インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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届かぬ声

機龍がシャルロットと闘っている……いや、蹂躙し終わり、今は一夏とラウラの2人と闘っている時だった。楯無は鈴を連れてそれなりに離れた繁みに隠れたはいいが、機龍のはなった電磁パルスによって2人のISが機能停止、そのため楯無は急いで蒼龍の復旧に手を休ませずに励んでいた。

 

「楯無さん、大丈夫なんですか……?」

 

「何が?」

 

「その……鬼気迫るかのような顔をしているから……」

 

「別に問題ないわ。さて、さっさと蒼龍を直すわよ」

 

楯無は航が暴れている原因を薄々と何かわかり始めていた。一番思い当たるはシャルロットを動揺させるときに言った「まあいいわ。なら彼の首折ってみなさい」「別に貴方の勝手にしなさい。私は貴女を捕まえるだけだから」。この言葉たちが航の心を大きく傷つけたのではないのかと思ったのだ。

もしそうならば、自分の足で彼の元へと向かい、しっかりと謝らなければならない。ただそのことを頭の中で反芻しながら楯無は急いで蒼龍の応急措置を済ませていく。

その時だ、離れた場所2回、3回と轟音が響き、2人は何が起きたのかとその方向を向く。おそらく機龍が何かしたのだろう。そのため急いで修理を終わらせ、楯無は蒼龍を一回待機状態にする。そして。

 

「おいで、蒼龍!」

 

一瞬の輝きのうちにISを量子変換して纏い、そしてスラスターに光がともり始める。

 

「じゃあ航を止めに行ってくるわ」

 

そしてスラスターを一気に吹かして楯無はその場を後にした。

 

「航をお願いします……」

 

鈴は飛んでいく楯無に向けて、聞こえてないだろうがそうつぶやくのだった……。

 

 

 

 

 

楯無は飛んで1分ちょいでたどり着いたのはいいが、上空で見たのはすでに戦闘不能になったラウラ・ボーデヴィッヒに、動けないのだろうかその場に倒れたままの一夏。そしてその一夏に向けて移動している機龍の姿があったのだ。

あたり一帯は地面が剥げ、木々もボロボロ。その中でただ上空から見る限りほぼ無傷の機龍を見た瞬間、楯無は冷や汗が一筋流れる。だがこの時楯無は一夏に向けて機龍が動いてることを思い出し、その進行を止めようと右手に蒼流旋を展開。そして一夏と機龍の間めがけて投擲するように投げた。

すると機龍の動きが止まり、その機龍が自分めがけて上を向く。それと同様に一夏も上を向いたため、楯無は地面に向けて降りていき、そして一夏の前に立ち蒼流旋を抜いて機龍の前に立ちふさがるようにする。

 

「た、楯無さん……!」

 

楯無は一夏に呼ばれたため振り返るとそこには機龍にやられたのだろう、装甲がボロボロで戦闘不能に近い一夏がいたのだ。そして少し離れたとこに裸で寝転がってるラウラがいる。

そして楯無は小さく笑みを浮かべて彼を安心させる。

 

「ごめんね、いきなりの電磁パルスで来るのが遅れちゃった。でももう安心して、一夏君」

 

「で、ですが……」

 

「大丈夫よ。私が、彼を止めるから」

 

そう、そうしないと彼は止まらない。自分がやってしまった罰なのだから。それを自分が責任とらないと……。

そして楯無は右手に蒼流旋、左手に村雨を構えて村雨の切っ先を気流に向ける。実際専用機持ちを3人もほぼ無傷で下してきたのだ。生半可な気持ちだと国家代表だろうとすぐにやられかねない。

 

「来なさい航!私が相手してあげるわ!」

 

「キィィァァ゛ァ゛……」

 

この時機龍は小さくうなり、赤く輝く目が一層強く輝かせたように感じる。そして太腿部ブースターを展開し。

 

「キィィァァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

そして機龍は楯無めがけてブースターを吹かし、突っ込んだ。その勢いはまさに弾丸ともいうほどの速さであり、下手なパイロットだったら反応できずにそのまま突っ込まれて一撃で戦闘不能になるだろう。

