インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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令和最初の投稿となります。ホントは平成の間に出したかったけど、いろいろ詰まって今になってしまいました。


では本編どうぞ。


超翔竜

ただメガギラスからしたら目の前にいるのは羽虫にしか見えなかった。だがそこからあふれ出るエネルギーを見たとき、それを摂取したいと考えてしまう。

テリトリーを増やすには外敵を駆除しなければならない。前与えられたエネルギーの記憶から覚えてる目の前の羽虫は、群を作るには邪魔なモノだと判断し、外敵駆除と共にエネルギー接種の餌としてとらえた。

そう、目の前に映る7つのISがだった。

 

 

 

 

 

「だめだ。通信がつながらない。恐らくはあの……メガギラスが出してる高周波らしきものが通信を阻害してるみたいだ。……それに早く逃げないと、パイロットも不味いぞ」

 

ラウラは諦めながらそう言う。

距離は約1キロ。だがお互い高機動と言えるため、この距離はほんの数秒で一気に縮まるだろう。

その間にも箒がナノメタルを使って他のメンバーの機体を応急処置で直していくが、先ほどより損傷が激しいため、前よりさらに性能が低下するだろう。

 

「む、紅椿の動きが少し悪くなってきたな……。もしかしてナノメタルを使いすぎたのか?」

 

「箒、それ以上は止めておけ。それで逃げる足を失われるのは困る」

 

刃が形状維持するのが少し難しくなり、ラウラからのストップが入る。

そうしてる間にも、先に修復してもらった鈴は、ハイパーセンサーで今いる敵の数を探り当てていた。

 

「出たわ。メガニューラが96。メガギラスが1よ」

 

7対97。

いくらISとはいえこの戦力比を相手するのはとても楽じゃない。それにメガギラス1体でどれだけの戦力差ができるのかすら分からないのだ。

ましては、一夏の白式薄明と修復の終えた箒の紅椿が小破。それ以外は中破以上という損傷で、この数を相手にまず逃げ切れるかすらも分からなかった。

だが鈴の手には眠ったままの銀の福音のパイロットがいるため、最低でも彼女を第一に逃がさなければならない。そのためにも甲龍はスラスター関連が優先的に直されており、鈴がパイロットと共に逃げる役に当てられる。

 

「鈴。お前は先に逃げてくれ」

 

「一夏……」

 

「大丈夫だ、俺たちも後で追いつく。だから……」

 

その時だ。メガギラスの翼が、先ほどより少しずつ速く羽ばたき始めたのだ。それは次第に早くなり、より強力な波となって一夏たちに襲い掛かる。

 

「ぐ、う……!?」

 

まるで頭の中を掻き回されたかのような感覚だった。ISのバリアも貫通し、絶対防御があろうと関係なしに与えてくる攻撃に、全員が一斉に耳をふさぐ。だがISもすぐに解析して聴覚フィルタを展開。それによって高周波は大体をカット。だが銀の福音のパイロットにはそれが無いため耳から血が出てしまっていた。

 

「鈴!逃げろ!」

 

「…分かったわ。私、待ってるからね!」

 

そのまま海域を離脱する鈴。それを見逃さんとメガギラスが高周波を出すのを止め、その場で大きく吼えた。

 

「キュィィイイイイ!!!!」

 

それを合図に、メガギラスの周りに跳んでいたメガニューラが、彼ら方目掛けて飛んでくる。マッハ1という速度で飛んでくる大群の姿を見ると、全員が息をのむがそれでも恐怖から逃げず、己の得物を構えた。

 

「来るぞ……!」

 

その言葉より早くメガニューラの大群が押し寄せて来た。動けるものは射撃兵装を展開して機敏に動き、そうでないものは射撃兵装を展開して同じ状態のもので集まり、背中合わせで弾幕を張る。

だがメガニューラたちはそれが狙いだったのか、そのまま彼らの周りに滞空し、一撃離脱を駆使しながら攻撃を仕掛けてきたのだ。

それぞれの火力を合わせれば寄せ付けないだけの弾幕を張ることができたが、メガニューラの機動性はとても高く、なおかつ防御力もそこそこあるため少しの被弾じゃ動きが止まらない。

 

「羽を狙え!そうすれば嫌でも落ちる!」

 

「さっきからやってますわ!」

 

