インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
では、怪獣学、どうぞ!
それから休み時間に入り、一夏と航は周りの視線から逃げるかのように屋上へと来ていた。そして二人はそこにあったベンチに腰を掛け、途中で買った缶ジュースのプルタブを開ける。
「一夏」
「何だ?」
「千冬さんの知り合いって、もしかして家城さんか中條さん?」
「いや、違う。だけど確か機龍隊だっけ?その人と知り合いなんだとよ」
そう言って一夏は缶ジュースに口を付ける。
「ところでその家城さんと中條さんってどんな人なんだ?」
「ああ、機龍と関わりが深い人たちだよ。確か家城さんは機龍を直接操縦したって言ってたな」
「マジで!?」
一夏はベンチから立ち上がって驚いた表情で航の方を向く。
「本人が言ってたからそうなんじゃない?」
一夏はすげーって表情をしており、航の人脈の広さにも驚いていた。
「そういえばお前、ゴジラと機龍とモスラが戦ってる映像のディスクを持ってたよな。あれ、貸してくんね?」
「何でだ?」
航は片眉を上げて疑問の表情で一夏を見る。
「実はさ、千冬姉から『航から戦いの映像ディスクを借りてきてくれないか?』って言われてさ……」
「ディスクさえあればコピーのコピーでいいならできるけど。それでいいか?」
「うーん、あとで千冬姉に聞いてみる」
そしていろいろ話してるうちに時間が危うくなってきたため、二人は急ぎ足で教室へと戻るのであった。
そして次の授業にて。
「えっと次は……、ん?怪獣学って何だ?」
一夏は時間割に書かれていた怪獣学という単語に首をかしげる。
そして扉が開き、担当の先生が教室に入ってくる。
「え?」
この時航は入ってきた教師の顔を見て驚きの表情を浮かべる。
黒い瞳に黒髪のショートヘアーの日本人の先生教師であるから20代だろうが、パッと見10代後半に見える。そして先生は教壇の所に着くと、ぺこりとお辞儀をした。
「みなさんこんにちは。この怪獣学を担当する
「せんせー、なんで怪獣学とかいう学科があるんですかー?」
一人の生徒が挙手をして質問をする。燈は笑顔で
「それはですね、ゴジラが消えてすでに40年が経ちますが、決して怪獣が現れないとは限りません。怪獣が現れた場合は通常は自衛隊が担当しますが、それでも人手が足りないときは
教室にいた全員はその言葉でざわめき、教室が騒がしくなりはじめる。
「皆さん、ここはそれも学ぶところなんですよ?しっかりと学ばないと……、死んでも知らないよ?」
燈が笑顔でそう言った時、教室の温度が少し下がったような気がした。だがこの中ですごく楽しみにしてそうな顔をしている人たちがいる。航と一夏だ。二人は既にシャーペンを持っており、ノートと教科書は既に開いている。
燈はそんな二人を見たとき、少し嬉しそうな表情を浮かべた。
「じゃあ、すぐに始めてほしそうな生徒もいるみたいだから始めましょうか」
そう言った後電子黒板にいろいろと画像を展開し始める燈。そこに写っていたのは古ぼけた白黒の写真が多数だが、その中で威容を放つ大きなものが画像一つ一つに写っている。
周りは夜のため真っ暗のはずだが、地から照らされる光によって夜空が照らされ、その巨体が街に浮かびあがっていた。周りにある建物よりずっと背が高く、まるでタワーが立ってるようにも見えた。だが他の画像には尻尾や背びれが写っており、そして上の方には顔が見えた。
背びれはまるでサンゴのように枝分かれしており、その太い尻尾とあしはとても力強い印象を見せつける。そしてその目は、人間を見下すかのに下を見ていた。
そして燈はそこそこの画像を出した後、生徒の方に向き直り説明を始める。
「これが世界で一番最初に現れた怪獣、ゴジラよ」
「これが……」
一人の生徒が言葉を漏らす。名前を知っていても皆の知っているゴジラは2003年に東京に現れた個体であり、一番最初の個体を知るものはほとんどいないのだ。一番最初の個体は2003年に現れた個体と大きさはあまり変わらないが、その生気のない目からも分かる禍々しさが出ており、何人か生徒は頬が引きつってる。
「現れた年は1954年で、身長50m体重約2万キロの怪獣ね。生体としておそらく夜行性。魚や牛などを食べる肉食とまでわかっているわ。
