インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
ここはIS学園。朝、食堂で一夏はシャルルと一緒に朝食をとっていた。
シャルルの正体がばれてすでに1週4日。一夏は毎日味わうシャルルのプレッシャーからか、前より少し痩せ細っていた。
「一夏、これもおいしいね」
「あ、あぁ、そうだな」
「どうしたの?顔色が悪いけど……」
この時シャルルが一夏の顔を覗き込むが、この時一夏にはシャルルが般若の顔で「何でもないよな?」と言ってるかのように睨みつけるため、一夏は冷や汗を流しながらも何事もなかったかのような顔を無理やり作り出す。
「だ、大丈夫だ、問題ない」
「そう、ならよかった♪」
そしていつものように天使の笑みを浮かべるシャルル。だが目が笑ってないせいもあって一夏は小さく悲鳴を上げそうになるが、これでもしバレたら自分が殺されるという恐怖でどうにか声を殺す。
この時のシャルルが目が笑ってないことに気付いてない女子達は、何か「はぅ……」等と言って顔を頬を真っ赤にしてぱたりと倒れ込んだりしてるが、当の2人にとってはどうでもよく、むしろシャルルはそんな女子達をゴミでも見るかのような目で見下していた。
「あ、いたいた。ねえ一夏!一緒に食べましょ!」
「ん?あぁ、鈴、か。それに箒、セシリアも」
この時奥から声がしたため一夏は振り返ると、そこには盆を持った鈴、箒、セシリアの3人がおり、一緒に食べようと近寄ってきたのだ。この時一夏はチラリとシャルルの方を向くと、シャルルが3人にばれないような睨みで一夏を睨みつけていた。それを小さくうなずいた後、一夏は3人の方を向き直す。
「あぁ、うん……。ごめん、シャルルと食べたいんだが……」
「あんたねぇ、前もそう言ってたじゃない。何時なったら私たちと食べるのよ?」
「そ、それは……」
一夏は鈴の指摘にキョロキョロと目を泳がし、オドオドとした仕草をするため、いつものハキハキとした一夏じゃないことに呆れた鈴は溜息を吐く。
「はぁ……もういいわ。箒、セシリア、別のとこで食べましょ。あいつ、それがいいみたいだし」
「だ、だが鈴……」
この時箒が何か言いたげだったが、鈴に無理やり引っ張られる形でその場を後にすることとなり、セシリアはチラリと2人を一瞥した後、鈴たちに付いて行く。
「り、鈴……」
一夏は遠くにな晴れていく3人に手を伸ばそうとしたが、この時に背中からの殺気を感じ、すぐに振り返る。こそには殺すと言わんばかりの目で睨みつけるシャルルが、フォークに刺していたウィンナーをグチャと潰している光景であった。
「ねえ一夏」
「っ!?」
ああ、またか……。
この後何が起きるか分かった一夏の目に、生気が無くなるのであった……。
「ったく、何なのよ!一夏はシャルルとばっかりご飯食べて!」
朝食食べ終わった後、鈴は浅野一夏の行動思い出してイライラしていた。ここ最近一夏にずっと断られてばかりで、「後日埋め合わせするから」と言うも、全くその気配がなく、一夏のあの態度が気に喰わないとただイライラするばかりだ。
だけどいったい何故ああなったのか……。ただ今までの一夏と比べてあまりの変わりように首を傾げる鈴。
一番思いつくのはシャルル・デュノアだが、どういう関係なのだろうか。まさかいけない関係とか……。
それを否定するかのように顔をぶんぶんと横に振る鈴。そして溜息を吐いた時だった。
「あ~いたいた~」
「ん?」
この時後ろの方から間延びした声が聞こえたため、何だろうと振り返ると、ダボダボとした袖に間延びした言い方を持つ少女、布仏本音が鈴の元へと走ってる……のだろうか?とりあえず鈴の元へと向かっていた。
