インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
欲しい、空が。欲しい、場所が。
そして彼らは動き出す。自分たちの場所を手に入れるために。
路地裏
これはクラス代表リーグ戦が行われてる日と大体同じ時の出来事である。
ここは夜の渋谷。若者があふれる街である。そこの路地裏で、2人の男が3人の女に絡まれていた。男達の見た目は20代半ばだろう。片方は髪型がアフロで、もう一人はスポーツ刈りの髪型だ。
女たちの見た目は全員20前半であるが、なぜか老けて見える。
「おら、早く金出せよ」
「そうしねえと強姦されたと叫ぶぞ!」
「ま、待ってください!出しますから……!」
今の世の中そう叫ばれると無実でもすぐに捕まる。そして男は財布から金を出し、女に渡す。だが女は男の腹に蹴りを入れる。鳩尾に入ったのか、男はのたうち回り、女たちは下種な笑いを上げる。
「ひゃはは、こりゃいいや」
「そういえばストレス溜まってんだよね。だからサンドバッグになってよ」
「答えは聞いてないわ。じゃあ始めましょうか」
そして女たちは男に蹴りを入れ始める。男達は体を丸めて防御の体勢に変えるが、それでも痛いものは痛い。小さく呻き声を上げる男の姿を見てさらにゲスイ笑みを浮かべる女たち。
ここは路地裏。男の悲鳴は表を歩く人たちには聞こえず、ただひたすら蹴られたり殴られたりしている。
だが、
「キィィ……」
「カラララ」
「ギギィ……」
何か聞こえた。アフロヘアの男の耳にははっきりと聞こえた。幻聴ではない。そう、何かの鳴き声が聞こえたのだ。
だが女たちには聞こえておらず、男達への攻撃を緩めない。
「今の声何だよ?」
「はぁ!?いきなりどうした!ついに耳が狂ったか?」
男たちは女たちに気付かれない様にひそひそ話をし、そしてスポーツ刈りの男が上を向くことになった。
「今の声は……、ひぃ!?」
男は気力を振り絞って顔を上にあげるが、そこにいたのを見て悲鳴を上げる。女たちは男のとった行動が気がかりなのか一緒に上を向くが……。
「何よ、何もいないじゃない」
「まさかそうやって逃げようってわけ?」
「いい度胸ね。ならがひぃ!?」
「「「「!?」」」」
女の一人がいきなりこけたかと思うと、闇に引きずられていったのだ。全員はいきなり何が起こったのか分からなかったが、闇に消えた女の声が聞こえた。
「いやっ!来ないで!やめ、やめて……ぎっぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!」
肉の引きちぎる音や骨を砕く音が聞こえる。女の悲鳴が消えた後、何かが近づく音がする。女たちは既に男なんか思考の外であり、音のした方を見ている。そして路地裏を照らす電灯にその姿が映った時。
「「きゃぁぁぁあぁ!?」」
「「うわぁぁ!?」」
女二人は悲鳴を上げて路地裏のどこかへ消える。男はいきなりの悲鳴に驚いてしまうが、目の前にいる大きな化け物がこっち向けて走ってきたため、急いで起き上がって走り出した。
「おい、どっちが表だ!」
「確かこっちで合ってるはず!」
向かう先は表道。そこまでくれば恐らくもう来ないはず。それだけを考えて男達は走る。この道は迷路みたいになっているため、道に迷いかけるが、途中で自分を蹴っていた女たちの悲鳴と肉を食いちぎる音がしたが気にする暇もない。そしてもうすぐそこを2回曲がったら表道だ。
「よし!これで逃げ切ったら……あぁ……!」
「うそ……だろ……?」
目の前にいるはその怪物。体長は2~3メートル。姿はトンボの幼虫であるヤゴに酷似しており、体のカラーはダークグリーンがベースだろうか。黒のラインの引かれた緑色の複眼が怪しく光る。
男達は後ろに数歩下がって、すぐに後ろを向いて別ルートを探そうとするが、目の前にその怪物が2匹、目の前に降りてきたのだ。
「はは……、アハハハハハ……」
アフロヘアの男は漏らしたのか、股間を濡らしへたり込んでしまう。そして涙を流しながら壊れたように笑い声を出しており、路地裏から見える狭い夜空を見上げる。
「これが占い1位の結果かよ……」
「お、おい。諦めんなよ!」
スポーツ刈りの男は励ますが、状況はそれを許さない。
「キァァ……」
「カカカカ」
「ギリリィ……、カラララ……」
側頭部を前脚でつかまれ、嫌でも怪物と向き合う形になってしまったアフロヘアの男。そして男が生涯の最後に見たのは怪物……『メガヌロン』の血に汚れた口の中であった。
「嫌だ……。死にたくない……。うわぁ……、誰かぁ……あ゛あ゛あ゛!!!??」
