インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
では新年最初の更新をどうぞ!
メガヌロンにより渋谷が水没してから1週間たち、あのショックを受けながらも教室はその事件の前の雰囲気を取り戻しつつある、とある日のことであった。
「鷹月さん、大丈夫?目に隈ができてるけど……」
「ん……、大丈夫、よ……」
「いや、とても大丈夫そうに見えないんだけど」
「ははは……心配してくれてありがと、谷本さん……」
彼女は友人である谷本癒子に笑みを浮かべるが、癒子からすればとても痛々しいほどに無理してるようにしか見えず、困り顔を浮かべる。
そしてなんか話しかけようとした時だ。
キーン、コーン、カーン、コーン
「あ、チャイムが鳴ったから、また後でね……」
「鷹月さん……」
そして彼女、鷹月静寐は自分の席に戻り、次の授業の準備をするのであった。
鷹月静寐はこの数日間まともに寝ることができなかった。おかげで目の下にはメイクでどうにか隠そうとしても出てしまってる隈があり、そして話すときも常に上の空。それが原因で周りからとても心配されることが多くなってきている。
なぜこうなったのかというと全ては1週間と1日前の夜に遡る。
それはあの事件の前日、父である仁から『仕事が終わって丁度休みが重なったら、美味しいものでも食べに行こうか』と電話越しに言われたのだ。
いきなり何言ってるのだろうかと、いきなり死亡フラグめいたものを言って何かの悪ふざけかと思っていた。だが厳しいが優しい、片親でありながら自分をしっかり育ててくれたそんなふざけることを言うのが苦手なことは知っている。
静寐は何か不安を抱えながらもその日は眠りにつき、そして次の日の怪獣学でのことであった。
『今回の作戦にて隊長は鷹月仁一尉、そしてーーー』
「なんでお父さんが!?」
「え、どうしたの?」
静寐の声に全員が彼女の方を見る。
授業にて渋谷での生中継による映像が出されていたが、そこで彼女からしても何か苛立ちを感じるアナウンサーの口から仁の名前が出されたのだ。
「た、鷹月さんどうしたの……?」
「先生。さっき出た鷹月仁は、私のお父さんなんです」
「え、本当に?」
これに周りが一気にざわめき出す。
まさか自分の父がこのような作戦に参加しているとは思わず、この時とある不安がよぎってしまう。
『仕事が終わって丁度休みが重なったら、美味しいものでも食べに行こうか』
まさか父はこの作戦があるから、あんなこと言ったのではないのか?
そのため体が震えだす静寐。
「で、でも今の私では向こうに何か言うこともできないわ……。だからお父さんを見守ってあげましょ?それが貴女に出来る唯一のことだから、ね……?」
「先生……」
そしておとなしく席に着き、授業は再開される。
その後は上空からの映像中継で、渋谷上空を映される。それから10分ほど経った後、屋上にいたメガヌロンを撮影し、そしてそのメガヌロンが鳴くくのを皮切りに所々で発砲音が鳴りだした。
それからどれぐらいたっただろうか、司令部はすでにメガヌロンだらけになっており、そして撮影しているヘリもメガヌロンによって墜落。
「あぁ!」
そしてブラックアウトする画面。
静寐はこの後の情報が分からなくなったことに恐れを抱いた。そして授業もいきなり自習となり、生徒の大半がトイレに向かうなり、保健室に向かうなりと大惨事となるが、静寐は、それより自分の父の無事を祈った。
そして翌日、食堂に備え付けのテレビを見て、彼女はテレビを見て絶望した。
『謎の昆虫が現れて数時間後、現在渋谷は完全に水没しておりーー』
ただペタリと床にへたり込む静寐。この時に手に持ってた盆を落として朝食をこぼしてしまうが、彼女にとっては些細なことでしかない。周りにいた女子達はそんな彼女を奇異な目で見ているが、クラスメイトの子数人が急いで駆けつける。
その後は朝食を食べる気力もなく、そのまま授業を受けるが頭に内容が入らず、千冬の授業時間でもボーっとしたままだ。
「鷹月。……鷹月!……返事をしろ!」
その光景に業を煮やした千冬は出席簿で彼女の頭を叩く。すると静寐がまさか泣き出し、それで思いっきりうろたえる千冬。
その後彼女は早退をし、寮の自室のベッドに横に倒れるが、ただ不安が彼女の胸をかき乱す。
「父さん……」
あれから父は無事に帰れたのだろうか……。だが電話をかけても一切出ず、メッセージを残しながらも何回も掛けるも、父、仁は一切返信をすることはなかった……。
あの放送事故の後、燈は上層部から大目玉を喰らい、怪獣学を中止。そして他の先生の手伝いということを最近行っていた。
