インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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お久しぶりです。ゴジラ怪獣惑星を公開初日に見に行った妖刀です。最初あの姿、ギャレゴジかな?って思ってたけど、やっぱりアニゴジもちゃんとしたゴジラでしたね。



さてさて、本編どうぞ


紅椿

臨海学校2日目。今日は本来の目的である、各種装備試験運用とデータ取りが行われる。なお専用機持ちはその追加装備が多く、午前から行われても夕暮れまで行われたりため、とても大変らしい。

なお現在、生徒たちは旅館から離れたIS試験用のビーチに来ており、四方を切り立った崖に囲まれている。まあ、ちゃんと出入り口はあるから問題ないが、ここを閉じれば周りからは撮影などがされないため、彼女たちのプライバシーや専用機の情報が漏れないと言ったメリットがあるという、らしい。

 

「……時間までに全員そろったな。さて、各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは各専用パーツのテストだ。迅速に行え」

 

はーい、と返事する生徒たち。現在ここには1年の生徒が全員並んでいるため、とても壮観な光景だ。まあそんな彼女たちも千冬の鶴の一声で一斉に動き出し、一夏たちは専用機組で固まって動いていた。なお航は今は専用機が打鉄だが、一応専用機持ちってことで一夏たちと行動している。

 

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

 

「はい?」

 

千冬に呼ばれ、箒は首をかしげて千冬の元へ向かう。

 

「あの、どうしたんですか?」

 

「言ってなかったな。お前には専用―――」

 

「ちーーーちゃーーーーーーん!!!!」

 

その時だ。ズドドドドと何か砂煙を巻き上げながらこちらに向けて向かってきてるのがあるのだ。それが何なのかわからないが、千冬は頭を抱えてため息を吐き、箒は少し顔を青くして2、3歩下がる。

そして姿が見えてきたとき、生徒たちはその異様な姿に目を疑った。不思議な国のアリスの様なドレスに、機械で出来た兎の耳を付けた、紫色の髪をした女性がすごい勢いでこちらに向かってきてるのだから。

そんな女性が一目散に千冬めがけて突っ込んでくる。生徒たちは危ないと思ったが、千冬のストレートが女性の顔面を完全にとらえたのだ。おかげでそのまま直撃し、女性は「げひょう!?」というなぞの悲鳴を上げ、そのまま地面に倒れる。

 

「何の様だ、束」

 

「えへへ~、来ちゃった~」

 

そういう女性、束は子供の様な笑みを浮かべて千冬に近寄る。だがそれを見ていた周りは、千冬の言葉に反応し、彼女がいったい何者かわかったのか、一気にざわめきだす。

 

「束……え、篠ノ之束博士……!?」

 

「え、うそ……、本物!?」

 

「束。周りが困惑してるから自己紹介しろ」

 

「はーい。篠ノ之束だよー。これでいい?」

 

「はぁ……お前は……」

 

あまりの自己紹介に頭を抱える千冬。

彼女の名前は篠ノ之束。ISを作り出した人間であり、織斑姉弟の幼馴染でもある。

そんな束は周りの事なんぞ興味なさげにしており、ただ周りを少し見渡す。すると彼女の妹である箒が目に入り、地を蹴って一気に彼女の元へと駆け寄った。

 

「箒ちゃーん!元気にしてたー!?ほらー、仲良しのハグしようよーハグハグ―」

 

「いい加減にしてください!」

 

「げふっ!うぅ……まさか柄頭で殴ってくるなんて……」

 

束は一の間にか握ってた箒の刀の柄頭で顎を殴られたが、割とピンピンとしており、痛みを感じてるようにも見えない。

殴られた勢いで吹き飛ばされた際に着いた砂を払い、さっさと自分の目的に移ろうとする束。

 

「ねえねえ箒ちゃん。今日は箒ちゃんに渡したいものが……おやぁ?」

 

この時束は箒の近くに立っていた航が目に入り、ニヤァと口角が上がる。それに気づいた航は少し目を細めるが、束はそんなこと気にせず彼の元へと近寄った。

 

「わーくん久しぶりだねぇ。元気にしてた?」

 

束が航に笑みを向けるが、その目は全く笑っておらず、むしろ何か品定めしてるかのような、まるで蛇二睨みつけられたかのような感覚が航に襲い掛かる。それに冷や汗がドバっと出る航だが、どうにか表情を変えずに彼女に向き合った。

 

「一応、元気ですよ」

 

「へーそうなんだー。えーっと、日輪だっけ?あの子が消えて陰鬱としてたのにねー」

 

それを聞いたとき、航の眉がピクリと動いた。自然体だった手も指がゆっくりと握りこぶしを作り出し、ギョロリとした目で束をにらみつける。

周りも航の雰囲気が一気に変わったことにざわめきだすが、その中でも一夏と鈴、箒が一気に顔を真っ青にする。

そうだ。束は自ら航の地雷を踏み抜きに行ったのだ。

 

