インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも、夏の仕事は辛いと思う妖刀です。やっと最新話が完成したため、更新することにしました。

そういえばここ最近ではハリウッドゴジラの予告に、アニゴジの予告とゴジラ関連でもいろいろ大きな動きが見えてきましたね。どれも見に行きたいものです。




というわけで本編どうぞ!
え、怪獣はまだかって?その、もう少しお待ちください……。



追記
部分部分描写がおかしかったため、変更いたしました。


再戦

「航!」

 

機龍が海に落ちた時、簪は急いで彼の元に向かおうとした。だがしかし、その時彼女の目の前を大量の弾幕が遮る。銀の福音はジロリと簪たちの方を見ており、先ほどの攻撃を受けて中破は確実にしてるとは言え、禍々しい雰囲気を出していた。

 

「キィィ……」

 

その口は怒りに歪んでいた。二次移行したとはいえ、もうこのありさま。そして銀の福音は目の前にいる5人に狙いを定めた。

その殺気に5人は警戒し、己の得物をいつでも使えるように構える。

それと同時に銀の福音が銀の鐘(シルバー・ベル)をばら撒いた。

 

 

 

 

 

白い騎士が言ったことに一夏は首をかしげていた

 

「力……?」

 

いきなり何を言ってるのだろうか、それに何の力だ、と。

 

「力を欲しますか?何のために……」

 

「何の、ため……」

 

一夏は思い出す。自分が無力だったことを。それで何もできず、足を引っ張ってしまってしまい……。

その悔しさ、怒りを込め、グッと一夏は拳に力を込めた。

 

「俺は……。守りたいんだ。この理不尽から友人、いや、仲間を」

 

もうあんな思いは嫌だ。一夏はそれを繰り返さないために、力を欲した。

 

「守る、ですか……本当にできると思うのですか?」

 

「やる。やってみせる」

 

決意のこもった眼差し。それに騎士は小さく驚いていたが、ふふっと小さく笑みを浮かべる。

 

「貴方ならそういうと思ってましたよ」

 

「えっ……」

 

「だったら、行かなきゃね」

 

すると、先ほど歌ってた女の子が近くにおり、一夏の手を引っぱる。何か懐かしい感覚。これはいったい何なのか分からなかったが、一夏は彼女に身をゆだね、歩き出す。

その時、大きな振動がこの場を揺らし、一夏は急いでしゃがむが、女の子がこけそうになったため、急いで抱きかかえた。

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん……」

 

女の子は頬を赤らめていたが、一夏はそんなのに気付かず、一体何があったのか気になった。

ただ騎士の方がソレに気付いてるのか、顔は見えなくても口がキュッと閉まってる。

 

「何だったんだ……?」

 

一夏の疑問に、すぐに駆けてきた騎士が答えた。

 

「そうですね……銀の龍が魔獣を呼ぼうとしてます。その前に、早く……」

 

「銀の龍って……」

 

彼女たちの静かな焦りが伝わったのか、一夏は意識を集中させようとする。だがその時、ふいに気になったことがあったため、彼女の方を向く。

 

「なあ、そういえばアンタたちって名前、なんていうんだ?」

 

それを聞いたとき、彼女たちは小さく微笑んだ。

 

「私たちは――――」

 

 

 

 

 

簪は、一定距離を保ちながら銀の福音と戦っていた。いや、防戦を強いられていた。

壁灼の装甲は、機龍に使われているものと同様なのか、翼の光弾を吸収しており、そのエネルギーを春雷に回して撃ち返しているが、複雑な軌道を描いて薙ぎ払いを躱す。

そして銀の福音が砲から放つ光線は、至近距離ならとても危ないが、距離を取れば一気に拡散するため簪はその距離を維持しつつ、どうにか他の専用機持ちの援護もあって寄せ付けないようにしていた。

その中、箒の紅椿は着水するのをどうにか防いでる状態で、機能の4割は停止していたのだ。

 

