インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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眠りについた銀龍の血を継ぐ者はそこで何を見るのか


機龍の新たなる世界

先程の戦闘が終わってそして休憩後、セシリアはアリーナの真ん中で次の試合相手、篠栗航を待っていた。

 

「いっけー、オルコットさん!」

 

「もう一人の男はボコボコにしちゃえ!」

 

観客達はそう言ってセシリアを鼓舞するが、当のセシリアはそれを聞いてて溜息を吐く。

 

(全く、応援だとしても何か嫌ですわね)

 

セシリアは応援のことは聞こえないようにして先程の試合を思い出す。あと真剣な目、何か胸がどきどきする。なぜかは分からないが悪い気はしない。

 

「ですがもう油断はできませんわね」

 

そう言って気を引き締めなおす。

その時だ。相手のカタパルトからガシャッガシャッっていう音がする。恐らくカタパルトを歩く音なのだろう。だが、なぜ歩いているのか、それがセシリアには分らなかった。カタパルトの意味が無いではないか。

そしてカタパルトの出口に、日が当たるところにまで来てその姿を見せたとき、セシリアどころか、観戦していた女子達を一気に固まらせた。

それは全体的に銀色の全身装甲で、人間に近いがとても遠い姿。その姿は怪獣学の一回目で紹介されゴジラにとても似ている。

だがゴジラとは違い、全身が機械で構成されており、そして何よりでかい。どう見てもブルーティアーズの倍近くはあるのだ。

 

「何なんですの……、あの大きさは……」

 

カタパルトを少し前屈みで出てきたこともあって前屈みをやめたらまだでかいのだろう、セシリアは緊張する。

だがセシリアは知っている。過去にイギリスで見た資料映像にいた……。

 

「たしか……、機龍と言ったかしら?」

 

セシリアはそう呟く。

 

「篠栗航、三……いや、四式機龍、行くぞ!」

 

オープンチャンネルで聞こえ、そして機龍がカタパルトの端から飛び降りる。そして地面との距離がどんどん近くなっていき、大体残り3メートルぐらいになった時に太腿部からブースターが展開され、そして急速に速度を落として大量の砂埃を巻き上げながらゆっくりと着地する。

 

 

ズゥゥン……

 

 

着地音と共に尻尾を地面にたたきつけ、航は空を見上げる。そして口部を開き、

 

『キィァァアア!!』

 

機龍が吼えた。

まるで40年の眠りから覚めたかのように、空に浮く敵を潰そうと意気込むように、機龍は吼えた。

 

「なっ……!?」

 

セシリアはなぜいきなり吼えたのかが分からない。それは観戦席にいる女子達も同じくのようで全員キョトンとしている。

そして航は機龍を歩かせ、セシリアがいるところまで進んで行く。ズシンッズシンッと音を立てて歩き、そしてセシリアの近くまで来た。

 

「待たせたな」

 

セシリアは航が地面にいるせいもあり、完全に見下した姿勢でいる。

 

「……でかいですわね」

 

この時機龍の尻尾がユラリユラリと揺れており、セシリアは少し不思議そうにそれを眺めている。

 

「こっちも驚いてる」

 

「ですが、勝つのは私ですわ」

 

そう言った後セシリアはスターライトmk-Ⅲを展開して航に標準を合わせる。

機龍はキィィと小さく鳴いており、まるで生きてるかのように尻尾を動かしている。

 

「そちらの機体はどう見ても陸戦型。ですから空中戦を主にするわたくしに勝てると思いで?」

 

このとき航はニヤリと笑う。

 

「勝てるさ。たとえオリジナルでなくても、機龍ならやれる。こいつはそういう機体だ」

 

この時試合開始のブザーが鳴った。

 

「そう……、ならその考えを壊して見せて上げますわ!」

 

そしてセシリアはスターライトmk-Ⅲの引き金を引いて、レーザーを航目掛けて走らせる。

だが航は太腿部ブースターを展開してノズルを前に向け、そして後ろに跳び下がることでレーザーを回避し、そのまま着地した際にバックユニットのブースターを使って減速をする。この時地面をガリガリと削りながら着地をし、そしてセシリアを睨みつける。

 

「全弾発射!」

 

そう指示した後、バックユニット前面部から多連装ロケット弾が12発、側面からミサイルが8発放たれ、計20発のミサイル群がセシリアめがけて飛んでいく。

ロケット弾が正面から、ミサイルが弧を描いて側面から飛んでくるためセシリアは急降下、急加速や急旋回を駆使して回避をしていき、それでもついてくるミサイル群にはスターライトmk-Ⅲで的確に貫いていった。

その時だ。

 

『キィァァアア!!』

 

機龍が再び吼えたと思った瞬間、太腿部ブースターとバックユニットのブースターに火がともり、一気にセシリアめがけて飛んだ。その速度は並のISでは出ない速度であり、一気にセシリアに肉薄する。

 

「えっ……?」

 

セシリアはいきなりのことでキョトンとする。だがそれは戦いにおいてもっとも致命傷になることだ。

 

「おらぁ!」

 

航は太腿部ブースターで右足部のブースターを前に、左足部のブースターを後ろにして旋回力を高める形にする。そして機龍の尻尾が勢いよく迫って来た為、セシリアはかわせないと悟ったのか、ミサイルビットを至近距離で放ったのだ。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