周りの教師から「生徒に精神的ショックを与えた駄教師」として白い目で見られながらも、自衛隊から送られてきたメガヌロンの情報をまとめていた。
いつもは眼鏡をかけていないが、今回は珍しくしており、彼女の手は忙しそうにパソコンのキーボードを叩いている。
「……ふぅ。大体こんなものかしら。えっと……」
彼女は今書いた分の資料に目を通す。
『メガヌロン。体長50センチから10mまで多種多様。見た目はトンボの幼虫であるヤゴに酷似しており、過去には1956年、熊本県阿蘇にて亜種と思われる個体が確認されている。
その歴史はとても古く、古生代の石炭紀やペルム紀の地層から出土。中国、ドイツで化石が発見されており、その成虫であるメガニューラは中国で一か所に大量に発見されている。しかも驚くことに、中生代のジュラ紀や白亜紀の地層からも発見されており、それらはまだ調査中。
メガヌロンは湿ったころに住み、歩行するときに足音を立てず、尚且つ壁や天井を移動ができ、そして下水道も移動が可能のため、探す際には相当な警戒をしなければならない。
そして他のメガヌロンとコミュニケーションが取れるらしく、中生代にいたラプトルみたいな集団行動による狩りも行えるとの報告もあり。そのため、戦闘を行う際は必ず集団で。孤立した場合、ISでもないと逃げれる確率が極端に低くなるため、それだけは避けたい。
メガヌロンの体はタングステンまでとはいかないものの硬い外皮があり、特に頭部に至っては
ISに限ってはハイパーセンサーを騙す天然のジャミングを行えるため、専用のセンサーを使わなければならず、そして生息場所が路地裏などのISの最大の長所である“機動性”を活かすにま難しい場所にいるため、マシンガン等で牽制をし、通電性近接ブレード等で仕留めるのが効果的である。ただし己も濡れている場合は感電する可能性があるため注意。
他には
そして最も恐ろしいのはその機動力や爪でもなく、牙から出る毒で、その効果は神経毒、出血毒を足したものに近く、尚且つ細胞の破壊などを行うため、血清を使っても回復の見込みは低いだろう。
それによって、IS男子搭乗者の片割れである篠栗航は瀕死の重傷、そして手術後も意識が戻らず、現在意識不明のまま病室に安置されている。』
ここまで書き終わり、一息吐く燈。肩も凝ってるせいもあり、首を動かすとゴキゴキと音が鳴った。
「さて……とりあえずこれでひとまず完成ね……。はぁ……地味に疲れた。コーヒーでも飲もうかしら」
長時間パソコンの前にいたせいか目頭を揉み、そして立ち上がろうとした時だ。
「はい、どうぞ」
「あ、山田先生……」
そこには山田真耶が立っており、彼女は燈の席にコーヒーの入ったカップを置く。
「お疲れ様です、家城先生」
真耶は周りの教員と違って、いつも通りの幼く見える笑みを浮かべる真耶。だが燈からしたらその笑みが何か救いに見えて、そして自然と笑みが浮かび始める。
「すみません、わざわざ持ってきていただいて……」
いえいえ。いつも忙しそうにしてるのに私はこれぐらいしかできませんから……。そして家城先生も大丈夫ですか?」
「え、何がですか?」
「っ……!先生、最近眠れてないそうですね」
「あぁ……大丈夫よ。別に仕事に支障は出てないし」
「ですけど……」
「どうしたの?」
この時燈は気付いていないが、彼女は最近眠れておらず、化粧でごまかしているものの、目元にはクマができているのだ。だが働きぶりがいつも通りのため、歩いてる時にいくらかふらついてる時が起きてるのだ。そのため何回か階段から転げ落ちそうになったりとしてるが、彼女はそれを全く意識していない。
そのため燈は真耶の言う言葉の意味がまったく分からず、首を傾げる。
「あのですね……。最近、先生が恐らく寝不足のためか、何回か階段から落ちそうになってるのを周りが目撃していうんです。何回かありませんでした?生徒から手を掴まれたということが」
「えっと……あぁー、たぶんあったかも」
「たぶんって……」
「ごめんね、あまり覚えてないのよ。今のこれが忙しいから」
余りにも適当な返事に困り顔を浮かべる真耶。いったい何が彼女をここまで動かすのか……それが気になるが、真耶はそれと同様に何か怖いという感情を持つ。
実際先程、パソコンとにらみ合いしてる時はその迫力と気迫で近づくことができず、手にコーヒーカップを持ったまま彼女の近くにいたままだったのだ。それでやっと彼女が休憩に入ったから話しかけることができた。
そして真耶は意を結して彼女に話掛ける。
「……家城先生。何でそこまでして頑張れるのですか?」
「いきなりどうしたの?」
「だって普通の教師だとそこまで頑張ったりなんてできませんよ……。さっきまでの貴女の表情が怖かったですし……」
