インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも。妖刀です。久々に割と早く完成したので投稿します。

いきなりですが、皆さんは平成モゲラことMOGERAの正式名称を言えますか?自分は未だうろ覚えです。まあ、ゴジラアイランドに出てきたスペースゴジラよりはマシなんでしょうけど……。


まあそんなこんなで本編どうぞ!


黒き者と銀の天使

手から放たれた光線が消えた時、そこに機龍はいなかった。破壊できたのか。そう思い彼らは赤いモノアイが周りを見渡す。

 

 

ザザッ……ザザッ……

 

 

「……!?」

 

だがその時、3機はカメラアイにいきなりノイズが走った。それに戸惑いを隠せないのか、せわしなくカメラアイを動かす。一体何があったのか、それが彼らには分らなかった。だがしかし、倒したと思い、あまり気にしない様にする。

しかしそれを、彼らは慢心と気づくには遅かった。

そう、後ろに銀色の巨体がいるのに気づかなかったのだ。

ソレは椀部レールガンの砲身を縮め、そこからメーサーブレードを出してそれを黒い機体の背中に思いっきり突き刺した。

 

「……!」

 

黒い機体の背部にはメーサーブレードが深く突き刺さっており、メキメキと無理やり押し込まれていく音が今も響く。

 

「キィィィァァァァァ……」

 

黒い機体の後ろにはバックユニットを失った機龍がおり、黄色のカメラアイが黒い機体を睨みつけていた。

航はあの時、とっさに機龍のバックユニットを切り離し、高機動形態になって光線を逃れていたのだ。そして取り残されたバックユニットは爆発。その際に、いつの間にか装填されていたチャフ入りミサイルも爆発し、あたり一帯にこのチャフがばら撒かれたのだ。

このチャフは刀奈が使ったものに近い、暴走した機龍が周りを見失うほどの強力なもの。それをここらで使われて、黒い機体たちは完全に目を奪われたも同然であった。

だがこれは自分にも効くもので、現在航は意図的ではないとはいえ、自ら撒いたチャフで周りが見えてない。だが機龍は()()()()()()おり、その情報を航の視覚情報に流し込む。それで航は強い吐き気を感じたが、完全に視えるため今はこれを頼りに黒い機体めがけて突っ込み、そして左椀部のメーサーブレードを突き刺したというわけだ。

 

「……!……!」

 

背中から刺された黒い機体は逃れようともがくが、機龍が右手でその肩を掴み、左腕を上に振り上げると、メーサーブレードが金属を切り裂く音を立てながら黒い機体の背中から後頭部を切り上げた。

それにより黒い機体のカメラアイの光が無くなり、もがいていた腕もだらりと下がる。興味を無くした機龍はそれの掴んでいた肩を握りつぶし、そして海に投げ捨て、残り2体の黒い機体を睨みつけた。

2機の黒い機体はまだカメラアイが回復しておらず、せわしなくカメラアイが無造作に動いており、追撃を駆けるなら今しかないだろう。

機龍はもう一方の光線を放つ黒い機体めがけて突っ込むが、その時、残ってた腕の鋭い機体がこちらを向いたのだ。そしてその鋭い腕が輝き始め、そこからメーサーの様な光線が機龍めがけて放たれた。

だがそれにいち早く反応し、機龍はすぐにその場から離脱してとりあえず椀部レールガンを連射し、大砲は使わせないように牽制する。

 

「あの機体も遠距離系持ってるのかよ。これじゃこの黒いの潰してもこの場から逃げれないってことか……」

 

航はさっさとこの場から離脱し、一夏たちの元へと向かいたかった。だがこの黒い機体たちが邪魔するというのならば、すべて撃破するしか進むべき道は無い。それに、チャフを巻いても既に対応されてるということは、嫌でも戦闘するしか方法はないが。

ただ航はイラついた。仲間の援護に向かうのをここまで邪魔する奴らに。機龍もそれに反応し、小さく唸り声を上げる。そして黒い機体をにらみつけ、大きく叫んだ。

 

「邪魔だぁ!どけぇえええええ!!!!」

 

「キィィァァアアアア!!!!」

 