爆風を利用して距離を開けるのはいいが、近すぎたせいか爆風できりもみ状態で飛ばされ、30メートルとんだところらへんでどうにか姿勢を制御した。

ブルーティアーズも今の自爆ギリギリの攻撃でシールドエネルギーが減っており、セシリアは苦虫をかみつぶす表情を見せるが、下手に至近距離の攻撃をくらって大ダメージをくらうよりはマシだと言い聞かせ、航がいる煙が立ち込めるところを凝視する。

あの大きさだと恐らくそこまでダメージが通っていないだろう、セシリアはBTビットである『ブルーティアーズ』のレーザータイプを全機展開して警戒心を強める。

そして……。

 

『キィァァアア!!』

 

機龍の咆哮が聞こえた。

 

「……まさか、効いてませんの?」

 

セシリアは煙の中から聞こえた機龍の咆哮に恐怖を覚える。その時だ。

 

「なっ!?」

 

煙の中から再びロケット弾が20発ほど放たれ、セシリアはビットを使って迎撃するがこれが悪手だったことを後に知る。ビットを使ったせいで自身の動きもままならなくなったセシリアは、そのまま迎撃できなかったミサイル数発が直撃し、シールドエネルギーがガリガリ削られていった。

この時セシリアは爆発と爆風に大きく揺られていく。

 

「っ!?」

 

この時何かを感じたセシリアはその場を一気に離れた。そしてセシリアが先程いたところに雷が走った。この時にビットが一機、熱で足部を抉られて爆発する。

それなりに離れたはずなのに、熱でシールドエネルギーを削られたセシリアは何が起きたのか分からず一気に混乱に陥った。

 

「何なんですの、今のは!?」

 

そう叫んだ時、煙の中から現れたのは胸部にミサイルビットが直撃した後のすす汚れが付いた程度の機龍のが現れる。尻尾は怒ってるのか時折大きく揺らしており、吼えたところからその仕草はまるで生きてるかのようだ。

そして太腿部ブースターとバックユニットでブースターを吹かして一気に距離を詰め、セシリアに近接攻撃を仕掛ける。

 

「っ、させませんわ!」

 

セシリアも近づかせまいと残った3機のビットとライフルからレーザーを放つが、見た目と反して機動力が高いのか次々と回避をしていく。そして機龍の攻撃範囲に入ってしまったビットの一機が、前方宙返りで放たれた尻尾の一撃で真っ二つに折れてしまい、機龍が離れると同時に爆発する。

まさかの動きでビットを破壊されたことでセシリアは思考を一瞬だけ停止させてしまい、残ったビットの動きが止まってしまう。これを見逃す航でもなく、一機は速度を生かした動きを用いてその牙で噛み砕き、もう一機は腕部レールガンの弾が連続で直撃して墜ちる。

二つの爆発を確認したセシリアは機龍の姿を改めてみて恐怖する。その姿はまさに怪獣だ、と。

セシリアは距離を離そうとスラスターで前に吹かして距離をとるが、機龍がそれよりも速くセシリアに距離を詰める。

 

「きゃあ!?」

 

そして頭を鷲掴みにされ、そのまま投げ飛ばされたセシリアはなんとか体勢を戻そうとしたが、

 

「きゃあ!」

 

再び至近距離に持ち込まれ、体を捻って出された機龍の尻尾が腹部に直撃し、そのまま地面に叩き落とされ、叩きつけられた時の音が無情に響く。

 

(何なのですの……、あの火力と防御力は……。太刀打ちできませんわ……)

 

叩きつけられた地面の上でセシリアはあの力に恐怖しており、殆ど戦意喪失している。

ゴジラとまともに戦ったといわれる機龍がここまで強いとは。それならオリジナルの機龍の強さはどうなる?

そしたらゴジラの力は……。セシリアは顔を真っ青にした。

そのころ機龍、もとい航は上空で地に伏すセシリアを見ており、そしてPICをいったん切って急降下をしてくる機龍。そして地面に着陸するときに太腿部ブースターとバックユニットを点火させて減速をし、着地をした際に膝を曲げてショックを和らげ、そしてセシリアを睨みつける。

 

 

そして歩いて距離を詰め始めたため、セシリアは残ったスターライトmk-Ⅲの引き金に指を掛けるが、

 

(無理ですわね……)

 

諦めの表情を浮かべ、スターライトmk-Ⅲを手放す。その間も機龍のズシン、ズシン、という歩く音が自身に迫って来ている。

そして自身にその鋭い四本の爪を付けた腕が迫っており、それが自分の顔に迫ってる時である。

 

「……ま、参りましたわ……」

 

か細い声でそう言った時、自身に延ばされていた腕は動きを止め、セシリアは小さくえっと言って機龍の顔を見たが自信を睨みつけていることに変わりなく、動きが固まってしまう。

そして腕を引きもどしていき、航は後ろを向いてブースターを使って自身のピットに戻っていく。

 

『勝者、篠栗航』

 

試合終了のブザーが鳴り、セシリアはその機龍の背中を少し恐怖の混じった目で追いかけるのであった

 

 




機龍でセシリアをさっさと倒せないのは航の技量不足が原因です。元からそれなりに戦えるのならセシリアはさっさと倒せます。
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