「くそっ!動け!」

 

箒がガンッと装甲を殴るが、紅椿は何も言わない。空では他の専用機持ち達が銀の福音に攻撃を仕掛けているが、防戦一杯でまともに攻撃が銀の福音に入っていない。

箒はそれを見てるだけの状態が嫌だった。また守られて何もできずにやられていくのを見てるのが。

 

「頼む、動いてくれ……紅椿……!」

 

再び空を見上げると、セシリアが光弾に飲まれそのまま爆発の中に飲み込まれていく姿が見えた。それを援護しようと他の専用機持ち達が動くが、銀の福音はそれをあざ笑うかの様に彼女たちに攻撃を加えていく。

それを見た箒は、叫ぶかのように声を上げ、装甲を目いっぱいの力で殴りつける。

 

「私は!こんなところで怖気づいてるわけにはいかないんだ!だから紅椿!私に力を貸せ!」

 

 

――ナノメタル起動します。状態、復元選択――

 

 

その時だった。斬られた断面から違和感を感じたのは。

 

「なん、だこれは……」

 

箒は驚きを隠せなかった。斬りおとされた片足、砕け散った2振りのブレードが元の姿に……いや、中から再構築されて再生していたのだ。

急な高エネルギー反応に全員が箒の方を見たが、それを目の当たりにした他の面子も驚きを隠せず、銀の福音ですら足を止めたほどだった。

小さくパキパキと音を立てながら、3Dプリンターで出力されるかのように各部が直っていき、気づけば斬り落とされた脚部も折れた刃も綺麗な姿で復活していた。

 

「これは……まあいい。紅椿、行くぞ!」

 

翼から赤い光が放たれ、音を置いて紅椿は飛び立つ。その神速のまま刃は、銀の福音の喉元へと向けられた。

 

 

 

 

 

航は1人、不思議な場所……いや、見覚えのある場所にいた。

 

「ここ、は……俺の家……?」

 

そう、航はなぜか自分の家の和室の居間にいるのだ。周りを見渡すが、たしかに自分の家であり、なんでこんなところにいるのかすごい疑問に思ってしまう。

先ほどまで彼は機龍に乗って戦っており、そして重傷を負って墜ちた、はずだったのだ。

 

「あらぁ。ここに来たのね」

 

「誰……え」

 

そのとき、後ろから声がしたため、航は瞬時に後ろを向いて身構える。そこにいたのは女で、黒い着物を着ており、腰まで届きそうな黒い髪から覗く、死人を思わせる白い肌。そしてハイライトのない黒い目が彼を見据えていた。

だがその姿を見た時、航はありえないと言わんばかりの表情を浮かべた。

そう、数年前。航の前から消えた彼女がいたのだから。

 

「日輪……?」

 

日輪と呼ばれた彼女はクスクスと、優しく、とても寒気のする笑みを浮かべた。

 

「ふふふ、違うわぁ。ただ貴方が望むものが、姿になってるだけよぉ」

 

「アンタはいったい……」

 

そう聞くと女はニタァと口角を上げ、ヒタッ、ヒタッ、と足音を上げながら航に近づき、そしてお互いの胸が当たるまでの距離まで近づく。

 

「私は機龍のコアの意志、って言いたいけど厳密には違うわぁ。そうねぇ。言うなら私は貴方、かしらぁ?」

 

「お、れ……?」

 

「そうよぉ?貴方の中にある怒り、絶望、悲しみ、それらから私は作られてるのよぉ。ねぇ、貴方に聞くわぁ。貴方は力が欲しぃ?」

 

「力……?」

 

「貴方、負けたままでいいのぉ?このままじゃ彼女たち、死んじゃうわよぉ?それにねぇ……」

 

女はズイっと自分の顔を航の顔に近づける。フワッと懐かしい香りが匂い、航はそれに浸りたかったが女はニタァと笑みを浮かべてるが、その目は笑ってない事に気付き、背筋が凍る。