「もうリンリン探したんだよ~?」
「リンリン言うな!……えっと確か布仏本音だっけ?いったい何の用なのよ?」
一体何か話しかけられる事でもしたのだろうか?本音がニコニコとしているため、鈴は少し身構える。
「あのね~おりむーが今ピンチだから助けてあげて~」
「……は?どういうこと……」
一夏がピンチ?鈴はいきなりの告白に目が点になってしまう。
「今は時間がないから~、昼休みに生徒会室に来てね~」
「あ、ちょ、待ちなさい!」
本音を追うとした鈴だったが、朝のホームルームが始まる余鈴がなったため、渋々諦めて自分の教室へと向かうことにするのであった。
「一夏がピンチってどういう事よ……」
そのつぶやきは誰にも聞こえることなく、消えるのであった……。
その後のホームルーム。1組ではいつも通り生徒たちがそろっていたが、この時真耶が少し嬉しそうな顔をしていることに大体の生徒が首を傾げている。
何か美味しいものでも食べたのだろうか……。そんなことを考えてる生徒が大体であったが……。
「えー、今日はいい知らせがあります。篠栗君が一命をとりとめて、現在IS学園併設の病室に運ばれています。だからお見舞いに行く人は、私たち教師に許可を取っていってくださいね」
「マジで!?」
この時一夏は航が助かったことに安心したことと、すでに学園の病院に搬送されていたことに驚きを隠せないでいた。先程まで死んだ魚のような目をしていたのに対して、今はしっかりとキラキラとした生きてる目をしている。
この時千冬は大声出すなと注意しようと思ったが、流石に酷かと思い、出席簿をひっこめる。
なお、その後はいつも通りのホームルームが続くのであった。
「さて、今日の怪獣学は前回の続き、メガヌロンね」
ここは一組。現在授業は怪獣学であり、燈が教卓の上に教材をすでに載せている。
「まあ今日の授業はテレビを見てもらうわ」
何故に?と生徒たちは疑問を浮かべた表情で燈を見るが、燈は現在電子黒板の設定で生徒たちから目を離している。
「……っと、後はパスワードを入力してと……よし。今から映すわよ」
そして電子黒板に映し出されたのは、ヘリコプターからの映像だろうか、都会の上空を空撮されてる風景だった。
これがいったい何なのだろうか。生徒の一人が挙手する。
「先生。これって今回の授業と何の意味があるんですか?」
「これ?今からメガヌロンがいる渋谷に自衛隊が駆除に向かうのよ。それも途中CM抜きの生放送をね」
「マジかよ……」
「あとこれ、他の教室も全員見てるから」
まさかの生放送、しかも全学年が見てるということにに目を点にする生徒たち。だがそんな生徒達をよそに、空撮カメラは周り続け、市街地に隊員とISが集まってるが映される。
そしてヘリに一緒に搭乗してる女性アナウンサーが何か言ってる。
『現在午前8時50分。現在渋谷の街はいつも通りのにぎやかさは消え、とても閑散としており、自衛隊はISを4機も使うという大規模作戦を実行しようとしています!そもそも虫を駆除するのにISを使用するとか男の考えていることはまったくわけがわかりません!』
「「「「「……」」」」」
このアナウンサーはおそらくメガヌロンのことを余り知らないのであろう。ゆえにこのような発言をするのだろうが、1組はこの発言に引き攣った笑いを浮かべている。
その後アナウンサーがなんかいろいろ言っており、今回の作戦指揮官がこのクラスの鷹月静寐の父親だったりで周りが驚いていたが、そんなのは過ぎて現在9時となる。
自衛隊の作戦開始時間だ。
『現在午前9時。ついに自衛隊が渋谷の路地裏へと入っていきます。この渋谷一帯はすでに警察官によって封鎖されており、私たち取材班はこれを独占取材ーー」
