もうすぐ異変が終わりそうですね。後は最後のラストスパートが待っているんだ。頑張れ私。
博麗の巫女。彼女等は代々この幻想郷の守護者であり、協定者でもある。そして、それを作り上げた博麗の初代巫女。
そう、博麗の巫女は強かった。それは、全方面にて指揮を執っていた大天狗達をあっという間に捕縛していくほどに圧倒的な力をその身に宿していた。
そんな彼女の"夢想"とも言えるような力を、見物している者達がいた。
彼女等は茂みに隠れて全力で気配を消しながら戦場を見学していた。その勇姿を。人には宿ることのない筈の神の如き力の有様を。
勇儀は大好きな人間を、そして好物の強い人間である彼女の姿をこの目に焼き付けていた。白と赤で包まれていた彼女の華麗に飛び流れる動作で天狗達を制圧していくその強い姿を。
「す、すげぇ…………。」
鬼にとって、自らに届き得る人間など見つかるのだろうか?否、見つけられないだろう。
妖怪という種族全体が人間という矮小な存在を、一方的な形形で食すという圧倒的な力を得た捕食者側なのだ。鬼という妖怪の種族は、数いるその妖怪達の中でも一二を争う東西無双の最強の種族。そして、星熊勇儀はそのなかで指折りの強さを誇る敵無しの存在だった。
だから、鬼は弱くとも立ち向かってくる人間が好きだ。泣きじゃくり絶望に明け暮れる顔が好きだ。そして、最後はその復讐心と執念にて自分達を退治しようとしてくるその姿が大好きだ。
それだけで人間が好きな鬼がどれ程人間と殺し合いたいのか。それだけで激闘の中を満身創痍で退治されたいのか。または、その激闘の末、勝利を勝ち取ってその肉体を食い自らの身体としてその人間と一つとなる。
それが、鬼ならば誰もが夢見るだろう極上の瞬間だ。
だが、それは夢だった。夢だった筈だ。しかし、今この目の前に起きている現象はなんだ。この余りにも鬼にとって都合の良すぎる存在は何なのだ。
それは勇儀の反応で分かるだろう。
「これが……博麗の巫女か………。あぁ…滾る。滾るな。早く勝負したい。」
「駄目よ。勇儀。今は私達は待機でしょ?それに元々私達はこの戦に無関係の筈よ。貴方が我儘を言ったから仕方なく私が大江山まで同伴して一緒に来てあげたのよ?因みに私は貴方のブレーキ役なんだから行っちゃだめよ?そこの所、本当に分かってる?勇儀?」
「華扇………駄目か?」
「駄目よ?やったら私があんたを無理やり大江山まで連れて行くから。」
華扇と呼ばれた鬼にギロリと睨まれた勇儀と言う鬼は焦った様子で言い訳するが、鬼は正直者だ。口に出せば本音はポロリと出てしまう。まあ、今回は勇儀という鬼が興奮しすぎているだけのことだったが。
「わ、分かってるよ。華扇。ハァ〜!それでも戦いたいんだ!!華扇!!でも、この身体の火照りはどうすればいいんだよ〜!!」
「だ〜かぁ〜らぁ〜〜〜!!!私達はぁ〜〜〜〜戦っちゃ駄目なの〜〜〜!!!そんな昂りなんて自分で収めなさい!!この馬鹿!!」
「エテッ……馬鹿力め。」
「それ貴方が言う!?」
鬼は鬼だ。戦が好きだ。人間が好きだ。だから勇儀はその目に映る初めてと言える強者の人間に恋焦がれるような感覚を覚えていた。
「くぅ〜〜〜〜!!見ろよ!!あの人間の姿を!!未だかつてない!!妖怪を圧倒する人間を!!喰われ、奪われるだけのチッポケな存在が、今!私達に迫ろうとしてるんだよ!!!興奮しないい訳がない!!私はヤバいけど、華扇はどうなんだい!!」
「んなぁ〜!ことぉ〜!!当たり前じゃあ〜〜!!ボケ〜〜ィ!!!」
― ゴン ―
「イてっ!?なんだい華扇、やっぱりあんたも本当は戦いたいじゃないんか!?というか、素が出てるよ?華扇?」
「それとこれとは話が違うわ!!このアホンダラ!!今はうちら鬼の面子がかかっとるんじゃい!!
いま内の代表がその為に奔走してんだよ!!それをおめぇの自分勝手で滅茶苦茶にしようとしてんじゃあねぇよ!!勇儀!!はっ!?