 

「私、あの天使のことがとても許せないのぉ。あの力を使って、傲慢に振る舞う様はとても虫唾が走るわぁ」

 

彼女の目にははっきりと怒りと憎悪が見えた。そして女は右手で彼の頬に触れた。

 

「貴方には分からなくても、肉体は覚えてるのよぉ?ほら、思い出しなさい?貴方の中にある細胞の記憶をぉ」

 

その瞬間、彼女の黒目の部分がキュッと小さくなる。

 

「ぐっ……!?がぁ……!?」

 

この時、航の頭の中に大量の情報が流れ込んできた。

 

焼けた街の中、“自分”は歩いていた。口から炎を吐き、足元にあるものを踏みつぶし、あるもの全てを蹂躙していく。ただ頭の中にあるのは復讐の2文字だけだった。

その後も街を破壊し続けるが、中にあるのは不満しかなく、疲れ果てた“自分”はそのまま海へと戻っていく。

そして海で休んでる時だった。海中に2人の人間を見つけた。たかが2人で何ができると思っていたら、片方はそのまま海面へと上がっていくが、残った片方が手に持ってたナニカを起動させたのだ。

体に激痛が走った。これが何なのかわからないが、逃げなくちゃと思って海面に上がるが、体が言うことを聞かなくなり、断末魔を上げながらまた沈む。

そして体が崩れ、血すらも消えていく中、その目は殺意に満ちたものになりながら、宙を睨みつける。

“アァ、許サナイ。人間、許サナイ……”

ただそのことを思いながら、体が消えていった……。

 

「なん、だよ…これ……俺、は……」

 

流れた光景を見た航は跪き、恐怖からか己の体を抱きしめ震えた。だが女はそんな彼を優しく抱きしめ、そのぬくもりを伝える。

 

「わかったでしょぉ?だからあの天使はソレと同じ力を持ってるのぉ。だから滅ぼさなくちゃいけないわよねぇ?」

 

そして女は震えてる航の耳元に顔を近づけ、ニタァと笑みを浮かべた口を動かす。

 

「航ぅ、改めて聞くわぁ。貴方は力が欲しいぃ?」

 

「俺、は……」

 

答えを聞いた女は、三日月のように口に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

銀の福音は、最優先攻撃目標を箒に定めていた。先ほどから刃を、翼を破壊しても、その場から装甲が直り始めているのだ。おかげで彼女の攻撃の手が減らず、それにイラついたため、翼を大きく動かして弾幕を一転集中で箒に向ける。

 

「甘い!」

 

だが箒は空裂を振り、光弾にぶつけて相殺する。先ほどとは違うその力に内心歓喜するが、今の一夏の現状を思い出し、すぐに頭を冷やす。

そして銀の福音が箒に夢中になってる間に、セシリア、ラウラ、簪が中距離から遠距離にかけて攻撃を行い、鈴が唐突な奇襲を何度も仕掛ける。

先ほどよりコンビネーションが統率されており、銀の福音は苛立ちを募らす。そしてその目は、この中で一番攻撃されたくないものがどれなのか探り、それが簪なのだと知る。

先ほどから簪が、中破してる機体の壁となって動いており、攻撃を防御しながら銀の福音の苛立ちを掻き立てるのだ。それを攻撃しに行こうにも先ほどから箒が離れないため、業を煮やした銀の福音は神速で振られた横薙ぎを後ろにとっさに下がって躱す。

だがこの時、“兎”の声がかすかに聞こえた。それと同時に、あるものが動き出す。

 

 

ミクロオキシゲン、作動シマス

 

 

「ギ、ギギギ、La……!」

 

銀の福音の耳に聞こえた声。それを聞き、顔は空を見上げ、痙攣したかのように体がガチガチと震えだす。

一体何があったのか。箒は一目散に離れ、他の専用機たちと合流する。病的にガタガタ震えてる姿を見て、何事かと

 

「い、いったい何が起きたのですの!?」

 