そう言ってる間にもカメラはアナウンサーをさっさと画面から追いやって、上空からの渋谷の光景を映し出す。
まあ今入ったばかりともあって特に発砲音も聞こえず、何を写してるんだと思えるほどに特に何もなかった。ただ、いつも人がたくさんいてにぎやかなはずの渋谷に誰もいないことが不気味であった。
『ちょっと私を映しなさいよ!』
その時アナウンサーの怒り気味の声が聞こえ、カメラがそちらに向けると、そこには歳不相応の頬を膨らませて『私、怒ってます』という痛い行動をとるアナウンサーの姿が映し出される。
これには視聴者も白い目でそれを見ており、そしてゴホンとアナウンサーが咳ばらいをした後、アナウンスに入ろうとしたが何かあったのか、ディレクターらしき男と言い合ってるようだ。
『え?自衛隊が無許可だから下がれってうるさい?そんなの女の言うことが聞けないのか?と言って黙らせておきなさい!……ゴホン、え~、現在ーー』
「ちょ、無許可なのかよ……」
この時教室に一夏の声が響く。燈が「ははは……」と苦笑いを浮かべており、生徒たちもあまりの横暴な態度に溜息しか出ない。
そして約10分ほど、ヘリは作戦範囲の空域を旋回するように飛び回る。
この時偶然ビルの屋上にメガヌロンがビルのフロアに向けて穴を掘ってるところを偶然カメラは捉えた。
『見てください!あれが今回の駆除目標の虫です……ってあんなにでかいの!?』
そこに映っていたのは2m級のメガヌロンだ。近くにある給水塔を比較するとそれなりに大きいことがわかる。
穴を掘っていたメガヌロンはヘリのローターの騒音に気付いたのか、穴掘りをやめて顔をヘリの方へと向ける。
『キシィィィィ!!!』
その時だ、威嚇するかのように両腕を高く振り上げてヘリコプターを睨みつける。
するとどうだ。地表ではマンホールの蓋が吹き飛ぶと同時に、ゴキブリの如く大量のメガヌロンが湧きだしたではないか。
それと同時に路地裏でも発砲音がほぼ一斉にし始め、場所場所によっては白煙でそのエリアが全く見えなくなってたりと、状況が分からない方向へと向かって行く。
『な、何なのよ……いったい何なのよ!?』
いきなりのことで狼狽するアナウンサー。だがそんな状況でもカメラマンはカメラを回すことをやめず、本部の方に取り残されていたのか、救助される人々が10名ほど集まり始める。
そして本部にもメガヌロンが10数匹湧き、残ってる隊員がそれに応戦を始める。
そしてどうやら本部に1機ISが残されていたのか、それがマシンガン等で近づいてくるメガヌロンに攻撃を仕掛けるが、どうやらメガヌロン用の装備をしていないのか、ドンドンとジリ貧になっていく。
「そんな、ISが……!?」
この様子が信じられないのか、生徒の数人は絶望に染まった顔をしているが、他の生徒はこんなに大量のメガヌロンを見て、それに対して絶望の表情を浮かべているのだろう。
だがその時、路地裏から抜けてきたIS数機が戻ってきて、どうやらメガヌロン用の装備をしているのか、それで2m級のはどんどん仕留めはじめたのだ。
実際普通科の隊員もそれに負けておらず、特殊武装等で次々と仕留めていく。パンッパンッ、と銃声が響く中、いきなり地響きが起きたのか隊員はバランスを崩し、メガヌロンも動きを止める。
ヘリコプターから空撮してるおかげで自身の被害はなかったが、いったい何があったのか……。カメラマンが注意深く周りを見渡していると。
『ギィィアァァァォォォォ!!』
本部近くのアスファルトを砕き、大きな地響きを起こしながら現れたのは、体長15mほどある超大型メガヌロンだった。
『きゃあああああ!!』
この時アナウンサーの悲鳴が響く。
