インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも。リアルの方も結構忙しくなってきた妖刀です。まあ、そうは言っても割と頑張れてるので問題ないですけどね。

今回はまあ、タイトル通りの事です。では本編どうぞ!


主任襲来

あれから千冬は旅館の中や周りを探索、そして電話も何回もかけたが、束を一切見つけることはできなかった。そして現在は作戦司令部にて、1本の電話とやり取りをしていた。

 

「……はい。はい。分かりました。では失礼します」

 

スマホを切り、千冬はため息を吐くと、そのまま近くにあった椅子に腰かける。

 

「海自が現在福音の探索をしてる。そして我々には待機命令、か……」

 

「仕方ありませんよ。織斑君は一命をとりとめたとはいえ、重傷を負ってますし。篠ノ之さんはそれで病んでしまって戦闘不能。篠栗君も右腕の負傷ですからね。だから今はおとなしくしてもらってますし」

 

同じく司令部にいた真耶が千冬にコーヒーを渡す。一応専用機たちにも待機命令を出しているが、一夏の事を思ってる者たちがいつ暴走するか分からない。

そして千冬は、手元にあった資料を手に取りペラペラとめくる。そこには航が戦った黒い機体の情報が書かれており、その内容にため息しか出ない。

 

「それにしても、福音より厄介そうなのがこの黒い機体、か……。常にエネルギーシールドを突破する、零落白夜に近いものを使ってるとなると……」

 

「でもそれは篠栗君がすべて撃破したんじゃ」

 

「だといいがな。あの3機で終わりって気がしなくてな……」

 

無駄に硬い機龍にあそこまで手傷を負わせた集団だ。あまりにも危険すぎて警戒を疎かに出来ない。だからといって銀の福音の方も警戒しなければならず、なんでこうなったと頭を悩ませる。

だが問題はこれだけではない。

 

「それに米海軍の空母サラトガだったか。わざわざそこの艦長が尻拭いとして手伝いたいという知らせがあった。これはどうするか……」

 

「え、艦長さんからですか?」

 

「ああ。ダグラス・ゴードンと名乗っていた。正直政府を通してからと言いたいが、最初から握りつぶされるのが分かってたみたいだな。ゆえに直で言ってきた」

 

米国の介入。とても厄介極まりない事態だが、元は向こうが起こしたことなのだから、さっさとどうにかしろ、と言いたくなる。

だがそれを政府に行ってもだんまりのため、まだこのゴードンという男の方が信用できそうに感じた。

 

 

バラララララララララ

 

 

「ん?ヘリの音、か?」

 

不意にヘリコプターの音が耳に入り、千冬は顔を上げる。その音は最初は遠かったが、どんどん近づくにつれとても大きなものとなる。いったいどこを通ってるのかと思い、真耶が窓から外を見ると、驚きの顔に変わった。

 

「お、織斑先生!あれを!」

 

「なっ、これは……!」

 

真耶に呼ばれ、一緒に外を見る千冬。

そこに飛んでいたのは米軍の戦闘ヘリ、アパッチだった。だがその機体の横には横向きの獣の絵が描かれており、これが婆羅陀魏社所有の物であることは明確だった。

 

 

 

 

 

 

アパッチの前部コックピットにはこの機体のパイロットが乗っているが、後部コックピットには白衣を着た男、主任が乗っていた。

 

「主任、着きましたよ。って本当に来てよかったんですか?俺、逮捕されませんよね?」

 

「んー?知らね。まあ、どうにか頑張って。それにしてもここがその旅館か。じゃあ、行ってくるねー」

 

「え、どういう―――」

 

「しゅわっち」

 

「ちょ、主任んんんんん!?」

 

主任はコックピットハッチを開けると、電車を降りるかごとくそのままヘリから飛び降りる。それを見た操縦者は驚きを隠せず、そして彼が見たのは、10mほどの高さから飛び降りる主任の姿であった。

誰もが不味い、と思っただろう。だが主任は空中で姿勢を整え、ズンッ!という大きな音を立てながらも、ターミネーターが現れたときの様な姿で着地し、ゆっくりと立ち上がる。

 

「俺の名はアイアンマンだ……なんてな。ぎゃはははは!」

 

旅館の玄関前で笑う主任だが、すでに彼の周りには教員たちが取り囲んでおり、そんな中から千冬が現れ、主任を射殺さんと言わんばかりに睨みつける。

 

「何の用です。婆羅陀魏社開発部部長、亜龍・サーシス」

 

