インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
まあそれは置いといて、では本編どうぞ!
夜12時を過ぎたころ、学生寮はすでに消灯時間を過ぎ、そこにいる生徒たちはすでに徹夜で勉強してる子以外は全員眠りについていた。
ドォォォン……
それはいきなりの轟音であった。轟音が響いた側のガラスがビリビリと揺れ、それによって何人か生徒が目を覚ましたりする。
それに気づいた最初の生徒はいったい何事かと部屋の照明を点けてカーテンを開いて外を見る。だが彼女がいる部屋からはその轟音の響いた方角は真逆。向かいの部屋からじゃないとわからない。いや、場所的にわかるかも若干不明だ。
それに気づいた人物の1人であるラウラ・ボーデヴィッヒは、跳ね上がるかのように起き上がり、寝間着がない故全裸のまま近くに置いてあった護身用の拳銃を手に取り、ベッドの下に急いで伏せる。
いったいどこから物音、爆発音に近い音がするのか。どうやら寮内で起きたことではないと判断したラウラは、近くに置いてあった自分用のグレーのISスーツを身にまとい、そして壁に掛けていたバッグを瞬時に取った後にそこから出したのは双眼鏡のようなものだったが、これは軍で支給されている暗視スコープであった。そして彼女は左目に付けてる眼帯に手を掛ける。
「これは使いたくなかったが……!」
彼女は少し嫌な顔しながらも眼帯を取り、その場に投げ捨てる。取った後閉じていた左目を開けると、そこには金色に光る瞳があったのだ。
ヴォーダン・オージェ。それは彼女の所属する『シュヴァルツェ・ハーゼ』の隊員全員の瞳に移植されてる疑似ハイパー・センサーともいえる代物で、脳への視覚信号の伝達速度の飛躍的な高速化と、超高速戦闘下での動体反射を向上させた代物である。
ラウラはカーテンの隙間からスコープを忍ばせ、そこから轟音が起きたと思われる方角、病院がある方に向ける。
そして彼女が見たのは、数キロ先の病院側で起きているISでの戦闘場面だった。
「あれはシャルル・デュノアか。ん?よく見たら何か違う……?」
普通ならハイパーセンサーでも使わないと分からないほどの速度だが、己の左目がそれの代わりとなって視覚の補助をしてくれるため、高速で動く彼を追い回し、そして1分もしないうちにシャルルに感じた違和感をラウラははっきりと気付くことができた。
「あいつ、女か!?」
そう、前に見たときにはなかった胸元の大きな膨らみ。それは女性特有のものであるため、ラウラは彼が書類偽造などをしてこの学園に入ったことに気付いたのだ。目的はおそらく男子搭乗者のどちらかに近づきハニートラップなどを起こすことと判断したため、平たく言えばテロリストと考えたラウラはISを展開しようと暗視コープを下ろそうとした。
だがその時、スコープの視界に機龍が入り込んでその身が固まってしまう。
機龍はどうやら吼えながらミサイルを放っており、時折シャルルに近づきながら腕部に搭載されている0式レールガンを放っており、ミサイル幾つか明後日の方向へと飛んで行っていた。
いったい何があって戦っているのかわからないが、ラウラは何か嫌な予感を感じ太腿に待機状態で付けている『シュヴァルツェア・レーゲン』に手を伸ばしたときだった。“ソレ”が近づいてきたのに気付いたのは。
「しまっ……!」
それは機龍の放ったミサイルの一発であり、流れ弾となって寮の近くに着弾して爆発が起きる。それによって出た爆風が近くのガラスを砕き、そして一緒に跳んだ土やミサイル辺も一緒にガラスを砕く。おかげで中にいた生徒が怪我をしたり、鼓膜が破れたりと被害が出始め、寮の電気が一斉につき始める。
ラウラの部屋もガラスが砕けたが、とっさの判断によってガラス片などによる怪我は無く、衝撃による誤作動か分からないがスプリンクラーが作動してびしょぬれになったラウラは、寮の廊下などでない声などが聞こえ、もしかしたらと思い急いで扉を開く。