…………あ、もうダメね…………私。まだ番長気質が抜けてないなんて。早くこのクセ脱さなきゃいけないのに治らないったらありゃしないわ。」
「まぁ、私はそっちのほうが好きなんだけどねぇ。ドスが聞いてて。それに私や萃香と喧嘩の殺し合いの時の華扇の口調は特に良いと思うぞ?正直私好みだ。」
「私は嫌なのよ!!知ってるかしら勇儀?私の通り名?『鬼の特攻隊長』よ?あの『馬鹿正直』がいるのにそれを差し引いて私がそう呼ばれるのは真っ平ごめんだわ!!」
鬼の四天王の残りの一人、彼女には謎は多い。だが、鬼の四天王の一人に数えられる程の強者なのは確かだ。しかし、姿を中々見せないのはどういう了見なのか。誰も知らない。
「あ、アハハハッ………まぁアイツはうちらが四天王って言われてる中で本当に自分に正直に生きてるからねぇ。
普段は旅かなんかしてて姿は中々見せないクセにヒョコッて偶に宴会に関わってくるもんだから。いる時は毎回驚くからねぇ。」
「ふんっ!兎に角、勇儀。私達は黙って見学よ!!萃香がなんとか立ち回ってるんだから本来お留守番してた私達は関わっちゃいけないのよ!!」
「ぶぅ〜〜〜。やっぱりずるいよ萃香ぁ〜〜〜!!私も萃香とは純粋な力は同じなのにぃ〜〜〜!!ただあの時の私が鬼の大将を面倒くさいって思って萃香に譲ったばかりに…。くぅ〜〜〜!!やっぱりあの時、私が鬼の大将になっとけば良かった〜〜!!」
「喧嘩と賭博ばっかりしてるから、貴方が鬼の大将になったらなったら貴方大将の仕事サボりそうね。結局萃香や私に仕事が回ってくるんだからあんたがなっても意味ないわよ。」
伊吹萃香を中心として、星熊勇儀と茨木華扇、そしてもう一人の鬼は大江山を拠点として猛威を振るう鬼の一大勢力を築いていた。
そして、今の彼女達は八雲紫と結託して、天狗を支配下において部下にしようと画策していたが、
しかし、直接の暴力による支配は天狗の特性上難しいので今の所鬼の出番はなかった。というか、先ほど萃香の分身によって大江山に天狗の力による支配の中止の知らせが届いていた筈だが、この二人はその情報を無視してここまでやってきた訳だった。
故に、ここに二人がいることがそもそもおかしいことだった。
「やっぱり行っちゃだめ?華扇。凄くあの巫女食べてみたいんだよ。そう、限界まで殺し合って血みどろになり合って力尽きるまでやり合うんだ。それで、私が退治されるか、最後に血まみれになって弱ったあの人間を食べられたら凄く満足すると思うんだ。な?良いだろ?」
「………まあ、同意はするわ。確かに美味しそうよね。彼女。でも、駄目よ勇儀。」
「ぶぅ〜〜〜〜。ケチだなぁ〜〜!。華扇は。」
「あんたは餓鬼(ガキ)か!」
「鬼だよ!」
「言葉遊びしてる訳じゃないわよ!」
2人の鬼はわーわーギャーギャーと騒ぎながらそのまま見学を続けていく。その目線には殆どの天狗を鎮圧して、次の西面の戦場に向かう後ろ姿が映っている。
「さて、そろそろ次の戦場に行くようだね?あの人間。まだ西面の戦場は見てないけど、一番見応えのありそうな奴らが多かったし、楽しみだなぁ。」
「不安だわ。ホントぅ〜に不安だわ。……………ねぇ、勇儀。絶対暴走しないでよね?」
「ああ。多分、大丈夫だ。多分。」
「………その言い方。鬼としてどうなのかしら?絶対に行く言い方……………よ?」
「ジュルリ…………。」
華扇が勇儀の方を見ると、彼女の顔は完全に目が眩んでいて口からは涎が垂れている。それだけで華扇は頭を抱えそうになった。
「はぁ〜……やっぱり大江山で籠もらせた方が良かったかしら?」
「よしっ!華扇!!次の戦場へ行くよ!!どんな奴らがいるかな?中々骨のある妖怪が他にもいるといいねぇ!!」
― ドドドドド ―