だが楯無はそれを的確に回避し、そして上空へと上がり両手をたたいて機龍にこちらへの興味を強く惹かせる。それに反応した機龍もブースターを吹かして楯無めがけて上空へと飛び上がり、それを見た楯無は一夏たちに影響が出ない場所を探すためにその場を離れる。そしてついていく機龍。

 

「楯無さん!……くそ!動いてくれ、白式!」

 

一夏はうんともすんとも言わない白式に苛立ちを感じた。確かに役に立つとは言えない。だが囮とかそんなにも自分は使えたはずだ、だがこの体たらくは何だ。ラウラの時も全くかのように自分がお荷物のように感じた。それを抗おうとしたらこの様だ。

 

「くそ……何が自衛隊になるだ……、何が護るだ……。ちくしょう……!」

 

一夏はただ自分の無力さに打ちひしがれていたのだった……。

 

 

 

 

 

「よし、ついてきてるわね……」

 

楯無は後ろに機龍がいるのを確認しながら追いつかれないように蒼流旋の大口径に改造したガトリング部から弾を大量に吐き出す。なぜこのような行動をとったのかというと、あの場所で戦えば一夏とラウラに被害が及ぶと考えたのだ。そのため楯無は飛ぶ。

だが機龍もそれで終わるはずもなく、バックユニットからミサイルを飛ばしたのだが、楯無はそれをばれるロールで回避したりアクアナノマシンを利用したチャフを使うことによってそれらをすべて回避していってるのだ。

そしてたどり着いたところは千冬たちがいる海岸からそれなりに離れた海岸、砂場の上だ。楯無は底が見えるとすぐに降下し、機龍の方を向くように反転した後に砂場に足を付けて着地する。機龍もそれに気づいたのか、楯無から少し離れたところに重さのため10数メートル砂を削りながら着地を果たす。

 

「よく私から離れようとしなかったわね、航」

 

楯無はそういって話しかけるが、機龍はそれを無視するように重い足音を立て、そして尾をユラユラと揺らす。

だがそのとき時楯無は両手に持っていた得物を下し、戦意はないというかのようにしたため、機龍は若干首を傾げた。

 

「ねえ、航……話を聞いてほしいの……。あのね……」

 

「キィィァァァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!!!」

 

威嚇するように吼える機龍。それは楯無のことばなんぞ聞きたくないとでも言わんばかりであり、そのため楯無は少し悲しそうな顔で目を伏せる。わかってる、自分が悪いのだから……。

 

「ねぇ……私の話、聞いてくれないの……?」

 

悲しそうな声で言う楯無だが、機龍はそれを無視するかのようにバックユニットのミサイル全ての目標を楯無に向けており、彼女にはその警告音が鳴り響く。

 

「航……」

 

そして機龍から多量のミサイルが飛ばされ、椀部の0式レールガンから多量の弾が放たれる。楯無はそれをアクアナノマシンで作った氷の盾によってレールガンのの攻撃を防ぎ、飛んでくるミサイルは蒼流旋のガトリングで撃ち落としたり躱したりして、ダメージを最小限にしていく。

この時機龍は楯無に攻撃が全く当たらないのことに苛立ちを感じたのか、機龍はブースターを使って無理やり足を砂場から持ち上げ、そしてホバーであるかのようにして楯無めがけて突っ込みその鋭い爪をたたきこもうとする。

だが楯無は後ろにスラスターを吹かして蒼流旋で爪を受け流すかのように躱す。そして機龍の懐に入り込んで左手に持っていた村雨を機龍の脇腹に叩き込むが、金属と金属のぶつかり合う音を立てて村雨はその硬い装甲によって受け止められる。

機龍は自分の脚が届く範囲のため前蹴りで楯無を吹き飛ばそうとするが、それに気づいた彼女は一気に後ろに下がってその攻撃を躱し、バックユニットを展開してそこからミサイルを20発同時に放ち、その弾道は機龍目がけて放たれていた。

 

「キィィァァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァ!!」

 

