インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
機龍が1回目の電磁パルスを放ち、あちこちで電子関係を不調にしてる頃。織斑千冬率いる教員班は目の前にいるデュノア社の特殊部隊『ノワール』のISに乗っている者ともどもにいきなりのISの機能停止に驚きを隠せず、お互いがお互いこの状況でどうするか混乱の極みにたしようとしていた。
ノワールのISを纏っていない隊員がISをせめて仰向けにさせようとしてるが、その重量に女性とはいえ何人もが力を入れても起き上がる気配はない。
だがその中、1人だけ人間をやめるのではないかと思えるほどの馬鹿力を発揮しているのがいた。織斑千冬だ。
「ぬぅぅぅぅ……!!」
ISは訓練機、量産型でも1トンはある。それを纏ったまま近接ブレードを杖に、無理やり立ち上がろうとしてるのだ。その光景に敵も味方も完全にくぎ付けになっており、体を心配した真耶は声を荒げて千冬を止めようとした。
「織斑先生!そんな無茶したら体が!」
「こんなの問題ない!」
そしてブレードの支えがありながらも千冬は立ち上がり、その鬼を射殺すのではないかというような目つきでノワールをにらみつける。
「貴様らぁ……よくもこっちのISを使い物にならなくしてくれたな……!」
「い、いや、待ちなさいよ!こっちだって動かなくなってるのよ!?」
ノワールのリーダー格の女はそう狼狽しながら言うが、そんなの千冬からしたら試作機が暴発して仲間を巻き込んだだけという解釈にしかならず、彼女は足腰に力を入れてブレードを地面から抜き、そしてノワール相手に中段で構えた。
だがその装甲の重さ、バランスの悪さを自分の筋力などで補うもそれには限度がある。それを無視して千冬は動こうとしたが筋肉が大きく軋み、バランスを崩してブレードを地面に刺すことでどうにか保つ。
「織斑先生!」
「くぅぅ……強制解除!」
その言葉とともに千冬が纏っていた打鉄の装甲が弾けるかのように外され、そして弾ける装甲とともに千冬はISの下半身ブロックから飛ぶように外し、着地すると同時にその下半身ブロックが倒れる。そして砂浜に立っているのは打鉄を解除し、ISスーツを着た織斑千冬であった。
その右手には打鉄の時に持っていた近接ブレードを握っており、峰の部分を肩に当てて片手でそれを支えており、その無防備な姿でありながらも気迫でそれをカバーしている。
「さて、言わせて貰うが今ここで大人しく降伏するなら、それ相応の待遇で迎えてやろう。だが、もし何か攻撃をしてくるのならこれで殴ってでも貴様らを捕まえるぞ。さてどうする?」
そういって千冬は肩にかけていたブレードを刃から地面にたたきつけ、氷のような冷たい目でノワールの面々を睨みつける。その迫力にノワールの面々はもちろん、彼女の後ろにいた教師陣もその迫力に固唾を飲みこむ。
「さて、どうする?」
千冬の獣のような獰猛な笑みがノワールたちの動きをからめとる中、隊員のリーダーと周りの隊員が何かアイサインを行い、そして千冬の方を向く。
「答えはこうだ!」
そしてノワールのリーダーは、いつの間にか手に握っていた円筒状の物の頭についてるスイッチを押し、そして地面にたたきつける。するとそこから大量の煙幕が噴出し、そして教師、ノワールの面々を覆うほどの空間を作り出す。
この時千冬は何か毒物が含まれているのではないかと警戒したが、どうやら毒はないらしく、そのままブレードを強く握りしめて先ほどまでノワールの面々がいたところへと突っ込み、そしてブレードを振り下ろす。だが切り下ろしたところは何もなく、ただ波の音が聞こえるだけだ。
そのとき少し強めの風が吹いて煙幕をさらっていく。そしてそこにはノワールの面々がいない。どうやら海に逃げたのだろう。
「くそっ……逃げられたか……。……ん?」
この時、千冬はノワールがいたところに彼女らが使っていたISが3機転がっていた。2機はパイロットがすでにいなかったが1機だけ逃げるのが遅れたのだろう。おそらくあの短時間で強制解除することができず、そしてあまりの重さのために見捨てられたのだろう。両手のISのパーツを解除することはできているが、胴体や下半身に纏われているISが重りとなって動くことができない。
その中、ISを強制解除が終えた教師たちは寝転がったままの置いてけぼりをくらったノワールの隊員のもとへと寄り、そして千冬が近接ブレードの切っ先を彼女の頭頂部へと向ける。
「さて、貴様はどうする?」
「あのー。こ、降伏します……」
そして重さで寝転がったままの彼女はひきつった顔で両手を上げて、降伏のポーズをするのだった。
その氷の光弾は海を切り裂き、何キロと通って海を凍らせた。その一撃は海面から頭を出していたその生物さえも瞬時に凍らし、そしてその生物は自身が凍ったことも知らずにこの世を去っていく。
