精霊幻想記 剣姫の円舞曲   作:パイタン

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第二章 友の涙と従妹の笑顔

 リオと出会って数日、リオ達と街を歩いて買い物や食事をして親睦を深めていたが、そろそろ仕事をしようと、今日は未開地まで空を飛んでやって来た。

 おっ、いい感じの大きさの亜竜が飛んでるな。

「一ノ太刀、断空! 二ノ太刀、閃空!」

 亜竜の直上から風の太刀で後頭部をぶった切る。グアッ!? と断末魔を上げ、脳を大きく損傷した亜竜は力なく墜落していゆく。

 さて、高く売れる部位と魔石を剥ぎ取って帰るとするか。必要な素材を剥ぎ取りバックパックに詰め終わると、再び空に飛び立ち、轟音を発してマッハコーンを発生させながら帰路についた。

 アマンド上空まで飛んでくると―――。

「……何だ、これは?」

 街の城壁や建物の至る所が損傷していた。

「……ロッテ!」

私は即座に友人の安否を確認する為彼女の屋敷へと向かった。屋敷の玄関に降り立ちドアを開ける。

「シュリナだ! ロッテは無事か? 何があった!」

 近くに居た侍従がビクッと驚きながら、「お嬢様はご無事です、今は中央の応接室にいるかと」と、教えてくれた。

「失礼する、無事かロッテ。何があったんだ?」

 応接室のドアをノックして開けると、室内にはロッテとアリアの他に、ベルトラム王国の第二王女フローラ、具合の悪そうなユグノー公爵、彼の腹に治療魔法(ヒール)をかけている公爵令嬢ロアナがいた。

「シュリナさん……」

 私を見るなり、ロッテの顔が、迷子の子供が親を見つけた時のような泣きそうな表情になる。気丈な彼女がこんな顔するなんて、一体何があったんだ。

「魔物の襲撃にフローラ王女の誘拐未遂、それに、ルシウスだと……?」

「この後、気絶されているヒロアキ様が起き次第、ハルト様を交えて話し合いをする予定です」

「その話し合い、私が参加しても?」

「勿論です、何か意見があったら申し上げて下さい」

「了解した、詳しい話を聞きたいからハルトの部屋を教えてくれないか?」

「アリア、クロエにシュリナさんをハルト様の部屋までご案内するよう伝えて」

「承知しました」

 

◇ ◇ ◇

 

 主だった関係者全員と私を含めて今日起きた事の話し合いを進めていく。

「……母を殺されたんです。私の目の前で」

 リオの言葉に一同が息を吞む。ルシウスとの因縁の理由を聞いたロアナが即座に謝罪し、勇者弘明が彼女を気遣う。

「そういう訳で、ルシウスはハルトと私にとっての仇敵なんだ」

「シュリナさんの……?」

 ロッテが疑問符を浮かべる。

「まだ言ってなかったけど私とハルトは、いとこ同士なんだ。私も先日ハルトから聞いて初めて知ったんだが」

「……そうだったんですか」

 周囲の人間が皆驚いた顔をする。

「詳しい話はまた後で。話の腰を折ってすまない、続けよう」

「分かりました。そうですね、やはりレイスという存在も気になります」

「ハルトから聞いたんだが、私はこのレイスという男が魔物を操る何らかの術を持っていると考えている。ルシウスにとどめを刺そうとした瞬間亜竜がブレスを吐いてくるなんて偶然とは思えない。恐らく先日の魔物の襲撃も今回も、この男が人為的に引き起こしたと見たほうがいい。私が不在だったり、混乱に乗じてルシウスがフローラ王女を誘拐したりとタイミングが良すぎる」