少し怯えの表情を浮かべて意気消沈する真耶を見て、燈は小さく微笑みを浮かべ、そして口を開く。
「山田先生。少し私に付いて来てくれませんか?」
「え、あ、はい」
そういって燈は立ち上がり、職員室を後にする。真耶はその後を付いて行き、そして歩くこと約10分弱。階段を上がり、扉をくぐって出たところは学園の屋上だった。
「ここは屋上ですよね。なぜここに?」
「よし、誰もいないわね……。まあ誰にも聞かれたくないからですかね」
「は、はぁ……」
そして真耶はベンチに腰掛け、燈は屋上のフェンスに肘をかける。
いったい何を話すのか。真耶の頬を一筋の汗が滴る。
「真耶ちゃん、私の祖母のこと知ってるよね?」
真耶ちゃん。彼女が仕事モードでなく、燈としての状態を表してる時だ。
「あ、はい。たしか機龍隊のお方でしたよね?」
「ええ、そうよ。まあ正確に言うなら特生自衛隊で機龍隊所属だったんだけどね。それで私の祖母、家城茜は2003年、三式機龍で中破しながらもゴジラを退けた後、街の復興のために避難地域へと赴いたわ。そこはまさに地獄絵図……いや、避難は大体終了したいたから怪我人や死者は少なかったらしいわ」
「え、私が聞いたのは市民の死者、けが人はいなかったって……」
「そんなの新聞書いてる人が勝手に書いたことよ。そこで祖母は瓦礫の下に埋もれた人を助けたり、逃げずにゴジラに近づいて死んだ市民が撮った映像とかを押収したりしてたらしいわ。
そしてある日、食料や水などの物資を運ぶ任務で避難場所となってる体育館などに行くと、そこはたくさんの人がいたらしいの。その大半はゴジラに怯え、そして還らぬ人を悲しんだりする人たちがたくさん。その中にはゴジラ襲撃で怪我した人もいたって言ってたわ」
静かに言う燈に頷いて相づちを打つ真耶。
「その中、とある夫婦にお婆ちゃんは会ったの」
「とある夫婦……?」
「えぇ……。自衛隊に所属していた息子をゴジラによってその命を奪われた夫婦が」
「でも、それは……」
「ええ、わかってるわ。その夫婦も息子が死んだことに悲しんでいたけど、自衛隊には全くの怒りを持ってなかったらしいの。その時おばあちゃんはその夫婦から『息子は……自衛隊に入った息子は役に立ちましたか?』って」
「……っ」
「お婆ちゃんはその隊員が誰かわからなかった。だけど悲しみを重ねさせないために「もちろんです」と答えたって。……で、ここから本題だけど、私、その夫婦に会ったの」
「えっ!?」
「そして言われたの。『もうこの悲しみを繰り返させないために、怪獣の怖さを子供たちに教えてやってください。今の世の中はその恐怖を忘れてしまっている』って……だから、よ」
そこまで言ってすっきりしたのか、燈は真耶の方を向くと、そこには涙をボロボロ流して、鼻水をすすっている真耶がいた。
「うぅ~……」
「ちょ、真耶ちゃん何泣いてるの!?」
「だって~、こんなに泣ける話とは思いませんでしたもん~」
そして燈から渡されたポケットティッシュで鼻をかむ真耶。そんな姿を見てた燈は苦笑いを浮かべる。
「感動するかどうかはいいんだけど、ここまでされたらやるしかないって思うでしょ?」
「はい、たしかにこれはそうなってしまいますね」
「だからよ。正直不謹慎ってわかってるけど、あのメガヌロンがしたのは周りにショックを与えてくれるからとてもよかったわ。まあこんな風に授業停止されるのは予想してたとは言え、減給は少し予想外だったけど。さて、私の話はおしまい」
「え、でも」
「あ、それとこのことは誰にも言わないで。どうせ誰も同情しないし、馬鹿にしてくる人ばっかりだろうから」
「そんなわけありません!」
「えっ、いきなりどうしたの!?」
いきなり大声を上げたため、燈は驚くと、真耶は怒ってるかのような表情を見せる。
「そんな立派なことをするのにそんな風に馬鹿にする人がいるなら私がしっかりとその人に対して怒りますよ!」
「あー、ありがと。まあこれは秘密にしといて。いい?」
「……わかりました」
「今度こそ私の話は終わり。じゃあ職員室に戻りましょうか」
「あ、はい……それと燈さん。ちゃんと睡眠はとってください。じゃないと有事の時に動けなくリなりますよ」
「あはは……善処します」
そして歩き出す2人。だが燈はその場に立ち止まる。
屋上の1人残った燈。そして
「……さすがにこれが轡木理事長だとは言えないしね。あの2人から口止めされてるし」
小さくつぶやいた言葉。それは風の音とともに消え去ったのだった。
戦地に赴いたまま帰ってこない。それで待ち続けるとはどれほどつらいものなのか……。
では感想、誤字羅報告待ってます。あと同時にもう2つ作品を更新しているので~♪