この頃はアメリカで原水爆の実験が数多行われており、ビキニ環礁のアメリカの幾多による核実験で、生まれたとも進化したともされるわ。その後ゴジラは小笠原諸島、大戸島に上陸を果たすわ」」
そういって燈は新たな画像を出す。そこは小笠原諸島一帯の地図であり一か所だけ赤い×印がされていた。
「ここが大戸島。そしてゴジラがこの近海にいたころ、色んな船が行方不明になるという事件が多発したわ。そして数日後には島に上陸、そして村を幾つも潰して回ったため巨大生物の仕業とされて、ここに当時生物学者の山根恭平博士ら一行が向かうの。そしてこれが、当時山根博士らが撮った写真よ」
そこに写されていたのは、山越しに顔をのぞかせるゴジラの姿であった。遠くから撮られた写真であるが、山から顔が大きく出ており、それを生で見た人は何を思ったのだろうか。
そして次の写真はゴジラが海に消えた、足跡だけの写真になってる。
「その後ゴジラは大戸島から消え、フリゲート艦隊による爆雷攻撃が行われるけど、ゴジラはその後も日本近海に現れてシーレーンを脅かすわ。その後ゴジラは2度東京に上陸。最初は品川を中心に街を蹂躙し、2度目は芝浦に上陸、そして新橋、銀座と移動していき、ゴジラは永田町へと入った後に国会議事堂を破壊。その後上野、浅草と移動して隅田川を南下し、東京湾に向かっていったの」
そう説明しながら燈は、今のその場所の写真と、当時のゴジラ上陸の際の写真を比較するように出していく。
ただこの時、何人かの生徒がこのルートに見覚えのあるのか、目を少し見開いたりしてる。
「そして奇しくも、このゴジラの進行ルートは1945年の東京大空襲でのB-29の進行ルートとほぼ一致していたの。右の写真が東京大空襲のもので、左がゴジラ上陸の際の写真よ」
そこに映し出したのは東京の上空からの写真だが、2枚とも焼け野原になった場所があまり変わらず、それに気づいた生徒たちがぞっとした顔で画像を見つめた。
一夏もその1人だ。ここまでの情報を知らなかったため、その偶然の一致に何か裏があるのではないのかと勘ぐるが、いまいちそれがわからない。というかわかっていたら今頃苦労しないだろう。
「そして東京湾にゴジラが消えた後、被害者は次々と増えていったわ……」
「え、どうしてなんです!?」
生徒の1人が驚きの声で聞くと、燈は重苦しい雰囲気を出しながら口を開いた。
「……放射能よ。ゴジラの通った後は高濃度の放射線が漂っていて、それによって二次被害が増えていったの。これによって死者の増えたことによって、おそらく3から5シーベルトは出てると思われるわ。あ、シーベルトについて軽く説明するわね」
その時電子黒板にいくつもの数字が出てきた。それは「日常生活における被曝量」と「健康被害をもたらす被爆量」と書かれており、日常生活で一番低いのが「胸部X線の集団検診で受ける被曝量」の0.05ミリシーベルト。そして高いのは「放射線業務従事者の年間被曝の上限」と書かれた50ミリシーベルトと書かれている。
だがこの50ミリシーベルトは健康被害をもたらす被爆量の一番低いところにも入っているのだ。そして6シーベルト以上が放射能での致死量となっている。
「放射能については皆もニュースとかで聞いたことあるでしょうけどこのように、放射能は微量であれば問題ないけど、多量だとどんな毒よりも恐ろしいものになるわ」
今まで日本は何度も放射能の被害に見舞われてきた。原爆やゴジラを初めとしたさまざまな怪獣に原発。これらの被害にあいながらも日本が何度も立ち上がり、発展を行っていった。
スクラップ&ビルド。これで日本は成り立ってるのである。
まあ先ほどの説明をさっさと電子黒板にまとめたものを生徒たちが書いてるが、その中で航と一夏が一心不乱にノートに板書していく。隣にいる女子生徒はそのシャーペンの進める速度に二度見を起こしているが、2人はそれを一切気にしない。
その間にも燈の説明は再開した。
「そしてゴジラによる被害が拡大する中、その状況で立ち上がったのがこの人、芹沢大助博士ね」
そして映し出された白黒写真には、右目を眼帯で隠す白衣を着た1人の男性が写される。