そこにはいきなりの爆発にびっくりして飛び出した生徒たちが多数で、中には怪我人がおり、その状況下によってパニック状態になった生徒も多数となっていた。
それに気づいた上級生などがどうにかしようとするが、周りの声がうるさ過ぎて声が奥まで響ききらない。その対応に苛立ちを感じたラウラは、大声でそこにいる生徒たちを黙らせる。
「静かにしろ!」
その大きな声は廊下の奥まで響いたのかわからないが、一気に生徒たちが静かになる。そしてラウラは一息ついた後、先程よりは小さいものの、大きな声を周りに響かせる。
「健全なものは負傷者を抱えてこの場から離れろ!動けるもので上級生のところにもこのことをできるなら連絡!そして専用機持ちはISを展開し、飛んでくる流れ弾などを破壊するようにしろ!」
15歳とは言えども彼女は軍人。正直この言葉で周りの生徒がまともに動いてくれる確証はなかった。だがその時のラウラの気迫が偶然ながらも千冬と似てたのか、生徒たちは嗚咽が混じっていながらも行動を開始する。
その行動を見届けたラウラは割れてない無事な窓を開け、そこから飛び降りると同時にシュヴァルツェア・レーゲンを展開。そしてこちらに流れ弾が来ない様に警戒し始めたとき、左手に白いナニカが空を走り抜けるのを見つけた。
「なっ!?あいつ何をしている!?」
ラウラが見たのはISを纏って機龍が暴れているところへ向かう一夏の姿であった。いったい彼が何をするか知らないが、下手に刺激してこちらに向かわれるのも厄介なため、ラウラは急いで一夏を捕獲しに追いかける。
だが白式は高機動型なだけあってこちらの速度がなかなか追いつけず、仕方なく肩に搭載されているレールカノンを一夏に標準を向ける。
だがその時だ。機龍がいる方面から眩しい閃光と共に、機体が大きく不調を訴えたのは。
「なっ、電磁パルスだと!?」
いきなりの不調によりシュヴァルツェア・レーゲンのスラスターの出力が下がり始め、不時着するラウラ。機体が軍で支給されたためだったのか電磁パルスによる被害は少なく、すぐに復旧させたラウラは再びスラスターを吹かす。
この時恐らく一夏も墜落しただろうと思い、回収に向かおうとするがハイパーセンサーが捉えたのは零落白夜で電磁パルスを無理やり突破したであろう白式の姿があったのだ。それにはラウラも驚きが隠せず、先程の不調で空いた間を埋めようとするが白式の機動性の高さのせいでいまいち埋まらない。
「織斑!戻って来い!」
ラウラは
その時だ。機龍が戦ってるところで何かが地面に叩きつけられ、大きく煙を舞い上げたのは。だがそれによって一夏の動きが止まり、ラウラは急いで彼の肩を掴む。
「織斑!貴様自分が何してるのかわかってるのか!?」
「お前、ラウラ、か?てか左目……」
一夏はラウラが眼帯してないことに気付いたが、彼女はそんなこと今は関係ないと言わんばかりに声を荒げる。
「何、気付いてなかったのか!?そもそも貴様、なぜあのところに向かおうとした!……織斑、お前は何を焦っている……?」
この時ラウラは一夏が何か焦ってるかのようにそわそわしており、雪片を握る手に力が強く入ってることがわかる。
「知らねえよ!勝手に機体が反応して……!気付けばこうなってたんだ!」
一夏が少し泣きそうな声で訴え掛けてきたため少し顔をしかめるラウラだが、どうせ尋問は後で出来ると思い、とりあえず連れて戻ろうとしようとした。
「キィィァァァアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
「「っ!?」」
だがその時、一夏が進もうとした方向で大きな咆哮が起き、2人の体が石の様に固まる。そして2人目掛けて多重ロックオンが掛かり、2人は本能的にその場を離れると、そこには多量のミサイルが降り注いだのだ。