機龍はその攻撃が自分に効かないと知っているが、その量と鬱陶しさに苛立ちを感じ0式レールガンをばらまくように放ち、こちらもバックユニットからミサイルを放つ。その大きさは楯無の放つものより3倍近くの大きさがあり、破壊力も3倍となる。そのためぶつかり合ったミサイルは大きな火球となり、あたり一帯がまるで太陽が上がったかのように明るく照らされた。

 

「はぁぁ!」

 

その中楯無は蒼龍が持つパワーに物言わせ、刃渡り2メートル半はある大剣村雨を投擲するかのように機龍めがけて投げたのだ。実際蒼龍は全身装甲じゃない機龍ともいえる代物でパワーは並大抵のISを凌駕するほどのため、このような芸当ができるのだ。

そして飛ばされた村雨は目の前に広がる火球の中を切り裂くかのように突き進み、そして機龍が気づいたころには切っ先がどうしても躱せずに激突するほどの近さであった。そのため機龍はとっさに右手を盾にするように構え、そのまま村雨は右手につけられている0式レールガンに直撃し、そのまま機構を抉るかのようにして弾き飛ばされる。

おそらく中に仕込まれていたメーサーブレードのおかげで椀部に重大なダメージを与えるほどでもなかったのだろうが、そのメーサーブレードも大きくひび割れ0式レールガンそのものに重大な大ダメージを与えていた。

 

「キィィァ゛ァ゛……」

 

そして機龍は楯無をにらみつけた後右腕の使い物にならなくなった0式レールガンをパージし、そして機龍は吼えるかのように口から2連メーサー砲を放ち、そして同時にミサイルを放った。そして爆発の後に残った煙の中を通じ、それは楯無のもとへと向かう。

楯無はそれがハイパーセンサーで感知できたが、体がそれよりも早く反応しており、彼女は機龍めがけてメーサーとミサイルが飛んでくる煙の中へと自ら突っ込んだ。

そして急旋回を行って楯無に迫るミサイル。そして直撃していき勢いの落ちる楯無に正面からメーサーが迫り、そして楯無を切り裂いた。

 

「っ、ぁ……!」

 

そしてさらに迫ったミサイルが楯無に迫り、爆発による大きな紅蓮の花が夜空を明るく染め上げた。その中で響いた楯無の悲鳴。

終わった……。機龍は小さく鳴き声を上げ、そして海風が吹いて煙が一気に引くと、そこには爆発で抉れた大地があったが、そこには楯無の姿がなかった。

 

「キィァァ!?」

 

「こっちよ!」

 

「ッ!?」

 

そのとき機龍の右後ろから村雨を構えた楯無が高速で迫ってきたのだ。だが機龍はそれを冷静に尻尾を大きく振って村雨を上段で構えていた楯無の横腹に引き千切らんとするのではないのかと言えるほどの強烈な一撃を当てるが……。

 

「キィァ!?」

 

楯無が真っ二つになったかと思うと、彼女の口がニヤッと笑いそして色がなくなってただの水のようになったのだ。そして村雨も地面に突き刺さり、機龍は何が起きたのか全く理解できてない状況と化す。

だがそのとき、機龍のセンサーにいきなり反応が現れ、その方向、左後ろを顔が先に向くとそこには蒼流旋を構えた楯無がいたのだ。楯無はそのまま蒼流旋を左腕の0式レールガンに直撃させ、そして発射不能にするかのように機構を抉り取る。

 

「キィィァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

機龍は尻尾を振って楯無に当てようとするが、彼女は後ろに下がってそのまま村雨を左手で取って、そして機龍からいったん距離をとる。この時機龍が怒って攻撃を仕掛けてくるかと思ったが、先ほどの衝撃でか彼女を警戒しており、攻撃を仕掛けてこない。

楯無が使ったのは水分身。蒼龍に使われているアクアナノマシンを使って、センサーが誤認するほどの自分の姿そっくりの分身を作り上げ、それで攻撃してたのだ。そのため最初にメーサーによって切り裂かれたのも、先ほどしっぽによって胴体真っ二つになったのも全て、この分身で作った偽物なのである。

航と模擬戦などをしてる時には一切使ってなかったため、機龍にはその情報が一切なかったのだ。そのためこのように2度も騙され、両腕の0式レールガンを破壊されたのだった。

 

(この攻撃が上手くいくとは思わなかったわ……。これで機龍の射撃武器は口の中のメーサーと背中のバックユニットだけ。だけど油断は禁物ね……!)