前と違ってメガニューラがより的確な回避行動をとってるのだ。そのため攻撃が軽度でしか当たらず、いまいち致命傷を与えることができない。

だがそれだけではなく、ある問題が起きていたのだ。

 

「機体が重い、ですわ……!」

 

「どういう、こと……!」

 

そう、機体が重く感じるのだ。先ほどの戦後まではまだ動けてたはずなのに、まるで鉛を付けたかのようにズンと重く感じるのだ。

一体何があったのか。簪は即座に打鉄弐式に起きてる異常をチェックする。するとあることが1つ分かった。

 

「あの高周波で機体にダメージが……!」

 

そうだ。メガギラスの出した超高周波は、人体だけでなく機械に対しても深いダメージを与えてきたのだ。先ほどより機体が重く感じ、それによって照準を向けてもすぐに外れてしまう。

だが代表候補生である彼女たちはカンを頼りに照準の修正を行い、少しずつながら当てていく。

 

「うおぉぉ!」

 

その中一夏は高速で近づき、雪片撃貫を思いっきり振り上げるなどして回避される前にメガニューラの胴や羽を斬り落としていく。だがしかしメガニューラはしつこく付きまとい、次々と尻尾の針をこちらに向けて攻撃してくる。

ただその中で航は機龍のパワーを使い、しつこく付きまとうメガニューラの顔や羽を握りつぶしていく。下手に高火力の武器を使うより、選ぶ必要が無い敵相手なら機龍を動かすだけで攻撃が当たるのだ。

その時、メガニューラが一斉に離れたのだ。いったい何が起きたのかと思った時、メガギラスが高速でこちらに向けて突っ込んできたのだ。

 

「嘘だろ!?」

 

「全員、散れ……きゃぁぁ!!!」

 

正に神速。声を出すころには遅く、マッハ4による巨体の突撃は途轍もない衝撃波を生み出し、直接当たらなかったのに体がバラバラになるのではないかという衝撃をまともに浴びてしまう。

おかげでほとんどの機体はあちこちに亀裂が入り、機動性も一気に落ちてしまっていた。

 

「キュィィィ!」

 

だがメガギラスはそんな彼らを無視し、一直線にある場所を目指す。それは銀の福音のパイロットを抱えた鈴のところで、それを追いかけようとした一夏だったが、メガニューラが邪魔をしてきて進むことができない。

 

「鈴!逃げろ!りぃぃん!」

 

「嘘……!?」

 

一夏の通信が届きそのまま後ろを確認した鈴は、すごい速度でメガギラスが迫ってきてるのを目にしてしまう。全速力で逃げてるはずなのに見る見るうちに距離は詰められ、その口が大きく開かれて今にも自分たちを喰わんとする。

 

「ここで終わるわけにはいかないのよ!」

 

だが鈴はとっさに振り返り、双天牙月を連結した状態で展開。そのままメガギラスの口内目掛けて投げたのだ。

投げられた双天牙月はメガギラスに当たる、と思われていた。だがしかしそのまま何もない空間を空ぶっていく。

 

「えっ……?」

 

目の前からメガギラスが消えた。あまりにも非常識な現象に鈴は一瞬思考停止してしまう。

そして気づくには遅すぎたのだ。自分の上にメガギラスが回り込んでることに。そのままメガギラスは鈴目掛けて襲い掛かるがその時、複眼に向けた大量の弾が着弾したのだ。それによってメガギラスは悲鳴を上げ、その場で落ちるかのようにのたうち回る。

咄嗟に躱した鈴だったが、一体何があったのかと目で追いかける。それはメガギラスに張り付いていたソレが答えだった。

 

「航!?」

 

「やらせるか!」

 

航はメガギラスが突っ込んできた際、無理やりその表面にしがみつき、意識が飛びそうになりながらもそのまま首元まで接近して機体の各所から射出されたワイヤーで飛ばされないように固定していたのだ。

そして機龍の左腕には大型の連装ガトリングである、クアッド・ファランクス改が展開されており、今は片腕しかないためその分弾幕量が減るが、それでも威力と弾幕を見たらメガニューラ相手には申し分ないだろう。それを全弾複眼に当てられたのだからどれだけダメージが入ったか分からないが、少なくともその動きを止めることには成功した。

 

「鈴、行け!」

 

「ありがと!」

 