だがロックオンが甘かったのか2人を追いかけるということはなく、そのまま地面に落ちて連鎖的に爆発を起こし、爆風に煽られながらも2人は飛んできた方向を見る。
「航……!」
「あれが、機龍か……!」
そこにいたのは片方のバイザーを砕かれながらも目を赤く光らせ、横腹に傷を負っている四式機龍の姿であった。機龍はズン……ズン……と歩いて2人に近づいており、小さく唸り声を上げている。
「航!俺だ、一夏だ!話を聞いてくれ!」
この時機龍の脚の動きが止まり、一夏は少し安堵した表情を浮かべたが、機龍が腕をゆっくりと上げ、腕部レールガンを一夏に向け、そして弾を放った。
「わた―――」
「逃げろ!」
ラウラはワイヤーブレードを伸ばして一夏の腕に巻き付け、そして投げ飛ばすように無理やり腕部レールガンからの攻撃を回避させる。
いつものラウラなら一夏のことなんか無視して、機龍に攻撃を仕掛けていただろう。だがこの時だけは違った。
ただ軍人としての勘が告げていた。“コイツ”はやばい、と。
機龍からは背筋に氷柱を差し込まれたと思うほどの殺気が漏れ出しており、ラウラは無意識にレールカノンのロックオンを機龍に向け、そしていつでも放てるようにしている。
それに反応した機龍がラウラの方に顔を向け、そして威嚇するかのように大きく吼えた。
「キィィァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!」
そして機龍が2人目掛けて突っ込んだ。
機龍は苛立ちを感じていた。ただでさえ搭乗者が怒りと憎悪で飲まれたため、この中に眠る“彼女”を無理やり飲み込み、そして“我”の意志で動いていた。
昔は持たなかったこの機動力。腕試しに先程の金髪のIS乗りと戦い、とどめを刺そうと思ったが腹部の損傷でコントロールを一時的に失いながらも、結果的に朱色のISを潰したが。
そして今、機龍は己の搭乗者の友人だと思う男と、誰かわからんオッドアイの女を相手にしていた。彼らは男が突撃、女が援護という戦法で仕掛けてくるため、シールドエネルギーが勝手に減ってが回避しながらも自由になった反動からか、こちらの遊ぶ程度の攻撃を繰り出すと躱していく。
そしてこの遊びも飽き、この五月蠅い蠅2体をいい加減に沈めることにした。
それは圧倒的であった。その白銀の装甲はシュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンさえも弾き、白式の零落白夜さえも寄せ付けない。
それに自慢の機動力と爪を使った切り裂きなどが2人を襲い、シールドエネルギーを削る。
それに対して対峙していたIS、白式とシュヴァルツェア・レーゲンの装甲はすでにボロボロになっており、機龍の圧倒的な強さに対して2人の戦意がへし折れそうになっていた。
「くそっ……!零落白夜が全く効かねぇ……。装甲が硬すぎる……!」
一夏は何回も零落白夜を当てた。前に楯無に教えてもらった、機龍の柔らかい部分でもある関節部目掛けて刃を振るうが、機龍は零落白夜を危険とでも思ったのか、当たる前に白銀の装甲部に当てるように防御をし、致命傷にもなるダメージが一切入らない。
「……貴様ぁ!私で遊んでるというのか!」
ラウラは怒りをあらわにした。だが無理もないだろう。
シュヴァルツェア・レーゲンの切り札ともいえる
ワイヤーブレードも機龍相手では重量の差で逆に振り回され、プラズマ手刀も今いる中で一番攻撃範囲が小さい武器のため下手に使えず、ラウラの攻撃はほぼ機龍には効かないともいえる状況だ。
一体どうするか……ラウラは苛立ちながらも、攻撃手段を考える。だがその時。
「何……?」
この時一夏は、機龍が身を屈ませたため一瞬何をする気だと動きを止めて身構えてしまう。
だがこの時一夏は気付いていなかった。いや、気付けなかったというべきだろうか。機龍がロックオンを使わず、カメラでの目視ともいえる状態で一夏を見ていたのを。