そして波の揺れとともに、光弾でできた氷の道は凍り付いた生物共々砕け散るのであった……。
その時楯無は、自分の目の前にできてる光弾が、己を殺すではないのかと恐怖していた。そこには40年前に、ゴジラに重傷を負わせるほどの破壊力を示した武器があるのだから。
そして自分めがけて放たれた光弾に目をつぶる楯無。この時悲鳴を上げなかったがもう上げる余裕がないのか、ただ強く目を固く閉ざすだけ。
だがしかし……。
「えっ……」
楯無は驚きを隠せなかった。機龍が
だが、楯無にあたることがなかったのだ。光弾は機龍から放たれると同時に、足元を凍らせながら楯無のもとに迫る。だがその軌道は右に逸れ、蒼流の装甲の一部もとい
そして数キロ凍らせ、何か変なのも巻き込んだりしてるが、それでも自分に被害が少ないことに強い疑問を持ってしまう。40年前のものはビルのような大きなものも瞬時に全体を凍らせ、そして分子レベルにまで崩壊してしまうものだ。
それが大きさが小さくなったとはいえ大の破壊力を誇るにもかかわらず、楯無にはISの損傷ぐらいしかダメージがない。絶対防御が働いたから助かったと思われるが、それでもいろいろとおかしいのだ。
だがこのとき楯無は気づいていなかった。首元に下げている勾玉が緋色に輝いてることに。
「キィィァァ゛……!?」
機龍は己を疑った。なぜ外したのか、ちゃんと標的にロックオンを掛けていたはず。だが現実は攻撃は外れており、楯無には凍傷の傷さえもない。
だが機龍は見誤ってた。現在右カメラアイが損傷しており、それが原因で標的との座標がわずかにずれたということを。楯無はシャルロットが行った行為によって助かったということになるのだが、誰もこのことを知ることはないだろう。
だが機龍はそんなのは思いつかず、ただ何かによって横に引っ張られたという感覚だけが残っていた。
「キィィァァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァ!」
機龍は楯無を潰そうと一歩踏み出すが、この時強い違和感を感じた。まるで足に大きな鉛を仕込まれたかのような重い足取り。だが機体には大きな異常は見られず、いったい何が己の体に起きているのか詳しく調べていくうちに、一つの結論にたどり着く。
この時機龍は気づいてしまったのだ、己のエネルギーがもう少ししかないのを。
「キィィ、ァァ゛ァ゛……」
機龍は納得いかなかった。ここまで暴れ続け、中の人間である航をここまでしたのに、最後は燃料切れ。
だが、思う存分暴れられて満足してるという気持ちもあり、そして再び“呉璽羅の自我”を外に出す方法も分かった。
そして機龍はふらつく足取りで楯無に近づく。すると楯無は足元がふらつきながらも蒼流旋を構え、まだ戦えるとでも言わんばかりに機龍をにらみつける。だが彼女の武装はこの蒼流旋だけで、バックユニットも弾切れをすでに起こしており、ナノマシンもほとんど機能していない。
「キィィ……」
そのなか機龍は鉛のように重い足で踏ん張り、そして尻尾を強く地面にたたきつける。
そして機龍は天に向けて大きく吠えた。
「キィィィァァァァァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァ!!!!!!」
「っ……!」
鼓膜を破壊するのではないかというほどの大音量で、機龍は吼える。
この咆哮を最後に機龍は前に項垂れ、カメラアイから赤い光が消え、その動きを停止した。
「とま、った……?やっと終わったのね……」
楯無も体の限界を迎えていたのか、糸が切れたかのようにその場に倒れてしまう。
「航……教えて……。お願いよ……」
そして楯無は意識を失ってしまう。
その後お互いのISは強制解放され、数分後千冬たちがその場に駆けつけてき、楯無は病院の使えるエリアに運ばれ、航は病院の中でも犯罪者などを幽閉するエリアへと入れられてしまうのだった……。
ここはIS学園から10数キロ離れた海域。そこに1つのボートが波を蹴るかのように高速で進んでいた。このボートにはIS学園から逃げ出したノワールの隊員が乗っており、その中で隊員たち全員は完全に疲れ果てていた。
ボートは自動操縦となっており、だれも操縦席にいない。
「織斑千冬、化け物過ぎるでしょあれ……」
「ですね……」
「あ、そういえば隊長。ISを3機、IS学園に置いてきてしまいましたが……」
「仕方ないわ。まああの女社長には、痛い目にあってもらいましょうかね」
「は、はぁ……」
この女はいったい何を考えてるのか、隊員たちはそう考えるが全く答えは出ないため、あきらめて海を見る。まだ時間は日本時間で午前3時になってない程度で、空は星空のためそこそこ明るいが、基本的に暗いことに変わりはない。