「おー千冬ちゃん、久しぶりだね。まあ、まともに顔を合わせるのは初めてだけどな!」

 

「……ここは関係者以外立ち入り禁止のため、さっさとこの場から去ってください。じゃないと貴方を拘束しなければなりません」

 

「ほー、束ちゃんを通しといて俺はダメってのは酷いなー」

 

「っ……!?何の事ですか」

 

「千冬ちゃん、仲間はずれはよくないなぁ、オレも入れてくれないと」

 

ケラケラと笑う主任だが、その鋭い目がジッと千冬を見ており、冷や汗が一筋垂れる。とても不気味な雰囲気の主任に千冬は諦めたかのようにため息を吐く。

 

「で、何の用なんですか?」

 

「まあ簡単なことさ。その前に、この近くにヘリ止めるとこない?帰りもあれ乗って帰るから」

 

「……向こうの浜辺に止めといてください」

 

主任はさっさと指示し、ヘリをそちらに飛ばす。やっと空になにもなくなったところで千冬は何の用かちゃんと聞こうとしたら、先に向こうがそれについて聞いてきた。

 

「そしてだけどさー、篠栗航はいる?」

 

「……何するつもりですか」

 

「そうか、いるんだな。なら失礼するぞ」

 

主任はずかずかと旅館の中に入ろうとするため、千冬は即座に彼の前に立って止める。

 

「サーシス!貴様、何をする気だ!」

 

「いやいや、ちょっとお手伝いをね!」

 

「それなら私に付いてきてください!勝手に歩かれると困ります」

 

「いいじゃーん。こんな美人に案内されるとかオジサン嬉しいねー」

 

「……ではどうぞ」

 

額に青筋を立てながらも、千冬は主任を航の元へと案内する。一応監視として真耶も一緒に連れて行き、そしてたどり着いた彼の部屋を開ける。そこには頭に包帯を巻いた航がおり、彼は独りで外を眺めていた。

 

「ハハハッ見てたよルーキー。中々やるじゃない?」

 

「……あの、どちらさま?」

 

「俺は婆羅陀魏社主任、亜龍・サーシスだ。君の機体の設計開発を担当している。まぁ主任と呼んでくれ」

 

「は、はぁ……」

 

いきなりのフランクな態度に困惑を隠せない航。だが主任はそんなことを気にせず、ズイズイと詰め寄るため、千冬に怒鳴られて、何とか距離を開けて話すことになった。

まあそんな中、主任は即決に言う。

 

「さてさて航君。さっそく機龍を見せてくれないか?損傷してるらしいからな」

 

「どこでそんなことを?」

 

「それは企業秘密だ……って君も怪我してるじゃないか」

 

「あぁ、これですか」

 

航は包帯を巻かれてる右手を軽く動かす。だがすぐに顔を顰め、元の位置に戻した。

それを見た主任は、彼の手を取り、そのまま包帯を巻かれてる部分を握った。

 

「がぅ……!?」

 

いきなり患部を触られ、航は声にならない悲鳴を上げる。それでバッと後ろに下がる航。

 

「ふーん、亀裂骨折ってところか。それに肋骨も僅かだが折れてるな」

 

「何?」

 

「イテテ……なんでそこまで……」

 

「んー?そりゃあな」

 

主任は白衣の中から1本の注射を取り出し、それを航の右腕に刺して液を注入する。いきなりの事で驚いてたが、割と針が太かったのか、後から痛みが一気に来て航は床をのたうち回る。

 

「っ……!……っ!」

 

「そのナノマシンが効くのに10分ほど時間いるからー」

 

主任は何事もなかったかのように話し、航は床に倒れたまま息を荒くして、主任の方を睨みつけていた。だがそれを見た主任は、にやりと笑みを浮かべる。

 

「ほー、いい顔するじゃん。それぐらいの気迫がないと機龍に選ばれないからな」

 

「サーシス!」

 

「別に毒じゃないよー。それに天使を狩らないといけないだろ?その体じゃ不都合だと思ってねー」

 

ケラケラと笑う主任を射殺さんとにらみつける千冬。あまりの迫力に、一緒に来てた真耶は小さく悲鳴を上げるが、主任は眉一つ動かさずに笑ってる。

 

「あ゛っ……くそ、が……」

 

「おー、もう喋れるほどまで回復したのか」

 