IS学園生徒たちは映像をただ茫然とした表情で見ていた。これは現実なのか?もしかしたら特撮などではないのか?と頭の中で否定するも、やはりこれが現実とわかってるのか、誰も何も言わない。
「な、何よ、これ……。ここまで大きくなるの……!?」
その中燈は虫でありながら、ここまで大きくなるメガヌロンに驚きを隠せないでいた。そもそも今の世の中、昆虫を2mにすることが難しい理由は古生代は酸素濃度が今より濃く、なおかつ地球の引力が今より低かったと言われているが、その中で2mになるだけでもすごいのに、それの5倍もある大きさとなるとどういう体の構造になっているのか気になってしまう。
そんなことを考えてる時だ。再び先程と似た轟音が響き、カメラが音のなった方を向けると、そこには先程現れた巨大メガヌロンまではいかないが、10m級と言うべきだろうか、もう1体の大型メガヌロンが渋谷駅方面からアスファルトを砕いて地表に出現したのだ。
『ギィィィィィアアアア!!!』
そして大きいせいか速度が落ちているが、それでも時速40kmは出ているのではないのかという速度で自衛隊がいる本部の方へと向かってきている。
この時、本部の方に向かってきている巨大メガヌロンの頭の上には3m級のメガヌロンが乗っておりそれがヘリの方に頭を向けており、ヘリも何か危ないと思ったのか、高度を上げ始める。だが、10m級も3m級もヘリから目線を逸らさない。
『あの虫は何をしようというのでしょうか。頭を項垂れさせて、その上にいる小さい方が必死にしがみついてるようにも……、ん?よく見たら大きい方の背中に1匹小さいのが引っ付いてるーー』
その時、カメラは10m級が勢いよく頭を振り上げ、そして3m級のメガヌロンがヘリに向けて投げ飛ばされる光景を捉えていた。そして大きく揺れるヘリコプター。そしてヘリコプター内は悲鳴が響き渡り、開いてるドアからいくつか機材が落ちる。
『いったい何が……きゃあああ!!』
カメラマンはいったい何があったのかそっちにカメラを向けると、そこにはヘリのドアからメガヌロンが入り込もうとしてる姿であった。
「「「「きゃああああああ!!!!」」」」
メガヌロンのドアップ。これだけで生徒たちから大音量の悲鳴が上がる。ある者は掌で顔を覆ってみない様にしたり、ある者は驚いて後ろにのけ反り、そのまま椅子から落ちるもの。
その中で一夏は完全に動きが止まっていた。ドアップの時に悲鳴が出せず、ただ恐怖で動きが止まっていたのだ。
その間にも映像では悲鳴と断末魔が響き、そしてメガヌロンがヘリのパイロットの頭を食いちぎる。
余りのショッキングな光景に何名か気絶し、もう泣き出しそうな生徒が多数いる。
すでにカメラマンもやられたのか、カメラは床に投げ出され、そして外の方を映しているが、目の前の光景がぐるぐると回っており、恐らく操縦不能で墜落しようとしてるのだろう。そして地表近くになったアラームが聞こえる中、ただ恐らく生き残ってたアナウンサーの悲鳴が聞こえ、そして一瞬大きな音がすると同時に、画面がブラックアウトした。
「あ、墜ちた」
誰が言ったかわからないが、テレビ局のヘリが撃墜されたのだ。しかも飛べないはずの虫によって。
この時教室にいた全員はあまりの出来事に放心。
その時、燈のスマホからバイブが鳴ったため誰かチラ見してみると、燈は目を見開き、そして一回教室を出て電話に出る。
「はい、家城です。……はい。……っ!?」
この時燈の顔はどんどん真っ青になっていく。そしてスマホでの通話を終えた後、再び教室に戻って焦ってる表情で生徒たちの方を向く。
「皆、今から自習ね!」
そして燈は急ぎ足で教室を出ていく。何があったのか、それは教室にいる生徒たちでは考える気力もないのであった……。
始まるは蹂躙。その時、人は何を見るのか。