「う、うわぁぁっ!?」
バキッ、グチャ、ミチッ、ブチブチ、ゴクン
そこに響くはメガヌロンたちが男を食らう音。骨を砕く音。その音も、男の悲鳴も、表には聞こえず、ただ路地裏に響き続ける。そして食べながらメガヌロンたちは路地裏に消えていく。そこに残ったのは男が着ていた、今はズタズタの衣服。あとは男の血でできた血の海だ。
メガヌロンがそっちに夢中になってるうちに、スポーツ刈りの男は急いで表道へと抜け出す。
近くに警察署があったはずだ。男は記憶を頼りに気力を振り絞って警察署へと駆けていくのであった。
メガヌロン達はその姿を複眼ではっきりととらえるが、追いかけようとしない。
まだ足りない。まだ食べないと……。
メガヌロンは空腹を満たそうと路地裏で食料を探す。だが決して表には出ない。出たら食料を探すどころではないからだ。
「本当なんです!信じてください!」
「嘘ね。その目は嘘を言ってるわ」
「ならその場所に行ってみればわかりますから!」
スポーツ刈りの男はあの後、偶然近くにあった交番に飛び込んでそこにいた小太りの婦警に事情を話したが、全く信じてもらえず困り果てていた。
「だから信じてくださいって!本当に友人が殺されたんですから!」
「そう言って路地裏に連れて行っていけないことするんでしょ!なら逮捕ね!」
「はぁ!?」
男はいきなりのことで唖然とするが、婦警の手には手錠が握られている。どうみても捕まえる気満々だったため、男はもう信用ならんと交番を抜け出す。
「ふん!これだから男は信用ならないのよ!」
「今巡回戻ってきました~」
婦警がそう威張ってる時にも見た目が20行ってるか分からないぐらいの童顔の婦警が入ってくる。小太りの婦警はすぐに笑みを浮かべてお茶を出す。
「お疲れ様。どうだった?外は」
「うーん。特に何とも。そういえばさっき、この交番から男が怒り心頭って顔で出て行きましたがいったい何があったんですか?」
小太りの婦警は溜息混じりでそのことについて話すと、童顔の婦警は驚いた表所を浮かべる。
「えっ!?なんで見に行かないんですか!?」
「だって男なんか信じられないし」
「……まあ本部の方に連絡は入れておきますね」
「そうしといて」
そして小太りの婦警は交番の奥に消えていく。童顔の婦警は本部の方に連絡を入れるが、『そんなのいるわけないだろ』と一蹴されてしまい、しょんぼりと落ち込むのであった。
先程交番を抜け出したはいいが、男は夜の渋谷をとぼとぼと歩きながら帰路についていた。
「あーあ。全くなんで誰も信じてくれないんだ……」
男はスマホで他の友人にも先程のことを話したが、『そんなのデマだな』と一蹴されており、溜息をもらしていた。
それにしてもさっきの怪物は何なのだろうか?男は友人の食われる姿を思い出して吐き気が催すが、何とか堪えて先程の怪物について考える。
まるでトンボの幼虫の『ヤゴ』に似た姿をしていたが、ヤゴは水棲昆虫のはずだ。だがそれが陸上にいるとなると、男はとあることが思いついて冷や汗が流れ始める。
「まさか……脱皮するのか……?……いや、ねえな」
嫌な予感を振り払うように頭を横に振るう。そして15分歩いたぐらいで、自分の住んでいるアパートに到着し、部屋の鍵を開けようとするが。
「まさか……、中にいないよな……?」
先程の恐怖からドアノブを握る手が硬直する。そして恐る恐るドアノブを捻り、そしてゆっくりと部屋に入って電気をつける。
「……いなかったか」
そして男はさっさと眠る準備をし、そしてベッドに入って電気を消す。
「さーて、寝るか」
男は布団に入って目覚ましをセットして眠る。
この時、部屋の窓を開けており、時折風が入り込んでカーテンが揺れ動くが。
「カララ……」
そこに何かいたような気がするのは気のせいだろうか?
「はーあ、疲れたー」
時間は夜の11時。童顔の婦警は今日の仕事を終え、私服姿になって帰路についてる途中であった。道は人盛りがあり、若者たちが盛り上がっているが……。
その時通り道に路地裏へと続く道を見つける。その道は街灯が20メートルに一本立ってるか立ってないかていえるほど暗く、そして気味の悪いところだ。
「そういえば……、ここら辺だったけ?男が殺されたってのは……」
女はその路地裏が気になったのか、その横道へと入り込む。
そして女は、一生路地裏から帰ってこなかった。
どうも、妖刀です。ついに新章突入!
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