この後彼女らはさらに10キロ近く進んで、フランスに戻るための大型の船に乗り移る予定であったが、作戦が失敗も大失敗であったために戻るのが億劫になり、これからどうするかを軽く考えていた。
このくらい空気の中、ノワールの隊長格である金髪の女性、リーアが軽く手をたたいて全員の意識をそちらに向けさせる。
「この際は仕方ないわ。とりあえず今は母艦に戻りましょ。そのあとはそのあとで考えればいいし。とりあえず今はこの疲れを飛ばすために何か飲みましょう」
「なら私が中の冷蔵庫から飲み物持ってきますよ」
「お願いね」
そしてオレンジ色の髪をした女性がボートの中へと入る。そして入ったすぐのところに大きさが50センチ前後の小さい冷蔵庫が設置されており、その中に飲み物がいくつも入っていた。
「んっと、隊長はシャンパンで、ミーナはノンアルコール。ネオンは……ん?なんだこれ」
そのときオレンジ色の髪の女性、カミーユは冷蔵庫の中を照らす光で、床に何か白い液体みたいのがついていることに気付く。そして手にペンライトを持って照らすと、それはそこまで強い異臭はないものの、触ってみたらとても粘り気のあるものであり、いったい何なのか気味悪く感じた。
「さっさとここから出ようっと」
そして飲み物類を取ったカミーユが立ち上がった時、頭に何かがぶつかった感覚したため痛みでうずくまる。
「いった~。もう何なのよ……あれ?なんかさっきより天井が低い……」
この時強い違和感を感じた。先h度まで少し頭を下げる程度でどうにかなる高さだったのに、中腰よし少し上げたぐらいで何かが頭に当たる。
「チチチ……」
カミーユは強い悪寒を感じた。それは冷蔵庫の冷気とかではない、明らかな殺意を向けらえたときに近い悪寒。何もない、そうであってくれ……。そう願いながら彼女は恐る恐る天井にペンライトの光を当てると……。
そこには巨大な生物がいた。
「い、いやぁぁぁぁぁ!!!」
そして悲鳴ととともに中から逃げ出すカミーユ。周りもいったい何なのかと思って目を剥くが、そのとき中から何やら蠢く黒い影が見え、周りは顔を青くし始める。
そしてボトン!と大きな音を立てると共にその生物は船の中から現れた。体長1m前後。緑いろのでこぼこした表面を持ち、大きく膨らんでるのが頭なのだろうか、そこから尾にかけて下り坂のようになっている。そして口と思われる牙が2本1対出ており、その横には脚らしきものが3対6本生えていた。
「な、何よこれ……」
その生物は牙をカチカチとならしながら彼女たちにじわりじわりと近づいてきており、リーアは懐から拳銃を出してこの生物がいつ襲ってきてもいいように安全装置を外す。
「チチッ!」
その時だ、生物は尻尾みたいになってる先端部で床を強くたたいて飛び上がる。それに驚いたリーアは何発か銃で撃つも、銃弾は貫通しつつも生物は彼女の上にのしかかる。
「ひぃ!」
あまりの気持ち悪さに動きが止まるリーア。移動する際に出る白い液体のヌメリが、余計に彼女の思考を停止させており、生物は口らしき牙を彼女の首筋に当てて突き刺そうとするが、我に返った隊員が生物の横腹を思いっきり蹴飛ばし、生物はそのまま海へと落ちる。
「隊長!大丈夫ですか!?」
「ぁ……こ、ここは!?あの生物は!?」
我に返った隊長があたり一帯を見渡す姿を見て、隊員たちは安心したのか安堵の息を漏らす。
「よかった……。もうあれはいませんよ。海に叩き落しました」
「そう……よかった……」
だがそのとき、ボートのエンジンから変な音が聞こえたのだ。ゴリン、ガリッ、っと。そしてエンジンが停止したのかボートの移動速度は急激に落ち始め、100mも進まないうちに完全に動きが停止してしまう。
「ちょ、何が起きたの!?」
「わ、わかりません!ちょっとエンジンを見てきまs」
その時だ、エンジンを見てくるといった隊員が見たのは、先ほどの船の中へと通じる扉から、5匹ぐらい先ほどの生物が沸いて出てきたのだ。それに気づいた隊員も先ほどより顔を真っ青にしており。
『い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
彼女たちの悲鳴とともに飛び跳ねて襲い掛かる生物たち。彼女たちは懐にあった拳銃で撃つも全く効果がなく、次々と押し倒されていき、そして首元にその鋭い牙を深々と突き刺されてしまう。
あまりの激痛に意識が一瞬で失う者、抵抗しようともがくが次第に力を失っていき、ミイラのようになっていく者と様々だ。
その中でカミーユは、運転席の物陰に身をかがめて隠れていた。
「誰か……助けて……!」
仲間が次々と倒れていく中、彼女はただ恐怖で失禁しながらも、場所がばれないように悲鳴を押し殺していた。だが体の震えは止まらず、涙も止まらない。それで目を固く瞑っており、彼女は自分は石だと言い聞かせてこのばかりっさい動かずにいた。
(あれ、物音が止んだ……?)
