一方、天魔の屋敷にて、妖怪の山所属の大天狗達と地方所属の五大英傑達が宴会場で行った交友の宴会が終わり、憎たらしい大天狗達の仲の良さそうな喋り声が遠ざかる中、龍は宴会場に残っていた。
いつもは憎み合っている大天狗達だが、宴会の時はヒトが変わったかのように仲良くしだす。そこに表裏は一切なく、普段から政敵同士で影で足を引っ張り合う者同士であるのに友のように接するのだ。
一見、これは矛盾しているようだが、これが天狗の習性なのだ。『酒の上では憎まない。憎みあうならシラフで』だ。
山伏の権現として祀られている天狗らしい爽快明快な特性であろう。
龍はそんな面倒くさい天狗の習性に溜息を吐きながら、宴会場に残っていた愛宕山大天狗と、模擬戦試合から途中参加した鞍馬大天狗、そして天魔様をチラリと見た。
「はい、お酌するわ。幻炎。」
「成長したな………凛楓。この前まではお酌なんて言葉も使えんかった筈だ。」
「もう〜!いつの話をしてるんですか〜?幻炎?私はもう一児の母なんですから。」
「アハハハッ!私にとってはいつまでも可愛い娘だ。凛楓!!」
「もう〜幻炎ったらぁ〜〜!!」
「甘いな。辛口の酒が甘口に感じるな…………お主らもう少し距離を離せ。酒が不味くなる。」
「そういうな夏沙丸。そなたこそ龍と話してきたらどうだ?」
「今ははたての世話してて動けないのよ。過保護よね。そこら辺に寝かせておけばいいのにわざわざ意識のない娘を膝枕するなんて。」
「凛楓。お主はヒトのことは言えなんぞ?毎晩娘が寝静まった頃に、仕事返りに娘の寝顔を毎晩欠かさず覗いていると我はボンクラ娘から聞いていたからな。護衛の犬走椛の狼の鼻の警戒を掻い潜ってまでやることがそれか?」
「なっ!?龍の馬鹿!!なんで、話すのよ!!」
「お前………流石に私も引くぞ?」
「だってぇ〜文が可愛いんだも〜〜ん!!」
「節度を保て。だから娘に距離を離されるのだ。今回の戦での暴走もそれが所以じゃないのか?凛楓?」
「ウグッ!?でも……そうしないと文の危険が………。」
「見ろ!ぼんくら娘のことを。あやつは子育てについてはしっかりしている。程々に伸び伸びと娘達を過ごさせていたのだ。まあ、色々とあったようだが、籠の中の不自由な鳥のように暮らさせてみろ。益々娘の成長は悪くなる。やはりお主に子育ては速かったようだな。我がボンクラ娘にお前と文を話すように言いつけておいて正解だった。」
「うわぁ〜〜〜〜ん!!助けて幻炎〜〜!!夏沙丸が、いじめてくりゅ〜〜〜!!」
「ハイハイ。いつになっても泣き虫だな?凛楓?おひい様を見習え?いつまでも子供とは行かんのだからな?」
そう、説教をこぼしながらも子供返り(?)した凛楓の頭を撫でる愛宕山大天狗殿。恐らく貴方も過保護ですからね夏沙丸様。という、龍の心の突っ込みは置いとこう。そうなのだ。凛楓は昔からずっと心内は子供のような純粋さがあった。
「うふふふふ〜〜♪」
それにしても皆、楽しそうに昔話に花を探している。中々仲むずましい様子だ。だが、私のことを聞こえる距離で堂々と話すのはいかがなものか?