 

楯無は蒼流旋と村雨の刃にアクアナノマシンを纏わせて武器の攻撃力を上げ、いつでも仕掛けれるようにする。

 

 

パージします

 

 

そのときあの時の不快な女性の機械的声が響く。機龍が一体何をする気なのか楯無は身構えると、機龍のバックユニットからガチャっと何かの接続が解除される音がした。すると機龍のバックユニットが解除され、そのまま砂の上に転げ落ちたのだ。

楯無はこれが一体何を意味するのか最初は分からなかったが、記憶を探るととんでもないことを思い出し、顔を青くし始める。0式レールガンやバックユニットを付けた機龍は重武装形態。ならその武装を取り除いたら……。

 

「キィィァァァ」

 

この時機龍が嗤ったような気がした。機械だからそんなわけがないと何とでも言えるだろうが、楯無にはそんな気がしたのだ。それは今まで“更識楯無”として携わってきた、裏の仕事で見てきた人間が浮かべる笑みに感覚が似てるのだ。

そして機龍の脚部ブースターが展開、そしてバックユニットの下に隠されていた背部ブースターにも火が入り、そのまま目標めがけて突っ込もうという態勢をとる。

そして楯無は身にまとっているナノマシンを自分の前に集めて防御態勢をとるが……。

 

「えっ……?」

 

その速度は大きさと重量を無視したものであった。10m以上は離れていた距離は一瞬にして詰められ、楯無の目の前には機龍の横に高速で振られた尻尾が迫って来てたのだ。

 

「くぅぅぅ!!」

 

楯無は蒼流旋を両手で持って防御するが、あまりにも重い一撃に無理やり体を浮かされ、そして20m以上は後ろに跳ね飛ばされる。いや、後ろに飛んだといってもいいだろうか。

 

(後ろに逃げてなかったらやられていた……!)

 

楯無のとっさの機転によりダメージは抑えられ、蒼流旋にも大きなへこみなどはできていない。4式機龍の装甲と同じ金属を使っているため早々壊れるということはないが、だからって油断していたら壊されかねないため楯無は慎重に扱う。

 

「キィィァァァア゛ア゛ア゛ァァ!」

 

機龍はブースターを再び起動させ、先ほどと同じように神速ともいえる速度で楯無に迫る。楯無はそれを回避しようとするもどうしても逃げ切ることができず、機龍の攻撃をぎりぎりで躱すのが精いっぱいだ。

途中から蒼流旋や村雨で無理やり軌道をずらしたりと防御も精一杯になっており、いきなり機龍が後ろに瞬時に回り込んだりといつやられてもおかしくない状況となっている。攻撃は鋭い爪で切り裂く、前蹴り、尻尾、口部の2連装メーサー砲と少ない部類だが、それに見た目とは段違いの機動力を使うことによって手数を増やしている。

しかも一撃一撃がとても重いため掠めるだけでもダメージが比較的大きくなっており、楯無ほどの技量でなかったら一撃もらった後にすぐに畳みかけられて今頃はボロ雑巾以上にボロボロになってたであろう。

だが連続で躱しているとそのプレッシャーや体力的問題で動きが鈍るため、楯無はどうしてもその焦りからか無意識ながらも動きが少しずつ乱雑になり始めており、それによってさらに防御が危うくなってきていた。

だがそのとき、機龍の尻尾による跳ね上げで防御に使っていた蒼流旋が弾き飛ばされ、そして機龍が踏み込んで放った前蹴りが楯無を直撃する。彼女は両手をクロスさせてとっさに防御するが、その重い一撃でシールドエネルギーを大幅に削られ、そして大きく吹き飛ばされた。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

そして楯無は大きく飛ばされた後に背中から倒れ、そこに機龍がメーサーを放って追い打ちをかける。だが楯無は急いで立ち上がりそれをなんとかぎりぎりで回避し、そしてすぐに村雨を展開してそれを機龍向けて投擲する。だが機龍はそれを躱すことなんぞせず、その場で半回転して尻尾で村雨をはじくかのように当て、そして村雨が粉々に砕けて足場にその破片が降り注ぐ。

 

(今よ!)