「俺も、シュリナの考えは可能性が高いと考えてます」

 先日、いとこ同士なんだから呼び捨てで呼んでくれとリオに頼んでいた。

「それと、遠方へ一瞬で移動出来る何らかの術も持っていると考えてます。これは以前、そういった技術があると聞いた事があるので確実かと」

 リオもそういう魔道具持ってるもんな。その後、いくつか情報を摺り合わせ―――、

「後はハルトとフローラ王女に、ルシウスとレイスの人相書きを描いて貰い、二人の特徴を書き記した指名手配書をガルアーク王国と同盟国に広めて貰おう」

 ロッテを泣かせたレイスは、先ほど私の中で最優先討伐対象となった。人の嫁に手を出したらどうなるか思い知らせてやる。

 そんな事を考えていると、リオがこの国の勇者、サツキ=スメラギのお披露目をする夜会への参加を願い出ていた。

 勇者サツキの召喚に巻き込まれた彼女の友人を保護してると言っていたな、私も会ってみたいものだ。

「シュリナ、この後俺の部屋に来てもらえませんか?」

 等と考えていたら、リオからお誘いを受ける。もう大分遅い時間だ。

「そんな、まだ出会って間もないのに、そんな情熱的なお誘いをされても」

 そう言って両腕で自分を抱きしめ体をくねらせる。

「……」

 そんな呆れた顔せんでもええやんけ。何故かこの身体、たまに前世のおじさんが出てくるんだよなぁ……。

「それで、何の話かな?」

 リオの部屋で要件を聞く。

「えぇ、いずれ貴女も勇者の沙月さんや俺が保護している彼女の友人達と会うことになると思うんです」

「あぁ、是非とも会ってみたいな」

「勿論、いずれ機会を設けるつもりです。そこで、四年のズレ(、、、、、)に関しては、俺が話すまで黙っていて欲しいんです」

「我々が死ぬ四年前に起きた集団神隠し事件の事か? やはりあの被害者が勇者達だと?」

 我々が死ぬ四年ほど前、東京で三組の男女が、公衆の面前で神隠しにあったかのように突然消え去るという事件が起きて日本中が大騒ぎになった事があった。

「えぇ、保護している内の二人が前世の俺の知り合いなんです」

「……? なら既に知られているのでは?」

「いえ、俺の前世が天川春人だとは教えていません。ですので、シュリナも天川春人という名前は出さないで欲しいんです」

「……何か理由があるのか?」

「それは……飽くまで個人的な理由です」

 セリア嬢とアイシアの方を見る。セリア嬢は首を横に振り、アイシアは相変わらず何を考えているのかよく分からない。

「まぁ、何か考えがあっての事だろうから了解した」

「すいません、お願いします」

 

◇ ◇ ◇

 

「よく来たなハルト、ロッテに会いたければ私の屍を越えてゆけ!」

「何を言ってるんですかシュリナ……」

 リオが呆れた顔をする。彼がこの屋敷に来たと聞き、ロッテの部屋の前で待ち構えていたのだ。リオ達が夜会に参加している間、私はリオが普段一緒に暮らしている友人達と過ごす事になっていた。

 私が望んだのもあるが、リオの友人達も私に会ってみたいそうだ。

「美春さん、彼女が俺の従姉のシュリナです」

「えっと、は、初めまして、ハルトさんにお世話になっている美春=綾瀬です」

「よろしく、ハルトの従姉のシュリナだ。色々と災難だったらしいね」

「いえ、ハルトさんが良くしてくれてますし、友達も出来たので、今は毎日が楽しいです」

「そうか、なら良かった。私とも仲良くしてくれたら嬉しい」

「勿論です」

 中々素直なええ子やん。その後、ロッテやアリアと共に魔導船に乗って王都ガルトゥークを目指す事となった。

「ここが王都……」

 美春はガルトゥークが初めてなのか、王城の方を興味深そうに眺めていた。日本の女子高生なんて、シンデレラ城くらいしか見た事ないだろうからな。

「それじゃハルト、抱えるから同居人達がいる所までの案内をよろしく」

「えぇ」

 リオも空を飛べるらしいが、出来るだけ人前では見られたくないらしい。まぁ手札は隠しておくに越したことはないけど。

「それではリーゼロッテさん、少しの間だけ美春さんをよろしくお願いします」

「勿論です、お任せ下さい」

「ロッテ、いくら美春が可愛いからって私がいない間に浮気するなよ」

「もう、早く行ってください」

 呆れた顔で出発を促すロッテ。もう、いけずなんだから。体から風を放出して浮かび上がると、そのまま王都の上空を飛んでいく。

「この辺でいいですよ」

 抱えていた私の腕から浮かび上がり、自力飛行するリオ。……あれ?