「わかんないわよ!箒、アンタ余計なことしたでしょ!」

 

「私は何もしてないぞ!」

 

鈴の決めつけに怒声を上げる箒。ギャーギャーと言ってる間にも銀の福音は震え続け、そして装甲の隙間という隙間から、白い蒸気を沢山噴き出した。

それで喧嘩は止め、警戒心を強める5人。そして煙の中から出て来たソレを見たとき、全員が言葉を失った。

それは、天使というより悪魔だった。

先ほどまで生えていた翼は蝙蝠のような鋭いものに変化しており、顔も銀に覆われ、頭部にも鬣らしきものが生え始め、さらに角が1本生えていた。

残ってる左脚部は、ISでは珍しい大型脚部クロ―らしきものが確認でき、さらには先が二股に別れた尻尾らしきものも見られる。

そして関節各部からギチギチと不気味な音を鳴らしており、そしてあちこちから白い蒸気が漏れ出していた。

 

「何ですの、あれ……」

 

「天使というより、悪魔の方がお似合いね……」

 

もう銀色の天使というより破壊者(デストロイア)と言える姿。それに誰もが苦言を漏らすも、誰一人逃げようとしなかった。いや、逃げれる状態ではなかった。

 

「キィィァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛アアアアア!!!」

 

銀の福音が吼えた。それと同時に、翼から放たれた光弾の雨が彼女たちに襲い掛かる。

各自回避行動に入るが、この中で一番足の遅いラウラは、最低限の動きで回避を務めるが、光弾が一発当たると、そこの部分を分解するかのようにしていってるのに気づいた。

 

「何なんだこれは!各自、この弾に一発でも触れるな!触れる物を分解していってるぞ!」

 

ラウラの声を聞き、防御より回避に専念する彼女たち。だがしかし、濃密すぎる雨に次々と被弾していく5人。盾に徹してた打鉄弐式の壁灼もこれは防御できず、どんどんボロボロになっていく。

おかげで絶対防御が発動するぎりぎりまで追い詰められ、それに焦った箒が銀の福音目掛けて突っ込んだ。

 

「このぉぉぉ!」

 

箒は弾幕を潜り抜け、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使って銀の福音の懐に入り込み、空裂を居合いの要領で振るった。

 

「La……♪」

 

久々に聞いた声。それと同時に、箒の居合いを瞬時に躱した銀の福音は、返し刃と言わんばかりに両腕のと両足の爪で紅椿の両手と両足を一気に砕いたのだ。

 

「なっ……!?」

 

あまりの速さに言葉を失う箒。だがそんなのを関係ないとばかりに銀の福音は、彼女の腹に脚部クローを食いこませるように蹴りを箒にくらわす。

 

「ぐぅぅ!!」

 

そのまま吹き飛ばされる箒。そして光弾を放とうとした銀の福音目掛け、多数のミサイルが迫って来た。それを見て回避し、飛んできた場所である簪に目を付けると、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で迫った。

それは瞬間移動の様であった。

一瞬で簪の前に現れた銀の福音は、その爪を簪に突き立てようとする。それに驚いた簪は春雷を放つが、それをほぼゼロ距離で易々と躱し、その勢いを乗せて思いっきり蹴りを放つ。簪は急いで壁灼を前面に展開するが、脚部クロ―が壁灼に食い込み、宙がえりの要領で1枚無理やり奪い、開いた穴目掛けて頭部の角から発せられたヴァリアブル・スライサーを突き立てようとする。

 

「いやぁ!」

 

簪は悲鳴と共に長刀“夢現”を展開。そして柄尻の部分を持って思いっきり胸部目掛けて突きを放つ。それに素早く反応し、銀の福音は刃が届く前に離れ、爪が食い込んで壊れたシールドをそのまま簪目掛けて投げつけ、その上から分解の力を持つ銀の鐘(シルバー・ベル)を叩き込んだ。

 

「きゃああ!!」

 