 

その時だ、いきなり足場の砂が爆発したかと思ったら、その砂が機龍に絡みついてきたのだ。いきなりのことで動揺を隠せず動きが止まる機龍。だがその隙を縫うかのように砂が、いや、アクアナノマシンが浸透した砂が強く機龍に絡みついていく。

だがいつの間にこんなのを楯無は仕掛けたのだろうと思うがトリックは簡単だ。このアクアナノマシンは先ほど水分身で使用したものであり、それを回収せずに地中に忍ばせていたのだ。そして任意によりそれを起動させ、機龍の動きをからめとったのだ。

 

「キィィァァ゛ァ゛!!!」

 

機龍は絡みついたアクアナノマシンを引きはがそうと暴れるが、ロシアが作ったアクアナノマシンよりも強力なのを婆羅陀魏製のを使用してるためそう簡単にはがれない。だからと言ってそのまま放置するわけにもいかず、今にも拘束を引き千切りそうな勢いで暴れるため楯無は、今しかないと機龍の後ろに回って直接通信できるようにする。そして声をかける。航に届くように。彼に聞こえるように。

 

「航!私の話を聞いて!」

 

 

――うるさい――

 

 

「私は彼方を」

 

 

――黙れ!――

 

 

機龍はその巨体を震わせて楯無を振り落とそうとするが、彼女も必死に離れまいとがっしりと機龍の首をつかむ。拘束の千切れたため自由になった腕の可動範囲もしっぽの可動範囲もそこまでどうしても届かず、機龍は勢いよく砂の上に倒れるも、それでも楯無が頑として離れない。

そして機龍は体内放射、もとい電磁パルスで楯無を吹き飛ばそうと背びれをチカチカと点灯させる。

 

「おねがい、航……。話を、聞いて……」

 

楯無の泣きそうな声。それを聞いた機龍は背びれの点滅が止まり、動きを止めた。そしてぽつぽつと楯無が彼に思いを伝える。

 

「……あの時はあんな風に心のないようなことを言って本当にごめんなさい……。シャルロット・デュノアを動揺させるために言ったのに、それが貴方を傷つけてしまうなんて私の考えが浅はかだったわ……。私は……貴方が好きなの……。だから航……お願い、もうやめて……」

 

その消えてしまいそうな声。それは彼女の本心であり、彼に向けた願いである。

そのとき機龍の目から赤い光が消え、ちぎろうともがいていた手足などの動きも止まり、楯無は安どの息を吐く。

さて、どうやって航を引っ張り出すか、楯無はそう考えていた時だった。

 

 

――好きなら何で俺の家族を殺した――

 

 

そのとき、機龍の目に赤い光が灯った。

 

「えっ……」

 

そして機龍の背びれが連続発行を繰り返し、そして楯無に強い衝撃が走った。それはシャルロットの洗脳を解くと同時に、様々な電子関係を破壊する衝撃波。

体内放射、もとい電磁パルスが放たれた。

その威力はシャルロット戦で使った時とはずっと低いが、自身の体にまとわりついたものを強制的にはがすには十分な威力だ。そのためアクアナノマシンは一瞬にして機能停止。そして蒼龍もそのせいによって機能停止まではいかなくても電子系統に大ダメージをくらい、機能停止目前までやられてしまう。

そのためパワーが入らず機龍から落ちていくため、楯無はそれでもすがろうとするがどう捨てもISの重量ですることができない。

そして機龍に捕まれ、そのまま楯無は遠くに投げ飛ばされた。

 

 

 

 

 