そして再び逃げ出す鈴。それをメガギラスは追おうとするが、また複眼を狙われてそちらに意識が削がれる。

航は高火力のクアッドファランクスを用いても牽制程度にならないのは予想していたが、生物の弱点である眼を撃たれても、驚いてるようだがあまりダメージが無いようにも見えるのだ。

流石に不味いと1回離れようとしたが……。

 

「キュィィィ!」

 

メガギラスはとっさに体をひねって回転することで無理やり機龍を引きはがす。そして右前脚の鋏をそのまま叩き付けようと振り下ろすが、とっさに機龍も体をひねって火花を散らしながらその表面を転げるようにして回避した。

 

「ぐっ、ぅ……!」

 

紙一重で躱したため苦悶の声が漏れるが、また飛びついて攻撃すればいい。そう思っていたのだ。だがしかし、航が見たのは自分を喰わんと大きく開かれた口であり、それに気づいたころには逃げることはできなかった。

 

「しまっ……!」

 

勢いよく閉ざされる口。とっさの判断か本能か食われないように前歯の部分に足と手を掛けるが、機龍とは比にならないほどの力で口を閉じようとするのだ。

 

「ぐぅ……お……!」

 

今使える力を使って堪えるが、急に口が開いたかと思ったら再び勢いよく閉じてくるため、その衝撃でシールドエネルギーががくんと減る。

チャンスはピンチであるがピンチはチャンスでもある。現在航はメガギラスの口内が丸見えなため、お返しと言わんばかりにその口の中にメーサーを放ったのだ。

 

「ヂァァ!!!」

 

体の中を焼かれた痛みに驚き、機龍を吐き捨てると、鋏で思いっきり海に向けて叩き落す。そのまま一気に距離を取って再び滞空するメガギラスだったが、即座に反転してそのまま一夏たちがいる方へと向かう。

 

「待て、よ!」

 

航は海面に叩き付けられたが、とっさに姿勢を整えて海を割るような勢いで飛び、全速力でメガギラスを追いかけた。

 

 

 

 

 

箒は頭に走る頭痛を噛み殺しながら剣を振っていた。先ほどの高周波やメガギラスの突撃をくらってから、この痛みがずっと走ってるのだ。

まるで金づちで殴られてるかのような痛みに悲鳴を上げたくなるが、ここで倒れるわけにはいかないと顔を横に振って意識を正す。だがしかしそれが隙となり、メガニューラの攻撃に晒されてしまい、即座に空裂を振って斬り捨てるも猛攻は止まらない。

 

「はぁ……はぁ……あとどれぐらいいるんだ……!」

 

「まだたくさんいますわ……!」

 

「くそっ、多すぎる!」

 

そうは言ってもまだまだメガニューラの攻撃は止まらず、箒の絢爛舞踏も発動が安定しなくなってきている。正直ここらで逃げ出したいのが本音だが、周りは逃がす気がないため意地でも戦わねばならない。

その時1つの通信が入った。

 

『メガギラスがそっちに戻ってくる!』

 

声が聞こえたとき、メガギラスがこちらに向かってるのが見えた。

2度目の突撃。航の声が届いたのもあって全員回避に成功し、むしろ反応に遅れたメガニューラが数体巻き込まれたのもあって、少しながら穴ができる。

だがそれは油断でもあった。メガギラスは再び瞬時に方向を変えると、その巨大な鋏が紅椿を捕らえたのだ。一瞬の光景だったため固まってしまう面々だが、一夏はすぐに回復し、急いで放棄を追いかける。

 

「きゃぁぁ!」

 

「箒!くそ、箒を放せ!」

 

高速で振りまわされ、グロッキーになる箒。一夏は追いかけ、箒を捕らえた鋏の付け根を雪片撃貫で刺そうとするが、その硬い外皮を貫けず、焦りが募ってしまう。おまけにこの瞬間も、もう一方の鋏が一夏を捕らえようと動いており、躱そうものなら再び距離を開けられるため何度も二重瞬時加速(ダブル・イグニッション・ブースト)を使わざるを得ない状況へと陥る。

 

「くそっ!あの大きさであの動き反則だろ!」

 

こうしてる間にも鋏の力が強くなり、箒の悲鳴が響く。絶対防御も発動しており、シールドエネルギーが急速に減っているため時間が無い。

意を決して一夏は天羽々斬を発動させ、同時に二重瞬時加速(ダブル・イグニッション・ブースト)を使ってそのまま一気に箒のいる前腕へと向けて突っ込み、雪片撃貫を鋏目掛けて振り下ろす。