そんなに仲がよいなら戦争などという遠回しな喧嘩を辞めて欲しいものだ。
戦の処理を任されるのは私なのだ。
「はぁ〜あと、天魔様。ここにいるのが身内だけだからと言って急にだらけないでください。一応護衛の一ノ護衛隊や零の部隊も潜んでいますので。」
「こら!龍!!今は公じゃないんだから呼び捨てにしてよ!!」
「はいはい。凛楓。ごめんな。はぁ〜。はたてはあんなふうになるなよ?」
未だに二日酔いで唸っているはたてに新しく水で絞ったお絞りを乗せてあげながら、龍は再び溜息を吐いたのだった。
いつまでも我儘な娘だ。いつ私の手伝いなしでも天魔として独り立ちするのか。……いや、一生ないだろうな。
そんなことを考えながら、楽しそうにワチャワチャしている3人を私が観察していると、鞍馬大天狗殿が急に私に声をかけてくる。彼女も色々と面倒くさかったりする。
「おい!ぼんくら娘!!いい加減お主も参加せんか!!お前の愛弟子が我の剣に少しでも迫っていたのだぞ!!我の孫弟子が!!もっとそのことについて話しをすべきだと我は思うんだが?」
「また、椛の話ですか?あと、鞍馬大天狗殿。いつまでも昔の呼び名は辞めていただきたい。既に1000年前の話ではないですか?」
「何度も話足りないのだ!!夏沙丸は!!さっさとこやつの無駄話に付き合え!!龍!!」
「はぁ〜愛宕山大天狗殿。貴方も貴方です。幾ら凛楓が可愛いからと言って、甘やかせ過ぎです。」
凛楓………愛宕山大天狗殿がそなたの育ての親だからと言って、百数十年ぶりの愛宕山に甘えられるからと言って、ずっと抱きついてスリスリし続けるのはどうなのだ?いい加減離れろ。私以外にはするな。
「なによ!龍!!そっちだって宴会中もずっとはたてに付きっきりなくせに!!私は幻炎にしちゃだめなの!!」
「凛楓。お前には立場があろうに。公ではしっかりしてるがいつボロが出るのかハラハラして私はいつも胃を痛めているんだぞ!?」
「うるさいわね!!私は天魔である前に幻炎に育てられた義理の娘よ!!」
「ハッハッハッ!よく言った。凛楓。天魔だがなんだか知らないが、私にとってはコヤツは私の娘だ。何せおひい様に託されたのだからな。」
「……………愛宕山大天狗殿!!貴方は本当に暴れん坊過ぎます!!」
「ハッハッハッ!!よいではないか!こうして定期的に言付けして戦を繰り返しているのだ。今回もその大義名分があっただけ。それもこれも、結局は天狗という種族全体の衰退を防ぐ為。
結果的に天狗という種族が種として栄えているのは確かではないのか?おひい様ならそう言った筈だ。」
「また始まったわ……幻炎の母様トーク。」
「幻炎……お主、酔いすぎだ。」
確かに…おひい様の代から定期的に地方の天狗と妖怪の山との戦は数千、風百年単位で行っている。
この前の八百年前の私が初陣をした戦の理由は……確か、先代天魔様が勝手に勢力を広めた結果、危機感を覚えた地方の大天狗が戦を仕掛けたとかなんとかだった筈だ。これらもこれらで一見下らない政治理由だが、それもこれも天狗達の練度を衰えさせてないようにするためだった。
そして、今回は天狗の数が増えすぎることを防ぐため。
この定期的に行われている内輪揉めも、妖怪の全盛期の初期に行われている理由は、周りの強力な妖怪の力が強まり、彼らの争いが厳しくなる時期耐える為の地固めの為。例の太陽の畑の花妖怪や土蜘蛛、鬼など多くの妖怪達から天狗という種族を守るためだった。
今回の戦でお互いの陣営の僅かな数の戦死した天狗も書類上では組織的な問題があったり、天狗としての能力値が低く、弱肉強食が激しくなるこの世では食い物にされてしまうものばかりだった。
まあ……一部あの今頃地下で一人上機嫌な鼻歌をしながら鉱石を掘り当てているだろう大百足に食われた一部の天狗達は帰ってこなかったが………
それもそれだけだ。格上に無駄に飛びかかり、独自判断も出来ないような奴等だ。そのことが原因で、組織の足を引っ張られた結果、種族が危機にさらされるくらいならば、足切りはせねばならない。
それは例え大天狗だとしても対象に入る。それが妖怪として異例の組織性を維持する為の天狗社会の鉄則だ。
私としてはこんな同族を死なせるようなことなど全くしたくない。しかし、上に立つものはその分だけ大きな責任と自ら手を汚す覚悟が必要となるのだ。そして、妖怪が組織を持つ為には知らなければいけない無数の事実やかばらなければいけない罪を背負う覚悟が必要だ。そうなのだ。上に立つものはそれ相応の業を背負って下のものを引っ張り上げていかなければならない。
だが…………
「おひい様のことを話してたらもう我慢できん!!くぅ〜!酒が足りない!!もっと飲むぞ!!凛楓!!折角久し振りに会えたのだ!!これも戦をしたおかげだ!!」
「貴方がそれを申し上げてしまえば、色々と部下達が可哀想なので辞めていただきたい!!……ったく。職権乱用に程がある。」