航はフラフラながらも立ち上がり、肩で息をしながら主任をにらみつける。だが主任はそれに臆するどころか、むしろ興味津々に航を見ていた。

そんな航は先ほどまで痛かった右腕に痛みが無いことに気付き、ギプス等々を取ってみる。すると腕は問題なく動き、そして肋骨の痛みもすでに消え去っていた。

それを見て満足したのか、主任は本題に取り掛かることにした。

 

「さてさて、機龍の修理に取り掛かりたいけど、今どこにある?」

 

「む、それなら私が持ってるが」

 

「あっそう。千冬ちゃん、さっさと機龍頂戴。すぐに修理を終わらせるから」

 

「何?この場所で修理とか―――」

 

「できちゃうんだなーそれが。まあ、この旅館の中じゃ無理だけどね。どこか広いところない?」

 

「それなら少し歩いたところに砂浜が」

 

「ならそこ行こうか」

 

主任は即座にドアを開け、部屋を出て行こうとする。だが不意に立ち止まり、再び顔を覗かせた。

 

「ああ、それと更識簪ちゃんも呼んで」

 

「えっ?」

 

何で彼女も呼ぶのか、千冬には理解ができなかったが、大人しく真耶に呼びに行かせるのであった。

 

 

 

 

 

あれから場所は変わり、航たちは最初出撃した砂浜に来ていた。主任は現在、展開された機龍を見て、ニヤニヤと感慨深そうにしている。

 

「おー、ここまで機龍を傷つけるのがいるとはなー。まあいいや、さっさと修理―っと」

 

そして主任は白衣の中からなにやら黒いボールの様なものを出し、逸れに着いてたスイッチを押すとそこには空間投影ディスプレイが表示され、そしてボールの一部からアダプタ付きのコードが出てきた。

そして、主任は機龍の脚部にあったハッチを開け、そこに刺し込む。その後空間投影ディスプレイに何か打ち込むと、するとどうだ。機龍の損傷した部分の装甲が勝手に外れ、中の電子機器やコード類が自分から動き始めたではないか。

 

「うーん、修復パッケージ。初使用だけどいい感じに動くねー。後はこの短時間でもう1戦できる分は修復ってところかなー?」

 

「あの、主任……私を呼んだ理由は……?」

 

「あー、そうだった。簪ちゃん、次は君に用だけど」

 

主任は球体から手を放すが、落ちることなく勝手に浮遊しており、そして主任が白衣から出したのは、クリスタルの付いた指輪だった。

 

「打鉄弐式。完成したので届けですよーっと」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

それを受け取り、右手中指にはめる簪。未完成の時のくすんだ鈍色ではなく、完全に完成したことにより輝きが生まれて綺麗な色になっている。

そして空間投影ディスプレイでスペックをを確認したとき、簪は目を大きく開いて、驚きを隠せなかった。

 

「何これ……すごい……」

 

「ハハハッ、気に入ったかな?じゃあ、装備の試験もいっちゃうからそれじゃあIS展開してねー」

 

「来て、打鉄弐式……」

 

そして簪は専用機である打鉄弐式を展開する。その姿は彼女が思い浮かべてた時と変わらないが、ただ気になるのは第3世代兵装“山嵐”が予定してたのより少し大型化してるのと、格納領域(バススロット)に表示されてるパッケージ“壁灼(へきしゃ)”の文字だった。

 

「あー。あー。聞こえるかな?じゃあ、軽く機体の試験をするよ。ぽぇーっと」

 

主任は別の黒いボールを取り出して、それを飛んでる簪に向けて投げると、数枚の鋼の板になって飛んでいく。簪は背中に装備されてる2門の連装粒子砲“春雷”を前面に展開。そして板に照準を向ける。

 

「春雷だが、これまでの連射型以外に、拡散、それとチャージによる照射が可能になってる。試してみてー」

 

それを聞いた簪は、1枚目の板を普通の連射で撃ち抜き、2枚目は近づいて拡散粒子砲にして蜂の巣に。3枚目は片方を10%だけチャージし、そのまま薙ぎ払うように放つ。

 

「すごい……」

 

驚きを隠せない簪。それと対照に主任はニッコリと笑っており、とても満足気だった。

 

「よーし、春雷は良い調子だな。じゃあ、もうちょっと遊ぼう……と言いたいけど、機龍の大体が仕上がったから終りだ」

 

「えー……」

 

不満げに降りる簪だが、自分の機体が完成したことに内心とても喜んでおり、まあ仕方ないと納得して降りる。そして降りてきたとき、簪は機龍を見て軽く驚いた。

 

「ホントに直ってる……」

 

