ウルトラマンフォルテ   作:骨切りアギーラ

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番外編~奏(かなで)ちゃんの受難~

穏やかな日曜日の午後。平和を噛み締めるように表参道を歩いていた奏。

だが、平穏な休日を満喫する彼に、ある意味、混沌の調(しらべ)の眷族よりも邪心に満ちた、4つの影が迫りつつあった───。

 

 

「奏くーん! 捕まえたっす!」

 

「わわっ、きな子さん!? みなさんも……」

 

振り返ればそこには桜小路きな子、米女メイ、若菜四季、鬼塚夏美の2年生カルテットが勢揃いしていた。何やら尋常ではない熱気に当てられ、奏が後ずさる。

 

「奏くん、今日はどうしても男手……というか、『特別な手』が必要なんですの! 結ヶ丘まで来ていただきますの!」

 

「えっ、でも結ヶ丘は女子校ですし、僕なんかが入ったら不審者扱いされちゃいますよ」

 

「大丈夫っす! 秘策があるっすから!」

 

不敵に笑うきな子に引きずられ、奏は近くの公園の公衆トイレへと連行された。

 

「中でこれに着替えて欲しいっす!」

 

何かが入った紙袋を押しつけるように渡すきな子。いつも通りの純真な笑顔───のはずだが、何故かそこに普段には無い邪悪な気配を感じた奏は身震いしながらも、半ば押しきられるようにトイレの個室へと消えた……。

 

数分後、個室から恐る恐る出てきた奏の姿を見て、4人は一斉に息を呑んだ。

 

そこにいたのは、灰色のジャンパースカートに赤いリボンタイを端正に結んだ、可憐な「女子生徒」だった。すらりと伸びた足が、制服の短い裾から覗いている。頬を赤く染めて俯き、スカートの裾を抑えながら内股気味に立つその姿は、どこに出しても恥ずかしくない美少女だった。

 

「……設計ミスじゃなかった。神様は、この瞬間のために彼を創った」

 

四季が深淵なる真理に辿り着いた哲学者のような顔で呟く。

 

「な、何なんだよこれ、反則だろ……っ! どんな美少女だよ……っ!」

 

メイは顔を真っ赤にして、眩しすぎるものを見たかのように天を仰いだ。

 

「本物の女の子より可愛いっす……っ!」

 

きな子は感動のあまりハンカチを噛み締めて涙を流し、夏美はスマホのカメラを構えながら狂喜乱舞した。

 

「ミリオン! これは歴史が動くミリオンの予感ですのー! 結ヶ丘に舞い降りた天使、オニナッツ・プロデュースで世界に発信ですの!」

 

「あの……恥ずかしいです……やっぱり脱いでもいいですか?」

 

涙目で懇願する奏だったが、夏美が「ダメですの!」と即座に却下。きな子が奏の肩を抱き、力強く宣言した。

 

「さあ、学校に行くっすよ! 奏(かなで)ちゃん!」

 

「かなで……?」

 

「そうっす! 女の子なんだから奏(そう)くんじゃなく、奏(かなで)ちゃんっす!」

 

押し切られるようにして、奏は結ヶ丘女子高等学校の校門をくぐった。

休日とはいえ、部活動で登校している生徒は多い。すれ違う生徒たちが、次々と奏の姿に目を奪われていく。

 

「あの子誰!? ちょー可愛い!!」

 

「もしかしてLiella!の新メンバー!?」

 

「でもあんな子、うちの学校にいたかな?」

 

囁き声が耳に入るたび、奏は顔から火が出るほど恥ずかしくなり俯いて歩く。だがその慎ましやかな態度が「清楚な美少女」としての説得力をさらに高めてしまい、2年生4人のボルテージは上昇する一方だった。

 

部室に到着するなり、奏は謎の装置の中に押し込められた。

 

「あの……結局、用事って何なんですか?」

 

「ふふふ、実験。私の作った強制お着替えマシーン『オーバー・マスター君』のね」

 

四季が不敵に微笑み、装置を起動させる。

 

「………!?うわわわわ!?」

 

『オーバー・マスター君』の内部に搭載されたマジックハンドで、奏は強制的に服を着替えさせられる。そこからは奏にとって悪夢の連続だった。

 

「奏ちゃん、次はこれっす!」

 

「こっちのフリル多めのも着せてみるですの!」

 

「……心拍数上昇。データの収集、捗る」

 

メイド服、チャイナドレス、ナース服、フリルの付いたピンク色の水着etc…。次々と女性用のコスチュームに着替えさせられ、そのたびに夏美のシャッター音が響く。押しの弱い奏は「ううっ……」と呻きながらされるがままになっていた。

 

「そこまでよ、あなたたち!」

 

部室のドアが勢いよく開いた。そこに立っていたのは、ウィーン・マルガレーテと鬼塚冬毬だった。

 

「姉者。休日なのにわざわざ制服に着替えて外出したのを怪しんで正解でした。未成年の連れ込み、および着せ替え人形化。重度のコンプライアンス違反です」

 

冬毬が冷ややかに言い放つ。隣のマルガレーテも呆れたように溜息をついた。

 

「マルガレーテさん、冬毬さん……!」

 

地獄に仏。二人は冬毬が夏美のスマホに仕掛けた発信機を頼りに駆けつけたのだ。

 

その後、2年生4人は部室の床に正座させられ、冬毬の理路整然としたお説教の洗礼を受けることになった。

 

「ほら、早く着替えて来なさい。この人達は見張っておくから」

 

マルガレーテが奏の私服を差し出す。奏はちょうど着せられていた、お人形のようなゴスロリ衣装のまま、パッと顔を輝かせた。

 

「ありがとうございます、マルガレーテさん、冬毬さん! 本当に助かりました!」

 

裾を少し持ち上げ、心からの笑顔でお礼を言う奏。その瞬間───。

 

「……っ!?」

 

マルガレーテと冬毬の鼓動が急激に跳ね上がった。

 

(……な、何よ、その破壊力。可愛すぎるじゃない……!まさか、この私よりも……!?いや、そんなのあり得ない!)

 

(……姉者の言い分も、一理あったということですか。これは……計算外の愛らしさです……)

 

二人の頬は瞬く間に林檎のように赤く染まり、それぞれに「いけない妄想」が頭をよぎったが、それを悟られまいと必死に顔を背けた。

 

夕暮れの結ヶ丘を後にしながら、奏は元の私服に戻り、深く溜息をついた。

 

「これからは2年生のみなさんの呼び出しには、細心の注意を払おう……」

 

ウルトラマンとして巨大な怪獣と戦う時よりもずっと深く、強い決意を固める奏であった。

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