そのため、白式が警告音を発してなかったのが命取りだったのだと。
「こいついったい……っ!?織斑、そこをどけ!」
「えっ?」
ラウラは機龍が最初何をするか分からなかったが、ブースター部の熱量が上昇してることに気付き、そして叫ぶも一夏は何のことか全く気付いておらず、一瞬呆けた顔を見せる。
だがそれが命取りであった。機龍はブースターを吹かし、そのまま一夏の元へと突っ込む。その速度は白式に劣るとはいえ、重量10トン以上もある金属の塊だ。
「ぐぅぅうううう!」
一夏は咄嗟に雪片弐型の刃を両手で持つように支え、機龍を真正面から受ける。だがそれで止まるはずもなく一夏は後ろに飛ばされ、そのまま機龍が急停止して一夏はそのまま木々をへし折りながら吹き飛ばされ、止まったころにはシールドエネルギーが残っていても搭乗者の意識が朦朧としており、まともに戦うことができない。
「わた……る……」
一夏はぼやける視界の中、手を機龍の方に伸ばす。
そして機龍は一夏に向かって潰そうとするが、そのとき顔の側面で爆発が起きた。ラウラがレールカノンの弾を当てたのだ。
「キィィァァァアア゛ア゛ア゛!」
機龍は一夏への興味を無くし、そのままラウラの元へと向かう。ラウラは上空に飛翔してレールカノンを放ち、機龍を一夏から離すように誘導するが、この時機龍が先程レベルの速度でラウラに突っ込んできたのだ。
まさかこの速度で突っ込んでくるとは思わず、焦ってレールカノンを放つが機龍はそれをわざと受けて、そのまま直進する。
「ちぃ!」
ラウラはそのまま当たるというギリギリのところで身体を捻って躱し、すれ違った後にレールカノンを放とうと思い、ラウラはすれ違ってすぐに振り向いてレールカノンを機龍に向けた。だが彼女はそれを見た瞬間、動きを止めてしまう。
「なっ……」
彼女が見たもの。それは、機龍がすでに急旋回でラウラの方を向き、そのまま尻尾がラウラの腹目掛けて降られていたということだ。そしてラウラはそのまま腹部に機龍の高速で振られた尻尾が直撃し、隕石の如く地面に叩きつけられた。
機龍の尻尾は4トン以上もの重さもあり、IS1機分も軽くある鞭はISを砕くには十分すぎる破壊力を持っている。
いくら絶対防御に護られるとはいえ、ラウラは肋骨に罅が入り、地面に叩きつけられた時の衝撃でシュヴァルツェア・レーゲンの機体装甲全体に罅が入り、スラスターも使用不可になる。
地面に大きなクレーターを作ったラウラは赤と金のオッドアイで忌まわし気に機龍を睨みつける。
「くそが……!勝てない……!」
ラウラはとても弱い自分を呪った。もっと力があれば……。負けないほどの力が……!
その時だ、ラウラにだけ何かコンピューターで構成された声が耳に響いたのだ。
ダメージレベルDを確認
セーフティ解除。活動限界時間まで使用のためパイロットの保護。Valkyrie Trace System、起動します。
「な、なにが……!っ……!ああああああああ!!!」
その時、ボロボロになったシュヴァルツェア・レーゲンから黒いオーラが出たと思うと、ヘドロの様にどろどろとした黒い物質がラウラごとシュヴァルツェア・レーゲンを覆っていく。この時ラウラは逃げ出そうともがくように手を動かすが、黒いドロドロはそれを無視するかのように全体を覆っていき、そして全体を覆ったと思うと、その形が変貌していく。
下半身はドロドロのままだが、手には黒い雪片。そしてポタッポタッと黒い液体が滴るも長い髪を形し始め、その姿はまるで、織斑千冬にとても酷似していた。
この時IS学園の海に小さき影が無数迫っていた。
それは、前にもIS学園の海岸に現れたものであったが、今回はそれが多数いたのだ。
“奴ら”は知っていた。あと数か月もしないうちに、“奴”が日本に現れるのを。
夜は明けず、戦いは終わらない。