イナズマイレブン アレスの天秤 IF「もしも円堂が故障して、雷門に残っていたら」   作:レイメイミナ

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第二話「フィールドの悪魔に勝て!」②

ㅤ練習試合、当日。

 

「つ、ついにこの日がやってきた!」

「ドキドキするでゴス……」

「あ、あれだけ特訓したんだ!ㅤ何が来ようと……」

 

ㅤその日、雷門中はざわめきとプレッシャー、そしてデジャヴの波に飲まれていた。

 

「懐かしいなぁ……帝国との練習試合も、こんな感じだったな」

「バスの大きさにみんなびっくりしてたよね」

 

ㅤそんな中でも円堂と秋は変わらず思い出話にふけっていた。

 

ㅤそして、やがてやって来る星章学園。巨大でもなければ、物騒なパーツが取り付けられているわけでもない、雷門中の所有しているバスとほぼ同等のバスから星章学園サッカー部のメンバーが降りてきた。

 

「あ、普通のバスなのか……」

「普通で悪かったな、円堂」

 

ㅤそういの一番に口を開いたのが特徴的なゴーグルとドレッドヘアをひとつに束ねた青年、鬼道有人。雷門中から星章学園に派遣されたサッカー強化委員の一人にして、元帝国学園サッカー部のキャプテンである。

 

「久しぶりだな」

「そっちこそ!ㅤ元気そうでよかったぜ!」

「お前こそ、相変わらずベンチにいても暑苦しいな」

 

「なんか、勝手に盛り上がってる……」

 

ㅤ二人の他愛もない会話を、両チームは気まずそうに眺めていた。

 

「さて、試合を始めようか。お前が育てたチームの力、見せてもらおう」

「噂に聞く星章学園、俺たち『伊那国雷門』が倒してやる!」

「伊那国雷門……?」

「今名付けた!」

 

ㅤそうして両チーム、ポジションへ。

 

ㅤ星章学園はミッドフィルダーが多く、堅牢な守備とパスを回しながら、フォワードへとボールを繋ぐ堅実なプレイが特徴。対して伊那国中……改め伊那国雷門は、フォワード、ミッドフィルダー、ディフェンダーにバランス良く人員を配置し、その時々によってポジションを入れ替えることで柔軟なプレイを可能としている。……といっても、その実態はポジションも関係なく自由にサッカーをしていたが故の、定まらないポジショニングが生んだ副作用なのである。

 

「まさか、あの星章学園と……」

「キャプテン、俺ワクワクしてます!ㅤまさか俺たちが11人揃って試合ができるなんて、夢みたいで……!」

 

ㅤ不安を吐露する道成と、試合ができる喜びに溢れる明日人。対称的な二人にそれぞれ感化されながら、キックオフの瞬間を待つ伊那国雷門のメンバー達。

 

「さぁついに始まります、雷門中と星章学園の練習試合!ㅤ1年前を想起させるこの荘厳な空気の中実況を努めますは小生、角馬圭太と申します!ㅤ両チーム睨みを効かせ、キックオフの瞬間を待ち望んでいる!」

 

ㅤやがて、ホイッスルが吹き込まれる。それと同時に氷浦がボールを剛陣へと回した。

 

「始まりました!ㅤ雷門中まさかの電撃特攻!ㅤパスを繋ぎ、グングンと前へ進んでいきます!」

「躊躇ってたって意味はない、ここは進むのみ!ㅤ剛陣先輩!」

「おうよ!ㅤ俺達の力見せてやる!」

 

ㅤ氷浦、剛陣、服部の3人でフィールドを駆け上がっていく。氷浦の滑らかなパス、剛陣の強烈なプレー、服部の小回りが星章学園の面々を抜いてあっという間にゴール前へ。

 

「星章学園もこんなもんか!ㅤ行くぜ、俺のシュートだ!」

 

ㅤ剛陣が思いっきりボールを蹴り上げ、渾身のシュートを見舞いする。しかし、そのボールはあっさりとキャッチされてしまった。

 

「あーっと!ㅤ雷門中、渾身のシュートをホコリを摘むように取られてしまったー!」

「なにっ!?」

「雷門もこんなものか」

 

ㅤ星章学園の大柄なキーパー、天野は剛陣の言葉を返しながら、思いっきりボールを放り投げた。その危険性に、円堂がいち早く気付く。

 

「っ、走れ明日人!ㅤボールを取るんだ!」

「はい!」

「俺も負けてられるか!」

 

ㅤ明日人が走るのと同時に万作もまたボールを取るために前に出る。このままでは相手のペースだ。その前にボールを取り、再びパスを回すことが先決だった。しかし、そうなることはなかった。

 

「よっと」

 

ㅤ誰よりも早くボールを取ったのは……褐色にウェーブのかかった灰色の長髪をした少年。

 

「あいつは!」

「フィールドの、悪魔……!」

 

ㅤ灰崎凌兵。

 

「星章学園、灰崎!ㅤボールを取った!ㅤ余裕の笑みを崩さず、これまたあっという間にゴール前へ!」

「止めてみせ──」

「ゴーォォォルッ!!ㅤ星章学園、早速先制点を入れてしまったー!」

 

ㅤ灰崎が軽く小突くように放ったシュートは、とてつもない速さでゴールネットに叩き付けられた。

 

「み、見えなかった……」

「チッ。つまんねぇな、潰しがいがねぇ」

 

ㅤ灰崎がそう吐き捨てると、気怠そうに自陣へと戻っていった。

 

「灰崎。少しはやる気が出たか?」

「寝言は寝て言えゴーグル頭。逆にあくびが出そうだぜ。ふぁーあ」

「出たじゃないか」

 

ㅤ鬼道は一連の流れに何も語ることなく、灰崎の様子に苦言を呈すだけにした。

 

「これが、星章学園……!」

 

ㅤ明日人は、星章学園の強さを前にして、その腕を震え上がらせた。それは恐怖によるものか、あるいは武者震いなのか、奥入にはわからなかったが、この状況が不味いことだけは確かに認識していた。

 

「きっとさっきは相手なりのサービスだったんだ……剛陣先輩、気張っていきますよ!」

「あぁ!ㅤ今度は絶対に決める!」

「先制点を決められた雷門中、めげずにパスを繋ぎ続けます!」

 

「お前たちのレベルは理解した。悪いがこの試合、我々のできるだけのことをしてやろう」

 

ㅤ鬼道がニヤリと笑うと、星章学園のドリブラー、佐曽塚と折緒が飛び出してくる。

 

「なっ!」

「いただいくぜ、お前らのボール!」

「星章学園、ついにチームが動き出した!ㅤ雷門中氷浦、為す術なくボールを取られる!」

 

ㅤ伊那国雷門メンバーの誰もが追いつくことのできない高速パス回しの終着点、鬼道有人。彼は消極的な動きでボールをキープしていく。

 

「まずは一つ目……デスゾーン、開始」

 

ㅤ佐曽塚、折緒、灰崎の3人が走り、正三角形を描く位置で浮上。空中で完璧に合ったタイミングで回転し、その中心に鬼道がボールを届ける。回転のエネルギーを受けたボールを三人同時にシュートし、ゴールへと叩き付ける必殺技。

 

『デスゾーン』

 

ㅤその圧倒的な威力を前に、のりかは為す術なくゴールを許した。

 

ㅤ0-2、試合開始から僅か5分の出来事である。

 

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