シールド内部の機構が誘爆し、それと光弾に巻き込まれる簪。おかげで先ほどまで無傷に近かった機体も今では周りと遜色ないほどの損傷具合になってしまっていた。

そして銀の福音はそのままヴァリアブル・スライサーを展開し、簪にとどめを刺そうとする。

 

「させるか!」

 

その時、下から近接ブレードが1本飛んできた。それを斬り裂き、下を見てみるとそこには、右腕だけ修復させ、ブレードを投げた箒がいたのだ。

いい加減に五月蝿いと思ったのか、簪から箒に狙いを変える銀の福音。ウィングスラスターが無事のためそのまま展開装甲で距離を稼ごうとする箒だが、脚部もなくて速度が遅くなり、どうしても追いつかれてしまいそうになる。

他の専用機たちが援護に向かおうとするが、それに反応した銀の福音による光弾の雨が降り注ぎ、どうしても援護に向かうことができない。

そして銀の福音の尻尾が高速で動く箒を捉えた。しかもいきなり首を掴まれたため、一瞬意識が飛ぶ箒。そして無理やり手繰り寄せられ、鋭い腕の爪が腹に何度も叩き込まれる。

まるでこれまでの仕返しの様にも感じ、達磨状態に近い箒は、ただ声を上げるだけしかできない。

 

「ギュァァァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛……」

 

そして頭部からヴァリアブル・スライサーが発せられ、その刃がゆっくりと箒の顔へと近づいてくる。体の痛みで逃げる気力も失い、ただ箒はそれを見ることしかできなかった。

 

「一夏……」

 

諦めたかのように、箒は小さく好きな彼の名を呟き、目を閉じる。そして刃が全てを斬り裂こうとしたときだ。

 

「うおおおお!!」

 

白が1つ、空を駆け抜けた。その刃は銀の福音を狙い、銀の福音は箒を手放して瞬時に後ろに下がる。

空に投げ出された箒。いったい何があったのかと思ったが、彼女は、誰かにその身を受け止められた。

 

「えっ……?」

 

ゆっくりと目を開ける。箒の目に移った者。それは、愛しい人の姿であった。

 

「俺の仲間は、誰一人やらせねえ!」

 

そう、そこにいたのは新たな剣を持つ一夏の姿だった。

 

『一夏(さん)!?』

 

「いち、か……」

 

全員が驚いた。あの重傷を負った一夏がこの場にいるのだ。

そして銀の福音は一夏を警戒し離れ、逆に専用機たちが一夏の元へと駆ける。

 

「一夏、大丈夫なの!?」

 

「一夏さん!お身体が!」

 

彼を心配する面々。だが一夏はニカっと笑みを浮かべ、体の傷が治ってることを見せる。それによって喜ぶ者、涙を浮かべる者と様々おり、心配かけたと一夏は小さく頭を下げた。

だがこの時、箒が一番最初にソレに気付いた。

 

「一夏、その……その姿は?」

 

この時、改めて全員が一夏の白式が大きく変わってることに気付く。

背中の2枚だったウィングスラスターは前より大型化しており、4枚に増えている。

左腕も大型のクロ―のようになってるが、爪は機龍と同じ4本になっており、そして最大の特徴は、雪片弐型に似た大太刀の姿であった。大きさは刃だけで3m近くはあり、さらに1m少しはある長い柄。そして柄と鍔の間には、何やらブロックが重なった弾倉らしきものが見える。

 

「これか?白式が俺に新しい力をくれたんだ」

 

嬉しそうな声で言う一夏。その姿にラウラと簪を除いた3人が熱い息を漏らすが、ジワジワと鈴とセシリアの顔が不機嫌になり始め、一夏はどうしたんだと首をかしげる。

 

「それにしても一夏さん。いつまで箒さんを抱いていますの?」

 