それに呼応した機龍の目が輝き、吼える。そしてスラスターの光が爆発したかのように輝き、大砲持ちの方めがけて突っ込む。大砲型もそれに反応し、両手から光弾を連射するが、機龍はそれを躱そうとせず、わざと受けながら直進する。

光弾は直撃するも、堅牢な装甲にダメージをあまり与えれないことを知り、大砲型は再び腕を連結し、高出力の光線を放つ。

光線が機龍を飲み込んだように見えたが、機龍は瞬間移動と言わんばかりの速度で大砲型の後ろに回り込み、そして大砲型の両二の腕を掴み……。

 

「ぶっ壊れろぉ!」

 

力任せに引っ張られたおかげで、両腕が肩から引き千切れ、大砲型は逃げようと海面めがけて背中のスラスターを吹かす。だが機龍がそれを逃がさず、即座に追いかけ、後ろからその首を掴む。大砲型は逃げようとスラスターを吹かすも、邪魔と思われたのか、機龍が空いてる片手でスラスターを切り裂いて破壊。

 

「っ!」

 

その時、腕の鋭い黒い機体から光線が放たれたため、即座に手に持ってた黒い機体を盾にし、最後の目標である腕の鋭い奴めがけて突っ込んだ。光線を放つ黒い機体だが、それらのほとんどを大破した黒い機体で受け止められ、全くダメージにもなってない。それでどんどん距離を詰められ、機龍が空いてる腕からメーサーブレードを展開。そのまま突き刺そうとした。

その時、黒い機体の鋭い腕が真ん中から真っ二つに割れ、そこから1本ずつミサイルが回転しながら飛んできたのだ。それも手に持ってた黒い機体で受けるが、ミサイルは黒い機体に深々と突き刺さり、機龍を飲み込まんと言わんばかりの大爆発を起こしたのだ。

 

「キィァァアアア!!」

 

その爆炎に飲み込まれながらも、機龍は椀部レールガンを連射し、黒い機体のカメラアイを破壊する。そして至近距離から体を回転させ、尻尾で相手の胴を薙ぎ払ったのだ。その衝撃で黒い機体の左腕が吹き飛び、相手は錐揉み状態で飛ばされる。

だがしかし、右手から再び先ほどのミサイルが放たれ、それが機龍の顔面に直撃して大爆発を起こした。

 

「キィィァアアア……」

 

機龍の右カメラアイは損傷し、中のカメラレンズが丸見えだ。だがそれでも戦闘には一応支障はなく、まだ十分に戦える。

だが煙が晴れたころには敵の姿が無く、恐らく水中に逃げ込んだのだろう。

それを逃がさんと大腿部スラスターを展開させるが、航は元々の任務を思い出し、その場に踏みとどまった。

 

「クソがぁあああああ!!!」

 

「キィィィァァァアアアアアア!!!!!」

 

怒りを天に向けて吼え、機龍の背びれに紫電が走る。

自分の中にあるナニカが納得いかないと叫ぶ。それは航も同感で、やっぱり追ってしまおうかと思ってしまう。

だがそのとき、音響センサーがとある音を拾った。それは爆音だ。しかも1つ2つではなく、連鎖的に起きる大爆発。いったい何なのか思ったが、嫌な予感がした航は即座に元の進路に戻り、背部と大腿部スラスターで高速で進む。

そして10分も経たないうちに目的の場所に着いたが、それはもう酷いものであった。足元にある小島は割れ、海も荒れている。そして彼は見てしまった。

 

「一夏ぁ……一夏ぁ……!」

 

血に汚れ、ボロボロになった一夏を抱きしめ、涙で顔を濡らす箒。それを見た航は目をそらしそうになるが、彼は空にいる機体に目を向ける。

 

「La……♪」

 

そんな彼らを見下す銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)は、楽しそうな音を上げ、白銀の羽をユラリと動かした。

 

 

 

 

 

航が出撃して間もないころ、一夏と箒は福音討伐に向けて超高速で飛んでいた。

 

「なあ、箒。何で専用機なんか貰ったんだ?お前、専用機なんかなくても強くなる、って言ってたのに」

 