「ねー、あの子に会いたいと思わない?」

 

「…どういう意味です?」

 

それを聞いたとき、束は演技みたいな大きなため息を吐いて、やれやれと首を横に振る。

 

「だーかーらー、私があの子の居場所知ってるって言ってるの。Do you understand?」

 

航の瞳が小さくなり四白眼になっていく。それを見た束は口元がニタァと口角が上がった。

周りは何が起きるのか遠くから見ていたが、一夏、箒、鈴はこれを聞いてただオロオロするばかりだ。

 

「…それを言って何するつもりだ?俺に…教えてくれるのか……?」

 

「はぁ?私が居場所教えると思ったー?残念でしたー。そんなわけないじゃんバーカバーカ。そんな頭だから親も殺されるんだよー」

 

そう笑顔で言い切る。

この時、空気が凍り付いたような気がした。千冬は束を竦めようとしたが、その瞬間だった。

航は一瞬にして束に接近し、大きく開いた手を彼女の顔めがけて突き出したのだ。そう、着きだしたのだ。

だがそれは見えないナニカによって阻まれ、航の手は束にあと5センチというところまで止まってしまい、バシバシと紫電が散り、それが航の肌に小さく傷を作っていく。

それを見た束は小さくため息を吐いて肩を落とす。そして落胆した目で航を見つめた。

 

「そんなちっぽけな攻撃で私に届くわけないじゃん。知性を捨てた獣なんかミジンコより怖くないっての」

 

笑みを浮かべたままだが、その目の奥にギョロリと狂気を孕んだ眼が航をにらみつける。そしてどこからとなく展開したサブアームが航の頭を掴み、そのまま彼を持ち上げた。そしてアームの先に付いてるマニピュレータが、ギチギチと航の頭を締め上げる。

航の断末魔が響くがそれでも力を緩める気のない束。それを見た千冬は出席簿を束の後頭部に向け、そして殺気を乗せた声で彼女に声をかけた。

 

「束、やめろ。それ以上するなら貴様を」

 

「もー、わかってるよちーちゃん」

 

束はニコニコと笑顔で千冬の方を向き、ヒラヒラと手を振る。そして再び航の方を向いて顔を彼の方に近づけた。

 

「私にこのこと吐かせたいならもっと知能を付けてきな。出来そこないが」

 

そしてサブアームを高く伸ばし、そのまま勢いよく海に向けて航を投げ飛ばした。40m近く飛ばされた航は、海面で何度かバウンドした後、そのまま大きな水柱を上げ、沈む。

先ほどの光景を見た生徒たちはあまりにも残虐な姿に一気に顔を青くし、何人か小さく悲鳴を上げる。だが束はそんなことを気にせずニコニコと笑顔を浮かべたままだが、この時千冬が出席簿で束に振りかかる。だがそれはすんなりと躱され、束は一瞬で3m近く距離をとった。

 

「もー。ちーちゃんったら、いきなり何なのさ」

 

「束、これはどういうつもりだ」

 

「そ、そうです、姉さん。なんでいきなり航を―――」

 

この時束は、見つけた箒めがけて一直線に突っ込んだ抱きしめる。箒もいきなりの事で対応し切れず、妹以上に大きな胸を箒の顔に押し付ける。

 

「い、いい加減にしてください!」

 

「げふぅ!?」

 

箒のボディーブローで変な悲鳴を上げた束は、鳩尾を抑えながらよろよろと離れ、プルプルと震えている。箒もいきなりの事で自身の体を抱きしめて束をにらみつけていた。

 

「それよりも姉さん!なんで航にあんなことを」

 

「あんなこと?あんなことってどういうことかなー?そもそも箒ちゃんアレの事嫌いじゃなかったのー?心配するなんておかしいなー」

 

「そ、そんなわけ…」

 

「おかしくないのかなー?ねぇ?箒ちゃん?」

 

箒の肩を持ち、ニタニタと笑みを浮かべた顔を箒の顔に近づける束。その不気味な、とても恐ろしい表情に箒は泣き出しそうな表情を浮かべ、引き剥がそうとするが、先ほどより強い力で拘束されており、逃げることができずに小さい悲鳴を上げることしかできなくなってる。

 

「だあぁぁ!クソが!」

 

だがその時、航が怒りの形相でザバザバと音を立てながら砂浜に戻ってくる。

 

「航、大丈夫か!?」

 

「問題ない!それにそこそこ頭も冷えた!」

 

そうは言うが鋭い目つきで束を見つめる航。一夏はこの状態をどうにかしたいと思ったが、野生の勘が働いたのか、間に入って止めようとするのをやめる。

 

「いっくん、いい勘だね。流石に間に入られたら私怒ってたかなー」

 