機龍は砕けていた装甲が全て地面に落ち、新たな装甲が展開されて元の姿に戻っている。これならすぐに戦うことならできるだろう。だが主任はそれで満足せず、この機体にもう一工夫を加えていく。

 

「さて、ここからは俺からの餞別だ。機龍に高機動型パック“ガルーダ”をなぁ」

 

そういって主任はUSBメモリみたいなのを取り出し、それを先ほどの修理パッケージで使っていた黒いボールみたいなのに突き刺す。すると、空間投影でキーボードが展開され、それを主任はピアニストと言わんばかりの速度で

打って色々入力していく。

 

「んー。やっぱりもう少し完成を待つべきだったかな?まあ、仕方ないよねー。簪ちゃん、たしか君ってプログラミング得意だっけ?」

 

「えっ……?い、一応……」

 

「じゃあ手伝ってよ」

 

「えっでも……」

 

困り顔を浮かべ難色を示す簪。それで察したのか、主任はケラケラと笑う。

 

「ん?別にデータ盗ろうとどうでもいいよ。機龍も弐式もどうせ社内品だしね。というか弐式にも機龍のデータ使ってるしねー」

 

「でも……」

 

だがその時、何やら戦闘機が飛ぶ音に近い音がする。だがこの音を彼らはよく聞いたことがあり、もしやと思い空を見上げる。すると、4つの影が、高速で空を駆け抜ける。

そう、それらはISで、臨海学校にいる専用機持ち達が飛んでいたのだ。彼女たちはそのまま海の方へ駆け抜け、すぐに見えなくなっていく。

 

「なっ、あいつら、どこに行く気だ!」

 

その時、真耶の端末にとある情報が入り、それを見た真耶は顔を真っ青にする。

 

「お、織斑先生!大変です!専用機持ちの生徒たちが!織斑君の仇を取りに……!」

 

「既に分かってる!サーシス、更識、機龍をさっさと仕上げろ!あの馬鹿どもを追いかけさせる!」

 

「は、はい!」

 

「りょーかい」

 

そうは言うが、中のプログラムが結構複雑で、出来ないことはないがとても遅れてしまう。このままではまずいと焦ってしまうが、1回でもミスすればやばい。おかげで簪は若干涙目になるが……。この時、航が彼女の肩に手を置いた。

 

「簪。俺はお前を信頼してる。だから頼んだぞ」

 

「航……わかった!」

 

それで手の動く速度が前より早くなり、それを見た主任は小さく口笛を鳴らし、こちらも速度が上がる。

航はこの間に少し席をはずし、そしてスマートフォンを取り出した。

 

 

 

 

 

『航、どうしたの?いきなり電話なんかかけて来て』

 

「あー、アレだ。刀奈の声が聞きたくなってな」

 

『ふふ、変なの』

 

クスクス笑う刀奈の声を聴き、安心する航。だが当初の目的である、彼女からの応援をもらおうにも、どうやって話せばいいのか分からず、つい黙り込んでしまう。

それから10秒は黙ったのだろう。航は刀奈のため息から、つい彼女が少し困り顔を浮かべてるのが想像できた。

 

『航』

 

「ん、何?」

 

『本当は怖いんでしょ?』

 

「っ……!?」

 

航の驚きを感じたのか、刀奈からやっぱりと言わんばかりのため息を吐く音が聞こえる。

 

『大まかなことは知ってるわよ。それに黒い機体の事も。機龍が学園から持ち出された時点でなんとなく察してたわ』

 

いきなり先手を打たれ、言葉に詰まってしまう。だけどここで強がる勇気もなく、航は大人しく頷いてしまう。それでどういえばいいのか分からなくなり、航は項垂れてしまう。だがしかし、電話の向こうで、刀奈が小さく笑ってるのに気づいた。

 

『ふふ、何か昔の航思い出しちゃう』

 

「昔……?」

 

『えぇ。私と簪ちゃんと日輪が一緒にクマに襲われたとき、航が助けてくれた時のことを。航、強がって見せたけど、あの後泣いてたよね』

 

「あー、あの時か。でもアレ、俺がしたのは時間稼ぎだけだしさ。実際に倒したのは俺たちを探しに来た大人たちだろ?」

 

『でもカッコよかったよ。私、それで貴方のことが初めて好きって思ったんだから』

 

「んん、何か照れるな……」

 

頬をポリポリと掻く航。それが伝わったのか、刀奈はクスクスと笑っていた。

 

『だからね。航なら今回の事件は問題ないわ』

 

「えっ……」

 