こうして、堂々と言うのはどうなんだろうか?一応貴方は天狗の中では最も力があるとか言われてるんですよ?まあ、本気を出した場合の今の成長した凛楓とは言い勝負をすると思うが。
「ハッハッハッ!何が悪い!!それが妖怪じゃ!!なあ?凛楓?」
「そうね。妖怪たるもの。それくらいしても文句が言うやつは力で黙らせるだけよ。」
本当に困った者たちだ。無駄に力があるから始末に置けない。
私達がまだ鴉天狗として独り立ちする前のあの背中は何処にいったのか?重荷が減ったからといって自ら化けガラス殿のようにはっちゃけるのは辞めてもらいたい。というか、鬼みたいなことを申すでない二人とも!!はぁ……あの鬼の大将が2人の上司になってくれて良かったよ。一応、彼女は信頼出来るからな。この天狗共と違って、あの小さな小鬼の少女は。
思わずまた溜息を出してしまう龍。これから仕事もまた増えるのだ。戦の処理仕事の次は鬼と天狗達の繋ぎ役に幻想郷の調査や人里への謝礼やら博麗との同役やら何やらと。また忙しくなりそうだ。
「なあ、所で夏沙丸。あの2人はまあそのままにしおくとして、2人で話そうぞ。今は"元師弟として"だ。」
「………。」
そう言いながら師匠は、はたてを膝枕していて動けない私に酒瓶を持って近づいてくる。
その時、龍は周りの音が『流れて』遮断されているのに気が付いた。どうやら本当に内密にしたいことらしい。
「して、何用で内密な話を?"夏沙丸様"?」
「ふむ。まぁそうだな。今後の相談についてだ。龍。」
若かりし頃、私が一鴉天狗だった頃の彼女を呼んだお互いの呼び名だ。まだ、私が弱く、そして能力の使用もままならない時代の懐かしい呼び方だ。
「『八雲紫の件について』ですか?」
「ああ。昔から我やおひい様世代の大天狗は全員が知見があるが、何を考えているのかは知らん。しかし、今回の博麗の巫女との戦闘を、仲介した時に話しは聞いた。」
「……では、夏沙丸様も?」
「ああ。同罪になるだろうな。よもや妖怪という種族がここ数千年以内に人間の発展で滅ぼされるとは………今でも信じられん。」
「ええ。私も始めて聞いた時は耳を疑いましたよ。」
八雲紫の『御伽噺』………萃香殿に『無能』と称され殺されたあの老害共が名指した話。あの時殺されたのは八雲紫の話を信じずに最後まで反対した者達でもある。
だが、それだけなら反乱因子として動きを注意しているだけにすむ筈だったが、あろうことか天狗の里全体にこのことを広めて味方に付けようとしていたことが、大きな理由だろう。
だから、反乱因子ではなく不穏因子として公のあの場で殺された。他の大天狗にも示しと無駄なことをさせないための見せしめとして。
だが、一方で虚しく感じてしまう。老害ではあったが過去の神代以降の時代では度々活躍したことのある者でもある。その輝かしい過去に縋るあまり物事を見通す慧眼が淀み、今と現在と未来を見渡すことが出来なかったのだ。
そう。気持ちだけなら分かるのだ。私としても幻想郷での妖怪のあり方は芳しくない。滅びまでの延長、または時間稼ぎになるかどうか。
しかし、私達天狗は種族として生き残らならなければいけない。それが、過去で死に絶えた同族達への償いなのだ。
だからこその『御伽噺』だ。私達は引き継がなければいけない。この絶望の滅びから救うことの出来る希望を。
あの老害達……いや、あの古き天狗達は信じられなかった。その新たに来る時代に順応出来ずに鬼という理不尽の象徴に当たられ散ってしまった。それだけのことだった。栄枯必衰。ただ、それだけの悲しきことだった。
だが、私もあの時紫殿と天魔様との会話を聞いただけならば、信じなかった。もし、私の能力がなければ耳すらも傾けなかっただろう。今でも身震いは起こる。何せ老いとは平穏を求めてから始まるのだ。私にも油断は出来ない。むろん、誰にもだ。
私の『星空を操る程度の能力』で占った結果。紫殿が話した未来予知と一致したのだ。私の星占いは外れることはない。
星の軌道が規則的に動くように、私の占いは未来の軌道を知れる。あの化けガラス殿に対する忠告もその軌道を読み取っただけに過ぎない。故に、間違うことはない。それを八雲紫は知っていた。
だから、八雲紫は私をあの場に残したのだ。
天狗の里で最も有力な味方と確信して。私と凛楓だけはこの話を信じると。それを確信できること自体がおかしいのだが。
………どこまでも底が見えないヒトだ。紫殿は。
「だが、我の『流れを読み取り操る程度の能力』でも時代の『流れ』は確かに八雲紫の言う通りになっていた。それは我の力でも変えられない流れとなっていた。これは随分前から察知していたがな。今回の八雲紫との会話で確信したのだ。」
そうか。夏沙丸様も事前に読みって察知していた筈だ。妖怪の滅びる流れを。だが、今回の戦に参加していたのか?