「いきなり何を言うかと思えば……。姉さんが作ってくれた機体だぞ。これほど最高なものは無い」

 

「ん……?」

 

「どうした?」

 

「いや、何でもない……」

 

「ふふ、変な一夏だな。まあ、大船に乗った気でいろ」

 

そんな一夏を見て笑う箒。だが一夏は、そんな箒に怪訝な目を向けてしまう。束と会った最初の箒はまだ慎重だったが、今の箒はまるで大胆。別の人格になったのではないのかと思うほどだった。

だがそれを聞く勇気もなく、一夏はただそんな箒に向けて、申し訳なく思うも、警戒を続けていた。

 

『織斑君、篠ノ之さん、聞こえますか?』

 

その時、作戦室にいる真耶から通信が入った。

 

『現在、篠栗君も機龍を装備してそちらに向かっています。ですので―――』

 

真耶からの説明を聞き、一夏は航が来ることをとても嬉しく思った。あの機体ならどうにかできる。それだけの期待を機龍は持っている。

だがそれを聞いてる時、箒が俯いてるのを一夏は知らなかった。

 

「箒、航もこちらに向かってるって。これならまだ……箒?」

 

一夏は箒が俯いてるのに気づいた。一体何なのか、一夏は不安に思ったが、箒の目が怒気を孕んでることに気付くのは遅すぎた。

 

「……らん」

 

「えっ?」

 

「あいつからの援護なんかいらん!私たちで銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)を倒すんだ!」

 

「ほ、箒……!?」

 

箒はとても怒っていた。なんで怒ってるのか理解できず、一夏はただただ困惑することしかできない。だがこれ以上、航の話題を出すのは不味いと思い、一夏はどうにか話題を変えようと脳をフル回転させる。

だがそうしてる間にも目標との距離は着々と縮まっていき、ついに福音の姿をハイパーセンサーがとらえるほどにまでなった。

資料で見たとはいえ、銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)はその名の通り、全身銀色をしており、そして頭からは巨大な羽が1対生えていた。

その巨大な羽はスラスター兼広範囲射撃武器となっているという。

 

(資料には他方位同時射撃って書いてたけど、いったいどんなのなんだ?機龍とかのミサイルの嵐をイメージすればいいのか?)

 

そう思ってたが、すでに時間は無い。分からなければ自分の目で確かめるだけだ、と一夏は意気込む。

 

「一夏、行くぞ。目標との接触は10秒後だ」

 

「ああ、頼む!」

 

ギチッと雪片二型の柄を強く握りしめ、いつでも零落白夜を使えるようにしておく。そして瞬時加速を使い、それと同時に零落白夜を起動。そのまま銀の福音を切り裂こうとした

 

「敵機確認。迎撃モードに移行。銀の鐘(シルバー・ベル)を起動します」

 

「なっ!?」

 

一般回線(オープン・チャンネル)から聞こえたのは、抑揚のない機械音声。嫌な予感がする、と一夏は思ったが、それはすぐに現実のものとなる。

銀の福音は刃が当たる直前に体を回転させて躱し、そして翼に付いてる多数のスラスターを使って2人から一気に距離を開けた。

 

「なっ、あの翼でこんなに!?」

 

銀の福音の翼は他の多方向推進装置(マルチスラスター)と違い、圧倒的高出力を誇り、さらにはこれで置いて精密な加速や機動を描くことができるのだ。そしてその速度は、前に暴走した機龍をほうふつさせる速度であり、一夏は一筋の冷や汗を流す。

 

「箒!援護頼む!」

 

「任せろ!」

 

下手に時間をかければこちらが圧倒的不利になる。一夏は再び箒に背中を預け、再び銀の福音へと斬りかかる。だがしかし、銀の福音は2人の攻撃を流水に投げれる木の葉のごとく躱し続け、有効な一撃をいまだに決めれずにいた。

一夏はまだ完全に零落白を使いこなせてるわけではない。そのためずっと連続で使い続けてしまい、減っていくシールドエネルギーを気にしてしまい、大振りの一振りをしてしまう。それを見逃す福音でもなく、翼のスラスター部の近くが開き、そして翼を一夏に向けて前に迫り出す。