『航。貴方はちゃんとできる子ってのは知ってるんだから。私が保証するわ』

 

「刀奈……」

 

『だから存分に暴れてきなさい。貴方のその力は、壊すためじゃなくて護るためにあるというのを。それを相手に見せつけてくるのよ』

 

彼女の優しくも、意思のこもった強い声。それを聞いたとき、航の中の不安が消えていき、意志を示すかのようにグッと握りこぶしを作る。

 

「……ありがと」

 

『ふふっ、どういたしまして♪』

 

彼女と話してると緊張がほぐれ、おかげで航は小さい笑みを浮かべており、とあるお願いを彼女に言ってみた。

 

「なあ、刀奈。これが終わったらさ、どこか気持ちのいい温泉のある場所に行きたい」

 

『航……お姉さんに任せなさい。疲れが吹き飛ぶとても良い所を探しておくわ。だから、ちゃんと帰って来て』

 

先ほどとは違う、震えた声が航に聞こえ、航は決意した。ちゃんと彼女に「ただいま」を言おう、と。これを言うまでくたばるつもりは無い、と。

 

「ああ、わかってる。だから俺、頑張ってくるよ」

 

『ええ、待ってるわ』

 

「じゃあ、またな」

 

『うん、またね』

 

それで通話は終わる。もうこれで怖くない。航は決意を固めた顔で、機龍がいる砂浜へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

そして航が戻ってきたころ、もう作業は終盤に入っていた。主任がキーボードを打ち終わると、機龍の目がチカチカと光り、ダウンロード完了の文字が出る。

 

「よし、完成だ。航君。一回格納してまた展開してくれ」

 

「わかった」

 

そして機龍を格納し、待機状態にする。

 

「来い!機龍!」

 

ピカッと光ってなる轟音。そして砂塵中から現れた機龍は、右肩の形状が少し変わり、銀色になったバックユニットと腕部レールガンを装備していたが、それ以外に腹部に追加装甲、そして大きな装備を背中に装備していた。

 

「これは……?」

 

「それが今回の高機動型パッケージ“ガルーダ”だ。元々はただの無人戦闘機だったが、つい機龍が目に入って作った結果、完成したわけだ。装備は2門の高出力メーサー砲。ぶっちゃけ機龍の口部メーサーの倍の威力は持ってる」

 

そう説明する主任だが、先ほどのふざけた雰囲気は消え、割と真剣にしている。簪はそれで少し眉間にしわを寄せるが、仕方なくそれを諦める。

まあそんなこともありながらも説明が進む。

 

「あと腹部だが、損傷の修理が間に合わないから、増加装甲と追加装備を入れさせてもらった。そのためエネルギーシールドの張り方も少し変えてるがな。さてガルーダを装備した機龍だが、そうだな……スーパーメカゴジラと言うべきかな?」

 

「スーパー……よし、機龍、行くぞ」

 

「あの……私、高機動パッケージを持って……」

 

簪は恐る恐る手を上げる。だが主任は問題ないと言わんばかりに何か手に持ってるスイッチを押す。すると、ガルーダの背面にグリップが2個出てきた。そして機龍が前のめりになり、簪がそこに乗って、背中のグリップを握る。

その時、千冬からの通信が入る。

 

「さていきなりで済まないが、さっさとあの馬鹿どもを捕まえに行ってもらう。ただ場合によっては……」

 

「簪、それでも大丈夫か?」

 

「う、うん。大丈夫……」

 

「よし、それなら行って来い」

 

そして機龍の脚部スラスター、バックユニット、カルーダのそれぞれの出力が高まり、何時でも出れるようになる。

 

「篠栗航、四式機龍」

 

「更識簪、打鉄弐式」

 

「「行くぞ!(行きます!)」」

 

轟音を響かせ、2機のISは大空へと飛び出す。そのまま超高速で飛んでいき、もう姿が見えなくなっていく。

それを主任は、ニタァと笑みを浮かべながら見送っていた。

 

「さぁて、見せてみな。お前の本当の力をさ」

 

主任は簪を見ていない。ただ航を見てそうつぶやいた。




俺は後悔した。
あの時は行けると思ってたんだ。銀の福音を倒して、そして刀奈の元に帰ろうと。だから後悔する。
あの時、彼女に好きとか愛してるだの臭いセリフ一言でも言っておけばよかったと。もう帰れないかもしれないから。
誰がこんなことを予想したか。
時間が戻せるなら、あの時の俺に聞きたい。

独りで戦い、そして死ぬ覚悟があるのか、と。
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