矛盾が存在するので素直に龍は聞いてみた。これは弟子の頃からあった愚直に誠実な龍の癖でもあった。
「なら?何故、予見していたのに夏沙丸様は戦に参加を?」
「……………。」
そうだ。今回の戦に参加する意義が少ない。それを知っているなら幻想郷の守護者とも争う必要も無かった筈だ。
そう、ふと話を折るような質問をしてしまうのは仕方がなかった。そして、私は黙りこくってしまった夏沙丸様の顔を見る。
そんな彼女の傷跡のついた幾らかの頬が赤みをさしているのに気がついた。
「…………一人の天狗としてお前の顔が見たかったのと、師弟としてお前の成長を知りたかったのだ。」
「師匠…………。」
思わず、気恥ずかしくなったしまい、私も頬を染めてしまう。
今更だが、師匠としての面影を今更感じ取ってしまい、まだ縁は残っていることに気がついた。
同時にこのヒトは不器用なヒトだと言うことも思い出した。
そして、夏沙丸様は『流れを読み取り操る程度の能力』を解いて後ろ頭を描きながら、嬉しそうに話始めた。
「まあ、犬走椛とかいうお前の弟子を通じて分かったがな。いや?愛娘か?」
「どちらもですよ。」
また、始まった。不器用なヒトの不器用な私への愛情表現。
だが、最初のような溜息は出てこない。寧ろ、心に暖かい風が流れていた。
そうか。私もはたてや椛、そして文を育てたことで師匠の気持ちが分かったのか。
「あぁ。あやつはとことんまだ小さい頃の龍に似ていてな。剣の才もない奴なのに、同世代の誰よりも剣が好きな剣バカだ。まさに昔の龍だろう?」
「どちらかというと私は剣が主体ではないんですけどね。それに、似ているのは夏沙丸様では?」
「剣じゃなくとも通じるものはあるだろう?お主の場合は、神通力や執務のほうだったがな。だが、才があろうとなかろうと愚直に努力を重ねる。好きなものの為にな。その点だけは変わらない。友として凛楓を支えたいというお前の気持ちはそれち似ておるだろうに。」
「っ……それは言わない約束ですよ。夏沙丸様。凛楓には秘密にしてください。」
「不器用じゃな。犬走椛の不器用さに毒されたか?」
「ふふ………そうかも知れないですね。」
いいえ。師匠。貴方に似たんですよ。
私と鞍馬大天狗は未だに続いている義親心のイチャラブを呆れの笑みで眺めながら愛娘達の話に花を咲かせたのだった。
今日は妙に綺麗な"流星"が川に流れる"椛"のようにゆったりと夜空に"流れて"いた。
読者の皆様にとっての女オリ主のイメージを教えてください!
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可愛い! ここに皆入れてね!
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格好いい! そう?まあそれもありだね?
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美しいね! エヘヘー分かってんじゃん!
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変態! でも変態なお姉さんは好きでしょ?
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人情姉さん! 私についてきな!君達!
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大人なお姉さん! 妥当だよねー!うふふ♪
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乙女だよ! 分かってるねー!
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人妻最高! 良い子の皆は入れないでね?
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未亡人最高! なんか投票欄が怪しくない?
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もっと強くなれよ! あっはい、頑張ります
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ポンコツだね。 ん?これは褒め言葉?