「彼は第二次世界大戦によって片目を失い、それによって婚約者との婚約を解消。その後は自身の研究所で、酸素に関する研究をずっとされていたと言われてるわ」
「先生、そんな情報どこで得たんですか?」
この時一夏は挙手して聞いた。一夏は実際このことを知っていたが、それは口上で聞いて知ったものであり、実際の出どこが気になったのだ。
「ああこれ?山根恭平博士が書いた、「芹沢大助という男」という本よ。今は絶版だけど、芹沢博士のことを書いた伝記のようなものね。ああそれと、山根博士の娘さんが芹沢博士の元婚約者よ。その娘さんのお孫さんが、私の言ってた大学で教授をしているわ。っと話がそれたわね。その後博士はゴジラを葬るために東京湾へと向かうわ」
そして燈が画面を操作して次の画像を出す。そこに写っていたのは、潜水服を着る芹沢大助と、もう1人の男尾形秀人の姿だ。そして芹沢大助の手には長さ40cmから50cmの物体を持っており、彼の表情はとても険しそうだ。
「これはゴジラを葬ることができた、オキシジェン・デストロイヤーという兵器を持った芹沢博士の写真よ。公に言うなら、これが彼の最期の写真というのかしらね」
「オキシジェン・デストロイヤー……?」
「そう。完全にどのような代物か完全にわからないけど、ただ博士の持ってた大きさ、砲弾大で東京を一瞬にして死の街にできるともいわれてる代物よ。それの使用によってゴジラは骨と化し、博士もオキシジェン・デストロイヤーの研究内容を完全に秘匿するため、ゴジラと共に海に消えていったわ。ただ……」
「「「「ただ?」」」」
「ただその後日本には幾多の怪獣が現れるわ。そして1999年、日本政府は現れる怪獣に対して対怪獣要兵器を作り上げるために、オキシジェン・デストロイヤーで骨になったゴジラの骨を千葉県房総半島沖にて回収。ただその同年、日本に2頭目のゴジラが現れたの。あ、このゴジラとその骨についてはまた別の機会にちゃんと紹介するわ……っともう時間ね。じゃあ続きはまた今度」
既に時間は授業の終了1分前にまでなっており、生徒の殆どがやっと終わると飽き飽きした顔をしていた。だが航と一夏はもう終わるのかと少し不満そうな顔をしており、そしてチャイムが鳴って燈は出て行く。
航はそのあとすぎに教室を出て行き、燈の所へと向かった。
「あら航君、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもありませんよ。まあ、とりあえずお久しぶりです」
「うん、お久しぶりだね」
そう言って燈は笑みを浮かべる。
「それにしても航君、いい勉強ぶりだったね感心したよ」
「そりゃあ、昔っから燈さんに怪獣のことをいろいろ話してもらってたらこうなりますよ」
そう言ってはははと笑う航。
「君みたいに本気でこの授業に付き合ってくれる子だったらいいんだけど、この授業を真剣に聞いてくれる生徒、何人いたかなぁ……」
そう言って遠い目をする燈。
ゴジラが消え、そして生まれたこの授業は最初は自衛隊の方で行われていた。そしてISが登場してそしてIS学園でこの授業の講師をすることになって嬉しかったが、受ける生徒の態度はほとんどが最悪。まさにIS神話に酔ったともいえる女子たちだらけで、殆どが話を聞いてない。
「あ、去年は更識楯無ちゃんとか代表候補生でもトップクラスの子たちが真剣に聞いてたって感じだったな」
楯無の名前が出てきたときに片眉がピクリと上がる。そして顔を小さく縦に揺らして何か納得した表情を浮かべていた。
そして燈の話してることはどんどん愚痴になっていき、航はそれをうまく聞き流す。そして話題を変えるためにとあることを聞いてみた。
「そういえば茜さんは元気ですか?」
「おばあちゃん?元気元気、と言いたいけれど、この前ちょっと病院に入院しちゃったな」
それを聞いたとき航は驚愕し、そして不安そうな表情を見せる。
「えっ!?なら今度見舞いに行きますって伝えといてください」
「わかった。あ、もうすぐ次の授業が始まるから教室に戻る様に」
「はーい」
そう言って別れた後に航は教室に戻っていく。周りにはたくさんの女子がいたが、それを無視して席に着く。そして次の授業の先生が入ってきて授業が始まるのであった。
久々に怪獣学かいたわぁ……