「体から風を出してないけど、それどうやってんの?」

「ちょっとしたコツがあるんです」

「それは是非教えて欲しいな、そっちの方が使い勝手が良さそうだ」

「構いませんよ。アイシアも飛べるので、こちらに滞在中は彼女に教えてもらうのも手ですね」

「そうか、俄然楽しみになってきたな、先を急ごう」

「えぇ、こちらです」

 こうして空を飛んでいくこと数分。

「……ん? あれは結界?」

「流石ですね、この距離から見えますか。あれが例の岩の家です」

「へぇ、本当にただの岩にしか見えない」

 岩の家の上空から結界内に入って着地する。

「こちらが玄関になってます、どうぞ」

「それじゃ失礼して、お邪魔しますと」

 家の中はかなり快適な作りになっていた。リビングらしき部屋に行くと―――。

(おぉ~……)

 話には聞いていたけど、本当にエルフ、ドワーフ、獣人がいた。黒髪の子供たちが日本人かな?

「皆さん、彼女が俺の従姉のシュリナです」

「リオの従姉のシュリナだ。数日の間だが仲良くしてくれると嬉しい」

 そう言うと、皆思い思いの返事を返してくれた。ラティーファと名乗った狐耳の獣人の子が例のバスに乗っていた小学生の女の子か。

 確か前世の名前は遠藤涼音。

「では、俺は戻りますね」

「あぁ、わざわざありがとう」

 一通り自己紹介が終わった後、リオはロッテの元に帰っていった。

 その後、セリア嬢からリオが幼かった頃の話や、サラ達から精霊の民の里の話、亜紀や雅人がこちらに召喚されてからの生活の話などに花を咲かせる。

 更にその後、アイシアから武空術を教わったり、サラ達と軽く模擬戦をしたりしていると、日が傾いてきた。

 結構汗をかいたので、湯浴みをさせて欲しいと頼むと、大浴場があると聞き、是非とも皆で入ろうと提案した。美少女達の裸体、是非とも堪能させてもらおうじゃないか。

 ……ふむ、銀狼獣人のサラの尻尾は綺麗な白銀か。

「ふっ、尾も白ぇ女……」

「はい?」

「な、何でもない」

 いかん、おじさんが出てきてた。

 その後は皆で夕飯を囲んで食べ、夜も更けてきたので私は貸し与えられた客室で就寝の準備をしていた。と、そこにラティーファが部屋を訪れてきた。

「……あの事故は本当にすまなかった。幼い君の人生を突然奪ってしまった」

「ううん、あの事故は避けようがなかったってお兄ちゃんも言ってたから」

「そう言ってもらえると助かるよ、それで? 何か用があったのかな?」

「……シュリナさんの前世の今井冬真さんて、前世の私と同じクラスにいた今井恵さんのお父さんだよね?」

 何だって……?

「驚いた、恵と同じクラスだったのか。……そう言えば恵が、お父さんの運転するバスを同級生が利用してるって聞いた事があったような。そうか、君の事だったのか」

「お兄ちゃんからシュリナさんの話を聞いた時、もし会える時が来たらシュリナさんに絶対に伝えようと思ってて……」

「本当に凄いな、こんな以外な繋がりがあったとは。ところで、私の事は他の娘達を呼ぶときのように、お姉ちゃんとは呼んでくれないのか? リオの妹なら、私にとってもラティーファは従妹になるんだろ?」

 ラティーファの瞳が大きく見開かれる。

「……うん、シュリナお姉ちゃん!」

 ―――それは、大輪の花が咲いたような笑顔だった。

 翌日の夜、リオとアイシアが、美春と共に勇者沙月を連れて来たり、リオがガルアーク王国の名誉騎士に叙勲されたり、美春が雅人達の兄である勇者の貴久に誘拐されそうになる騒ぎが起きたりと、夜会は慌ただしく過ぎていくのだった。

 ……それにしても、人殺しは悪、ねぇ。盗賊や賞金首を狩りまくってる私は大悪党になってしまうな。

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