投げ飛ばされた楯無は、ただあのときに聞こえた声が頭の中で何度も響いていた。

 

「それって……どういうこと……」

 

それは航の声だった。彼の声が強い怒りとともに聞こえたのだ。

彼女にはその言葉の意味が理解できなかった。

 

――好きなら何で俺の家族を殺した――

 

それが本当なら航の両親である北斗と月夜は殺されたということになる。そして航の言い方からするに、まるで楯無が殺したとでも言いたげだ。

だが彼女は学園で2年生になってから航の家には1回も行ってない。そのため彼の言ってることがどうも信じられなかった。

だが……。そうだ、数日前に航が刀奈を強く拒絶したときがあった。もしかして、航はその時から……。

そんな呆然としている楯無めがけて、機龍が重い足音ともに距離を詰めていっていた。

 

 

 

 

 

現在蒼龍は先ほどくらった電磁パルスが最初のものと判断していたため、すでにできていた修復プログラムで早急に中の修復を始めている。だが、それでも機龍がここまで来るまでに応急措置が完了しない。このままでは放心状態の楯無が機龍の攻撃ですぐにやられ、そして蒼龍が強制解除されて最悪彼女が殺されてしまう。

蒼龍は初めて感じた、この自分に似た機体から感じる強い殺意に。それはISネットワークで話題になったゴジラというものにとても酷似しており、生みの親の篠ノ之束がそれを忌々しげに見ていたのは記憶にある。

ただ蒼龍は機龍に向けてあることを感じた。それは今の表に出ている機龍の人格以外に、何か別のものがあることを……。

そのとき、応急措置は完了した。あとは楯無が正気に戻ることだけだ。

 

 

 

 

 

機龍は中の人間の苛立ちのせいか、己に対しての疲労となってエネルギーを最初より多く消費してきていた。

リミッター解除したために増えたシールドエネルギーが、最初は10万を超えるほどだったのに対して今はすでに4桁ほどしかない。馬鹿みたいにエネルギーを食うためさっさと終わらせたい機龍は、脚部ブースターを右足のは前に、左足のは後ろにしてそしてそのまま回転をし、遠心力によってとても破壊力のある鞭と化した尻尾が楯無めがけて振われた。

だがそのとき、機能停止していたアクアナノマシンが赤く染まり始め、そして動かないはずなのにそれらは機龍めがけて高速で迫り、そして楯無にあたろうとした機龍の尻尾を体が何メートルも横に飛ばされながらもダメージがあまり入らなかった。

 

「航……教えてよ。私が何をしたのかを……」

 

楯無は航の言ってることが本当かわからない。だけどその真実を突き止めないと、これが嘘なのか本当なのかが分からないままいるのはとても辛いことだ。

ただ彼女はその真実を突き止めるために、彼女は真剣な目で機龍を見つめる。

そして機体はリミッター解除である赤いアクアナノマシンが出ており、電磁パルスで散ったナノマシンも回収した楯無は一度吹き飛ばされながらもその後なんとか回収した蒼流旋展開する。そして赤のアクアナノマシンを纏わせ、楯無は機龍……いや航を止めるために突っ込んだ。

 

 

 

 

 

その戦いは熾烈であった。パワー、装甲の強度、速度とあらゆる点を圧倒する機龍を楯無は己の感、経験などを生かして受け止めれる攻撃は受け止め、そして武装は蒼流旋1振りだけながらもアクアナノマシンでの支援を使ってどうにか同等に持ち込んでいる。

 

「はぁ!」

 

尻尾による薙ぎ払いを躱した楯無は、地面に伸ばしたナノマシンを機龍に向けて氷柱のようにして伸ばす。機龍はブースターを使って回避するも、別の場所に仕込んであったナノマシンが作動してそこからも氷柱が伸び、それが機龍に直撃する。その攻撃は機龍にはそこまでダメージは入らなくても、関節部ばかり狙ってくるためどうしても動きが鈍くなってしまう。

 

「キィィァァァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!!!」

 