この時カミーユはいきなり音が消えたことに強い疑惑が沸き、恐る恐る目を開ける。現在時間は、日本時間で午前4時。あれから1時間はこの場にい続けた彼女は、体がガタガタと震えながらも早く朝が来ないかと思いながら、その場に居続けた。だが、ズズッ、ズズッ、と思い何かが這いずり回るかのような物音がし、カミーユが声を押し殺して物陰から外をのぞく。
「っ……!」
そこにいたの例の生物だ。生物はこの一瞬で彼女がいることが分かったのか、先ほどよりもはやい速度でカミーユがいる運転席へと近づいていく。
「チチチ……」
そして生物“ショッキラス”は彼女がいるところに跳びかかった。
「ひぃ……!?いやぁぁぁぁぁ!!」
ここは静かな海。その悲鳴は、誰にも聞こえなかった……。
ここは日本最南端、沖乃鳥島沖の海溝。そこの光さえも届かぬ水深何千メートルという海底に、“それら”はいた。“それら”は泥や砂に埋もれ、そこら中にたくさんいびつな板をたくさん張り付けたかのようなの山となって多数存在しており、息をしている者は一切いない。
いや、息をしてなくても無理はないだろう。ここはその環境に適した生物以外を生かすことのない死の世界。そしてここら一体にある“それら”はすでに最初から息絶えていた。
だが最近息絶えたのではない。ずっと昔、それも何千年、いや何万年前かもしれない。だが“それらの骨や甲羅”は今もなお、この海底に存在し続けた。
そもそもこのたくさんの“それら”は5年から10年ほど前に起きた地震によって、上に被っていた砂や泥が落ちて地中から現れたのだ。おかげで数か月はここら一帯は砂や泥でまともに視界が聞かない状態となっていたのだが。
だが人間たちはこのことに気付いていない。ISが生まれて海洋、海底調査などの予算もISなどに一気に奪われたため、このようなものがあることを知らないのだ。
そしてこの大量の“それら”が眠る場所を、知っている人たちはこう呼んだ、“墓場”と。
だがその“それら”の中に、何やら1つだけ何やら岩礁のようになっているものが1つだけあった。
“彼”は夢を見ていた。万を超える凶鳥を相手にしてた不思議な夢を。
腹部は風穴が開いており、片手は己の技で焼き落としたため無く、それでも戦い続ける“彼”。そのおぼろげな記憶から見た夢は、まるで悪夢のように感じる。
ただ何のために戦ったのか覚えていない……。ただ、何か声を聴いたぐらいだ。
このとき、何か声が聞こえた。女の子の鳴き声だ。ただ“彼”は動く気になれず、小さく口から泡を漏らす。
懐かしい声だ……。どこで聞いたのだろうか……。
そして“彼”は、再び長い眠りについたのだった……。
ここは暗い深海。そこに大きく力強い鼓動が一つ、鳴り響いたのだった……。
えー、これで機龍暴走の回は終了です。なんかスッキリしない終わり方かもしれませんが、自分は何も後悔していません。
そしてずっと前から海に待機していたショッキラスの登場です。なおもっと前にちょくちょく出てたのに、やっと出番が着たおかげではしゃぎすぎましたね。まあ放置ですが。
あと最後のは、ね……?
なお来週も同じ時間に更新するので、お楽しみに!