 

「箒を離せぇぇ!」

 

天羽々斬が鋏の節に食い込む。そのまま一気に下まで斬ったことにより、斬りおとすことはできなかったが節からの出血と共に鋏から解放された箒が海に投げ出されるが、それを一夏がとっさに追いかけて抱き留めることに成功した。

 

「箒、大丈夫か!?」

 

「い、いいい、一夏!わ、私は大丈夫だから!」

 

一夏の顔が近いため顔が真っ赤になる箒は、とっさに彼から離れて再び刀を構える。だがメガギラスは距離をとるや、再び翼を細かく動かし超高周波を起こしたのだ。

それと同時にメガニューラもこちらに飛ばし、再び大群に襲われる一夏たち。

 

「ぐっ……!」

 

強い耳鳴りに襲われるがISの保護効果もあって耳鳴り程度で済んでおり、どうにか迎撃を行う。だがしかし、その中で箒だけが様子がおかしい。まるで頭が割れるような痛みに彼女は襲われていた。

 

「あっ……あ、ぁ……」

 

頭の中がグチャグチャにされる。いったいこの気持ち悪さは何なのか。

その時、頭の中に見たことないのにすでに見たような映像が流れる。

 

 

―このナノマシンを入れたら箒ちゃんは私の思うがまま―

 

 

―ふふっこれなら箒ちゃん、いっくんを独り占めできるよ―

 

 

―あとは紅椿にナノメタルを仕込んで―

 

 

これはいったい何なのか。なんで姉の姿が脳裏をよぎるのか。まるで閉ざされていた扉からたくさんの情報が流れ出すかのような感覚。頭が焼き切れそうな状態になった箒は悲鳴を上げた。

それに全員が振り向き、一夏が急いで駆け寄った。

 

「箒!おい、どうしたんだよ!」

 

箒の様子がおかしい。そう気づいたころには遅かった。

 

「いち、助け、あた、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」

 

箒の断末魔が響く。それと同時に紅椿に異変が現れた。その紅の装甲に亀裂が入り、そこから青鋼色の液体が漏れ出してくる。ナノメタルだ。

箒の焦点はあっておらず、手に握っていた空裂と雨月がぐずぐずに崩れる。だがそんなの関係なしにメガニューラが数体箒めがけて突っ込んだが、漏れ出したナノメタルが動き出し、それが一瞬で槍のように整形されて近くを飛んでいたメガニューラを貫く。

 

「チ、ヂ……」

 

断末魔も上げることすらできないメガニューラ。だが異変はすぐに起きた。貫かれた部分から蒼鋼色に変化していき、そのまま全身がそのようになるや、メガニューラが飲み込まれていくかのように形を失っていく。

 

「なんだよこれ……!」

 

その光景に言葉を失う一夏。紅椿は少しずつ形が変わってきており、ゆっくりと箒を包み込まんと動き出していた。メガニューラたちもそれを見たのか、先ほどより攻撃の勢いがグッと落ちるがそれでも激しいことに変わりがない。だがその時、1筋の雷光がメガニューラを数匹斬り裂いた。

 

「航!」

 

そこに現れたのは先ほどまでメガギラスと戦闘をしていた航だった。先ほどの一撃で機龍に大きな損傷があったのか、あちこちから火花が散っている。

 

「間に合……なんだよそれ……!」

 

「航!箒がなんか……どうすればいいんだよ!」

 

悲鳴のように一夏が言う。だがその時箒が右手に持ってる刀で一夏を斬りつけてきたのだ。とっさに踏み込みそのまま那由多で彼女の腕を掴むが、その力は尋常じゃなくそして左手に持ってる刀で一夏を横薙ぎに斬ろうとするが力が制御で来てないのか刀がボロボロと崩れる

 

「箒、止めろ!いったいどうしたんだよ!箒!」

 

一夏の声も空しく、ただ箒は再び刀身を作って横薙ぎに振ろうとしたとき隣から飛んできた“尻尾”によって阻まれ、そのまま箒は弾き飛ばされる。

 

「航……!」

 