「あっ!ちょ!!ゴホッゴホッ!!勇儀!!貴方、急に砂ぼこりをたてないでよ!!というか、速っ!?待ちなさい!!大鷲!!」
― ピー ―
2人の鬼達はそれぞれの『怪力乱神』と『動物』の力を借りて、いそいそと巫女の後を追うように、森の中を走り出して西の戦場へと向かって行ったのだった。
* * *
一方、西面の戦場では隕石の墜落によって大きな土埃とクレーターが幾つも出来ており、元の風景とは様変わりしていた。
そして、その土埃に一人浮く人影。その人影が神通力で引き起こした突風によってその周りの塵を吹き飛ばすことでその姿を露わにした。
そう。案の定その人影の正体は飯綱丸龍だった。彼女は先程の大爆発の影響を感じさせず、髪を払う仕草をしてから、涼しげな表情で両手を左右の腰に手をおいて満足そうに独りごちた。
「ふむ…………これほどの破壊力を喰らえば、姫虫百々夜とかいうあの大百足も流石に死んだだろう。」
幾ら回復力が凄まじくとも、一度に身体を完全にチリにされたり破壊されたならば意味がない。今度こそ、完全に消滅したか、回復が追いつかず地面に埋まって動けなくなっている筈だ。
「だが、久し振りに満足出来るいい運動だった。なかなか楽しみがいがあったぞ?姫虫百々夜。邪魔伊達をしてきたのは許さぬが一応そなたには感謝しよう。」
この数百年間、妖怪の全盛期やら八雲紫やらと忙しかった。そのせいで運動不足だった飯綱丸龍は程よいウォーミングアップにより、少し落ちていた力が元の状態に戻っていた。
元々長年の机仕事によって本調子では無かった飯綱丸龍だったが、それでも先程の激闘が『いい運動だった』と述べている。
それだけ飯綱丸龍の力は強大だ。そして、この底力が数いる強力な力を持つ大天狗達の中で、唯一『天魔の右腕』と他の天狗達に言わるのを許されているのはこのような力が大前提にあったからだ。
「さて、………文やはたて達を探さなければいかんな。恐らくは…………愛宕山大天狗の方にいるかと見た。
それにしても私の『流星』をしのげたのか?成長を実感できて私は嬉しいぞ。お転婆娘共。
まさか避難しておらなんだとは知らず、流星が発動する直前に気がついた時には久し振りに肝が冷えた気分だったが、無事ならばならば安心だ。」
そう言って、文達の成長を再び実感しながらこのクレーターの上空部から飛び去ろうとした龍だが、
しかし、そんな感情を呼びとめる声がまだ土煙が漂い、様子が見えないクレーターから声が聞こえてきてその翼を一度留めた。
「待ちやがれ!龍!!オレはまだまだ行けるぞ!!」
その荒々しい声の主の生命力の高さに、呆れの溜息を吐きながら龍は静かに風を地面に向けて土煙を飛ばした。
― ビュウ ―
そこには、ボロボロながら身体を回復させている姫虫百々夜。
あれほどの膨大だった彼女の妖力と魔力の量は三分の一に減っていたが、まだ平均的な大妖怪の分の妖力と魔力は残っている。
彼女のその表情は、身体が抉れていながらもまだ行けると言いたそうな飼い主を困らせるやんちゃなシベリアンハスキーのような顔だった。それでいて雰囲気は邪悪だ。
龍は呆れてしまっていた。この男口調の大妖怪はまだやり足りないのか?と。あれほどの実力者達と長く戦っていた筈だが?
しかし、この調子ではこの戦闘狂はまだまだ要求不満のようだった。
「なぁ、百々夜殿?お主の不死身さには感服するが、技術が伴っていない。
せめてもの、その新しい人型の身体に慣れてから再戦するんだな。それでは宝の持ち腐れだ。」
「あっ?今やっと慣れたんだよ!!だからまだ終わりな訳ないだろ?
なあ?めぐむ!!まだ沢山戦おうぜ?
なあ?お前の味はどうなんだ?俺はお前を食べたい!!沢山お前と戦ってそれで満足したらお前を食べたいんだ!