セシリアがジト目で睨みつけてる。だがしかし、まだ紅椿は損傷が回復していない。そのため鈴が一夏の代わりに箒を後ろから抱き上げ、そのまま紅椿が直るのを待つ。それにより箒は不機嫌そうな顔をしたが、抵抗できないのが分かってるのかしぶしぶ諦めた。

だがその時、銀の福音が咆哮を上げ、翼を大きく広げた。どう見てもまた仕掛けてくるつもりなのだろう。彼女たちは、半壊したりしてる得物を構えるが、この時、一夏が彼女たちの前に立ったのだ。

 

「今度は勝たせてもらうぞ!銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)!」

 

そんな武器を右手だけで持ち、雪片弐型に似た大型ブレード“雪片撃貫(ゆきひらうちぬき)”の切っ先を突きつける一夏。

それに反応した銀の福音は、悲鳴のような咆哮を上げ、翼を大きく羽ばたかせて光弾の雨を専用機たち目掛けて降らせた。

それに反応した他の専用機たちは一斉に散り始めるが、一夏は逃げるどころか、真正面から銀の福音目掛けて突っ込んだのだ。それに驚く一同だったが、白式は前より機動力が上がったのか、高速で雨の中を潜り抜ける。

だがそれは予想してたのか、銀の福音は頭部にエネルギーを貯め、そのまま一夏めがけて光線を放った。

 

「一夏!」

 

箒は叫ぶ。だがもう遅く、光線は放たれ、そのまま一夏の元へと向かう。

その時、雪片撃貫からガシャリと言う音が鳴り、弾倉の1つが宙を舞う。すると刀身が割れ、そこから零落白夜が出て来て、そのまま光弾を真っ二つに斬り裂いたのだ。

 

「!?」

 

銀の福音は驚きを隠せなかった。分子と分子の間に入り込み、破壊するモノを混ぜた技を目の前にいる男が破ったことに。

そして一夏はそのまま銀の福音の懐に入り込み、雪片撃貫を横薙ぎに振う。大太刀となった雪片の射程に反応が遅れた銀の福音は攻撃をもろに受けそうになるが、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使って一瞬で30m後ろに下がる。

 

「コレが新しい白式、白式・薄明(はくめい)だ!」

 

白式の二次移行(セカンド・シフト)形態である白式・薄明。太陽の光を浴びるその白い装甲は、とても眩しく見えた。

 

 

 

 

 

ここは海面80m下。天を突くかのように連なる3列の山脈のような岩礁の間、機龍は挟まるように倒れていた。

右腕は失い、胸部から腹部にかけてできた大きな傷はとても痛々しく、もう動かなさそうな雰囲気を漂わせていた。

 

――システムエラー。システムエラー。GODZILLAsystem、起動します――

 

だがその時、光を失った目が赤く輝いた。口からゴポリと気泡が漏れ、そのままユラリと立ち上がる。

彼は空を見上げる。そこにいる憎き敵を。

 

「キィィ……ギィィィァァァ……!」

 

背びれがバシバシと光り、装甲の隙間から一瞬燈光が漏れる。

機龍は空に吼え、それに呼応するかのように岩礁も青白く光る。

目指すはこの空。そこにいる敵を睨みつけ、機龍はもう一度吼えた。

 

 

 

 

 

機龍は気づいていなかった。その連なる岩礁の先端で、その頭から覗く片目が機龍を見ていたことを。その目は機龍の姿を見ると驚くかのように大きく開いたが、見定めるかのように目を細めていくのであった。




白式・薄明

白式の第二形態であり、大型化スラスターと大太刀と化した雪片撃貫と左手に大型のクローが付いた籠手を装備している。
詳しい説明は後にキャラ、機体設定の話で閲覧可能のため秘匿とする。




というわけで、紅椿のナノメタル使用、銀の福音にミクロオキシゲン使用、そして白式の2次形態移行というお話でした。

ちなみに銀の福音はほぼ某VSシリーズのラスボスの姿になってるのを想像してください。(銀色だけど)



では感想等々、待ってマース。

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