笑顔を浮かべているが目が笑っておらず、それに気づいた一夏は背筋に氷柱が刺されたかのような悪寒に襲われた。

束はそのまま2人に興味を無くしたのか、箒の方を向いて彼女の元へと再び寄る箒はそれが怖いのか、1歩2歩下がるが、束は彼女の手を掴んで一気に引き寄せる。

 

「箒ちゃん、私ね、箒ちゃんにプレゼントがあるんだー」

 

「プレ、ゼント……?」

 

一体何を言ってるのか。そう思ってた時に束がパチンと指を鳴らす。すると何かが高速でこの場に落ちてきたのだ。それに気づいた生徒たちは一斉にその場から逃げ出す。そしてズドンッ!と言う大きな音と共にその物体は砂浜に刺さり、砂塵が舞い上がり、それが去った後に現れたのは銀色のひし形の物体だった。

だがそれは束が何かしたのかホログラムの様に上の方から消え去っていく。

そして中から出てきたのは“紅”だった。

 

「じゃじゃーん。第4世代IS“紅椿”だよ!」

 

束がそういった時、周りが一斉にざわめいた。

第4世代IS。それはまだISの開発陣がたどり着いていない境地。現在ISは最新でも第3世代が主流であり、第4世代はどうやるのかコンセプトすら立っていなかったのだ。それを篠ノ之束はさっさと開発し、この場で出したのだ。これがどういうことを意味するか分かってるのかどうか分からないが、束はただこの場でニコニコとしている。

 

「箒ちゃん。これをプレゼントするね」

 

「え、何で…私に…?」

 

「何でって何で?受け取らないの?」

 

「だって私はISを頼んだりは……」

 

「そんなこと言わずにさ。ね?」

 

束は酷く困惑している箒のことなんか知らず、無理やりでも箒に紅椿を押し付けようとする。だが箒が受け取らないことにイラつきだしたのか、少し言葉が強くなってきていたが、それでも無理やり押さえつけて極力優しい言い方で話す。

 

「箒ちゃん。あのトンボが出てきたときに自身が無力って思ったことないの?」

 

「そ、それは……」

 

箒は束から目をそらした。学年別タッグトーナメントの時、箒は一夏たちが戦う中、自分は何もできずに逃げることしかできないことをとても恨んだ。自分に専用機があれば一夏の援護ができたかもしれない。

そのため箒は今日まで、訓練機を借りては自主練や一夏たちと模擬戦をしたりしており、メキメキと実力をつけ始めていたのだ。おかげで訓練機ながら実力は一般の生徒たちでは太刀打ちするのが難しいほどに強いものになっていたのだ。

そして現在、さらに力を付けるための道具である“専用機”が目の前にある。これを手に入れれば一夏と肩を並べられる。箒は紅椿に手を伸ばし……ひっこめた。

 

「姉さん!わ、私は専用機とかなくても強くなるつもりです!だからそう押し付けられても、困ります……」

 

箒の言った言葉に束は驚いていた。まさかいらないと言われたため、軽くどうしようかと思ったが、()()()()()()()()()のためにも、これを使ってもらわないといけない。そのため彼女は箒の元に近づき、耳元に口を近づけた。

 

「ふーん。そうなんだー。ならば……」

 

 

嫌でも使わざるを得ない様にしてあげる

 

 

「えっ……」

 

箒はこの時、束が人間ではないように感じた。束の浮かべる笑みが、昔読んだ怖い本に出てくるナニカに重なり、一気に鳥肌が立ったのだ。

一体何をする気なのか。それを聞こうとしたら、真耶が焦った表情でこちらに走ってきたのだ。

 

「た、たた、大変です~!」

 

途中こけそうになってるが、それでもどうにかバランスをとってここまで走る。

 

「山田先生、何があったんです?」

 

「はぁはぁ……これを見てください」

 

そういって千冬に投影ディスプレイを渡し、千冬が内容を見た時、顔が一気に険しい物へと変わっていく。

 

「特A級……!?これはどういうことだ……!」

 

「それで専用機持ち達に、と……」

 

「そうか……全員聞け!今回の作業は急遽中止!総員すぐに旅館に戻り部屋に待機だ!」

 

千冬がそういうと、生徒たちが一気にざわめきだした。彼女たちからしたら言った否何が起きたのか分からないし、千冬もその詳細を教えないため、一気に不安になってしまうのだ。おかげで移動ももたつき、千冬はイライラしたのか一喝した。

 

「さっさとしろ!以後、許可なく部屋を出た者は身柄を我々で拘束する。いいな!」

 

『はっはい!』

 

千冬の怒号に一斉に返事してさっさと向かう生徒たち。

 

「そして専用機持ちは私に着いてこい!……篠ノ之もだ!」

 

千冬がそう言う中、ただ束はニタァと笑みを浮かべていた。




姿を現れた篠ノ之束。彼女の目的は。そして千冬が受け取った物とは。次回に続く。


では感想、誤字羅出現報告(こっちは少ない方がいいな)待ってます

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