それだけじゃねぇ!!あのよく分からない獲物2人も!!黒い奴も!!食べてぇ!!」
「…………中々変な趣味を持っているな。百々夜殿?私はこれでもしかと忙しいのだ。娘達の迎えの準備が必要だからな。一度信じて送ったとしても私はあの子達の『親』だ。昔のように自分勝手にはしていられん。」
その龍の指摘と反応にに、百々夜はショボーンと顔を俯かせて、涙目で龍を見やってくる。
「だ、ダメなのか?………もう…行っちまうのか?めぐむ?」
龍は、その子供みたいな要求不満を表す幼そうな顔に再び呆れ返ってしまった。
しかし、その表情は自分の娘の小さい頃を思い出してしまう。
今よりもずっと小さい頃の娘の、仕事で忙しかった時に構ってやれなくてその時に寂しそうにしていたはたての顔を。
はたては普段から我儘を言わない。代わりに、ただ黙ったまま龍向かってこうやって静かに何かを求める顔をしてくるのだ。それに慣れるまではあたふたしたものだった。
そのせいで、龍はいつの間にかこういう子供らしいことをする者には格別に弱くなってしまっていた。
そして、いつの日かの幼い頃の娘のその表情に、結局は龍は負けてしまい、仕事を一時放棄してしまうことが多くなった。
そして、そういう日に限って毎度、娘が寝静まった頃に翌朝まで徹夜する羽目になる。
本当に忙しい日々だったが、幸せないい思い出だった。椛にお世話を任せるようになっても娘は変わらず暇あればその可愛らしい仕草をしてくるものだった。
思わずそんな下らないことでもとても懐かしくて大切な記憶を思い出してしまい、龍は無意識に気持ちのよいほっこり笑顔でこう言ってしまった。
「……はぁ〜。仕方あるまい。付きやってやるか。」
私のその返事に、暗く涙目になっていた百々夜殿の表情はパ〜と明るくなった。
「ホントか〜〜!!?ありがとなぁ!!!めぐむ!!」
「はぁ。私も随分と丸くなったものだ。まさかここまで私は親の心づもりが板についていたとは。私も変わったものだ。」
その親心のようなものが自分の長く生きた歳月を感じさせて少々乙女としてのプライドが傷つけられた気分になったが、悪くない気分なのは確かだ。
「但し、私達を食べるのは無しだ?いいな?」
「おう!!分かった!!けど、私が勝ったら食べていいよな?」
「……聞いていないな?」
「おう?オレはちゃんと聞いてるぜ?めぐむ!!」
「まあいい。私が負けなければいいことだ。」
その瞬間、龍は長く行なっていた実務仕事のせいで隠れていた若かりし頃の戦闘狂を覗かせた。
「どうせならとことん付き合ってやろう。『百々夜』。」
その時、私は思わず百々夜殿のことを呼び捨てで呼んでしまったことに気がついて、昔は相手のことを呼び捨てばかりで呼んでいたことを思い出した。今では凛楓以外には呼んでいない呼び方。
なんだ、まだまだ私は若いではないか?それに、こんなに燻っていた昔の自分が、日の目に出ることもなかった闘志が、今ここに蘇ってきたのはどれ程ぶりだ?
いや、今はどうでもいいか。今を喜ぼう。昔の自分の少し戻ってきたということを。
飯綱丸龍は今まで使っていた扇子を懐に入れて、代わりに鞘に収めていた刀を取り出した。
「『智慧利(ちえり)』お前の久しぶりの出番だ。」
その手には、真っ直ぐとした刀身の直刀が久しぶりの主人の手に持たれたことに光り輝くことで答えてくれる。
これで本気でやり合うのに憂いはない。それに、先程まで避難していた者共もこちらへと戻ってきている。なら、万が一もないだろう。
勿論、背後にいるのは邪仙と動く死体と常闇の妖怪だ。
「龍さん?流石に私でも怒りますわよ?いきなりなんてモノを落としょうか!!
正直死ぬかと思いましたわ。身を挺して守ってくれなかった芳香ちゃんが居なかったどうなってたか。私、怒りましたわ!!プンプン!!」
「アハハハッ。中々面白いモノを見せてくれるなぁ〜。天狗?」
「まだまだ元気そうだな。そなたたちも。なら、最後まで付き合ってもらうぞ?」
「ええ。それは勿論ですわ♪」
「頑張るぞー!!」
「アハハハッ!いいじゃねえか!!やってやろうではないか。私の闇の真髄を嫌というほど見せつけてやろう!!」
「ギャハハハ!!やっぱりお前らは最高だなぁ〜〜!!!!ギャハハハ!!!全員食らってやる!!!」
太陽も傾いた西面の戦場で再び戦闘音が鳴り響いた。
まだ少しだけ続きます。多分次回で終わると思います。多分。
…………こんなに戦闘回を連続して描いたのはいつ以来だろうか?
さっさと終わらしたいのに風呂敷が中々畳めない〜〜!!!
読者の皆様にとっての女オリ主のイメージを教えてください!
-
可愛い! ここに皆入れてね!
-
格好いい! そう?まあそれもありだね?
-
美しいね! エヘヘー分かってんじゃん!
-
変態! でも変態なお姉さんは好きでしょ?
-
人情姉さん! 私についてきな!君達!
-
大人なお姉さん! 妥当だよねー!うふふ♪
-
乙女だよ! 分かってるねー!
-
人妻最高! 良い子の皆は入れないでね?
-
未亡人最高! なんか投票欄が怪しくない?
-
もっと強くなれよ! あっはい、頑張ります
-
ポンコツだね。 ん?これは褒め言葉?