機龍はその苛立ちからメーサーを乱雑に放ち、楯無はそれを躱していく。これはどうしても防御ができないため、1撃でもくらうと大ダメージで戦闘不能になってしまう。

そして機龍はブースターを使わず走るかのようにして楯無に接近。その鋭い爪を横に2度振い、その後に体を一回転させて尻尾を振う。

楯無はそれを本当に髪の毛1本の差で躱し、腹部に蒼流旋の切っ先を叩き込む。だが機龍はそれを払うかのように右手を楯無めがけて振り下ろし、彼女はそれをバックステップで躱す。

 

「あとどれぐらいしたら止まるのよ……!」

 

楯無は奮闘していた。だがどうしてもシールドエネルギーの量に差が出てしまう。実際機龍のシールドエネルギーの量はまだ4桁後半もあるが楯無はすでに3桁台に入っている。いや、6桁もある今の機龍のシールドエネルギーを残り4桁まで持っていたのはすごいことだ。だが大半が、GOZILLAsystemによる異常なほどのエネルギー消費が原因であるが。

そのため機龍はさっさと決着を付けたく思うが、蒼流の高い回避力がそれを阻止しており、苛立ちが機龍の中に募っていくばかりだ。

その蒼龍もアクアナノマシンが途中から制御不能で散ってきており、楯無を守る盾としての役割がほぼ薄れていた。だが彼女はそれを無視して機龍に肉薄して近接攻撃を何回も仕掛け、そして楯無が機龍の口内めがけて蒼流旋を突っ込ませようとする。

 

「そこよ!」

 

だが楯無は自分が体力があまりないことを忘れていた。そのため体の勢いがガクンと落ち、不意に体のバランスが崩れてしまう。

それを見落とす機龍でもなく、機龍は彼女にブースターを使って急接近し、そのまま前蹴りを1撃くらわす。

 

「しまっ……。ぐぅぅ!!」

 

その一撃が絶対防御を引き起こさせてシールドエネルギーの残量を一気に2桁まで削り、そして吹き飛ばされた楯無は海の浅瀬に背中からたたきつけられる。そして急に海水が口のに入ろうとしたため急いで立ち上がるが、体が全体的に悲鳴を上げ始め、立てなくなったのか楯無は蒼流旋の切っ先を砂に刺して片膝立ちになってしまう。

 

(無理……、強すぎるわよ……!)

 

息を荒くして楯無は機龍を睨みつける。だが機龍はそれを冷たい目とでも言わんばかりのカメラアイで見返し、楯無は小さく舌打ちをする。

 

「航……。なんでここまで……!彼方、自分が何をしてるのか分かってるの……!?答えなさい!篠栗航!」

 

その時だ、機龍の胸部が開いたのだ。そこに見えるのは臼砲にも見える一つの砲門らしきもの。楯無はをそれを見たとき、冷や汗がたくさん出た。

 

「うそ……でしょ……。まさか……あれが使えるの……!?」

 

楯無はこのことについて1つだけ思い当たりがあった。それは今から40年以上も前に開発された、自衛隊が持ってた中で最強レベルといっても過言ではないほどの威力を持つ兵器が。

そして開いた3枚の胸部を構成していた装甲の端からエネルギーが中心に向けて流れ始める。そして訪問の前に白色に近い光球らしきものができ始める。だがそれはとても冷たく、周りの空気がその冷たさに凝結し、機龍の装甲表面に水滴ができ始めてるほどだ。

 

 

単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)、強制発動。絶対零度砲(アブソリュート・ゼロ)、スタンバイ。

 

 

そして光弾はどんどんと大きくなっていく。狙いはどう見ても楯無。

 

「逃げない、と……!」

 

楯無は蒼流旋を杖にしてそこから逃げようとするが、肋骨に激痛が走ったため小さい悲鳴とともに動きが急激に鈍ってしまう。

機龍はそんな楯無に無情にもロックオンを掛け、そして己の中の残ったシールドエネルギーの大半を引き換えに光球を大きくしていき……。

 

 

 

そして絶対零度砲(アブソリュート・ゼロ)が放たれた。




水面に写る月は砕け散る。
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