 

「なん……っ!?」

 

一夏と箒が見たのは砲口だった。福音が翼に積んでる42の砲口は全て一夏の方を向き、そこから光の雨と言わんばかりの大量のエネルギー弾が吐き出され、それに2人は飲み込まれた。

 

「うおおおお!?」

 

一夏は送られてくる情報を頼りに必死に回避行動を続けるが、それでも間に合わずに何発も弾をくらってしまう。しかもその弾は、着弾すると同時に起爆し、その爆圧でもシールドエネルギーを削ってきたのだ。

それでもどうにか一夏は雨の中かから抜け出した一夏は、どうにか先に抜けきった箒と合流して息を整える。

 

「箒、左右から攻めるぞ。左は頼んだ!」

 

「了解した!」

 

2人は弾幕を回避しながらも銀の福音との距離を少しずつ詰めるが、攻撃が一切当たらない。それだけあのスタスターは見た目に反して相当な性能なのだろう。

 

「La……♪」

 

そのとき銀の福音は羽を大きく開き、その場で1回転しながら弾幕をばら撒く。完全な面攻撃に2人は驚いたが、先ほどよりは弾幕が薄くなるため、間を潜り抜けながらチャンスをうかがう。

 

「一夏!私が動きを止める!」

 

「わかった!」

 

箒は福音の前に躍り出てて、展開装甲によって機動力を向上させて、弾幕の中を潜り抜けていく。流石に不味いと思ったのか、福音は羽を箒に向けて前面展開し、そこからエネルギー弾を一斉射した。

 

「そこだ!」

 

箒は目の前に放たれた弾幕に対し、空裂と雨月を振るい、エネルギーの刃をぶつけたことにより大爆発が起きる。そして箒は炎を突っ切り、福音の目の前に現れた。

 

「はぁぁぁ!」

 

箒は銀の福音の懐に入り、空裂で右切り上げをする。だが銀の福音は箒の攻撃を躱し、そして箒を囮に後ろに回り込んでいた一夏の横薙ぎも掠りもせずに躱しきった。

 

「2人同時の攻撃を……!?」

 

これすらも躱すのか。一夏がそう思った時、首に衝撃が走った。

銀の福音は一夏の首を掴み、そして鳩尾に拳を一回叩き込んだ後、一夏こと体を回転させ、そのまま海に向けて叩き落した。

 

「うわああああ!」

 

しかし一夏はスラスター制御で体勢を立て直したおかげで海に落ちず、そして空にいる銀の福音を睨みつける。

 

「くそっ……!え、船……!?」

 

一夏は自分たちの戦ってる下に、船がいることに今さら気づいた。恐らく密漁船なのだろうが、このまま巻き込んでしまうのはとても気分が悪い。そのためさっさと逃げてもらうためにも声を上げたが、それを一夏はすぐに後悔する。

 

「おい!早くここから……っ!?なんだよこれ……!」

 

船にいたのは人間ではなかった。いや、人間もいたが、すでに死に絶えており、ミイラの様な姿になっている。それを見た一夏は一気に吐き気がし、そしてそのまま嘔吐してしまう。

そのとき、死骸の隣にあった緑色の物が動いたが、一夏はそれに気づいていない。そして緑の物体が尻尾で床を叩き、一夏めがけて一気に飛びついた。

 

「うわああああ!?」

 

「キチチチチチ」

 

一夏は緑の物体“ショッキラス”に驚き、一瞬パニックになってしまう。ショッキラスはそのまま鋭い牙を一夏に刺そうとしたが、ISのシールドがそれを防ぎ、逆に牙が1本折れたことに驚いたショッキラスは、意地でももう1本を刺そうと何回も攻撃してくる。一夏は振りほどこうとその場で暴れまわるが、ふいに操縦を誤り、そのまま海に落ちてしまう。

 

「しまっ……くそ、離れろぉおおお!」

 

一夏は力を振り絞り、無理やりショッキラスを引きはがした後、雪片二型で真っ二つに切り裂いた。死骸はそのまま海の深くへ沈んでいき、一夏はそのまま海上に上がろうとしたとき、船の底にショッキラスが何匹もへばりついてるのに気づく。