そう、航が機龍の尾で箒を薙いだのだ。迷ってる暇はなかった。だが航は今の箒を見てすごいゾワゾワする、強い嫌悪感を覚えていた。これがいったい何なのか分からないが、今の箒は銀の福音張りに危険なモノになり替わろうとしてるのだけはよくわかったのだ。

 

「一夏、箒を斬れ!」

 

「はぁ!?」

 

いったい何を言ってるかと言わんばかりに航に目を剥く一夏。

航も余裕がないのだ。ただでさえ体はいつ動かなくなってもおかしくない中、さらにメガギラスの軍団に暴走してる箒。この状態では一番に箒を抑えるのが先決なのだ。

だがこうしてる間に箒は近くにいるメガニューラを襲い、吸収していく。そして少しずつ紅椿がぶくぶくと膨れ上がっていっており、光の消えた彼女の眼がメガギラスを捉え、スラスターに光が灯る。

 

「天羽々斬だ!じゃないと箒が死ぬぞ!」

 

迷ってる暇はなかった。このままでは自分も殺される。そう判断した一夏は即座に天羽々斬を発動し、高々と箒に向けてに振り上げる。

 

「箒、ごめん……!」

 

そしてその刃を振り下ろした一夏。箒は刀で防ごうとするも光の刃はそのまま刀を切り抜けて箒を斬り裂き、一瞬にして紅椿の機能を停止させる。それによって空に投げ出された箒だったが、即座に一夏が右手で抱き留めることで落ちることは阻止された。

 

「箒!箒!返事しろ!」

 

「いち、か……」

 

そのまま箒は意識を失う。苦しかっただろう。箒の鼻や耳からは血が流れており、涙も少し赤く染まっていた。

 

「なんでだよ……なんで箒が……!」

 

そのまま怒りの形相となり、那由多から光線をメガニューラの大群に向けて薙ぎ払う。それに何体か飲み込み、再び放ってまた何体も飲み込んでいく。

 

「馬鹿ッ!?無駄にエネルギーを使うな!」

 

ラウラの制止も空しく、一夏派那由多を照射、連射を繰り返す。だがメガニューラも慣れて来たのか次第に当たらなくなっていき、そして。

 

「しまった、エネルギーが……!」

 

怒りに任せた連射により一気にシールドエネルギーが無くなり、レッドゾーンを示すアラートが鳴り響く。だが箒はもう戦闘不能になっており、シールドエネルギーを回復させる手立てがない。

独立稼働の零落白夜は使えるが、これもマガジンが残り少ないため攻撃の手段は限られてくる。だがそれでも一夏派雪片撃貫を強く握りしめ、零落白夜を発動させようとする。

 

「一夏、皆を連れて逃げろ」

 

「航……!?」

 

その時、航が彼の前に立って制したのだ。だが彼の言ったことが信じられないのか、一夏は驚きを隠せていないが次第にその顔は険しくなる。

 

「それはどういう意味だよ航!」

 

「皆の機体の性能が一気に落ちてる。だから、その影響を受けてない俺がやるしかねえ、だろ……。それに一夏、箒を抱きかかえたままどうする気だ?だから一夏、皆を連れて行け……。ここは俺が食い止める、から……」

 

体が再び痛み出してるのか小さく苦悶の声になってる航。一夏はそれが気に入らず、声を荒げる。

 

「バカ言え!なんで俺がお前を置いて行かないといけないんだよ!もうお前も機龍もボロボロじゃないか……。そんなので勝てるわけねえだろ!それなら俺も」

 

「エネルギーがあまりない機体、で何ができるんだ……」

 

「航、それは本気で言ってるのか……!?」

 

「……」

 

ただ航は何も言わずただメガギラスたちと睨み合いを続けている。そしてスラスターに光が灯り、奴らの中に飛び込もうと姿勢を少しかがめる。

 

「航……」

 

その時、航は声をかけてき方に目線を向ける。そこには簪が機龍の指をギュッと握りしめており、それを見た航は少し困ったような笑みが浮かび上がる。

 

「航……ダメだよ……。お願いだから……」

 

泣きそうな声。それもそうだ。こんな死にに行く行為を誰が喜んで見送れるものか。

 

「大丈夫だ。前にもあっただろ、こういうこと。だからちゃんと帰ってくるよ、俺は」

 

だが簪はそれでも手を放そうとしない。だがそうしてる間にも警戒を強めていたメガギラスが吼え、再びメガニューラ達が動き出す。

 

