん。」
私と文は見惚れるような声で素直な感想を呟きあう。そんな様子の私達を見かねて龍さんが咳払いをして、空気を再び取り繕ってくれた。
「ゴホンッ。さて、これからは私的な空間だ。文。これがお前の母親だが……………。」
そこで急に言い淀んでチラリと天魔様の方を見やる龍さん。その顔はなんというか………。
私達も龍さんの目線につられて天魔様に視線を見つめると、そこには…………
子どものような泣き顔で、ポロポロと私達を見つめる天魔様がいた。
「文ちゃぁぁ〜〜〜ん!!」
― ガバッ ―
「きゃあァぁぁあ〜〜〜!?」
「おわっ!!?」
天魔様は誰の目にも止まらない程の速さでソニックブームを起こしながら文へと駆け寄って、その豊満な胸に文の顔を填ませながら涙ながらに矢継ぎ早に語っていく。
「文ちゃん?大丈夫だった?私、文ちゃんが半年間以上前に倒れてからずっと心配してたの!!でもね。龍のバカがそんな私を止めるからちゃんとこうして話そうすることも出来なかったの!!
でも、これからは一緒にいても良いって龍が言うからちゃんとお喋り出来るようになれるのよ〜!!私ぃ〜〜本当に嬉じぐでぇ〜〜本当にぃ〜〜……グスッ……うわぁ〜〜〜〜ん!!」
…………あの天魔様。キャラが崩壊してません?
流石の文もこれは予想すら出来なかったようで鉄砲玉を食らった鳩のような顔をさせながら目を白黒させて天魔様に抱かれてしまっていた。
なんと言うべきか、この形容しがたいこのキャラ崩壊の光景を見ていた龍さんは天を仰ぎながらおでこに手を当てて、大きく溜息を吐いた。
「だから私は文にお前を合わせたくなかったんだ。凛楓。」
そう言って、ゲソっとしている様子の龍さんに、どうして天魔様が文と今まで会うことを禁止されているのかが分かった気がした。
この人……………超がつくほどの親馬鹿なんだ…………。
と、兎に角……天魔様を落ち着かせないと。文が(主に押し付けられた豊胸)を見て激怒丸になっちゃうから!!今にもわなわな嫉妬の怒りを募らせてるから!!
「て、天魔様?一旦落ち着きましょう!!」
私の声にやっと反応して、私の方を見る天魔様。そんな彼女は涙ぐんでいたその美しい瞳を私に向けると、今度はむぅと子供のような怒り表情で頬を膨らせて私を睨んできた。
「この泥棒猫。……………『私の』文の純潔を返せ。」
え!?なんで知ってるの?天魔様?まさか………あの時のことを……覗いてたの!??
私が急いでチラリと龍さんにアイコンタクトを取ると、龍さんは両手を合わせて『済まない。私の監督不届きだ。』と謝り込んでいた。
さ、流石に娘の夜の事情に干渉するのは駄目だよ天魔様……………。
私が呆れの苦笑いを顔に浮かべていると、今までジッとしていた文の堪忍袋が切れたらしく、文の怒りが勢いよく爆発した。
「うがぁ〜〜〜〜!!この変態親馬鹿女ぁぁ〜〜〜!!!」
「きゃあ〜〜〜〜!!!!」
「あ、文をとめるの忘れてた。」
* * *
「シクシク………初対面で母さんの顔を殴ることはないでしょ?………文ちゃん……シクシク。」
「ふんっ!知らないわよ!私と飛燕の私生活を覗いてたんだからそれくらいで済むだけ喜びなさいよ。」
「まあね。覗き見はねぇ?……流石に私でも擁護出来ないよ。」
「そうだな。化けガラス殿の言うとおりだ。後で凛楓にはきつくお仕置きしておく。」
「えぇ〜!?龍〜!!貴方は私の味方じゃないの〜!?」
「今回は味方も出来んわ!過保護も程々にしろ!!」
「うわぁ〜〜〜ん!!龍が虐めてくりゅ〜〜〜!!」
「自業自得だ!反省しろ!!凛楓!!」
あ、アハハハハ………色々と凄いな。天魔様って………。
龍さんにとっ捕まって綺麗な神を揺らしながらバタバタと手足を暴れさせる天魔様と、それを正面から取り押さえて天魔様の両頬を引っ張る龍さん。話では色々と聞いてたけど予想以上に仲良しだね。二人とも。
お偉いさん同士が取っ組み合いしてる風景はなんだか思う所があるな………子供っぽいというかなんというか………。
私や文に呆れ顔を向けられていることに気がついて、我を取り戻した龍さんは、流石にこのままいるのは不味いと思ったのか、直ぐに天魔様に座るように促してから元の位置に戻った。
「ほらっ!娘が見ているぞ?お前もこれ以上は親としての威厳を落としたくないだろう?もう殆どないだろうが………。」
「グスンッ。いつも龍の馬鹿はそうなの。そうやって沢山私に乱暴してそうやって誤魔化すんだから。グスン。」
「語弊のある言い方をするな!凛楓!!だいたいな?いつもお前の尻ぬぐいをしてるのは私…………コホンッ。……ハァ。まあよい。このポンコツがお前の母親だ。文、化けガラス殿。」
「うむ。私は天魔を務めている『射命丸凛楓(しゃめいまる りんか)』だ。我が娘がいつも世話になっている。呼び名は天魔でも何でもよい。よろしく頼む。黒柳殿。」
「は、はい。こちらもいつも天狗の里共々お世話になってます。よろしくお願いします。天魔様。」
え?切り替え速っ!?どうなってんの?天魔様?さっきのポンコツモードとお仕事モードの差があり過ぎて頭がバグるんだけど?
いきなりの天魔様の豹変ぶりに頭を混乱していた私を無視するように天魔様は今度は厳粛な態度で文に向き直って話しかける。
「文、今まで顔も見せることができなくて済まなかった。これからはこの償いも兼ねて少しずつ親子の関係を作っていくつもりだ。よろしく頼む。」
「………分かったわ。」
混乱している私と違って文は理解出来たようで納得してなさそうな顔をしつつも了承した。
「まあ、一応補足をしておくと、凛楓…コホンッ。天魔様は公私は切り替えるのは得意な方なんだ。そこまで気にすることじゃない。偶にさっきみたいなボロが出てくるだけだ。取り敢えず、初の顔合わせはすんだ。だから化けガラス殿。」
「ん?何?龍さん?」
「少しの間、文と天魔様だけの二人っきりにしてやろう。」
「………うん。分かった。」
そうだった。この謁見で初めて文と天魔様は顔を見合わせたんだ。積もる話はないだろうけど、少しでも親子としての絆を造るための礎には私や龍さんは立ち会えないもんね。
「ゆっくり親子で話し合ってね。文。」
「………うん。」
「客間で待ってるから。」
「……うん。」
大丈夫なのかな?文?少しどこか上の空だけど?
私は天魔様に一礼してから、龍さんと一緒に客間で待つことになったのだった。
遂に……天魔様のキャラ出しをしましたね。アンケートに協力してくれた読者の皆さん本当にありがとう御座います。
た、頼む!!原作で天魔様を出してこないでくれ!!漫画や書籍で格子のシルエットからしか出てないんだからそれだけにしておいて!!神主(創造主)さん!!
まあでてきたら出てきたらで予防策は張ってあるんで大丈夫ですけど。