 

「っ……!!!!」

 

悲鳴すらも忘れ、一心不乱で海上に逃げる一夏。寸のところでショッキラスにへばりつかれるのは免れたが、上空から銀の鐘の光弾が降り注ぎ、それが一夏に襲い掛かる

 

「うわああああああ!」

 

光弾の雨はそのまま船すらも粉々に破壊し、白式のシールドエネルギーもごっそりと奪い取る。いや、零落白夜も使ってたこともあり、もうエネルギーは限界となってしまい、零落白夜があと1回使えるか使えないかぎりぎりにまでなってしまう。

 

「一夏!」

 

箒は空裂と雨月からエネルギー波を放ち、福音はそれに気づいて攻撃を中断。そして彼女から距離を取り、その間に箒は一夏の元へと近寄る。一夏のシールドエネルギーはもう少なく、零落白夜も使える回数が3回歩かないかだ。

 

「航……いつ来るんだよ……!」

 

一夏は航が早く来るのを待っていた。あれがあれば一発逆転が可能だろうと思っており、そのためにもこのエネルギーを節約しなければならない。逃げれば銀の福音がどこ行くかわからないため、一夏はこの場から逃げることはできなかった。

さっさと切り倒したいがそれができない。だから我慢の強いられる戦いだったが、いい加減我慢できないのか、箒がスラスターを吹かし、福音目がけて飛んだ。

 

「こんな奴!この紅椿の錆びにしてくれる!」

 

「待て、箒!箒ぃ!」

 

箒は一夏の制止を振り切り、銀の福音めがけて突っ込んで空裂、雨月を振う。だが銀の福音はその刃を数mmって言うスキマだけを残しながら躱し、そのまま放たれるエネルギー刃もスイスイと躱していく。

 

「なぜだ!なぜ当たらない!こんなに近いはずなのに!」

 

箒は焦っていた。こんな高性能機を使って仕留められないことに。一夏にカッコいいとこ見せれないことに。そして、航が来てしまうことに。ひたすら2振りを振うが、銀の福音には一切当たらず、それどころか見切られてしまい、腹に思いっきり蹴りを入れられそのまま吹き飛ばされる。

 

「くっ!……しまっ」

 

箒が見たのは、銀の福音から放たれた弾幕の雨だ。万事休す、そう思い、目を閉じようとしたら……。

 

「箒ぃ!」

 

「えっ……?」

 

一夏は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使い、箒と銀の福音の間に入り、とっさに箒をかばった。福音の弾幕が雨の様に降り注ぎ、白式のシールドエネルギーを削り落とす。それでも銀の鐘は終わらず、一夏の体にも光弾が当たる。だが一夏はそれでも逃げず、絶対防御がきれても箒をかばい続けた。

そして弾幕が消え、箒は恐る恐る目を開ける。すると目の前にいたのは、あちこちから血を流し、それでも箒をかばい続けた一夏がいた。もう彼の眼には光が無く、今にも倒れてしまいそうになってるが、それでも一夏は立ち続けた。

 

「いち、か……?」

 

「ほう……き……。ぶ、じ……」

 

一夏は小さく笑った。箒が怪我してない。それだけでも良かった。そしてボロボロの手で彼女に触れようと手を伸ばす。

だがしかし、白式が限界を超えたのか強制的に格納され、飛ぶ力を失った一夏は、そのまま海に向けて落っこちる。それを箒は急いで抱きかかえるが、紅椿の装甲に一夏の血が滴り、紅に赤が混じる。

 

「一夏……頼む、目を開けてくれ……。一夏ぁ……一夏ぁ……!」

 

自分のせいだ。自分が……。箒はただ己の行いを悔やんだ。だがそれで一夏が目覚めるわけでもなく、むしろピンチの状態にあることに変わりはない。

その時、紅椿が新たなISの反応を拾い、その方向を向く。するとそこには四式機龍がいた。

今更何のために来たのか。箒の中には憎悪の炎が燃え上がり始めていた。




この時、日本の海は大きく荒れるだろう。だがそれは更なる大波へと変貌するのを誰も知らない……

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