「……簪。かt……楯無に伝えといてくれ。帰るのが遅れる。帰ってきたらお前のご飯が食べたい、って」

 

「っ……!」

 

簪は昔の航を思い出すと同時に、彼の嫌いだったところも思い出してしまう。あの時もそうだった。自分を逃がすために、航が独り残ったときのことを……。

グッと拳に力が入り、それでも彼を連れ戻そうと声を上げようとした、ときだった。

 

「航!」

 

「織斑、くん……」

 

簪は一夏が止めてくれるのではないか、そう一筋の願いを託すが、彼の言ったことは彼女の願ってたこととは真逆なことであった。

 

「本気でやるのか?」

 

「……あぁ、もちろんだ」

 

一夏ははギリッと歯を軋ませ、そのまま少しずつ彼から出ていた殺気が収まっていく。彼の力になれない。それが一夏はただ悔しかった。ただこれだけは良いだろう。一夏はそう思って口を開く。

 

「……航っ!そういうならホントに戻って来いよ!じゃねえと俺が殴りに行くからな!」

 

「わかってるよ、それぐらい……」

 

一夏の檄を受けて小さく笑みを浮かべる航。それが伝わったのか、一夏は悔しそうにしながらも航に背を向けた。

 

「……皆、行くぞ」

 

そう言って海域を離脱しようとするが、簪は嫌だと首を横に振る。

 

「でも、航が……!」

 

「更識さん、アイツの決意を無駄にしてやらないでくれ……頼む……!」

 

振り返って航を見る簪。その背中はあの時と重なるが、強い不安が彼女の脳裏によぎる。だが、それでも航を信じるしかない。涙をぬぐい、一夏たちに続いて簪も海域を離脱し始めた。

 

「あぁ、こえぇな……。カッコつけたくせに、今になって怖くなってきやがった……。死にたくねえよ……」

 

皆を見送り、誰にも聞こえない声でそうつぶやく航。彼だって怖いのだ。いくら機龍であろうとも、中破でありながら更にこの戦力差。

帰れるわけがない。心の中で本心はそうつぶやく。

不意に戦う前より体が軽いと航は思った。そこそこ血が抜けたせいか頭が冴えてるような気分になり、航は聞こえてるか分からない機龍に語り掛ける。

 

「機龍……俺は怖いよ。体もあまり動かないのにこんな無茶してさ……笑いたいのに笑えないや。逃げるチャンスはあるけど、正直これじゃ“間に合う”か分かんないな……。それが出来なかったらここで死ぬのかな……?でもさ……そういうわけにはいかないんだ」

 

航は目を閉じ、水色髪の彼女の後姿が思い浮かぶ。それに手を伸ばすと彼女は振り返り、小さく笑みを浮かべ……。

機龍の背びれに紫電が走る。それに呼応するように機体温度が少しずつ上がり始め、廃熱ダクトから大量の蒸気を噴き出す。

 

「帰るんだよ、俺は……。もう一度刀奈を抱きしめるんだよ……!だから、死ぬわけにはいかねえんだ!機龍!もう一度だ!もう一度俺に力を貸せ!」

 

“GOZILLAsystem stand by”

 

航の叫びに応えるかのように女性のボイスが聞こえた時、機龍の焼け爛れた背びれから稲妻が空に向けて放たれた。

そして機龍の目は真っ赤に染まり、機体機体温度も上昇。その熱に顔をしかめる航だがそれと同時に小さく獣のような笑みが浮かんでいた。

 

「キィィァァァアア……ギィァァア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

ビリビリと響く咆哮。それに反応したメガニューラは、進行方向を完全に機龍の元へと向ける。

 

「行くよ、機龍!」

 

スラスターから赤い光を吐き、加速をかけた機龍()はメガニューラの大群の中に突っ込んだ。




正直メガギラスの超高周波はどこまでの機械を狂わすかってのは悩みましたが、ISのシールドによってそこそこ拒まれるがやっぱり効くという感じにしました。
なおメガギラスにクアッドファランクス当ててますが、人間で言うならゴーグル越しにモデルガンから目を撃たれてる感覚です。ええ、ほぼ効いてません。

というかメガギラスは熱攻撃以外なら物理攻撃にも強いと思うんですよね。ただよく斬られるけど。




では次回をお楽しみに
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